稗田のモノ語り 魔障ヶ岳 妖怪ハンター (KCデラックス)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063720600

感想・レビュー・書評

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  • 諸星大二郎強化週間につき再読。

    対象物があらかじめ存在していて、それに名前をつけるという考え方は、「名称目録的言語観」と呼ばれる。
    その考え方は言語学者のソシュールによって否定された。ソシュールによれば、対象物(モノ)は存在せず連続した世界から、言葉によって切りとることで、その対象物は生まれる。世界は言葉によって生成されるのだ。
    一度、概念が確定し名前が決定すると、その概念にあてはまるものはその名前で呼ばれる。
    たとえば、ワンワンと鳴く動物を「犬」と規定すると、スピッツでもドーベルマンでも大きさや形状は違っても同じ「犬」である。
    人は、未知のモノを見たとき、自分の知っている概念の中から、その特徴に一致したた名前でそれを呼ぶ。

    じゃあ、何ものでもないモノと出会ったとき、どう呼ぶのか?

    魔障ヶ岳で出会った何モノでもないものと出会った3人が名前を付ける話。
    何者でもなかったモノは名前を付けられ「神」や「魔」、死んだ恋人になる。
    でも結局、「そのモノ」はやはり何ものでもない。
    名前を付けなかった稗田に対して、モノを使う女は名前を付けろと執拗に迫る。

    「そもそも言葉が生まれて初めて世界は世界としての姿を持ち始めたのだ」
    「鬼も神も魔も人間が名付けることによって生まれたそれ以前はただのモノだった」
    との稗田の言葉。つまり、モノは存在するけれども、それを何ものかにするのは、「名付け」によるもの。これってよく考えたら、願望を込めてまだ何ものでもない子どもに名前を付けるのと同じこと? 子どもの名前にこだわるように日本人は命名の力を信じているのだろう。

    で、最後の馬鹿馬鹿しいほどのオチ。携帯メールにより様々な名前を付けられてしまうモノ。聖なるもの(邪悪なもの)は、ネット上の集合痴によって、矮小化させられてしまう、ということ。

    これまでのッ、異界からの侵入してくる明らかな異形なモノではなくッ、
    名付けることでッ「魔」になるモノというのはッ、
    21世紀になっての何か大きな変化なのかッ??

    語尾に「ッ」を付けるだけの狂天風ラップで思ってみた。
    「妖怪ハンター」シリーズの中でも異色の作品。

  • 教ちゃんの稗田ラップがくそおもしろい。
    諸星先生ってなにげに若者カルチャーに勉強熱心だよね…

  • 諸星大二郎氏の作品『稗田のモノ語り 魔障ヶ岳 妖怪ハンター(2005)』を読了。

  • 稗田シリーズの新刊が出てるとは知らなんだ。しかももう11年も前じゃん……。

    これまでになくわかりやすいストーリーだが、「海竜祭の夜」「闇の客人」が好きな自分としては、十分堪能。

    「名をつけると実体化する」という「呪」のテーマは京極夏彦の京極堂シリーズにもあったような気がするけど、面白い。日本の神話・伝説の類を読みたくなる。

  •  

  • 何度目かの読み直しにつき記事編集。
    民俗学にも造詣の深い考古学者・稗田礼二郎が
    フィールドワークの途上で
    様々なあやかしに出会す「妖怪ハンター」シリーズの続き。
    魔障ヶ岳という山の中にある遺跡の調査を発端に怪事が発生する。
    過去の連作に比べるとラヴクラフト臭がしない。
    めっきりアクが抜けた感じ。
    しかもオチがとんでもなく軽薄。
    でも嫌いになれないの(笑)

  • 面白かった!

  • またシリーズものに手を出してしまった。。。長い旅が始まります。

  • ユリイカが諸星大二郎特集だとぉ!?…悔しい。でもどれもこれも素晴らしく面白い作品なので是非読んで。稗田先生いつ見ても怪しいです(ほめ言葉。あるのは謎だけ。このスタンスは民俗学者的だよなぁ。

  • この話が妖怪ハンターのなかで一番好きかもしれない。いや、一番じゃないな。っていう感じ。

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著者プロフィール

1974年、「生物都市」で手塚賞入選。「週刊少年ジャンプ」で「妖怪ハンター」連載デビュー。民俗学、中国の古典、SF等を題材に、幅広い分野で活躍する漫画家。代表作に「暗黒神話」「マッドメン」「西遊妖猿伝」がある。その独創的な作風から、高い評価を受け、2000年に手塚治虫文化賞マンガ大賞、2014年に芸術選奨文部科学大臣賞、2018年に日本漫画家協会賞コミック部門大賞等、受賞歴は多い。ジャンルを越え、多くのクリエイターに影響を与えたとされる。

「2019年 『幻妖館にようこそ 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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