無傷姫事件 injustice of innocent princess (講談社ノベルス)
- 講談社 (2016年1月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062990646
作品紹介・あらすじ
継承。つながれていったのは力か夢か幻か――魔導世界でも類を見ない、兵数と武装に頼らない軍事国家。その支配は明快にして簡潔。冷徹にして賢明。優雅にして鮮烈。凡庸にして惰性。
相反する性格を持つ苛烈な時代を駆け抜けていった四つの意志。その辺境の小さな国は、世界を揺るがす大戦の中で如何にして独立を守ったのか。
誰にも傷つけられないから、無傷姫。そう呼ばれた少女たちに科せられた宿命と秘密は彼女たちを守ったのか、或いは害したのか。
人々に愛され、歴史に軽んじられ、真理に疎んじられた姫君たちが滅びるとき、浮上するのは欺瞞と虚偽か、それとも遠い日の約束か――。
感想・レビュー・書評
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戦地調停士シリーズ第6弾。
辺境国カラ・カリヤの歴代の"無傷姫"を大河的に描くという、これまでとやや趣きが異なる話ですが、終盤はシリーズらしい結末へ。
いつも通り抽象的な会話が多いですが、歴代の姫の個性が上手くマッチしています。
えっと、戦地調停士シリーズ って、これで終わりでしたっけ?
上遠野サーガなので、それはそれで頷けますが。
まだ数作読めていないブギーポップも手元にあり、いつになったら完結するのかしら?(=褒めてる)と思ってますし、これからも首を長〜くして、上遠野作品を読んでいきます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まさか出るとは!!の事件シリーズ。
イラスト変わったのが、ちょっと残念。
中身の話。
その発想はなかった。
いや、マジでなかったわ。
なるほどなーーー。
微妙に過去の脇役たちが、今のメインキャラに繋がってるのが好。 -
『「事件」シリーズ』(「戦地調停士」シリーズと言うべきか?)久しぶりの最新作。
今作はあるひとつの国がひょんなことから成立し、そして解体されるまでを描いている。ミステリというよりは群像劇っぽく感じた(最後にミステリっぽい仕掛けはあるのだが)。
ところで、今作でまたイラストレーターが交代していた。個人的には最初の人の画風が一番好みだったな……。 -
事件シリーズその6。
とある国の成り立ちや貢献者を描いたお話。
国の為政者としての心を存分に感じさせてくれる作品。 -
2022.3.13実は再読
甘いものと可愛いものは正義
私は3代目推し
何気に世界の歴史が色々と出ているし、あの人の性格やら何やらが発覚している
このままブギーポップなどなどの再読へ行きたい -
わがままって楽しくないよね。だって我を張らないと意思を通せないくらいに、世の中とズレちゃってるってことでしょ? ハリカ・クォルト
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何故今になって「彼方に竜が~」が発刊されたのか。
ずっと無傷姫について淡々と、盛り上がりもなく描かれており、はてさてこれは時間の無駄のまま終わってしまうんだろうかと思いきや
ちゃんと最後でまとめられていました。
こう、なぜこれがこうなってこう! と描かれているお話はすっきりしますね。
悪魔絵師さんからなんで変わっちゃったのかなあ。
大人の事情なんだろうけれど。
表紙はともかくとして、口絵や、ところどころの人物画はいらないんじゃないかな?
せっかくの雰囲気がそこで毎度毎度こわされてしまうのは勿体無い。ほんと見事にぶっこわされる。
そう思われてしまうイラストレーターさんも気の毒ですし。それはそれで勿体無いことでしょうし。
えーっと、「彼方に竜がいるならば」と併読おすすめです。 -
http://wp.me/p7ihpL-F
前作「残酷号事件-the cruel tale of ZANKOKU-GO」は2009年の作品らしい。待ちに待ったという感じ。
この話はとある国ができて、その君主たる姫君のお話しである。
ミステリーの雰囲気をもたせつつ、(何せ「事件シリーズ」なのだし、ホームズ・ワトソンの関係なわけだし)、過去の話から現在までの進行形の話である。
登場する姫君たちに関しては、読むたびに思い入れのある人が変わりそうな気がする。 -
殺竜事件からはじまる事件シリーズ6作目。ぼくは2作目まで既読で、たまたま今作のあらすじを読んで気になって先に読んでしまった(物語を楽しむ分には問題ないと思う)。
辺境の小さな国であるカラ・カリヤ。武装に頼らない軍事国家がいかに戦火を潜り抜け、国を守ってきたのか。そして、国の象徴でもある無傷姫。誰にも傷つけられないとされる彼女たちが、どのように姫となり、生きていったのかが描かれていく。
受け継がれていく無傷姫とその歴史という縦糸と、その時代においての姫や関わる人々の活躍という横糸を、各章にまとめて連作短編のようにテンポよく繋いでいるのが見事。それぞれの姫が個性的なところも読み飽きないポイントだと思う。個人的には2代目のミリカの話が好き。ラズロロッヒやマーマジャールとのやり取りや会話の面白さ、その立場や強さの対比も印象的だった。もちろん、ハリカとの嘘の話も。
「損得の話でしょう。人間は理想のために死ぬことはできるけれど、生き続けようと思ったら、すべては損得の話にしかならない─強い者におもねり、大勢の利益に倣う。そう─あなたと同じです」
このミリカの言葉はその考え方はなかったと唸った一言だった。野望のために群衆を支配しているはずの皇帝が、実は群衆の目先の利益に支配されていたというのが皮肉だよね。
終盤の余韻が残る幕の引き方も素敵だった。読み終えた後にすぐ読み直したくなる。冒頭の『究極の武装』の話も見え方がだいぶ変わってくるね。解釈は人それぞれなんだと思うけど、ぼくは『嘘』や『利益』や『信念』のことかなと考えた。あとがきの『姫』についての話も踏まえながらだと、より理解が深まりそうな感じがする。蜜を塗ったパンを片手に読み返したいね。