バビロン 3 ―終― (講談社タイガ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062940726

作品紹介・あらすじ

「死の自由」は正義なのか。最悪の女・曲世愛の向かう先は――世界。今、世界の終わりが、始まる。
“新域”にて施行された「自殺法」の火は、海を越え、世界に広がった。合衆国国務長官テイラー・グリフィンは、広がる「死の自由」と、その背後に潜む闇と対峙する。

感想・レビュー・書評

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  • 『The thinker』
    私も考えることはとても大好きだ。そして、とても重要不可欠なこと認識している。人が人である為に人は考え続けなればならない。それが人に与えられた使命なのだから。では誰に与えられた使命なのか? 私の思考は出口を探して歩き続ける。

  • 冒頭から、これは2巻の続きなの?と思うほど、場所も登場人物もがらりと変わっていました。
    日本国内の新域で始まった波紋は、世界をも飲み込んでいくことになります。
    スケールが大きくなった舞台で、綿密に積み上げていく展開に多少の苛立ちを感じつつも、読み重ねていきます。物語の終盤に差し掛かると、急発進するスポーツカーのような加速が加わり最後のページに向けて怒涛の展開に立ち会うことになりました。

    本書には続きがあるかもしれないと思わせる終わり方です。

    今まで読んだことのない類の小説でした。著者の野崎さん、もしも、続きを考えているいらっしゃるなら気長に待っていますので、ぜひ前向きにお考えください。
    さまざまな感情が揺さぶられる小説であり、私の好きな小説になりました。

  • 前作の終わりで思考実験は死生観から善悪になるのだろうと思っていたが、中盤まで死生観の考察が続く
    そこから善悪に転換する部分は論理的なカタストロフを感じた
    議論の描写がメインだが非常にエキサイティング

  • 「自殺法」海外へ、といった内容の第3部
    しかし、エンタメとしての勢いはガクッと落ち、広まる自殺法も結局超能力頼りっぽい所は強引すぎて少しがっかり
    が、長い長い前置きを越えてからの、期待していた善悪についての議論は圧巻
    難しい問いにこの作品なりの答えを出した事も大いに評価したいし
    その上で「甘美なる死」に向かう理由についても納得のいく結論があり素晴らしい
    ただ、この答えであれば何故前巻のラストで曲世は自ら殺しを行ったのか?
    あれがセンセーショナルなシーンを描きたいだけであったなら個人的には残念
    つづくのかは気になるところ

  • この章がどうして我々にとって残念なのかと言うと、自殺を大真面目に議論したところで稀代のヴィラネス曲世愛との対決と排除とはなんら関係がないことが、前章までで明らかになっていたからだ。また前章の衝撃的な幕引きを経た以上、次に必ず正崎善の家族が狙われることや、その展開が訪れるまでは単なる茶番か目眩しで実質停滞同然であることも我々は見透かせてしまえたからだ。

    だから我々は、おそらく作家がそれなりに真剣に考えて練ったであろう、この章の大部分を占める他国民の思考と議論について、まともに取り合うことなく、活字を然程拾わず、おざなりに受け流して最後まで滑っていけてしまったのだった。(漫画・映像媒体の特色については触れない)ゆえに主要人物の悲劇的な最期にも当然ろくろく没入出来ないし、これで最後の引きが初めから当然視されていた範疇を出ないとなれば、竜頭蛇尾の謗りは免れないだろう。

    前章最終場面で曲世愛は初めて例外的な行動をとっており、それは曲世愛が初めて見せた隙でもあったはずなのに、肝心の正崎善がこれを奇貨とし得ないまま、石に齧り付くような地道な捜査に執念深く入れ上げることもなく、ただの大統領の話し相手……はっきりと言えば無策で無能で無価値なままだったことも物語を腰砕けにした。あの弱腰では曲世愛ほどのヴィラネスでなくても嘲笑われてしまう。なんのために渡米したのか。曲世愛におそれをなして家族をおいて逃げたも同然なのにそんな自責も出来ない死に体同然の衰弱には同情するが、「正崎善が復活しない間に世の中では大変なことが起きていました」と省略できてしまう程度の話がこの章である。我々は次回に期待するしかない。

  • 日本の“新域”で発令された、自死の権利を認める「自殺法」。その静かな熱波は世界中に伝播した。新法に追随する都市が次々に出現し、自殺者が急増。揺れる米国で、各国首脳が生と死について語り合うG7が開催される! 人類の命運を握る会議に忍び寄る“最悪の女”曲世の影。彼女の前に正崎が立ちはだかるとき、世界の終わりを告げる銃声が響く。超才が描く予測不可能な未来。

  • えっ……まさか最終巻ではなかったとは…いやだってー終ーだし。最終巻かなと…思うじゃないですか?
    まあ「考える人」による善悪の結論でこのサブタイトルは納得できますけども!むしろ最終巻でこのサブタイトルじゃダメだなってなりますけども!いやほんと終わらなくてよかったです…
    うむ…やっぱり人は考え続けなくてはならんのだなあ…。
    しっかし愛さんは…うーむ…そんなに「悪いこと」が好きならもっと飽きっぽくなってはいかがでしょうか?妙に一途だよね…それが愛なのかな……

  • タイトルに「終」とあったので、これが最終巻だという先入観を持って読み始めてしまった。
    世界の首脳によって意外とあっさり問題解決?……と思いきいや。それで済むわけがなかった。盛り上がる展開だっただけに、落とされる感覚が凄まじい。

  • 読み終える。タイトルを見直す。そして、絶望が背筋を襲う。

    なんだこれは、哲学なのか、宗教なのか、野﨑まどはどこに向かっているんだ。最後の30ページほどで味わわされる、知的快感と嫌悪感。これだけ心をぞわぞわさせる読書は久しぶりだ。

    日本で提唱された「自殺法」の思想が世界に広がりつつある中、対応を検討するサミット首脳たち。その思想実験とも言える過程は、考えることが好きな人間として軽い興奮すら覚える。そしてそれをすべて塗りつぶす曲世愛という“存在”。神でも悪魔でも良いが、圧倒的な存在とは人をここまで打ちのめすか。

  • 政治の話になると読むペースが落ちてしまう。アニメはこの政治部分をほぼカットしてたから楽しめたのかも。楽しめないのは自分のせいなので、悔しいなぁ。
    今回愛ちゃん、全然出てこなかった。私的にこの物語の主役は善と愛ちゃんだったから、もっと2人の絡みを見たかった。愛ちゃんの頭おかしい部分をたくさん見たかった。
    中学時代の愛ちゃんとか、今回の騒動に加担する前の愛ちゃんとか、騒動後の愛ちゃんとかのサイドストーリー本出て欲しい。。切に。

  • 野﨑まどの作品には哲学がある。

    一作品ごとにテーマが設定されて、その概念であったり事柄を深掘りして本質を問い質す。そして必ず作者なりの解答や見解を示すという点で、哲学であるといえる。

    各国の首脳が善悪について論じ合う展開は、それぞれの国民性も相まって一旦の結論に達したかと思いきやの暗転。

    一体この作品はどこに向かうのだろう。
    続きを出してくださいお願いします先生。

  • 背ラベル:913.6-ノ-3

  • 正崎さんは生かされて、次は家族の惨い姿を見せられるのかと思うと続きを読むのが恐ろしいです。終わるのが好きならはやく自分を終わらせてくれませんか。

  • いつの時代も概ね正しいのは子供の方だ。大人はわかったような気になっているが、成長とは時間をかけてくもることでもある。

    そう。我々は見えなくとも、いい。何が見えたのかを後から教えてもらえればそれでいい。

    生物が生きること。無機物が存在すること。何かがあり、それがあり続けること。なんでもいいんだ、ただ続けば、それていいんだ。僕らは「続く」に「よい」という名前をつけていたんだ。

    悪いって「終わる」ことよ。あなたは善人、続くが好きな人。私は悪人、終わるが好きな人。


    終わりかたこれかー!アニメとは違うな。しかし、原作の終わりかた邪悪すぎる・・・こんなん善さんの気が狂う・・・どうしようもないやん。続きをよみたいような読みたくないような。

  • 終わるという悪いことが好きな曲世愛、この気持ちを正崎にもわかって欲しかった。一体何に魅了されたのか…

  • アレックス……!からの、曲世……!!(なにも伝わらないって)
    淡白でなんならやや退屈さにも似た落ち着きでお堅く粛々と冷静に進むのに(それも、風情が全くないというような面白味のなさではないから、嫌いでない)、突然の蛮行とも言えるような終盤に、とりあえず浚われる。
    記憶の遠い一、二巻の残酷さを正崎がちゃんと思い出させてくれたのに、満を持するまで予期出来なかったうっかりさである。

    あまり大衆的な物語ではない気もするし、でも明らかな力を持ったわかりやすく派手な展開でもあって、なんかとりあえずどストレートなのに捻った「すごい」感。ふしぎ。。

  • 三冊目。不正事件の捜査中に遭遇した「毛や皮膚混じりの異様な血痕と、紙を埋め尽くした無数の文字、アルファベットの「F」」そんな衝撃から始まった物語は、超都市圏構想“新域”の選挙、ある法令を施行するかどうか、とどんどん変化を見せ、最後はFBIまで動き世界の話になります。副題の「終」はまさしく「終」であり「終」でもない。本としてはこれで完結でよいのでしょう。しかしなまじキャラが書き込まれているため、シリーズ通じて何度も思い入れのあるキャラにやられました。最後の展開は賛否あるだろうなあ。私は違う方が良かったかな。

  • 早く続きが読みたい…

  • 1、2巻とも異なる舞台。これぞ「序破急」なのか?と思って読み始める。正崎が出てくるまでが長過ぎるように感じたけれど2巻まででさんざん曲世にやられているので立て直すには仕方がないのだろうと思い直す。ラストページまで到達して、「してやられた。まんまと騙された」と気がつく。この巻が発売されたのが3年前でサブタイトルが「終」となっていたら終わると思うじゃないですか。読了後、ためていたTVアニメ最終話を観てラストの違いに驚く。早く、次、出ないかなあ。関係ないけれど、ワシントンD.C.とワシントン州の位置がずっと逆だと思っていた。よく考えたら、ワシントンD.C.がそんな場所にあるはずないか。

  • 2ラストで超展開で3にきて唐突な主人公交代で意味不明。結局、オカルト女はオカルトのまま説明もなく、新域域長の目的もわからずもやもやしたままで3の主というべき人物の自殺で終わる。ラスト改変のアニメになってアニメでは一応結末的なものが示されたけれど、この本としての結末は⁉︎バビロン4は出される予定があるのだろうか。出たら読むが出なかったら中途半端なクソ本認定を確定します。

  • 何が「良い」のか「悪い」のか。
    生死に善悪が絡む事自体に疑問を感じるが、誰もが納得出来る答えがあるのか。

    続きがとても気になる。

  • 「Ⅱ」から舞台が日本から急にアメリカに移るので、最初は戸惑いました。
    テーマとなる「自殺法」をさらに掘り下げていく後半、善悪とは?生きるとは?哲学的な話が展開されます。
    最後は後味がいいとは言えませんが、これも込みでこの作品の魅力かも、です。

  • ここまでは面白いけど、ここまで広げきった風呂敷をどう畳むのだろう。どう転んでも納得できる結末にはならない気がする。

  • 積ん読していたバビロンシリーズを、「アニメのネタバレ情報が入る前に原作を読んでしまおう」と読み始め、そうしたらまんまと一気読み。

    曲世の禍々しい力は、正義感の強い正崎や瀬黒、無邪気なアレックスには効かないのでは、と予測していたら、全くそんなことはありませんでした。
    そうすると、曲世は、なんで最初に会った時に正崎を「骨抜き」にしなかったのか、また、瀬黒を自殺させなかった理由は何か、という謎が残ります。
    齋開花のように、正崎には何か使い道があると考えているのか……。

    そして、続刊は出るのでしょうか?

  • どうやって収束させるんだろう?

  • 自殺出来る権利を保障する自殺法。世界でも採用する都市が出る中でサミットが開かれる。そして曲世愛を追う正崎はFBI捜査員になろうとしていた。
    副題に「終」とあったが騙された。意味が違った。世界に進出した自殺法の是非、曲世愛の行方など魅せる部分は多く引き込まれる。
    しかし曲世愛は無敵過ぎてどうするのか見当もつかない。

  •  先日『水曜日のダウンタウン』という番組で、ペットと一緒にドミノを並べられるかという企画が、放送されていました。

     ドミノの完成には、きちんとペットがコントロールできるかがミソです。ペットが勝手に歩き回ればせっかく並べたドミノは倒れてしまいます。

     挑戦者たちはそれぞれ苦労しながら、ドミノを並べて行くわけですが、その分完成したドミノを倒すときの快感は、ひとしおではないかと思うのです。

     苦労して積み上げたものを終わらせる快感……。これって小説にも応用できるように思います。ミステリの叙述トリックなんかは、読者が積み上げた世界をぶち壊します。

     そして、この『バビロン』。叙述トリックではありませんが、この本も積み上げたものを終わらせる快感を、野崎さんが追い求めたからこそできあがった作品なのではないかと思います。

     自殺法を巡って世界が揺れる中、開かれた世界サミット。各国の大統領や首相がそれぞれ想いを一つにし、ある問いとその答えを探し求めます。

     この問いに対する答えを出すまで、作者の野崎さんはかなりの思考実験をしたと思います。そして、そのたどり着いた答えを一瞬で無に帰してしまう絶望……。

     バビロンの一巻の帯に「神か、悪魔か、野崎まど、か」という言葉があります。作中の登場人物たちは曲世愛に、そして自分たち読者は、野崎さんの掌の上で、希望を見たかと思いきや、希望を見た分より深い絶望に突き落とされるのです。

     これってまさに神の戯れ、あるいは悪魔の所業という感じがします。そう考えると、あの帯の言葉も決して言い過ぎということはなかったのだな、と感じてしまいます。

     ここまでくると気になるのは、話の収束点。世界まで広がった絶望の物語はどこへ向かうのか。野崎さんの手腕がものすごく問われそうな次巻になりそうです。

  • こうも情け容赦なく死んでいくと読了後の虚脱感もまた一入。

  • 最終巻のつもりで読んだら「そーゆー事かい」とまた続きを待たされる羽目に。早よ続き読みたい。続く事が善い事、終わる事が悪い事。、

  • バビロンの由来が明らかになり、沈黙の艦隊を思わせるサミットの論戦はニケーア公会議の様相を呈した後、魔界水滸伝か百億の昼と千億の夜か、という領域に。
    新域は原潜「やまと」と同様、人類に根源の問いを突き付ける。

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著者プロフィール

【野崎まど(のざき・まど)】
2009年『[映] アムリタ』で、「メディアワークス文庫賞」の最初の受賞者となりデビュー。 2013年に刊行された『know』(早川書房)は第34回日本SF大賞や、大学読書人大賞にノミネートされた。2017年テレビアニメーション『正解するカド』でシリーズ構成と脚本を、また2019年公開の劇場アニメーション『HELLO WORLD』でも脚本を務める。講談社タイガより刊行されている「バビロン」シリーズ(2020年現在、シリーズ3巻まで刊行中)は、2019年よりアニメが放送された。文芸界要注目の作家。

「2023年 『タイタン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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