八月十五日に吹く風 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062937443

作品紹介・あらすじ

1943年、北の最果て・キスカ島―忘れられた救出劇。

迫真の筆致! 窮地において人道を貫き、歴史を変えた人々の信念に心震わされる。
―冲方丁(作家)

本書のテーマは、戦時下における命の尊さに他ならない。毎年、八月十五日が来るたびに新しい読者によって読み継がれていってもらいたい。
―縄田一男(文芸評論家)

太平洋戦争の戦記を読む。日本人にとっては辛いことだ。だがこの作品には、まさに爽やかな「風」を感じた。さらに、意外な「あの人」がからむ終戦時の秘史まで明かされるとは! 驚愕と感動が融合した稀有な一冊だ。
―内田俊明(八重洲ブックセンター)

多忙の外務省担当官に上司から渡された太平洋戦争時のアメリカの公文書。そこには、命を軽視し玉砕に向かうという野蛮な日本人観を変え、戦後の占領政策を変える鍵となった報告の存在が示されていた。1943年、北の最果て・キスカ島に残された軍人五千人の救出劇を知力・軍力を結集して決行した日本軍将兵と、日本人の英知を身で知った米軍諜報員。不可能と思われた大規模撤退作戦を圧倒的筆致で描く感動の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 【History】八月十五に吹く風 / 松岡圭祐 / 20231115 / <49/1023> / <424/182571><R>
    ◆きっかけ
    ・日経あすへの話題、丸谷/セコマ会長

    ◆感想
    ミッドウェー海戦や南方に戦線拡大していった話は歴史の教科書でも登場するので知っていたが、北の果てのアリューシャン諸島にあるアッツ島・キスカ島での話は全く知らなかった。玉砕が当たり前の考えの中で、これに抗い、敗戦色が濃くなりつつある中、米艦隊を横目にキスカ島に残る日本兵5200人を救う話、そして一人の米通訳官によって、敗戦後の対日方針が大きく変わったことには、とても驚かされた。少々エンターテイメント性が入っているかもしれないが、まんまと米艦隊を出し抜き全員が脱出した話は、とても痛快でもある。そして、
    ・丸谷氏の解説だと、樋口中将にスポットが当たっているが、現地での指揮を木村長官に託した人選は確かに中尉の想いがあってこそだろう。むしろそれ以上に、引用に記したリーン(ドナルド・キーン)も称賛に値する。映画化望む。

    ◆引用
    ・今こそ払拭せねばならない、日本人を理解不能な野蛮人とみなす先入観を。
    ・接触を過度に恐れる心理が空襲激化につながり、原爆使用許可に至った。

    ===qte===
    終戦後の戦い セコマ会長・丸谷智保
    2023/8/28 14:00日本経済新聞 電子版
    皆さんは樋口季一郎中将をご存じだろうか?

    人道主義に基づいて大勢のユダヤ難民を救い(オトポール事件)、また、北海道を旧ソ連の侵攻から守った人である。

    イスラエルやユダヤ人社会では極めて有名だが、北海道ですらその名を知る人は少ない。私は松岡圭祐氏の小説「八月十五日に吹く風」で樋口中将の存在を知った。もう一つの人道主義的決断である、キスカ島からの5000人もの将兵の無血撤退について書かれたこの小説は、ある種痛快でさえある。アッツ島での玉砕を痛恨の極みとして大本営の玉砕礼賛的考えに抗し、一兵も失わず撤退させた樋口中将の兵士たちを思う一徹は、当時としては驚嘆に値する。

    ソ連のスターリンが千島、樺太のみならず、北海道の占領も考えていたのは有名な話だ。事実、降伏停戦を受け入れた日本に対し、ソ連は8月18日、突如、千島列島占守島に侵攻する。札幌の第5方面軍司令官だった樋口中将は自衛のための戦闘を決断し、守備隊はソ連軍に甚大な被害を与える。これが北海道侵攻を断念させたといわれる。もし簡単に占領されていたら、北海道は南北に分断されていたかもしれない。戦争は決してあってはならないが、我々が平和な北海道で豊かな恵みに囲まれているのも、過去に国土を守ってくれた人々のおかげである。

    昨年、中将の銅像が出身地の淡路島に建立された。私も顕彰会の募金にわずかばかり参加させていただいた。札幌在住のお孫さんは、人道主義に基づいた立派な活動を今も続けておられる。
    ===unqte===

  • アッツとキスカについて全然くわしくなかったので楽しく読めた。史実をいい感じに物語にするのも上手だな松岡圭祐は。軽く調べてみたけど気象士官のあたりのエピソードが史実なのかは確認できなかった。これをきっかけに日本人が狂信的なだけじゃないって米国に思わせたっていうのも面白いシナリオだと思う。本当かどうかはわからないけど。

  • 史実に基づいた1943年の北の最果てキスカ島での救出作戦を描く。
    玉砕等が叫ばれる中、島に残った兵士5,200名を救出したという作戦。
    それは戦時下にあって、人命を大切にする指揮官たちの熱い想いが込められていた。
    気象士官という天気を予測する人物も乗艦した。
    戦争と言えば原爆投下が強烈だが、様々な戦いが繰り広げられ、終戦の玉音放送後もなお攻め立てるソ連軍と戦わざるを得なかった北海道の地。
    八月だからこそ、更に深く胸を打つ。
    あの時代に生き、戦わざるを得なかった人々の苦難と計り知れない覚悟。
    もうあの過ちを繰り返してはいけないと、月並みかもしれないけど、願わずにはいられない。

    2023.8.13

  • 1943年5月、アメリカ領のアッツ島(熱田島)で、物量で圧倒するアメリカ軍の上陸を前にして、3千名近い日本軍守備隊が玉砕。 その2か月後、木村昌福海軍少将らが、キスカ島(鳴神島)の5千名の日本兵の撤退作戦を成功に導いた奇跡の救出劇を、史実に基づき描かれている。 “生きて虜囚の辱しめを受けず” ・・・集団自決も厭わず徹底抗戦する日本人を野蛮な民族と見做し、原爆投下の無慈悲さを示したアメリカ軍、その戦後の占領政策に大きな影響を与えた、日米双方の人物像を浮き彫りにした、著者渾身の筆裁きに落涙す!

  • 登場する軍人の階級、全体が見えてくるまで自分の記憶力ではちょっと時間がかかった。こういう内容はやはり映像で観たほうが早いと思ったけれど堪えて読了するとその後にはやはり読書でしか味わえないしみじみとした想いが後から感じることができた。
    終戦の日が近くなるとTVなどでもドラマやドキュメンタリーが放映される。そして戦争について考えたりもする。読了してまた過去の戦争の自分が知らない事実に近い物語が読めた。本当にこんなことがあったかと考えさせられる。そして現代においても世界のどこかで戦争があるという事実に改めて悲しい想いになる。過去を知り学ぶ人間は同じ過ちは犯さないと信じたい。

  • 第二次世界大戦でのアラスカ半島付近で日本がアメリカ領の島を占領していた話。

    終戦末期は南方戦線の話しか知らず、なんの話かと興味を持って読んでみたが、スゴイ話だった。

    戦争中、アメリカは日本人は人命を軽んじて容易に玉砕という道を選ぶ国民性だと思っていたが、それがとんでもない間違いであることを知らしめる作戦が決行された。

    その北方戦線での人命救出作戦が描かれている。

    海軍兵、陸軍兵、通信兵、郵便局員、新聞記者など各々には独立した人生があり、決して人命を軽んじる国民性ではないことを、アメリカ軍の翻訳兵が知ることとなる。

    これが、実話を基にした話しと聞いて感動した。

    それにしても、戦争とは本当に無益で悲しい歴史だと感じた。

  • こんな撤退作戦だったとは知りませんでした。
    当時の状況がよく想像でき、とても臨場感のある小説でした。
    読んでみて良かったです。

  • 第二次世界大戦のキスカ島撤退作成を題材にした小説。

    アメリカが敗戦国の日本を軍事統治しなかったのは何故か。自爆や特攻などの人命を軽視した攻撃でアメリカから危険視されていたいた為、実効支配の可能性もあり得たはずなのに…。

    『滅ぼされるから抗わねばならなかった、彼らにあったのはそれだけです。…私たちと同じ、嬉しいときがあったら笑い、悲しいときに泣く、普通の人たちなんです。』
    というロナルド・リーンの言葉が日本人として嬉しかった。

    戦争は悲しい。
    大切な家族や祖国を護るために戦った英霊たちのためにも、日本はこれからも絶対に戦争してはならない。

  • キスカ島撤退作戦を題材にした松岡圭祐にしては珍しい作品。
    敗戦の色が濃厚な第二次大戦の末期に、人命を尊重する上級士官が何人もいた事にまずは驚いた。

    それ以上に感じたのは、やはりチームというのはリーダー次第だなぁということ。
    軍隊に限らず、スポーツ、会社などでもリーダーがボンクラだとメンバーは大変な目に遭うし、優れたリーダーに率いられると奇跡も起こる。

    今のうちの会社は…
    暗澹たる気持ちになるから止めておこう。

  • 詠みやすく読ませる文章。
    歴史の謎を解きひろげるいい作品。

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著者プロフィール

1968年、愛知県生まれ。デビュー作『催眠』がミリオンセラーに。大藪春彦賞候補作「千里眼」シリーズは累計628万部超。「万能鑑定士Q」シリーズは2014年に映画化、ブックウォーカー大賞2014文芸賞を受賞。『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』は19年に全米翻訳出版。NYヴァーティカル社編集者ヤニ・メンザスは「世界に誇るべき才能」と評する。その他の作品に『ミッキーマウスの憂鬱』、『ジェームズ・ボンドは来ない』、『黄砂の籠城』、『ヒトラーの試写室』、「グアムの探偵」「高校事変」シリーズなど。

「2023年 『高校事変 16』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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