その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062990554

作品紹介・あらすじ

「謎はすべて解けました。これは――奇蹟です。」
この傑作を読まずして、今年のミステリは語れない!

かつて、カルト宗教団体が首を斬り落とす集団自殺を行った。
その十数年後、唯一の生き残りの少女は事件の謎を解くために、
青髪の探偵・上苙丞(うえおろじょう)と相棒のフーリンのもとを訪れる。

彼女の中に眠る、不可思議な記憶。
それは、ともに暮らした少年が首を切り落とされながらも、
少女の命を守るため、彼女を抱きかかえ運んだ、というものだった――。
首なし聖人の伝説を彷彿とさせる、その奇跡の正体とは……!?

探偵は、奇蹟がこの世に存在することを証明するため、
すべてのトリックが不成立であることを立証する!!

感想・レビュー・書評

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  • 私の先入観だとかが悪いんだけど、読み進めようとしても全然把握できず。。
    その少女が殺していないという他の可能性を潰していく展開。
    逆にギロチンを・・・という序盤あたりで挫折。
    317冊目読了、とはいえないけどカウント。

  • 推理小説と思って読んだらダメだ。これはラノベだった。
    色々と詰め込み気味なキャラクター達に厨二病を感じた…
    あと語り手が中国人女性のため、中国語の単語が頻出して読みづらくさせてる。

    各キャラがある事件に対して様々な可能性を提示し、探偵がそれに対してスパッと反論を行うところが見どころ。
    可能性として有り得ると言うのに対して、不可能だと証明するのは難しいはずなのにはっきり否定してくるところは爽快で面白かった。
    確かにこういう展開は今までになかったなとは思う。

  • ミステリの核となる事件とそのトリックはまあそんなに特筆すべきこともないんですがタイトル通り、可能性を提示してそれを否定する、という点にのみ特化したお話。見せ方がおもしろいな、と。ところどころに漂うラノベっぽい感じは目を瞑るとして。
    ただ語り手である「フーリン」がやたらとキャラがぶれてるのが読んでいて居心地が悪かったですが。冒頭から必要以上に残忍な人柄が描かれてるかと思ったら結局ただのワトソン役・・・以下のただの驚き役にしかなってないし。時々思い出したかのようにとってつけたような残忍っぽさが逆に違和感。

  • かつて、カルト宗教団体が首を斬り落とす集団自殺を行った。その十数年後、唯一の生き残りの少女は事件の謎を解くために、青髪の探偵・上笠丞と相棒のフーリンのもとを訪れる。彼女の中に眠る、不可思議な記憶。それは、ともに暮らした少年が首を斬り落とされながらも、少女の命を守るため、彼女を抱きかかえ運んだ、というものだった。首なし聖人の伝説を彷彿とさせる、その奇蹟の正体とは…!?探偵は、奇蹟がこの世に存在することを証明するため、すべてのトリックが不成立であることを立証する!!


    ・レビュー

    粗い部分は多いが面白い。発想を存分に活かして作品に落とし込んでいるのがよく解る。

    麻耶雄嵩の「これはアンチミステリではない ただの奇跡だ」という帯はかなり正鵠を射ているというか、まさにこの作品を形容する一つの視点として真実味がある。

    ジャンルとしては確かに「探偵」に対してアンチミステリ的な試みが成されているのだけれど、ストーリーというかプロットには思いの外真っ当なハウダニットのロジックが組まれていて、全体を通すとアンチミステリというより反転ミステリといったような感じだ。

    かのシャーロック・ホームズは「不可能なものを排除していって、残ったものがどんなに信じられないものでも、それが真実」という名言を残しているけれど、今回の探偵である上笠丞はこのホームズのスタイルと対になるような探偵だ。
    それは一見人の手によるとする解釈が困難な事件の、あらゆる人的・現実的な可能性を否定し尽くすことで、その事件が「奇蹟」であることを証明するというものである。
    探偵というのは奇蹟のような事件を人の手による犯罪だと見破ることが多いわけだが、本作の上笠丞は奇蹟の存在を信じており、真の奇蹟を証明することを目指し、ライフワークにしている。

    上記の通り、探偵としての上笠丞の仕事はいわばトリックの網羅だ。それで解決できなければ、それは「奇蹟」であるわけで、したがってその証明方法は奇蹟という選択肢以外のあらゆる可能性の矛盾をついてロジックで消去していくことになる。

    以上の設定からしてストーリーは少々珍しい物になっている。
    まず依頼人により「問題」に当たる過去の一見奇跡的な事件が語られる。それに対して上笠丞はそれが奇蹟であるという結論を出す。
    そして本作の主要な内容は多重推理、多重解決のミステリとなっている点だろう。
    上笠丞の「奇蹟という結論」に対して様々なキャラクターが目の前に立ちふさがり、仮説を呈するのだ。つまり、人的なトリックであると証明するのが敵であり、それを解決できない奇蹟だと証明するのが主役である上笠と相棒のヤオ・フーリンになる。立場が反転しているのが面白い。

    一つの問題が最初に提示され、それに対して複数の敵がそれぞれトリックの可能性を出していく。ここで重要なのが、上笠丞は現実的根拠と証言を以ってしてその仮説やトリックを論破していく必要があるが、敵に当たる側から提示されるトリックはあくまでも可能性さえあればなんでもありという点だ。
    奇蹟の証明の為にはそれ以外のすべての可能性を排除せねばならないので、逆に言えば奇蹟でないことを証明するならばたとえ僅かでも可能性を指摘すればいいことになる。
    これがルールとして前提にあるので、本作は非常にバカミス的なトリックがいくつも出てくることになる。可能性さえあればなんでもありなのだから。
    しかしこれを根拠に現実的じゃなくてつまらないとか駄作というのは少々違うだろう。まず前述のルールの内なのだから実際の解決とは趣旨が違う。

    面白いのはそれに対する上笠丞の矛盾の指摘にある。この作品におけるミステリ的面白みは、解決ではなく「解決の否定」の方だ。
    こちらは語られる事件の内容の僅かな記述や表現を根拠に鮮やかに仮設を否定する。
    それに至る根拠や論理の方が、本作の推理要素だろう。

    さて、話はズレるが本作を読んで最初に僕が思ったのは、城平京の『虚構推理』に非常にロジックの運び方や手法が似ているなということだった。こういった多重解決のミステリは城平京の得意とするところで、漫画の『スパイラル~推理の絆~』やそのノベルズの2巻、デビュー小説の『名探偵に薔薇を』は、そういった要素があるか、あるいはまさに多重解決モノそのものだったりする。
    城平京というあまりにコミック原作者としての名前が売れてしまっている推理作家が、小説の舞台に戻りつつある今、本作が好きなら城平京の小説も好きなのでは、とちょっと思ったりする。

    最後に、本作にはラストの展開に際して、否定による逆転した多重推理・多重解決をうまく活かしたエピソードが待っている。プロットの構成美が非常に際立っているラストなので、見所といっていいだろう。

  • この作品はミステリートリックの神髄であり、本文中にある「自分の深層意識の奥底から聞こえる模糊たる懺悔の声」などいたる所に出てくる難解のセリフを解き明かして読むのも一興である。

  • 借金1億超えの探偵の元に、15年前に起きた新興宗教の集団自決事件で唯一生き残った少女からこの事件で起きた不可能犯罪が本当に不可能な「奇跡」だったのか検証してほしいと依頼される。
    次々と現れる刺客が展開する可能性に探偵は「その可能性はすでに考えた」と言って反証していく。
    探偵ウエオロ、高利貸しフーリン、元検察・大門、フーリンの旧友兼仇敵リーシー、天才小学生元弟子・八ツ星などのキャラがみんな濃い。
    最初のページに見取り図もちゃんとある推理小説。

  • 時々出てくる中国語や難解な言葉が読みづらかった。
    フーリンの語尾の「~ね」はステレオタイプなのかパロディなのか…。
    他にもキャラクターが渋滞していて、それを追うのに必死。
    事件自体はカルト教団の首切り集団自殺というなんともヘビーなもので、なんだか読み疲れた。

  • 思ったより読みにくいのが先ず最初の印象。
    中国人が出てくる関係で中国語や中国の諺が出て来て、毎回ルビふってほしい……という個人的ワガママ。
    あと続編ありきでの構成としか考えられない作りであり、一応続編は出ているものの、売上の関係で続編が出なかった場合のことは考えなかったのか不思議。
    その続編でもこの巻で気になる点が解決するのかも怪しいところ。
    (ノベルス版だからかもしれないけれど)無駄に長く感じた作品で、『探偵が早すぎる』で井上真偽先生の他の作品も気になった身としては期待し過ぎたかもしれません……
    一応続編も読む予定です。

  • 青髪の探偵が、すべてのトリックが不成立であることを立証することで、奇跡がこの世に存在することを証明しようとする。カルト教団の集団自殺で、首を斬られた少年が少女を抱きかかえて運んだ、というのは奇跡か。

    閉ざされた山奥とか、教祖が首を切るとか、ギロチン台や滝や川とか、普通にはないでしょ、と思える現場状況なのですが、何組もの推理と仮説と反論をきっちり組み立て得るベースとパーツなのでした。

  • あまりはまらなかった、、。
    突拍子もない仮説を否定するというストーリーの、その突拍子もない仮説そのものや、事態を仰々しく捉えすぎる登場人物に共感ができなかった。

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著者プロフィール

神奈川県出身。東京大学卒業。『恋と禁忌の述語論理』で第51回メフィスト賞を受賞。
第2作『その可能性はすでに考えた』は、恩田陸氏、麻耶雄嵩氏、辻真先氏、評論家諸氏などから大絶賛を受ける。同作は、2016年度第16回本格ミステリ大賞候補に選ばれた他、各ミステリ・ランキングを席捲。
続編『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』でも「2017本格ミステリ・ベスト10」第1位を獲得した他、「ミステリが読みたい!2017年版」『このミステリーがすごい!  2017年版』「週刊文春ミステリーベスト10 2016年」にランクイン。さらに2017年度第17回本格ミステリ大賞候補と「読者に勧める黄金の本格ミステリー」に選ばれる。
また同年「言の葉の子ら」が第70回日本推理作家協会賞短編部門の候補作に。
他の著書に『探偵が早すぎる』(講談社タイガ)がある。

「2018年 『恋と禁忌の述語論理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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