小説の神様 (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062940344

感想・レビュー・書評

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  • 「小説を書くこと」と
    「小説を読むこと」は違う

    「小説を読むのが好きな人」なら
    楽しめる内容だと思う。

    どの作者も最初は、初めから万人のために書くわけではなく、誰かのために書き始めるのだろう。
    情熱の火で暗闇を照らして、
    自分を信じて前に進むしかない。
    どこかに、誰か伝わる人がいると
    信じてひたすら進むしかない。

    情熱の火が消えたら
    暗闇の先も見えず、何もできない。

    好きなモノを「嫌い」にしないと
    やりようがない気持ちってのが
    痛い程わかる…
    自信がなくなり、成功している方法に飛びつく、自分を見失う。
    小説家としてデビューしたものの
    ネット上のレビューで酷評
    売上部数も伸び悩む状態
    物語が書けなくなってしまった主人公は、その火が消えてしまっているところから始まる。

    そして、同時期にデビューした天才作家であり頭脳明晰、誰からも好かれる顔を持つが美少女作家と出会い、二人で作品を創ることになり…

    「ボーイミーツガールモノ」で
    「作家モノ」と分類することができる。
    主人公視点の描写は男子高校生のアレ
    でヒロインに「卑猥」と叱られても仕方のない感じでしたけど、小説への想いは二人ともとてつもなく熱い。

    プロの作家として見てきた「現実」と物語がもたらす力を信じる「理想」がぶつかり合いながら、前に進んでいく
    二人の熱量に、「小説を書きたい人」なら、読むのが苦しい、辛い…

    でも、更に心の火がもっと燃えるかもしれない。そんな物語。

    ・苦労して書いた作品も、その数分の一の時間で読んだ読者の評価に左右されてしまう。
    普段、このレビューもそうですが
    好き勝手書かせてもらってます。
    その弊害にも触れるし、出版業界の問題にも触れる。押さえるところはちゃんと押さえていて素晴らしい。

    同じ講談社タイガの「絶対小説」
    の混沌ぶりも「創作の想いの爆発」という印象を受けたけど、この作品も二人とも想いが破裂し合いつつ、新たな希望を膨らませてラストに向かって行くのが苦しいけど心地良かった。

    九ノ里は、いい奴…
    成瀬ちゃんも、いい子…
    主人公の妹は、痛いオタク…

  • 千谷くんの心情とその描写が、読んでいてとても胸を締めつけられました。

    小説家の仕事の苦悩が細かく描かれていました。
    小説や物語を読む時、大切に読んでいきたいと改めて思いました。

  • 初めての相沢沙呼作品でしたが、相沢さんの作品というのはこんな感じなのでしょうか?
    わたしには合わなかったようです。

    主人公の高校生作家、千谷一也のウジウジさが後半まで続くので、なかなか読み進められませんでした。

    映画にもなっているようなので、読まれる方の好みで人気のある作品なんでしょうね。

    いいな〜と感じた登場人物は九ノ里ですね。

  • う~ん、これは少し、構成で損しているのではないかと思いました。

    青春ものということもあるかもしれないが、文体が時折、軽い感じになるのが気になる上に、とにかく負のオーラを纏った主人公に感情移入出来ない。
    と思ったら、急にヒロインと意気投合みたいな感じで、第三話を読み終えた時点で、読むの止めようかなと本気で思いました。

    しかし、第四話に入ってからの急展開で、雰囲気がガラリと変わり、軽い文体もほぼ無くなり、物語の世界に一気に入り込めました。

    ちなみに、私は「小余綾詩凪」が「千谷一也」に文庫本を叩き込むシーンにグッときたのですが、この時点では、まだ小余綾の真相を知らなかったので、それも含めれば、また違った感動を得ることになります。

    そして、この作品で印象的だったのは、小説を書くことと、自分自身を好きになることや認めてあげることが、繋がっていること。もちろん、小説を書くことの出来る素晴らしさや大変さも実感したのですが、誰の中にも伝えたいことや想いがあること。そこには、辛いことや苦しいことや、しょうもないこと、何でも含めていいんだよ。他人が何と言おうが、あなたの中から湧き出してくるもの、全てがあなた自身の物語として認めていいんだよ。と言われているようで、自己肯定の大切さを感じました。

    なので、出来れば、最後まで読んでほしいと思います。

    それから、主人公の一也の序盤の感情移入のしづらさは、作中作なのかもしれません。物語の中で一也が、自分みたいな主人公の物語なんて、誰も読みたくないだろうと言っていたことに対して、相沢さんが意図的にやっているのかも。

    もちろん、小説の素敵なところが、この作品に書いてあることだけではないとも思いますが、やはり、青春を謳歌している方々には、共感出来る点が多いのではないか、とは思います。



  • 「辛くて、辛くて、たまらない……。わたし、今まで、小説って楽しいから書くものなんだと思っていました。どんな作家も、書くのが楽しくって仕方なくて、だからあんなにも楽しい物語が生まれているんだって。教えてください。千谷先輩。物語って、どんなふうに生まれるんでしょう──」

    売れない高校生作家と美少女人気作家のふたりが、一冊の合作を作ろうとする物語。
    タイトルとあらすじだけ見て、「男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 -Time to Pray-(時雨沢恵一)」みたいな話かなと思いましたが違いすぎた。


    これは、魂の叫びだ。
    全編が、子どもたちの慟哭で出来ているような、そういう小説だ。


    映像化作品特集から、凄く熱い感想をhttps://booklog.jp/users/heavycandy/archives/1/4062940345拝見して、読んでみました。ありがとうございます。


    主人公は売れない作品を書き続けることに疲れて、でも物語を書きたくて、何度も何度も倒れ、立ち上がり、泣き言を言う。ウダウダして前に進めない主人公を読みたいだろうか?そう問いかける主人公を読む我々はまさに今、ウダウダして前に進めない物語を読んでいる。

    それが辛くて幾度も本を閉じてしまう。
    読者はもちろん、彼が最後には書けるだろうと思っている。だからページを捲ることが出来る。

    ある程度本を、特にヤングアダルトジャンルの本を読んでいる人は「売れ筋」の小説が定形化して似通ったものになっていることはよく分かっていると思うけど、それ以外の本も是非売れて、欲しいなと…思うのです。

    小説の神様って、なんでしょうね。

  • 一也と詩凪の掛け合いが、見ていて微笑ましかったです。スランプに陥る作家、千谷一夜の作品をファンとしていつまでも待ち続けてくれる編集の河埜さんと一也の妹、雛子ちゃんの存在が温かかった。
    ラストで一也が気づく、「小説とは、◯◯だと思う」のセリフにグッと来ました。シリーズの続きも読んでいきたいです。

  • 後半、、というよりほぼ終盤の第五話からようやく面白くなった印象。主人公は内省が多い上にやたら卑屈で自己評価が低いので、気持ちよく読み進めることが困難でした。その調子でまるまる四話分、ほぼ転調もなく続くのでなかなか苦痛でした。もう少しサクッと読めるかなと思っていたので、予想外に体力を使った感じです。
    おそらくわざと描いているのだと思いますが、表現が回りくどい上に結論に裏切りがないので、ただ冗長に感じる描写が多いように感じました。それが私にとっては合わないなと感じるポイントでした。
    また、直感的に読めない名前を主要人物に採用されているので、思い出すために何度も読み返さなければなりませんでした。そのため、スムーズに話に入り込めなかったです。これは私の記憶力の問題も大いにありますが、海外小説でもないのだから、人の名前くらいもう少し覚えやすいものにしてほしい。

    とにかくこんなに苦痛ポイントがあったのですが、結果的に面白かったという不思議。

  • 小説を書く人が何人か出てくる。
    何度も何度も小説をなぜ書くのか、書いてどうなるのか、書いてどうしたいのかが問いかけられる。現実問題、売れないとお金にならないし。売れそうなものを書けばいいのか?
    小説を読むのが好きだし、さらっと読んでいるが、作者の本音の一部を登場人物に言わせてるような気がしてくる。読後感は、よかった。

  • いかに理想とされる人でもやはり現実は容赦なく何かしらある。それでも前に進む。
    …しかし主人公がウジウジ…グチグチ?してんのがちと長く、思わず流し読みしてしまった…。

    最後は前向きで良かったです。

  • 正確に書くと星3.1。
    小説家が主人公で、主人公が自分の仕事に思うことの節々に現実感があって、もしかして作者が思っていることなのかなと思って読んだ。
    ヒロインの性格の変わりようにちょっと違和感を覚えたが、これは人によるかもしれない。
    2人の小説がその後どうなったのかと、主人公の小説の変化は書いていて欲しかった。

著者プロフィール

1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化された。本作で第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング第1位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリー、2019年「SRの会ミステリーベスト10」第1位、の5冠を獲得。さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となった。本作の続編となる『invert 城塚翡翠倒叙集』(講談社)も発売中。

「2022年 『medium 霊媒探偵城塚翡翠(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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