その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 286
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062938532

作品紹介・あらすじ

第16回 本格ミステリ大賞候補
ミステリが読みたい! 2016年版(早川書房)
2016本格ミステリ・ベスト10(原書房)
このミステリーがすごい! 2016年版(宝島社)
週刊文春ミステリーベスト10 2015年(文藝春秋)
読者に勧める黄金の本格ミステリー(南雲堂)
キノベス!2016(紀伊國屋書店)

次々とランクインを果たした注目作がついに文庫化!

山村で起きたカルト宗教団体の斬首集団自殺。
唯一生き残った少女には、首を斬られた少年が自分を抱えて運ぶ不可解な記憶があった。
首無し聖人伝説の如き事件の真相とは? 
探偵・上苙丞(うえおろじょう)はその謎が奇蹟であることを証明しようとする。
論理(ロジック)の面白さと奇蹟の存在を信じる斬新な探偵にミステリ界激賞の話題作。

感想・レビュー・書評

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  • 多重解決モノ
    序盤のたかが数十頁で語られる事件について、とんでも仮説を提唱する刺客を、論証でばたばたとなぎ倒す。
    多少いいがかり?な仮説トリックを否定せず受け入れ、
    矛盾を論ずるのは痛快。

    理系の実世界の論文や数理検証も日々このような形態で、
    論述・証明しているのだろう?
    理系サイエンスを感じました。

    中国や古典芸術等の博識な知識は難解。
    節々の会話に混ぜる主人公を通じて作者のナルシストを感じる。
    あ、東大卒なんですね?お見逸れしました…
     
    読んで矛盾を納得すると、頭良くなる錯覚を覚える
    多重解決面白い!

  • ミステリーの新機軸! 起こりうる可能性を全て構築して挑む論理バトルがスゴイ #その可能性はすでに考えた

    閉ざされた山村で発生した集団自殺事件、一人生き残った女性が探偵のもとに訪れる。当時幼かった自分が殺人を犯してしまったか覚えてないのだ。探偵は奇蹟と称して女性の不実の証明をする。

    ミステリーでの表現を変えてしまうような、芸術性が高い本作。素晴らしいっ
    キャラクターも強烈で、そのままアニメで登場するような面々。さらにそんなキャラクターたちが、論理バトルですよ。これは面白いに決まってる。

    ストーリーも良くできていて、様々な犯行の可能性を提示していくにも関わらず、次々とロジカルに可能性を否定していくという構成。いくつも説得力のある解法を考えねばならず、よくもまぁこんな作品をつくりましたよ。

    いくつもある仮の真相についても緻密に組み立てられていて凄すぎる。ただ読み手としてはついていくのにやっとなので、理解するのに脳みそのエネルギーを使ってしまうのは否めません。糖分をしっかりとって挑みましょう。

    読んだことのないミステリーに出会いたい方にはオススメです!

  • 「〜である可能性」を論破していく爽快感。
    最高のロジックエンターテイメント、ここにあり!

    新興宗教の村で起きた、血なまぐさい事件で起こった「奇跡」が「奇跡」であることを論証していく物語。
    これがただ論証していくだけでなく、「〜である可能性」を仮説として論証を崩そうとする人の対立しながら進行していくのでハラハラドキドキ感も楽しめます。
    面白いポイントの1つに、主要な登場人物に中国の人が出てくるので、中国単語が飛び出してきます。
    中華の雰囲気が好きなので、お気に入りポイントです。

    6章からなっていて、だいたい各章「仮説編」と「論証編」の形で構成。
    「仮説」でも納得してしまうところを、「論証」で見事に論破されてしまう爽快感!
    読む手が止まらなくなるかも。
    ご注意を。

  • 面白かった!
    山奥で起こったカルト教団の集団自殺の中で発生した不可解な一つの謎。それに対して奇蹟を信じる探偵が、その謎が奇蹟であることを証明しようとする、というあらすじ。
    一般的に推理小説では、不可能に見える事件に対して探偵が可能であることを証明しようとするのに対して、本作では、探偵自身が不可能であることを証明しようとしている。
    まさか、そういう設定に持っていくようなミステリがあるなんて思ってもいなかった。
    登場人物たちのユニークな設定も相まって、本格ミステリとしてだけではなく、エンタメ小説としても、とても楽しめた作品だった。

  • これはこれは、物凄い作品でした!!
    何度もわざと電車を乗り過ごしてしまったくらい、白熱する推理の応酬から目を離せずにのめり込んでしまった。

    いわゆる『毒入りチョコレート事件』型の、一案件多探偵多推理方式のミステリ小説。

    隙を生じぬ何段構えにも周到に用意された舞台設定、其々に魅力を持った主要人物達、そしてなんと言っても、披露される度に思わず膝を叩きたくなる推理展開の連続。
    今度こそもうダメだ…ウエオロ(注・主人公の名前)終わった、とこちらも思わず天を仰ぎたくなる落胆からの「その可能性はすでに考えた」と返す刀の決め口上!
    ある種のターン制ヒーローショー的な段取りが本当にワクワクするし痛快。

    一見何でもアリなのかな、と思いきや全くそんな事はなくて、定められたルールに則って齟齬を来さず紡がれる推理劇がまさに「奇跡」。


    よもやシリーズ物(というか前日譚が存在する話)だとは思っていなかったので、黒幕とウエオロ探偵との因縁やフーリンとの関係性については実際、少々置いてけぼり気味だったのは残念といえばそうなのだが、それ以上の温かく優しく美しい大きな満足感がありました。

    井上真偽先生の他の作品も是非読んでみたい。


    10刷
    2023.1.22

  • 読んだつもりになっていて、読んでいなかった本。井上真偽さんの作品は初めて読んだ。ドラマ化された『探偵が早すぎる』の原作者という方が通りがいいかもしれない(どちらも未見ですが…)。

    まず設定がぶっ飛んでいる。本書の探偵・上笠丞は謎解きはしない。しないというよりは、謎解きのベクトルが異なっている。彼が行うのは、その謎が奇蹟であることの証明である。そのためにはあらゆる可能性を想定し、かつそのすべてを論理的に否定しなくてはならない。当然、不可能の証明だが、本書のタイトルは、彼の決め台詞に由来する。

    今回の依頼は、山奥に隠れ住むカルト教団で起きた惨殺事件の解明。ただ一人生き残った少女は、首を斬られたはずの少年に助けられた記憶があるという。果たしてそれはトリックか、奇蹟なのか。上笠は、本検察、中国の女マフィア、天才少年の繰り出す推理をすべて否定できるのか。

    作り物めいた美形で奇人の主人公。決め台詞どころか決めポーズまであり、おまけにオッドアイ。定番のバチカンまで登場するのだから、お腹いっぱいである。この手の周辺情報だけで、付いていくのに疲れてしまった。

  • 頭脳明晰で博覧強記、なおかつ眉目秀麗な主人公・上苙丞が難攻不落かつ荒唐無稽な問題に立ち向かうが、権謀術数を駆使する謎の敵が彼の前に立ちはだかる。
    才気煥発な彼は快刀乱麻を断つ勢いで数々の敵を駆逐し、八面六臂、獅子奮迅の活躍を見せる。

    奇妙奇天烈、摩訶不思議な小説だった。

  • ’21年11月17日、読了。井上真偽さんの小説、初。

    凄い!「まだこんな発想があったのか⁉」との宣伝文句そのまま!完全に、持っていかれました!奇跡の存在を証明しようとする探偵とは!

    本作も、最近読んだ「人間に向いてない」も、「medium」もそうでしたが…今まで知らない作家さん達の、世で評価の高い作品を読んで…凄いんだなぁ、と、本当に思いました。よく考えつくなぁ、と。読書という趣味の世界は、読んでも読んでも、また新しい出会いがある!凄いですね。

    本書での最初の対決の章(第二章)の、フーリンの「殺殺殺殺殺殺殺…」という心の声に、大笑いしてしまいました!主人公ウエオロよりも、フーリンが大好きに!二人の面白い関係、とても魅力的です!

    井上真偽さん、他の作品もアタックしてみようと思います!いやぁ、楽しかった!

  • 山村で起きたカルト集団の斬首集団自殺。その事件で唯一生き残った少女が、青髪の探偵上苙丞を訪ねる。「自分は人を殺したかもしれない。」と。
    事件のあらましと首を切られた少年が少女を抱えて運ぶ記憶について聞いた探偵は、その謎が「奇蹟」であることを証明しようとする。

    探偵と刺客の論理的応酬が面白い作品だった。事件現場に居合わせたわけではなく、過去に起きてしまった事件と謎について、少女の記憶と資料のみを頼りに、どんな可能性も論理で破るというスタイルが斬新。平凡な一読者としては、いちいち最初の章を読み返さないと追いつかなかったのが現状だったけど。

    登場人物のビジュアル、キャラクターや刺客の繰り出すトリック名が必殺技のような感じで、本格ミステリながらラノベのようなノリで楽しめた。

  • 宗教団体の集団自殺事件の生き残りという女性の証言をもとに、事件の謎を明かす話。

    探偵が謎を解いていく、というよりかは、
    事件のトリックを語る4人の挑戦者(?)に対して探偵がその可能性を否定していく

    それぞれのトリックについて、細かくわかりやすく説明されていて読みやすかった

    探偵にお金を貸している相棒的な存在の女性"フーリン"の短気で喧嘩腰な地の文がテンポ良くよかった

    2022年1月5日

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著者プロフィール

神奈川県出身。東京大学卒業。『恋と禁忌の述語論理』で第51回メフィスト賞を受賞。
第2作『その可能性はすでに考えた』は、恩田陸氏、麻耶雄嵩氏、辻真先氏、評論家諸氏などから大絶賛を受ける。同作は、2016年度第16回本格ミステリ大賞候補に選ばれた他、各ミステリ・ランキングを席捲。
続編『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』でも「2017本格ミステリ・ベスト10」第1位を獲得した他、「ミステリが読みたい!2017年版」『このミステリーがすごい!  2017年版』「週刊文春ミステリーベスト10 2016年」にランクイン。さらに2017年度第17回本格ミステリ大賞候補と「読者に勧める黄金の本格ミステリー」に選ばれる。
また同年「言の葉の子ら」が第70回日本推理作家協会賞短編部門の候補作に。
他の著書に『探偵が早すぎる』(講談社タイガ)がある。

「2018年 『恋と禁忌の述語論理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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