風は青海を渡るのか? The Wind Across Qinghai Lake? (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062940368

作品紹介・あらすじ

聖地。チベット・ナクチュ特区にある神殿の地下、長い眠りについていた試料の収められた遺跡は、まさに人類の聖地だった。
 ハギリはヴォッシュらと、調査のためその峻厳な地を再訪する。ウォーカロン・メーカHIXの研究員に招かれた帰り、トラブルに足止めされたハギリは、聖地以外の遺跡の存在を知らされる。 
 小さな気づきがもたらす未来。知性が掬い上げる奇跡の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 聖地。チベット・ナクチュ特区にある神殿の地下、長い眠りについていた試料の収められた遺跡は、まさに人類の聖地だった。ハギリはヴォッシュらと、調査のためその峻厳な地を再訪する。ウォーカロン・メーカHIXの研究員に招かれた帰り、トラブルに足止めされたハギリは、聖地以外の遺跡の存在を知らされる。小さな気づきがもたらす未来。知性が掬い上げる奇跡の物語。
    「裏表紙に記載」

    読み進めるうちにドキドキが止まらなくなる.哲学的.何処へ行くのだろう.そしてあの人へとつながっている証拠がポロポロと出てきて、さらにドキドキが加速する.
    途中、ハギリ博士がタナカさんに「彼女(ウグイ)は人間です」と言った言葉に、ハギリ博士の考え方だと彼女は人間なんだなと思った.

  • ただの想像ですが、森博嗣にとって現代は、彼が何十年も前に予測していたことの起こっている(その程度に差はあれど)時代なのではないかと思います。
    そして、このWシリーズは、彼からの、彼らしく彼らしくない「お節介」なんじゃないかなとも思ったりします。

    こんなことが起こるよ、こんなことは問題ではなくなるよ、もっとフォーカスすべきはこちらの方向だよ…と。

    作中で「そんな時代もあった」「それらが問題だったこともあった」「その懸念が蔓延していた頃もあった」と過去形で語られるたびに、なんだか、自分もずっと先に生きているような気持ちになります。
    ヴォッシュと一緒に、今現在、自分が体験していることを「懐かしく」思い返すような気持ち。

    Wシリーズに通して言えることですが、水面下で何かが動いていることを知りつつ、穏やかな表面を眺める感覚が強いです。水面下で起こっていることについてはいずれ対処せねばならないが、それは今ではない。無視をするわけでも、楽観しているわけでもないけれど、意識的に手を出さない。

    そんな、張り詰めた弦楽器が弾かれるのをじっと待っているような気分が、ふいに落とされる爆弾で、毎度毎度、息が止まりそうになります。
    今回は、メールに書かれた彼女のフルネームを読んで、思わず本を閉じて天を仰ぎました。

  • Wシリーズ3作目。前作で見つかった「遺跡」とその土地の人に対しての調査が始まる。その過程でウォーカロンメーカー側との接触がありそちらから別の遺跡の存在を知らされる。2つの遺跡の繋がりは?あの彼女との関係は?今回学者同士の対話が多くてハギリ博士が生き生きしてる。本来これだけでいきたいだろうにお疲れ様です。感情移入しやすかったので後半の気付きの部分は一緒に興奮してしまった。調査の過程で人間としての条件が提示されているけど進化していく過程で人間はその条件を手放していきウォーカロンは獲得していく。人間という認識は何が元なのか。曖昧さがさらに増し危うい。全てはあの彼女が敷いたレールの上を進んでいるのか先が気になる。

  • Wシリーズ3作目。
    森ファンにはたまらない一冊であること,間違いなしの今作。

    最初のページからグッときた。この一文……「ランダムに小石があって,フラクタルに雑草が生えている」。こんな文章を書けるのは森さんしかいない!なんとなくお気に入りの文章です。

    物語はいよいよ核心へと迫って行ってる……という印象を受ける今作。ヴォッシュ博士とハギリ博士の議論が熱い。読んでいると,自分までその問題を論じている学者の一員になってしまう錯覚を覚えるくらい,二人の議論に没頭して考えた。
    最後のハギリ博士の発想。これも読み手も一緒に興奮してしまう。
    あとは,カンマパの本名,そして最後の一文。これはファンにとっては「えーーーっ!?」と叫びたくなる言葉でした。百年シリーズ3作目とほぼ同時期に出された理由がよく分かる。

    さて,この作品を楽しんだところで次は百年シリーズ3作目「赤目姫の潮解」を読みます。あぁ、楽しみだなぁ♪

  • 終わり方よ…後半の急展開にもドキドキしたけど、それより最後〜!!めっちゃ気になる終わり方する。

    砂で描かれた曼荼羅、迷宮百年の睡魔?関係ない?やっぱり百年シリーズ読み返さないとかな。

  • 「Wシリーズ」第三作。
    チベット・ナクチュ特区にある神殿の地下を、ハギリはヴォッシュらと、調査のため再訪します。
    ウォーカロン・メーカの研究員に招かれ、トラブルに足止めされたりしながら、ハギリは遺跡の存在を知ることになります。
    そしてさらに出会った人々や、そこにまつわるウォーカロンの秘密とは。
    ますます面白くなってきています。

  • ウォーカロンは子孫を残さないから歴史がない、そんな環境下にあって人間のような意識が生じるのか。
    「歴史がなければ、神もない。となれば、人というものの概念が生じないのではないか。人という概念こそが、意識の源であるはずだ。アダムには意識がなかった。意識が生まれたのは、イブからということになる。ただ、彼らには、神はあった。」
    人以外は「神」という存在を持たない。神を信じる者が「人間」と定義するならば、ナクチュの人々は確かに「人間」だ。「口にすれば果てる、目にすれば失う」と信じるのだから。そしてナクチュの人々は子孫を残す事ができる。ただハギリ博士は、科学が進んだ世界(ここでは日本の我々といってたかな?)を生きる私達も神を信じていた「時代もあった」と話している。
    そして現代を生きるハギリ博士達は、生殖機能を失った。進化して手放した、と言うべきなのかもしれないけれど。文頭に戻ると、子孫を残さないから歴史がない=人間のような意識がないと言うならば、進化したハギリ博士達は「人間」ではない。
    だからハギリ博士の言う「ウォーカロンが生きていないなら、人間も生きていない」につながるんだなぁ。

    ウォーカロンの頭脳に起こる突然変異の気まぐれ、それが人間になるあと一歩。その気まぐれが今回の暴力を生み出した、その事実を「人間」は認められるだろうか。

    「正しいとは何か。我々の頭脳が下す評価として、特徴的なものです。しかし、けっして、自然界に存在する一般的な概念ではない。」
    正しさを追い求める先に、崩壊や絶滅、しか見えてこないのだが。

    途中、デボラ?ん?Fの?ってなったけど全然思い出せなかった。そっちも読み返した方がいいのかなーでも長いからな…

  • なんとなく読後感が良いのは、
    この巻の終わりが比較的希望に満ちているから。

    物語の進行は遅いしこれまでと何も変わらない。
    でも読後感が良い。面白い小説ってそんなものだろうか。

  • Wシリーズ3作目.「ウォーカロン」と呼ばれる人工細胞で作られた生命体が普及したいつかの未来の物語.

    研究者視点の発想と思考回路に脳みそを叩かれる.政治的な能力でなく純粋に頭の良い研究者は穏やかで信用できるという印象.今回は人間もウォーカロンも生き生きと描かれていてその場面だけなら平和でもある.

    ハギリ博士とウグイも良いコンビだと思うよ.表紙にハギリ博士とウグイの会話が入っていることに初めて気付いた.

    *2019.5 *2020.4

  • Wシリーズ、第三作。また全貌が少し明かされました。ナクチュは百年シリーズのあの宮殿があった場所のようだ。区長のメールを読んだ衝撃は凄かった!!彼女、真賀田四季博士は一体どこにいるのか?気になって夜も眠れません…嗚呼。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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