ストーリー311 (ワイドKC Kiss)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063377798

感想・レビュー・書評

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  •  『温故知新3.11 #4 コミック④』
       ー『ストーリー 311』ー

     講談社の漫画雑誌『Kiss』の無料WEBコミックサイト「デジキス」で連載('12.3.11〜'13.1.11)された作品が収録されています。2013.3.11発行。
     「語り継ぎたい想いがある」「残したいストーリーがある」をテーマに掲げ、多くの企業・団体の協賛・協力を得て生まれたプロジェクト第一弾らしく、<本書の印税は全額、被災地復興のために寄附>と謳っています。素晴らしい!

     参加は以下の11名の漫画家さん(敬称略)です。
    ひうらさとる、上田倫子、うめ、おかざき真里、岡本慶子、さちみりほ、新條まゆ、末次由紀、ななじ眺、東村アキコ、樋口橘

     取材に基づいた漫画という点は『ふくしまノート』と共通していますが、一話完結のオムニバスなので、画風も含めそれぞれ個性的な短編作品集という印象です。ややドラマチックなのは否めません。
     やはり一人8ページという制約は余りに厳しく、漫画にするにも困難を極めたことが伺えます。悪しく言えば、やや深みに欠けるアンソロジーでしょうか‥。また、個人的に「ちょっと乙女チックな作画で苦手だなぁ」という作品もあり‥。ん?『Kiss』は女性漫画雑誌か! そういうことね。

     しかしながら、各話の最後の1ページ分に作者のあとがき・取材後記があり、よかったです。
     描いていいのかという葛藤、描ききれないもどかしさ、それでも伝えようとする覚悟など、(失礼ながら)本編以上に心に響きました。

  • 友人のfacebookで知った一冊、e-honでお願いして店頭でゲット。
    帰りの電車で読んでいたら、結構やばいことに。。

    東日本大震災にまつわる実話をもとにしたアンソロジーになります。
    11人の作者の方の、「伝えることの覚悟」が伝わってきました。

     「伝えるっていうのは、すごくすごく覚悟のいることなんですよ」

    何を伝えていけばよいのだろう、何を受取っていけばよいのだろう、
    そんな呻吟を経て生み出された物語は、そのどれもが印象的で。

     「ここに来て、飯食って酒飲んでお土産話持って帰ってくれれば、それで十分ですよ」

    「苦しみを、少しでも分かち合っていくことが大切との思い」、
    あらためて、陛下のこのお言葉を忘れずに、震災後3年目を歩んでいきたいと。

    ガンバレではなく、ガンバロウだけでもなく、ガンバルゾとの覚悟を込めて。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「結構やばいことに。。 」
      此方は知らなかったので、次はコレを読みます。
      「結構やばいことに。。 」
      此方は知らなかったので、次はコレを読みます。
      2013/06/04
    • ohsuiさん
      nyancomaruさん
      涙腺へのダメージがなかなか強烈でした、、おうちで読むのがおススメです。。
      nyancomaruさん
      涙腺へのダメージがなかなか強烈でした、、おうちで読むのがおススメです。。
      2013/06/05
  • ひとりの漫画家に託されるのはたった8ページなのに、まんがという表現手段はとてもたくさんのこと、深いことを伝えてくれます。
    伝えきれないことに対して、漫画家さんたちが、恐れを感じながら描いているのがよくわかります。恐れながら、それでも描き伝えたいと思う心を、その描線の丹念さに感じます。
    全部はとても無理でも、その一端でもいいから伝え、記憶を共有したい。忘れないでいたい、という著者たちの気持ちに、共感せずにいられない掌編集です。

  • 『あの日』から起こった出来事を女性気鋭の漫画家たちが自ら現地に赴き、取材を重ねて描かれたオムニバス漫画です。さまざまなエピソードがありますが一番印象的だったのは料理人兄弟の避難場所での話でした。

    2011年3月11日。東日本大震災で被災した現地の様子を気鋭の女性漫画家たちが自ら現地に足を運び、ここで拾い集めたエピソードを漫画化するというオムニバス作品です。

    「漫画に描き残すことで“語り部”的な役割を果たせないだろうか? 」
    その一心で描かれた話は、本当に胸に迫ってくるものがございます。鮮魚店で働く若者は被災し、「生かされた」命を故郷をPRする仕事につくという形であらわし、ある被災した家族は買出しに行き、やっとの思いでたどりついたスーパーで見知らぬおじさんからジュースをもらい、それを避難場所で待つ自分の娘の下へと届ける。

    福島県に在住する小学校の女性教師は生徒とともに現地に暮らし、取材の後日談では結婚もされたということで読みながら胸をなでおろしたことを書きながら思い出しました。南三陸町で被災した料理人の兄弟は瓦礫の中から何とかして食べるものを探し出し、マヨネーズや醤油を見つけ出したり、また、めかぶや鯖缶を使い、乏しい機材を何とかして動かし、『料理人』のプライドをかけて料理を作り避難場所にいる人々に振舞う姿はとても印象に残っております。

    本書の単行本と電子本の印税全額と出版社利益の一部は被災地に寄付されるということですので。そういった取り組みは本当に尊いものであると思います。

  • あまちゃん震災回からの流れで購入w
    想像以上に踏み込んだ作りになっていたのにびっくり。その辺の心情を少女漫画ならではの繊細さで描かれていて、すうっと心の中に入ってくる。

    ただ、やはり頁数の少なさが惜しいとゆーか、もったいないとゆーか。チャリティで描いていただいてるのは百も承知ではあるが、痒いところまで手が届きそうで届かないところがモヤモヤと。

    とは言え、このようか形で普通のひとの心情やエピソードが一冊にまとめられたことには大いに価値があるとは思うし、関わったすべてのひとびとにありがとう!と言いたい。

  • 限られたページ数なので、もう少し深く読みたいなと感じる作品もあるのですが、とはいえ、涙なしでは読めませんね。漫画という形なので読みやすいし、これからも一人でも多くの人の目に触れるとよいなと思います。

  •  東日本大震災を描いたマンガが、この3年間でたくさん出ている。仕事でそのうちのいくつかを読んでいて、これもその一つ。
     講談社のウェブコミック「デジキス」(『Kiss』のウェブ版)で連載されたものの単行本化。東村アキコ、末次由紀、おかざき真里、新條まゆなど、第一線の人気マンガ家たち11人が参加している。印税・著作権料は、全額被災地復興のために寄付されるという。

     各マンガ家が東北被災三県に取材に赴き、被災者の体験をマンガ化している。

     貴重な試みではあるし、マンガ家たちが取材を編集者やライターまかせにせず、自ら行っている誠実さも好ましい。
     しかし、一人あたり8ページという制約のせいもあって、どの作品も総じて印象が薄い。文章で書かれた被災体験記を、絵に置き換えただけという感じ。マンガという表現形式の強みが活かされていないと思う。

     唯一心に残ったのは、樋口橘(ひぐち・たちばな)が寄せた作品で、6歳の女の子に父親が津波による母親の死を告げる場面。父は「どう言葉を選べば一番優しく伝えることができるだろうか」と思案したすえ、こんなふうに言うのだ。

    《「キラキラしたママを見つけたよ。羽があって天にのぼっていくママを見つけたんだ」》

  • 良質な企画から出来た本だと思う。
    でも一人の漫画家に割り当てられたページ数が短すぎて、漫画家もむりやりページのためにストーリーを削り過ぎた感じあり。

  •   ネットで趣旨を知って以来、発売を心待ちにしていた一冊。

     よくある感動もの、実話再現ではなく、「そのあと」「何をし、なにを考えたのか」「そして、どんな決断を下していったのか」という断片が生々しく切り取られている作品ばかり。
     ここに書かれていることは、決して他人事ではない。日本に暮らしている以上、自分たちの身の上に起こることなんだということを痛感させられた。
     まだ終わっていない。まだこれからなのだ。そのために、私たちは何が出来るのか。どんな支援ができるのか……ということを、深く考えさせられた。


     そして。
     収録された作品の中で、一番心を揺さぶられたのが、原発事故から生じた放射能(あえて「放射能」と記載します)由来の不安と恐怖に翻弄されるお母さんたちのエピソードだった。

     不安と恐怖は、正常な判断力や理性を低下させる。対処知識がないということは、それにさらに輪をかける。
     目に見えない放射性物質が自分の子供に取り返しのつかない健康障害を引き起こすかもしれない……という情報が、お母さんたちに与えた不安と恐怖はいかばかりのものだっただろう。

     大事をとって、危険喚起のために、大げさに知らせることも必要なのかもしれない。「心配しすぎて馬鹿みたねー」と、後で笑い話にできるくらいのほうがいいのかもしれない。

     けれど、私に甲状腺異常(橋本病)があるのが発覚したときに、母親がどれほど衝撃を受け、自分を責めていたか。
    (良性のもので、結婚も出産も問題なくできるものだったのに)
     そして落ち込む母親に対して、主治医が何度も何度も粘り強く、

    「気がつかないでいるだけで、甲状腺に腫瘍を持っている人はものすごく多い」
    「お母さんのせいではない。誰も悪くない」
    「むしろ早く見つかってよかった。きちんと治療したらちゃんとよくなる。ナントカ水とか健康食品を試す前に、まずはきちんと検査をしましょう」

     と、話していてくれたことを日記で知った私は、とてもじゃないけど、そうは思えないのだ。
     むしろ不安を煽るだけの「情報」をネットで流したひとたちに対して、怒りすら覚えるわけで。
    (健康食品というのは、親戚がソレ関係にハマっていたため。当然のように、これ飲めば治るから!と持ちかけられていた)

     正しい情報を得るということ。自分で判断するということ。
     闇雲な恐怖は、これを邪魔することしかしない。
     

  • 泣きました。
    上手い感想は書けないけど、被災地や著者のかた、読者のそれぞれの想いが、
    これからにつながればいいなと思いました。
    将来、自分の子供にも読ませようと思います。

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著者プロフィール

1984年「あなたと朝まで」(なかよしデラックス8月号)でデビュー。1986年ロンドンからやってきた恋のキューピッドが活躍する「ぽーきゅぱいん」が大ヒット。以後、「レピッシュ!」「月下美人」「プレイガールK」、テレビドラマ化され話題を呼んだ「ホタルノヒカリ」など、代表作を次々と発表。ポップでキュートなシンデレラストーリーが読者の心をつかんでいる。
現在、最新作「うらら」をKissにて絶賛連載中!

「2012年 『ホタルノヒカリ(7)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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