虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンKC)

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著者 : 市川春子
  • 講談社 (2009年11月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・マンガ (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063106176

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虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンKC)の感想・レビュー・書評

  • 先に宝石の国で市川春子にはまって、既刊の作品集を二つ購入。まずは美しい装丁が目を惹きつける。作品集から入った人は短編がいいという人が多いようだが、長編にも十分な魅力は備えていると思う。

    収録作品の中では日下兄妹が一番好き。たぶんそれは、おまけの書き下ろしを除いた中で、コメディー的な要素が強い上に、最も理解しやすいストーリーであるからだろう。もちろん理解しやすいといっても単純なストーリーではない。そして読後には涙腺が決壊した。

    自分は高野文子作品を読んでおらず判断できないが、手塚治虫作品に似ているとは思う。それは、作品の根底に命を取り上げていること、人と人ではない知的生命体との物語であること、「人」が必ずしもすべて正しくはないこと、誰もが分かるようなハッピーエンドで物語が終わらないこと、といったような点が共通しているように思われる。

    収録の4話は、すべて登場人物(人ではなくとも)達が深く静かな孤独を抱えており、それと向き合う物語である。

    以下、各話考察。未読の方は、先にマンガを読むことを推奨。



    星の恋人

    さつきはつつじに一目ぼれをしたように見える。さつきとつつじは、植物としては似た者同士。同じように物事を考えている場面が描かれており、つつじはさつきが自分のことを好きなのがよくわかっていただろう。
    そして、その二人の思いを叔父さんもわかっていながら、ただ静かに見守っていたのだろう。

    また、つつじが自らの「枝」を切り落とした際、叔父さんが涙して口付けをしている場面が、さつきの視点で描かれている。
    真黒なトーンでこぼれた涙が白く抜かれている。さつきは叔父さんが泣いているということしか「理解」できないということ、なおかつ、叔父さんはこの先、いくばくかつつじが記憶を失うことを知っていたと読める。
    そういう事態となっても、叔父さんはさつきを責めず、ただ受け入れる。剃髪している叔父さんが「僧侶」の役割をも担っているからである。
    ただ、後につつじが「小さくなる」まで剪定したのは、
    自分との記憶を失っても、さつきとの記憶を持たせたくないという気持ちもあったのかもしれない。

    このマンガ、市川春子版のブラックジャックではないかと思う。
    叔父さんとつつじは、ブラックジャックとピノコの関係に相似しているといえる。命を生み出した(救った)点で親娘であり、最愛の恋人(妻)であり、常に寄り添う母でもある。そして、再婚する母に捨てられ、庇護を必要としているさつきは、ブラックジャックに助けを求めに来た患者である。

    そこで恋をして、失恋して、新たな家族を得て、新たな恋を見つけ、きっと幸せを手に入れられる…
    それは、叔父さんが剃髪した僧侶の姿をしていること、
    切り落とした「枝」の上に仏画が掛けられていること、
    水につけている器が、蓮華(仏の座)に似ていること、
    といったことから、枝は仏が救いを差し伸べる「手」であり、その手を取るのはさつきであると約束されているから、これは救われる物語と言えよう。

    記憶を失ったつつじがさつきに「はじめまして」と言った後、真黒な8ミリフィルムが描かれる。これによって過去が清算されて新しい生活が始まったことを示す。
    手術が終わったのである。


    話は変わるが、この「星の恋人」から「宝石の国」へ受け継がれているアイデアがいくつか見受けられる。
    主役たちを見守る僧侶役や「仏」の登場、失った体の分だけ記憶が失われる、といったこと等が挙げられる。



    ヴァイオライト

    最初は「静電気」かと思ったw
    収録されている中で、最も理解しがたい作品には違いない。読解のポイントは扉絵と、「ちょっと小指を引っかけただけだぜ?」のセリフ。


    未来は、名前に反し... 続きを読む

  • 性を介さない生殖。セックスが介在しない愛。もしかしたら人間というものが存在しない世界なのだろうか。それでも、人を思う心や切なさ、悲しみの感情はリアルである。悲しく厳しい現実から逃避し、しばしそこに漂いたくなるような愛しい世界たちが、この作品集にある。

  • 登場人物たちが見せる潔すぎる自己犠牲に圧倒された。
    彼らは自分を犠牲にすることにまるで迷いがない。
    悲しくなる前に呆然としてしまう。
    あっけにとられつつ何か物哀しい気持ちになる、そんな短篇集。
    表題作でもある「虫と歌」は、ただただ圧倒されたくて、どっぷりと余韻に浸かりたくて、何回も読み返してしまった。

    物語にはギクッとするようなシーンが必ずあってそれがまた癖になる。

  • 作品集としてはこちらが先で「25時のバカンス」が後になります。本来であれば古いものから読むのですが、訳あって今回は順番無視です。

    25時のバカンスに漂う雰囲気が「海」・「冬」・「月」なら、こちらは「大地」・「春&夏」・「太陽」といったところでしょうか。
    あちらは表紙の加工も海ぽかったのに、こっちは表紙をめくったらバッタとかカマキリとか見えて見なければよかったと思いました。
    4話おさめられていますので1話ずつ感想を書きます。

    「星の恋人」
    「宝石の国」ではわからなかった著者の世界観というか作品の方向性を「25時のバカンス」で悟ったので、こちらも間違いなく何か爆弾が仕込まれているに違いないと用心しましたが、突然の腕を鎌で切り落とすという展開にやはり思考が一瞬停止しました。
    パパが「宝石の国」の金剛先生みたい…!と思ってドキドキしたのですが、こちらは眠そうではありませんね。
    つつじがホットサングリアを飲んでるコマが好きです。

    「ヴァイオライト」
    このお話、何度読んでも意味がわからない…。何かの物質、鉱物の名前?と思ったのですが、造語なんでしょうか。すみれ(violet)と光(light)を混ぜたのかな?
    以下わたしなりの解釈です。
    MIRAI AIRLINEという航空会社を経営している両親の元に生まれた未来くん(会社名はもちろん息子の名前から付けた)は修学旅行のため、お父さんがパイロットで機長、お母さんがCAを務める飛行機に乗っていた。
    ところが人知を凌駕する存在が小指を引っかけたために雷が飛行機に直撃し、飛行機は空中で破裂。未来くんは空中に投げ出されてしまう。自責の念に囚われた人知を凌駕する存在は未来くんを救うべく、人に似せた偽物(天野すみれ
    )を作り出し未来くんと行動させる。
    未来くんを何とか灯台の近くへ導いたすみれは役目を終え限界がきたため、人としての姿を保てず消えてしまう。
    しかしもう力の残っていない未来くんはよろめいて崖から落ちかけてしまう。すみれは最後の力を振り絞って何とか未来くんを助けようとするが助けられなかった。
    …しばらくの後。
    またもや人知を凌駕する存在はくしゃみをしてしまったか何かで嵐を起こし船を難破させてしまった。そこで再び生き残った人間を導くべく同性の偽物を作り出すが、すみれとしての記憶が残っていた彼女は未来くんを探し始めるのだった。 おわり。
    お砂糖をこぼした理由は何だったのだろう。

    「日下兄妹」
    前半、男子高校生のやり取りが面白いですが、一転後半は切なくなって泣きそうになってしまいました。
    ヒナが肩を治すと言った時、ユキが「肩はいい。10年かかって壊した」と答えるのがなぜかとても好きです。
    きっと最後はこうなるとどこかでわかっていたのに、やっぱりヒナが消えてしまうのは悲しかったです。
    ヒナが何を考えているのか、きっとこういう顔をしているのだろうな、というのが表情がないのにわかるというのが不思議です。
    キティちゃんに口がないのは、口があると表情が決まってしまうので、人それぞれが好きに表情を解釈できるように敢えてつけていないと聞いたことがありますが、それと同じなのかもしれません。
    ハラと別れる時に自分が剃った頭にマキロンを塗ってあげるヒナ優しい。
    トイレに閉じこもったヒナを誘い出すシーンは天照大神が岩戸に隠れてしまった時と同じですね(笑)

    「虫と歌」
    表題作です。いちばん好きかもしれない。
    シロウが死んでしまったときも悲しかったのですが、やっぱり歌が死ぬと分かった時が悲しかった。いや、歌も人間ではないのだとわかった時がショックでした。
    詩が大学に行きたいと言った時、晃はどういう思いでやってみろと答えたのでしょうか。本当にそうなったらいいな、とい... 続きを読む

  • 話はサクサク進んで読みやすいのですが、理解が難しいです。。。でも何度も読み返すうちに慣れていき、理解できた時の嬉しいさは言葉にできません

  • 上手く生きられない主人公たちと、彼らの人生に強く刻まれる出会い。透明で、どこか切なくて、何度も読み返したくなる作品集です。精神安定剤として何度も読み返してます。

  • 漫画です。
    短編集で読みやすい、なのに全然わからない。
    わからないからこそ心にずっと引っかかって、何度も読み返して自分の答えを考えるのがすごく楽しい。
    キラキラしていて残酷で「わからないけどよくわかる」という不思議な体験ができた本です。
    人も食べ物も人じゃないものも描き方にあまり差がなくて、食べ物が食べ物に見えずおいしそうじゃないところもすごく良い。
    ネジあてがもうかわいくてかわいくて。メガネのシーンも切な過ぎです。

  • 絶妙です。


    一読した後も 読み返しまくってしまいました。


    「風がすごくて聞こえないのー」の前のコマと、
    ヒナの「お兄ちゃんのことすきよ」

    が何回目でも心臓ぐわっとつかまれる。

    線が綺麗で、まつげの描写がとても好みです。


    絵柄以外にも、言葉の選びかたや展開・雰囲気も魅力的で
    SF好きさんには是非おすすめしたいストーリーになっています。

  • 表紙にやられて、生まれて初めてジャケ買いしました。大当りでした。

    何度も何度も繰り返し読んでます。
    心の端っこのほうからじわじわっと沁みてくる感じ。静かなんだけど、切ない。
    細めの線であっさりすとんって描いてて、全編通して淡々としてるんだけど、その分すごく読み手にきます。

    『日下兄妹』『虫と歌』が大好きです。
    ヒナ本当に可愛い。
    ユキの野球部の仲間たちも好き(笑)

    『ヴァイオライト』はいつ読んでも難しいです…

  • 知ってるか
    この宇宙の中で 人間に見えてる物質は わずか5%で
    残りの23%は光を作らず 反射もしない物質で
    あとの72%は もっと得体の知れないものだって
    だから 世界の95%はわかってないんだと

  • 通り過ぎていった夏の想い出のような切ない印象を受けた。会話の独特なやりとりが面白かった。短編なのに、ひとつひとつのお話を読み終えたあとに、一本の映画作品を見た様な気持ちになりました。

  • 凄く素敵で何度も再読してる作品。こういう作品待ってた気がします 助けたいのに助けられないって雷で表現する市川先生が素敵です とても強い光が切なく辛くみえましたあのシーンに惹かれました

  • 何度も読んだ結果、「日下兄妹」が一番好きかもしれん。「虫と歌」は悲しくなるからあんまり読み込めない。

  • 奇想が詰まった短編集。
    どれも「どうやったらこんな話思いつくの?」という意外性に溢れていてセンスオブワンダーが光るアイディアに唸らされる。
    自分の指から生まれた妹に恋する少年とか虫の弟とか聞くと「?」「??」なんですが、読んでるうちにその優しくあたたかく少し哀しい世界観に引き込まれる。

    設定は突飛だけど作中で描かれるのは人と人に似て非なる異形の触れ合い、魂の交流。友情だったり恋愛だったり家族愛だったり形は様々だけど、どの話でも重要なキーとなるのは誰かを慕い愛する人の想い。

    特に印象に残ったのは表題作「虫と歌」。
    虫から変異した弟がある日突然やってきて家族の仲間入りをするが……
    ほろ苦く哀しい読後感。
    最後の場面、机に突っ伏して苦悩する長兄の姿にどれほど胸を打たれたことか。
    四季の移り変わりを切り取った場面が静かで美しく描写が淡々してるだけに、余命を知った上での選択が胸に迫りました。

  • 市川春子さんの作品の、漫画ならではの表現。本当に凄いなぁと思う。
    前回読んだ時はあまり漫画に慣れてなかったのか若かったのか、ところどころで意味を解することができてなかった部分があった気がする。
    今、やっとしっくりくる形で読むことができて、地味に感激している。

  • 表紙を見て直感でこれは面白いだろうと思った。
    家族愛や兄弟愛がテーマだが、どの話も人と人ならざるものが主である。
    シンプルな線と影と光の描写で描き出される壮大で愛おしくも切ないストーリーはぜひ読んでほしい。

  • 悲しい
    寂しい
    だけど愛おしい。
    噛み締めるほどじんわりと胸に響きます。
    (2009年12月6日)

  • この本をおすすめしてくれた本屋さんには感謝してもし足りない。
    本当に出会えてよかったです。

  • 初めて読んだのは私が大学生の頃、後輩の本棚にあったのを借りて読んだのが最初だったと思います。その時は、とにかく雰囲気が素敵だったなぁと、そんな印象がおぼろげに残っています。
    最近になってたまたま本屋で見かけて、『25時のバカンス』と一緒に売っていたのを見て、また読みたくなって購入しました。

    切なくもはかないラブストーリーですね。絵のタッチも含め、切なさとはかなさが胸に迫るような小品ばかりです。「人外との恋愛モノ」と言ってしまえば確かにその通りなんですが、不思議と感情移入出来るくらいには、うまい言葉が見つからないんですが、「自然」なんですよねぇ。

  • 面白い!!二度読みで更に面白味がましたような
    表紙もすっごい凝ってらっしゃるなぁ・・・
    表題作の虫と歌が一番好k
    いや、全部好きだ!

  • これいい。

    一度ではわかりにくいけど、
    二度三度と読み返すほど
    味が出て深く心に入ってくる。

    ヴァイオライトが特に好き。

  • 人のまねの出来ない科学的発想と軽やかな描線、人を喰ったキャラ、そして真面目な生命の謎に対する探求である。社会性がほとんどない分、その射程は遠くまで届くだろう。

  • 市川ワールドに引き込まれた

  • 残酷で、後味は決して良くないのに、それでいてどこか優しくて、折に触れて読み返したくなる。
    そんな不思議なエピソードばかりの短編集。
    個人的には「日下兄妹」が一番好きです。

  • 特に日下兄妹が大好きです。ヒナの成長や図書館の本棚などの細かな描写(仕掛け)に胸を打たれます。「お兄ちゃんのことすきよ」というセリフに号泣しました。他のお話も大好きです。静かで淡々としているけれど切なさや面白さをしっかりと書いていました。

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