すべてがちょっとずつ優しい世界

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著者 : 西島大介
  • 講談社 (2012年11月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・マンガ (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063649062

すべてがちょっとずつ優しい世界の感想・レビュー・書評

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  • 言葉で感想を綴ることすら、きっと野暮。
    そういう物語だと思います。
    童話のような形式をもって静かに語られる本作は、執筆された時期も時期ですし、これから色々な人に、色々な意味付けをされるのでしょう。様々な描写が、今の私たちを包む状況についての隠喩と見なされて、物語は明確な意味を帯びてくる。きっと、そうなることでしょう(そして作者も、少なからず隠喩を、意味を、意識して描いたのだと思います)。
    けれど私は、この物語はそういう風に読むものではないように感じました。この物語からは、あらゆる「意味」は排されるべきだと。ここにあるのは、ひどくデリケートな感情そのもの。ただ、それだけなのではないかと。
    意味づけなんていらない。ここに描かれた小さな村を見つめながら、心に湧きあがるものを感じるだけでいい。そういう意味で、帯にも記されているように、これは正しく「祈り」の物語なのではないか。
    ちょっと巷の物語に意味が溢れすぎている今だからこそ、こういう物語が必要なのかも知れない。なんて、これもまた野暮な意味づけなのですけれど。
    少なくとも、物語の終盤、モノローグとともに立ち尽くす村長を目にした時に、こみ上げてくるもの。それだけはあらゆる意味を超えて、紛うことなき本物です。
    そしてただそれだけをもって、この一冊は名作に値するのだと、私は思います。

  • オーロラがなくなったとき、かぼちゃさんが戻ってこなかったとき、ぼうやが村を出て行ったとき、寂しさを感じた・・・。
    ヴィレバン下北沢にてサイン会参加。

  • 静寂と闇が支配する、くらやみ村。
    ある時『くらやみ村をちょっとよくするご案内。』が届き、街から人がやって来る。
    やがて村に光がもたらされる。
    それによって村人たちが得たもの、失われたもの。
    良かれと思ったものの、取り返しのつかないことになってしまった事柄。
    物語の終盤は切なくて胸が苦しくなる。
    少しだけ希望の見えるような余韻を残した終わり方が好きです。

    たまたま本屋で目に留まり、装丁に惹かれて購入。
    小さな村の選択と変化が柔らかい絵柄で淡々と描かれていますが、扱っているのは結構重いテーマだなと思います。
    読みながら色々な感情が込み上げて来たけれど、それを言葉で表すのが凄く難しい。
    この本、帯が二重で掛かっています。
    その小さい方の帯に「福島」という文字がありましたが、これ、福島の原発を暗喩してるんですね。
    読み終えてから大きい方の帯を外してみると何とも言えないくらい切ない。
    そして更にカバーを外してみると…。

    本当に大切なものは何なのか、それを亡くしてから気付く、というような残酷さと切なさを感じました。
    繰り返し何度も読んで、込み上げてくる感情を味わいたい、そんな作品でした。
    うーん、やっぱり上手くまとまらない。

  •  とある小さな島の、誰からも忘れられた小さな村。暗闇に包まれた「くらやみ村」は静寂に満ちている。数少ないが住人も動物もおばけもいる。朝が来ない村は常に暗く静かで、夜空にはオーロラが輝くがそれ以外は何もない。質素な生活の中で、それでも住民たちは年に一度の村祭りを楽しみに、満ち足りた毎日を暮らしていた。
     そんなある日、村を大災害が襲う。日々の生活もままならなくなった村は以前「街」の人から持ちかけられていた「ひかりの木」の植樹に乗り出す。村に光を灯すことは許されないことだったが、これで村は豊かになれるのだ…。

     コミカルだけどどこか毒味のある画風で多数の作品を発表しているマンガ家・西島大介が2011年~2012年にかけて雑誌「モーニング・ツー」に発表した作品の単行本化。東日本大震災以降、多くの作家がそれをテーマに作品を発表してきたが、このマンガもその一つ。大胆に省略された画風は一見低年齢向けの柔らかい物語を想像させるが、中身は非常に静謐で深遠な想いが描きこまれている。
     悩みぬいた末小さな子供のために「ひかりの木」受け入れを決断する村長。寓話的ストーリーとはいえその姿は原発建設に踏み切った福島の人々の姿を容易に想像させる。デフォルメされた絵柄だからこそ切実さが迫ってくる。
     みんな、誰かのために何かを思って生きている。動物も、自然も、おばけさえも。そう、みんながちょっとずつ優しい世界。だがその世界は緩やかに破滅への道を歩み始めていく。みんなが良くしようとした世界は。
     だから、このマンガは小さな小さな祈りの物語だ。密やかで優しくて、寂しい祈りの物語なのだ。

     広島に暮らす西島大介にとって、東日本大震災はどんな影響を出来事だったのだろう。当然僕らには知りようもないのだけど、日本中が悲しみと祈りに包まれたあの災害の記憶はこのマンガ家にもきっと大きな影響を与えたのだろう。広島から福島へ。核の脅威に翻弄されてきた二つの都市に想いを寄せつつ、マンガ家が描き出した優しい物語。
     主軸となるストーリー以外にも、村の炭鉱がたどってきた歴史や村長の過去など枝葉の物語にもドラマチックな展開が容易されているが、それらは極力省略されて描かれている。シンプルな画風に無駄を削ったストーリー。その描き方はあまりにも重い村の歴史をそっと語りかけてくれるので、僕らの心にもすっと入り込んでくる。

     ひかりの木に何かが起きた途端、ずっと無視してきたくせに「大変なことになった どうしてこの村に あんなものを植えたのか?」と文句をつける老科学者。恩恵を十分受けておきながら「ぼくはまえからあの木を好きじゃなかったな」と語るピアニスト。3人組の「かぼちゃさん」たちはいつも一緒に行動しているが、一人だけ違う意見を持つかぼちゃさんはなんか居心地が悪そうだ。
     そんな暗喩というにはあまりにもストレートな現実世界の投影に、読者は考えさせられるところが多いだろう。

     西島大介は自身のコミック「世界の終わりの魔法使い」の公式ブログにおいて本作にも触れており、<「こういうものも僕は描けたのか」と、不思議な気分。連載を経て形になった単行本は一冊で完結ですが、このタッチ、この世界はなんとなく将来ずっと描き続けるのではと漠然と感じています。それがマンガの形をとるのかどうかまだわからないけれど・・・>と述べている。
     この本では最後の最後に村の「再生」への片鱗を見せて終わるが、具体的な将来像は不明なままだ。不安に満ちたラストではあるが、この作者の言葉を見て少しだけ希望を感じた。現実の世界はあまり優しくなくて、暗い未来のビジョンしか見えてこないだけに余計にそう感じるのかも知れない。
     辛くても悲しくても人々の暮らしは続いていく。破滅を描くのが今は精一杯なのかも。でもこの物語は続いてくのだろう。

     この本は帯が2重に巻かれており、最初の帯はキャッチコピー等が描かれたいわゆる普通の帯である。2番目の帯は大きめの帯で、村のみんなのイラストが描かれている。この2番目の帯を外すと本来のカバーがすべて見えるのだが、そこには村のみんなが消え村長だけが残されている。寂しい雰囲気のカバーを見ていると胸が締め付けられるが、さらにそのカバーも外すと表紙にはおばけたちとオーロラが描かれている。造本にも深い意味が隠されている。

     またこの本と同時にリリースされたコンピレーションアルバム「どんちゃか ~0歳からの電子音楽シリーズその1~」は、ボーカロイドレーベル「GINGA」が子供たちに電子音楽の世界を紹介するために立ち上げたCD+マンガの新シリーズの第1弾。西島大介のマンガがボカロとコラボレーションしており、「すべてがちょっとずつ優しい世界」のスピンオフとして描かれた作品が収録されている。

  • 夜空の星々のきらめき、目の前にある電灯。なにかがうまく調和する世界のバランスは難しくもどかしい。一度でも損なわれてしまったものはもう元には戻らない。ゆるかやかに確かに。西島さんのマンガにある間が本当にうまく物語の雰囲気を醸し出している。よんでほっこりする、あたたかさとさみしさが。

  • 何が言いたいのかいまいち分からないけれど、糸井重里のゲーム(MOTHER)みたいなセリフや絵を感じた。

  • 胸がいたい。

  • 読むのがつらくなりますが、もやもやとしていたものが言語化されているのでたまに読み返しています。

  • 中身はさておき、タイトルが素敵ですね。
    現実もみんなちょっとずつ優しいから問題なんですよ。悪くしようと思ってるやつなんて基本的にいない。みんな優しい。いや、ちょっとだけ優しいんですね。
    それを言語化してくれただけで、この作品は良品。

  • 絵本みたいな童話みたいな漫画。

    深読みしようと思えば、いろんなストーリーやメッセージが受け取れる。
    帯には「広島⇔福島/過去⇔未来/僕たちの選択。」とあり、福島第一原発への思いが込められた漫画であることが推測できる。

    そう思って読むのと、そうでないのと、どっちがいいのかはわからないけど…。
    過去からずっと文明による進化とそれによって何かを失い続けてきた人間社会というものをぼんやりと考えさせられる話でした。誰も、社会を悪くしようと思っているわけではないんだけどなあ。

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すべてがちょっとずつ優しい世界の作品紹介

静寂と闇に支配された小さな島の小さな村。「くらやみ村」と呼ばれるその村は、夜が明けず、収穫はわずか。年に一度のお祭りを祝うにも楽器すらない。誰からも忘れられたその村にある日、街の人がやってきた。村に光をもたらす「ひかりの木」を植えないかと・・・。
「I Care Because You Do」で自身の過去を色濃く反映した西島大介が、震災を期に手がけた本作。語りえぬものに対して、それでも人は向き合っていく。

すべてがちょっとずつ優しい世界のKindle版

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