作品紹介・あらすじ
子どもの頃、よく遊んだ場所で妻と二人きり。妻に見せたかった風景に囲まれながら、思い出話に花を咲かせる至福の時間。それはどこにでもある仲睦まじい夫婦の姿。でも、何かが変。ボタンを掛け違えたかのような違和感が…。「走馬灯の中で、これから一緒に暮らそう」妻の言った一言で、すべて理解ができた。なぜいるはずのない妻に出会えたのか。『とろける鉄工所』の野村宗弘が描く純粋な愛の物語。
感想・レビュー・書評
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下巻まで一気に読了した。号泣寸前まで涙腺が弛んだものの、そうならなかったのは、このお話がどうしようもない悲劇であると同時に、何物にも代えがたい幸福を表現した作品に他ならないからだ。慎ましく美しい思い出と、残酷で醜い記憶が、とぼけた会話を織り混ぜながら交互に展開する。そして物語はあっけない幕切れを迎える。ラストシーンで主人公が倒れるときの音は、生が終わる音だ。それがあまりにも小さくて軽くて、今も切なく心に響いている。
北野武監督に映画化してほしい。
著者プロフィール
1975年生まれ、福岡生まれ広島育ち。約6年間、溶接工として働いた後、06年に高知新聞社主催「第18回黒潮マンガ大賞」準大賞受賞、07年「第5回イブニング新人賞」奨励賞受賞後、本作品にてデビュー。現在、「やわらかスピリッツ」にて『うきわ』を連載、『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社)にて「そう言やの カナ」を不定期連載中。作品は『カタミグッズ』『ものものじま』な多数。
「2013年 『とろける鉄工所(10) <完>』 で使われていた紹介文から引用しています。」
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