伽藍堂の殺人 ~Banach-Tarski Paradox~ (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062937559

作品紹介・あらすじ

"堂"シリーズはついにここまできたか 解説 村上貴史(ミステリ書評家)

島と二つの異形建築。"瞬間移動"殺人と謎の教団。新たな"館"本格ミステリ第四弾! 奇跡と不吉の島。"堂"不可能殺人!

謎の宗教団体・BT教団の施設だった二つの館の建つ伽藍島。リーマン予想解決に関わる講演会のため訪れた、放浪の数学者・十和田只人と天才・善知鳥(うとう)神、宮司兄妹。その夜、ともに招かれた数学者二人が不可能と思われる"瞬間移動"殺人の犠牲となる。秘められた不穏な物語がさらに動く"堂"シリーズ第四弾。

感想・レビュー・書評

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  • トリックの発想がえげつなすぎ。孤島の館で発生した密室殺人、不可解な状況で発見される死体。堂シリーズの第四弾!

    本作の主人公である女学生が、孤島で開催される数学講義に招待された。数学者たちが集まる二つの館で講義が始まるが、いつの間にか人が消えてしまい…
    トンデモ館で発生した密室殺人を解決すべく、推理を繰り広げる本格ミステリー。

    よくもまぁこんな館、仕掛けを思いつきましたね。眼球堂、双孔堂、五覚堂と、ほぼありえない建物で困難なトリックだと思ってましたが、一応の現実性はありました。
    しかし、さすがに今回は無理でしょw でもそこが最高!

    相変わらず数学の講釈はついていくのが大変ですが、世界観や登場人物のキャラクター描写は素晴らしい。数学者の鬼才ぶりというか、変態ぶりが萌える。今後の展開が楽しみになる結末もいいですね、本シリーズがますます面白くなってきそうです。

    理系、建築が好きな人には是非お勧めしたいミステリーです。

  • 衝撃!

    トリックは勿論、その他これまでのシリーズを読んできた人にはちょっと信じられない内容。
    ストーリーについては、これ以上語らないほうが良い気がするのでとにかく凄かった、ということだけ。

    理系ミステリーは、これまで自分の中の知らなかった知識を与えてくれる。難しくて全てを理解できなくても、今までとは違う思考方法を見つけることができたり面白いと思ったことは積極的に調べてみたり。

  • ○ 総合評価
     堂シリーズの4作目。このシリーズの解決編から雰囲気が変わる。具体的には,伽藍堂の殺人では,これまでシリーズで探偵役を務めていた十和田只人が犯人。十和田只人が,シリーズの黒幕である藤衛の指示を受けて,伽藍島の管理人だった品井秋を利用して連続殺人事件を実行した。
     善知鳥神が犯人であり,ハウダニットのミステリと見せかけて,真犯人は十和田只人。これはサプライズではあるが,シリーズの探偵役である人物を犯人にするというのは,いわば禁じ手。サプライズはそれなりにある。しかし,驚愕の真相というほどのサプライズではなく,どこか予想できる展開。それは,善知鳥神と十和田只人のキャラクターがややぶれだしている点からも感じられた。
     物語の背景として,リーマン予想やバナッハ・タルキスのパラドックスといった数学のうんちくが披露される。個人的には,こういった数学のうんちくは好き。ただ,こういった数学のうんちくがそれほど面白く描かれていない。特に,リーマン予想は物語の鍵になっている。十和田只人は,ザ・ブックの内容を知るために,リーマン予想を解いたという藤衛の指示に従っており,エピローグでの十和田只人のセリフには「真実に逆らう二人の博士を重力の贄にした。」といったセリフがある。要はリーマン予想の解を藤衛から聞くために,十和田只人が殺人をしたということ。殺人の動機にまでなっている。「リーマン予想は今日,あるいは宇宙そのものの神秘をも明らかにする予想なのではないか,という見方をされることがある。」とまで書かれているが,リーマン予想にそこまでの価値があるということが,物語から伝わってこない。「リーマン予想にはそれだけの価値がある。」と書かれても伝わらない。そう感じさせるような描写がほしいが,そういった描写をするだけの筆力が周木律にはないように感じる。
     伽藍堂の殺人では2つの殺人事件が起こる。トリックは,伽藍島が人工的に作られた浮島であり,平面図上で回転するというもの。このトリックはダイナミックであり,バカミス的であるが面白い。さらに島の回転に併せて,伽藍堂も回転する。もともと,BT教団の教祖である昇待蘭童の瞬間移動の奇蹟のために作られたという設定である。
     十和田只人は善知鳥神が犯人であるという推理をする。その推理の欠陥を宮司百合子が見つけ,真犯人が十和田只人であると指摘する。これがシリーズ物でなければ,納得はしやすい展開だったと思われるが,これまでのシリーズのお約束を打ち破る展開。善知鳥神が犯人・黒幕と見せかけて,善知鳥神がミスディレクション。犯人は十和田只人だという展開。先にも述べたがいわば禁じ手。禁じ手を使っているにもかかわらず,驚愕というほど驚けなかった。淡々と話が進むし,真の黒幕として存在する藤衛の存在が原因だろう。また,これまでの十和田只人の超然とした雰囲気がなくなり,藤衛からザ・ブックの内容,リーマン予想の解を聞こうとしている小物という雰囲気に成り下がってしまった。
     ミステリとしては,伽藍堂が回転するというダイナミックでバカミス的なトリックはそれなりに面白い。シリーズ探偵が犯人という展開もサプライズではあるのだが…十和田只人が単なる小物になってしまっているという展開はマイナス。総合的に見て,★3のデキ

    ○ サプライズ ★★★☆☆
     シリーズ探偵を犯人にしたのだから,もっと驚かしてほしかった。それほど驚けなかったのは,十和田只人のキャラクターが変化し,小物だと感じてしまったからだろう。描き方次第ではもっと驚けたはず。もっと驚ければ評価も上がったのだが…。

    ○ 熱中度 ★★☆☆☆
     それなりに長い作品だが殺人は2つ。数学のうんちくなどで引き延ばしているが冗長に感じた。それほど熱中してよめなかった。

    ○ インパクト ★★★★☆
     伽藍島と伽藍堂の2つが回るというトリックはインパクトがある。シリーズ探偵が犯人という点のインパクトはある。ただ,筆力がないために,そのインパクトを十二分に生かせていない。筆力がある島田荘司なんかが,このプロットで書いていたら傑作になっていたと思う。

    ○ キャラクター ★★☆☆☆
     十和田忠人と善知鳥神のキャラクターがブレはじめている。宮司司と宮司百合子もイマイチキャラクターが定まらない。そのほかの人物は,相変わらずそれなりの学者が出ているが,天才だと感じられない描写。キャラクターの魅力はそれほどでもない。

  • いやぁぁぁぁ、苦労しました。笑
    何冊読んでもこの数学的要素に慣れることがない…むしろ容量としては眼球堂に比べると圧倒的に減ってるはずなんですが。

    今のところ神さんが圧倒的存在すぎて、これどこに着地するんだろう…、と思っています。
    あと最後が衝撃!!まさか!!先生…!!!

    なんかもうこれ、どこに着地するのかまっっっったくわかんなくなりました。

    トリックはさすが。



    @手持ち本

  • 堂シリーズ第4弾。
    いやートリック、エピローグ、面白かった。
    意外なトリック、意外な犯人。
    犯人の動機は勿体ない気がしました。
    あとは神が自然を操るように見えるシーンや実際のトリックの細かい部分はもう少し丁寧でもよかったかなーと。

    今回も数学用語についてネットで調べながら読み進めました。この読み方がすごく面白いし、知的好奇心が満たされ、文系の自分にはとても楽しい!

    次作が楽しみ!大きなストーリーの中でも動きがあり、早く先が読みたい。

  • 堂シリーズの折り返しから読むという罪を犯した感はある。当然だがシリーズで先のものを読むとネタバレされるわけで…しかし大変面白く読めた。天才たちが織り成すミステリーは気持ちが良い。
    確かに数学的には正しいのだろうけど、それでもぶっ飛んだ建造物を使ったトリックは普通のミステリーには無いものだし、嘘だろ…?となる。こういったトリックが生まれる発想力が小説であることを抜きにでも本当にすごい。
    今手持ちは本作のひとつ前の眼球堂。これも楽しみになった。

  • ■奇跡と不吉の島ーー"堂"不可能殺人!

    謎の宗教団体・BT教団の施設だった二つの館の建つ伽藍島。リーマン予想解決に関わる講演会のため訪れた、放浪の数学者・十和田只人と天才・善知鳥神、宮司兄妹。その夜、ともに招かれた数学者二人が不可能と思われる"瞬間移動"殺人の犠牲となる。秘められた不穏な物語がさらに動く"堂"シリーズ第四弾。

  • 数学者の講演に招待された宮司兄妹(兄は招待されてないけど)たち。その舞台はBT教団の施設がある伽藍島。そこで起こる不可解な殺人事件。

    毎度のことながら、こんな建物実際にあるのか?!っていう奇天烈トリックだけど、そこが毎回楽しみになってくる。現実に作れるんだろうか…?

    なんで全員一緒に探しに行くのか、二手に分かれて探しに行けばいいのでは?というツッコミしたくなる感じだったけど。
    そして、少しずつ明かされていく宮司兄妹の謎も気になる。

  • えぇ……。そんな展開ありかよ……。    
    やってくれたなぁ周木律。          
    シリーズの折り返し地点にして物語の転換点となる第四作。     
    堂の仕掛けを楽しむシリーズ第四弾。

  •  堂シリーズ四作目。 前作のラストにて物語の重要パーソンになりうる数学者・藤衛が逆転無罪判決を受け出所、そこからの不穏流れが今作の事件にも漂っている。 十和田、善知鳥、宮司姉妹、それぞれの過去や因果を仄めかす本作は一つの事件としては勿論解決を施されたがシリーズ作としてはまだまだ先の見えない、寧ろ一層見えなくなってきたのが今回の伽藍堂での事件である。 

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著者プロフィール

某国立大学建築学科卒業。『眼球堂の殺人』で第47回メフィスト賞を受賞しデビュー。本格ミステリの系譜を継ぐ書き手として絶賛を浴びる。他の著書にデビュー作を含む「堂」シリーズ、『猫又お双と消えた令嬢』にはじまる「猫又お双」シリーズ、『災厄』『暴走』『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』『アールダーの方舟』『不死症』『幻屍症』『LOST 失覚探偵』『死者の雨‐モヘンジョダロの墓標‐』『土葬症 ザ・グレイヴ』『小説 Fukushima 50』『あしたの官僚』『ネメシス3』『楽園のアダム』がある。

「2023年 『WALL』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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