黄色い本 (KCデラックス)

著者 :
  • 講談社
3.90
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (154ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063344882

作品紹介・あらすじ

小説の主人公に自分を重ね、図書館で借りた本を読みふける少女。名作「チボー家の人々」を題材に採った表題作のほか、3編を収録。会社の片隅で繰り広げられる、恋か?セクハラか?本人たちにもわからない小さな騒動「マヨネーズ」、ボランティアが派遣先で起こすスリリングなすれ違い「二の二の六」など、バラエティー豊かに人生の真実と上澄みをすくい取る、たぐいまれなる作品集。ユーモアとクールな距離感が織りなす絶妙なバランス、名手による4編の物語をお楽しみください。

感想・レビュー・書評

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  • 借りて読んだ本
    週刊連載の漫画に慣れてるせいか
    読み解くまでに時間がかかった
    でも、コマ割りとセリフの配置で
    リズムを生み出してるのに気づく
    読むほど良く感じる。

    この漫画家さん
    テレビの音が聞こえないところで書きたい
    という理由で風呂場の脱衣所で
    紙広げて描いてるって
    話が書いてあったけど…どういうこと!?

  • 「自分は実っ子だ...。」
    そう思う読書好きは多いと思う。
    偶然出逢った本にのめり込み、車中でも、お布団のなかでも、読んでないときでも、登場人物たちと共に生き、会話をし、そのなかのひとりに恋をし、物語の終わりには別れがくる。
    そういう本は限られていて、実っ子と『チボー家の人々』のような幸福な関係にはなかなかならない。
    本の世界が日常生活を侵食してくるような関係には。

    実っ子は学校の卒業を控えていて、冬が過ぎれば図書館の本を返し、就職しなければならない。
    そう、社会ってやつに組み込まれるのだ。
    たいして『チボー家のひとびと』は革命や恋、非業の死に彩られた世界。
    どんなに望んでも願ってもその‘世界’には行けない。

    うまいなあ、と思ったのは実っ子を夢見る少女ではなくリアリストとして描いたこと。ちゃんとそういうことは‘覚悟’しているのだ。

    でも‘現実’で気になった男の子へのほのかな思いを‘本の世界観で’書き消していたのには笑ったなあ。

    「ジャック!彼に騙されてはいけません!彼は同士ではありません!」

    そんな本に出逢えた娘に気づき、

    「好きな本を一生もってるのもいいもんだど」

    と注文してくれる父親に胸一杯になる。

    『マヨネーズ』と『二の二の六』のふたつの高野さん的恋愛漫画も好きです(^-^)/

  • 『チボー家の人々』を読みふけり、登場人物とともに生きる少女を描く『黄色い本』など、漫画家高野文子さんの4つの作品を収める。

    高野文子さんの漫画は『ドミトリーともきんす』に続いて2冊目。最初は、独特の間があって、言葉ではなく情景で伝える漫画に慣れなくて、「?」というところも多かったが、何度か読み返していくうちに、じわじわと理解が追い付いてきて、味わい深くなってくる。

    物語の登場人物と会話することはなかったが、私も昔は主人公の実っちゃんと同じように、布団にくるまりながら蛍光灯の灯りを頼りに夢中になって本を読んでいたな、と懐かしくなった。
    また、私は高校生の頃海外の小説ばかり読んでいたが、今思えば、実っちゃん同様自分の周りにはない異国の暮らしぶりにロマンを感じていたのかもしれない。

    実っちゃんよりもお父さん、お母さんの年齢に近くなった今、心に残るのはお父さんが実っちゃんにかける言葉の数々だ。
    現在は「プロレタリアート」として生活に追われているが、子どもたちに本を読み聞かせ、本の間違いを訂正してしまうお父さんは、かつて読書家であったことを彷彿とさせる。現実的なお母さんは空想にふける実っちゃんを困ったものとして見ているが、お父さんは本に夢中な娘をやさしく見守る。

    高校を卒業したら肌着専門会社の工場で働くことになる実っちゃんに「おめでねば編めねえようなセーターを編む人になればいいがなあと俺(おら)は思うんだ」とのんびり言葉をかけるお父さんは、もしかしたら、自分にしかできないことをやりたい、という夢を持っていた昔の自分と実っちゃんを重ねていたのかもしれない。
    図書館で借りた『チボー家の人々』を大切に読んでいる娘に、本を買うか?と聞き「好きな本を一生持ってるのもいいもんだと俺(おら)は思うがな」といってくれたのは、実っちゃんにはうれしかっただろうな。
    結局実っちゃんは『チボー家の人々』を買わなかっただろうし、読んでいた本は図書館に返却してしまったけれど、チボー家のジャックと過ごした日々は、きっと一生実っちゃんとともにある。

    他の短編では『マヨネーズ』が印象に残った。
    スネウチさん、不器用さんなのかもしれないけれど、やっていることは完全にセクハラだ。でも、たきちゃんが逆に気になっちゃって、お互いに少しずつ相手の人となりを知っていって、最後には恥ずかしいくらいののろけでよかった、よかった。

  • 貸してくれた先輩に感想をなんて伝えようかとても迷う。

    読書の終わりはお別れなんだ。
    最後のページを何度も開き、この世界に入り込みたい、この人達のここからの時間を共有したい、と思った時の気持ちを鮮明に思い出す。

    「好きな本を一生持ってるのもいいもんだと俺は思うがな」
    というお父さんの言葉に頷きながらも、実ッコちゃんは買わないんじゃないかなと想像する。
    そしてなんとなくその気持ちも分かるような気がする。

  • なんでこの本が手元にあるのか?何かの本紹介でのお薦めだったのか?あまりにも難解。漫画であっても楽しさ皆無。後味悪し。本棚に入れるのもためらう。

    でも調べるとこの本、手塚治虫文化賞 (第7回, マンガ大賞)〔2003年〕受賞作品なんですよね・・・あれっ。

    でも、肌に合わないものは、やはりダメですよね。

  • 『チボー家の人々』を読み始めたので、モチーフになっているというこちらのコミックを。表題の「黄色い本――ジャック・チボーという名の友人――」で主人公の女子高校生・田家実地子(たい みちこ)が愛読しているチボー家は、現在入手可能な白水Uブックス版ではなく、まさに私が読書中の古い版(母所蔵)と同じもの(https://booklog.jp/users/yamaitsu/archives/1/4560042012)。真っ黄色というより薄い黄色で、しかも褪色して黄ばんでるけど、ああ、同じ本だ、と不思議な気持ちに。

    図書館で借りたチボー家を愛読するみっちゃんの幸福かつ煩悶する時間。ジャックを心の友に、心の中で対話することで、自身の現実とも向き合い、成長していくみっちゃん。ああ私にとっても10代の頃の読書はこんな体験だったなあと思いだす。ある種の本の登場人物たちは、自分と一緒に悩み、成長し、実在の友人や家族以上に、親身に相談に乗ってくれる存在だった。彼らがいなければ、今私は生きていなかったとすら思う。そういう幸福な読書体験を思い出させてくれた。

    みっちゃんとジャックの別れは何とも切ない。私はまだそこまで読み終えていないけれど、きっとあのメーゾン・ラフィットの美しい季節を、何度もふりかえり思い出すだろう。

    すっかりおばちゃんの私は、すでにジャックを友人として読むことはできず、すでに大人のフォンタナン夫人などにもっぱら同情しながら読んでいるけれど、10代の頃に読んでいたらきっとジャックと友達になれただろうなあ。そして私が生れる前のこの本を、若き日の母が嫁入り前に読み、嫁入りにも持参し、半世紀以上大切に本棚に仕舞っていたことにも想いをはせてしまう。母もかつてはみっちゃんのような少女だったのだろうか。

    ※収録
    黄色い本/CLOUDY WEDNESDAY/マヨネーズ/二の二の六

  • 学生時代からこれまで何度読み返したことか。
    現実との境界が曖昧になるほど、本の世界に入り込んでいくあの感じ。そんな読書体験、最近はいつしたかなぁ。
    主人公の少女と周りの者とのやりとりにも、ノスタルジーや愛を感じる。私は特にトーチャンとの何気ない会話のやりとりに心打たれた。
    「いつでも来てくれたまえ メーゾン・ラフィットへ」
    この言葉と最後のページに、いつも胸が熱くなる。

  • 表題作は★★★★★
    もちろん他も素晴らしい。
    高野文子は一生読める漫画。
    読み捨てではなく家に永久保存したい本。

  • 30年ほど前、高野文子の「絶対安全剃刀」を読んだときはびっくりした。構図といい、その平坦なストーリーといい、これって漫画という枠じゃないよな、と衝撃的だった。当時は「ニューウェーブ漫画」と呼ばれていたっけ。
    その後の作品には、あまり驚きはなく、追いかけていなかったが、先日、ある本棚で新作を見つけた。

    いいねえ、やっぱり…、いや傑作かも、表題作は。

    現実逃避としての読書体験をみごとに描きつつ、それだけに終わらない。「本を読むクワク!」とは違う感じ…というかそれだけじゃない。
    「日常」を描いた漫画(映画、小説)は多いが、日常を描くだけに終わってしまっているものが多い。日常の奥にある不穏な空気や悲しみや時代感などを感じさせないと、深みのない表面的な雰囲気だけの作品にしかならない。
    高野文子の漫画からは、日常の奥にある「何か」を感じさせる。

    ラストで「チボー家の人々」を読んだ主人公は、図書室に本を返却する。父親の「好きな本を一生持っているのはいいものだ」というアドバイスには従わず、本を買うことはないだろう。

    面白い!と勧められたけどあまりの長さに読むのを諦めた「チボー家の人々」、やっぱり読むべきかなー。

    • GMNTさん
      僕も、これ読んで『チボー家の人々』を読んでみたくなりました。
      読んだらもっと面白くなるかな?と思って。
      でも白水Uブックス全13巻てのに引い...
      僕も、これ読んで『チボー家の人々』を読んでみたくなりました。
      読んだらもっと面白くなるかな?と思って。
      でも白水Uブックス全13巻てのに引いてしまいました。
      こればっかりは図書館で借りた方がよさそうですね・・・。
      2013/09/26
    • chabu-daiさん
      13巻はめげますよね。
      ジャックの部分だけ抜粋した
      http://booklog.jp/item/1/4560047766
      もあるようなので...
      13巻はめげますよね。
      ジャックの部分だけ抜粋した
      http://booklog.jp/item/1/4560047766
      もあるようなので、これから読もうかな、と。

      「黄色い本」、全く知らなかったんですが、2003年の手塚治虫賞作品で、すでに「傑作」認定されている作品なんですね。
      2013/09/27
    • GMNTさん
      あっ、そういうの出てるんですね!
      これだったら読みやすそう!

      『黄色い本』は「ほめられたらいかれ よろこんだらはじろ」のセリフだけ
      他のこ...
      あっ、そういうの出てるんですね!
      これだったら読みやすそう!

      『黄色い本』は「ほめられたらいかれ よろこんだらはじろ」のセリフだけ
      他のことで知って、それで元ネタを探したらたどり着きました。
      ニューウェーブだと高野さんのことだけを全然知らなかったんです。

      ブクログ始めてから、高野さんがめちゃくちゃ知名度が高かったのでびっくりしましたよ。
      (特に若い人にも。)
      『黄色い本』は特に、「読書についての漫画」だからなんですかね・・・。
      『おおかみこどもの雨と雪』の劇中の本棚にも入ってるそうです。
      2013/09/27
  • 長年の目標だったチボー家全巻読了を記念して最後のしめに読む。

    前回読んだとき(2009年1月)の感想-----自分自身の「黄色い本」の思い出と相まって読むたびに胸が熱くなる。ラスト近く「好きな本を」「一生持ってるのもいいもんだと」「俺は」「思うがな」の父親のことばで泣いてしまう。

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著者プロフィール

高野文子(たかの・ふみこ)
1957年新潟県生まれ。漫画家。1982年に日本漫画家協会賞優秀賞、2003年に手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。作品集に『るきさん』『おともだち』『絶対安全剃刀』『ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事』『棒がいっぽん』『黄色い本』がある。漫画作品の他に、絵本なども手掛ける。

「2022年 『増補 本屋になりたい この島の本を売る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高野文子の作品

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