χの悲劇 (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 105
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062990738

感想・レビュー・書評

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  • あの夏、真賀田研究所でプログラマとして働いていた島田文子は、いくつかの職を経て、香港を拠点とする会社に籍を置いていた。人工知能に関するエキシビションの初日、島田は遠田長通という男に以前、愛知で起きた飛行機事故に関する質問をされる。トラムという動く密室で起きる殺人。その背後に感じられる陰謀。静かだった島田の生活が、その日を機に大きく動き始める。Gシリーズの転換点。後期三部作開幕!

  • これだけ読んでも全く面白くはないでしょうが、S&Mシリーズ、Vシリーズ、Gシリーズ、四季がついに一つの大きなお話として収束していくメルクマールとなる一巻でした。χはひょっとしたら、と思いつつでもと考えていたところでの最後のネタ明かしと最後の一行はまさに「やられた!」と、ミステリーを読む醍醐味を久しぶりに味合わせてもらいました。こういうぞくっとする瞬間を味わえるのが偶にあるからミステリー読みは止められないですね。

  • 本格ミステリを崇拝しているわけでもない森さんから、まさかの「Xの悲劇」。タイトルからしてすでに掴みが完璧な本書は、主人公が控えめながら時を様々超えて、Gシリーズの最終巻に正しくふさわしい一冊である。
    ただタイトルはあくまで今までに法りギリシア文字のχであり、読みは「カイノヒゲキ」だ。いや、念のために……。

    森さんの著作を今まで読んで来た方には、もう何も説明は必要ない。何を書くにもすべてがネタバレになるような気がするのでレビューにもならず申し訳ない。メインが島田文子であることが何より不可思議で、でも素晴らしかった。
    講談社タイガで始まっている新シリーズを読んでいる方には、さらに楽しみというか、深みが広がったのではと思う。私はそちらを先に読んでいたのだが、本書を読み終えてなんとも云えない、畏怖のようなものさえ湧き上がった。『四季』を読んだ時のような、一時的な感動とは違う。やっぱり森博嗣はすごい。誰がなんと云おうと、この人の世界が、文章が、何所までも広がって行くその思考、すべてが好きだ、と強く思う。

    失礼ながらたくさんの人に読んで欲しい、とは思わない。思わず独り占めしたくなるような幸せをいつもありがとうございます。森さんの新刊が発売したときは、朝から買いに行き、読むわけでもなくただ持ち歩く。持っているだけでワクワクする。そして家に帰ってからひとりじっくりと読む。この幸せがまだあと少し楽しめるなんて、贅沢だ。

  • ※いつも以上に本編に関係ないことを長々と語りつくしている上に、某古典ミステリ(お察し)のオチにも若干触れています。ネタバレは控えているつもりですが、勘のいい方にはピンと来てしまうかもしれません。ご注意下さい。


    ブクログさんの「新刊お知らせメール」機能には、大分お世話になっています(唐突)。

    お気に入りの作家名を登録しておけば、発売日の前日にメールでお知らせしてくれるなんて…何て痒いところに手の届いたサービスなのあざす…

    というわけで、本作「χの悲劇」も、ご多分に漏れずブクログメール通知で発売を知ったわけですが。

    メールの表題がチラッと見えた時にまず思ったのは、

    「まーたクィーンの新訳 OR 新装版か…」

    でした。

    「最近ハヤカワさんから国名シリーズの新訳出てたけど、その流れかしらね…。作家アリスのドラマ化のお陰で、クィーンもフィーチャーされてんのかも…」

    と、ボンヤリ思いながらメール本文開いたら。ら。

    「■『χの悲劇』
    2016-05-07
    著者: 森博嗣 」

    …………………………………あれ?????

    ここからの私の動きは速かった。
    急ぎの案件に手を付けるより速かった←

    リンク先をクリックし、
    ブクログさんの誤表記でないことを確認(失礼)。
    Amazonさん始め、その他のサイトで、装丁を確認&内容紹介を通読しました。

    間違いなく「森博嗣の書いたXの悲劇」が発売されることがようやく腑に落ちた私は、、、、、、、、


    読む前からこの作品が傑作であることを確信したのです(後出し感)。


    何てったって、このタイトルですよ。
    そして、内容紹介には、「動くトラムの中で発生した殺人事件」の文言ですよ。

    アメリカが生んだミステリーの巨匠・エラリー・クィーンの出世作へのオマージュ溢れる意欲作に決まっとろーが!!!!!(嬉)

    というわけで。

    読む前から期待値を半端なく高く設定するという、作者泣かせのミステリスキーの宿業が炸裂したわけなんですが。


    期待値のK点、易々と超えられた………………………(感涙)。


    触れたいことが多すぎるので、過剰な形容を自制する為にも以下、箇条書きで簡単に感想を。


    【森ミスファンのツボ】

    ・森博嗣のデビュー作「すべてはFになる」で、チョイ役として出演したプログラマ・島田文子を主人公に設定=ふむふむ。

    ・真賀田四季の最初の事件とも言うべき「飛行機事故」に端を発する殺人事件=ほうほう。

    ・真賀田博士に限りなく近い場所&分野で仕事をしていた女性のモノローグ=最高。

    ・天才と天才の会話=最高に痺れた。

    ・最後の最後で明かされるある人物の名前=最高の極みありあまる。


    続いて【エラリー・クィーンのXの悲劇を読んでるミステリスキーのツボ】

    ・Xの悲劇と同じ殺人現場=最高。

    ・Xの悲劇と同じ殺害方法=最高。

    ・Xの悲劇で使用されたトリックを匂わせるセリフ&地の文=ネタバレやー!!!!←←


    とにかく、森ミステリィスキー&ミステリスキーのツボを、しっかりと、過剰なまでに、押さえた作品であります。
    森先生、きっとドヤ顔で本作を執筆されたんだろうなあと想像いたします(どうでもいい)。

    講談社タイガから出ている最新シリーズと言い本作と言い、ここに来て森ミステリィが真賀田四季を軸に加速度的に収束を早めている印象です。

    シリーズを未読の方には不親切&それほど楽しめない作品かもしれませんが、犀川先生&萌絵ちゃんとの衝撃的な出会いと、真賀田四季の語る言葉に魅せられた私にとっては、最高にクールな作品でした。

    森作品を読んで、こんなにエキサイトできる日がまた来ようとは。。。。。感涙!!!

    次作、Ψとωへの期待が、否が応でも高まります!!!本家の傾向から考えて、次の事件は密室モノで、犯人は××かな!!!←←

  • Gシリーズ
    「すべてがFになる」から20年の時を経て,我らが島田文子さんが主役を務める。
    オタクの鑑たる言動と,冷めた感を装いつつも真賀田四季への狂信っぷりをみせる島田さんが大活躍。
    シリーズの伏線を一気に回収する急展開で,間違いなく近年最高の傑作。
    そしてラスト。。。

  • 待望のGシリーズ最新作♪
    この日のためにGシリーズ最初から読み返した!
    島田さんのお話で、今までのGシリーズのメインキャラ達が出ないのか…と最初は残念だったけど。
    今回は凄い!!!
    いろいろ繋がって、最後は鳥肌がやばかった。
    今まで読んできて良かったと思える作品でした。
    あと2作、どう終わるのかも楽しみ♪

  • 「知ってしまったことは、簡単に削除できません。人間の不便な機能が元凶といえます」
    「私、けっこう忘れてしまうんですけれど」
    「忘れてしまったことを、外部に証明ができませんからね」

    『本当に、自分の躰がここにあるという現実が、彼女にとって最大の足枷だった。』

    『躰はときどき故障する。それに歳を取って劣化する。死んだらゲームオーバーなのだ。』

    『壁には、なにもない。時計もカレンダも写真をポスタも。それに、家具もない。キッチンにいくらかの道具があったけれど、それも大したものではない。寝室にも、ベッドと布団があるだけ。クロゼットには、もう二度と着ないという衣料品ばかりだった。持っていきたいものが一つもない。自分の躰でさえ、ここに残していきたいほどだった。』

    『たとえば、子供の頃から持っていたフィギュアがあったけれど、いつだったか形状をスキャンしてデータを取り込んだ。それをいつでも見られるし、動かせるし、表情を変えたり、成長させたりすることもできるようになった。そうなれば、薄汚れた原型はもう屍でしかない。物体は劣化し、長く存在し続けることができないのだ。彼女は躊躇なく、それを捨てることができた。結局は、すべてがそうなのだ。』

    『今から行く場所は、スイスだ。否、それはスイスという地名、すなわちデータ名でしかない。国名なんて、インデックスに過ぎない。この世の固有名詞は、すべてフォルダ名なのだ。』

    『生きていること自体が、単なる摩擦ではないのか。なにも生み出していない。ただ、熱を発しただけだ。火花を馬鹿にするなら、自分の生き方だって同じレベルではないのか。』

    『でも、気づいたんだけれど、私たちって、理由のないものを受け入れない文化に染まっているのよ。』

    「爆弾が爆発した時、そこにいる人が死にますね ー それは、誰のせいなのでしょう? 爆弾を作った人、爆弾を仕掛けた人、爆弾を仕掛けろと言った人、それとも、そういった人間を排除できなかった人、そんな人間を育てた人…。いくらでも理由が見つけられます。罪はどこまでも、連鎖する」

    「島田さんは、甘いものはお好きですか?」
    「好きと言ったら、出してくれるの?」
    「いえ、そういうわけではありませんが…」
    「貴女は、ジンバブエは好き?」
    「え、どうしてですか?」
    「あと、私はね、どちらかというと、サンタモニカの方が好き」

    『できるだけ強く、大きいものの傘下に入るのが良い。この点では、自分も歳をとったな、と思う。若いときには、そうではなかった。正しいもの、自分が好きなものに寄り添おうと考えていたはず。』

    「そうですね ー お互いが正当防衛で引き金をひくことは、たいていの戦争のパターンです」

    「ありがとうございます。お待ちしておりました。」
    「どうされたの? 悲しいのですか?」
    「そうではありません。嬉しいのです。望みが叶いました。」
    「望み? それは何?」
    「生きているうちに、博士にもう一度だけ、お会いしたかった」
    「生きている? それは何?」
    「望みも、生きていることも…、わかりません」
    「ええ、わからないわ」

    『美しく。
    綺麗。
    人形のように。
    人間のように。』

    「その…、命とは何ですか?」
    「そう。そのとおりです。その問いが、すなわち命なの」

  • 熱いカフェラテが飲みたくなった。

    個人的に、Χより最後の一文が衝撃だった。

  • 今までのGシリーズの主要人物が出て来ず、島田文子に焦点を当てた作品だった。いい意味で期待を裏切られた。これはこれで面白かった。

  • 『Xの悲劇』のオマージュ要素にニヤニヤしつつ読んでいたら最終30ページで強制的に記憶を総動員させられて、ふと気づけば2時間後にワープ。
    『すべてがFになる』からずっとリアルタイムで読めていることの幸せを噛み締めました。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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