火の鳥(4) (手塚治虫文庫全集)

著者 :
  • 講談社コミッククリエイト
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784063738582

作品紹介・あらすじ

仏像と鬼瓦づくりをめぐる茜丸と我王の物語平城京の都にて仏像と鬼瓦づくりにたずさわる2人の仏師・茜丸と我王。権力者の欲望に翻弄される2人を描いた「鳳凰編」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 徐々にハマりつつある、火の鳥シリーズ。

    第4弾となる鳳凰編、時代は奈良飛鳥の頃の日本、
    主人公は片手の悪党「我王」と、真摯に仏師を志す「茜丸」。

    奈良の大仏が建立された辺りを題材にしているのかな、
    なんとなく、子どものころに読んだのを思い出しました。

    当時は我王の鼻の大きさくらいしか印象に残っていませんでしたが、、
    思想背景に仏教の“輪廻転生”と“業(カルマ)”があるのでしょうか。

    物語が動くのは、周囲を傷つけながら生きている片輪の「我王」と、
    仏師を志し旅をしていた「茜丸」が出会うところから。

    我王に利き腕を壊された「茜丸」は、夢をあきらめることなく、
    その後不断の努力を重ねて大成し、大仏建立の仏師に。

    理不尽に茜丸を傷つけた「我王」は、その後も同様に、
    世に背を向けて生き、そして堕ち続けていきます。

    ここで終われば、努力で運命に打ち勝った仏師!的な、
    よくある大団円の物語だったのでしょうが、この後も続きます。

    「我王」は放浪中にとある僧と出会い、徐々に変わっていきます、
    一方の「茜丸」も都での権勢を重ねるにつれて、徐々に変わっています。

    それぞれがどう変わっていくのか、、そして、
    単純に善悪の価値観が変わるのではないところが、凄いなと。

    そんな二人が再会するのは、大仏建立の鬼瓦を競う場にて。
    そこには何の因果か、造形師としての才能を掘り起こした「我王」がいました。

    勝負の結果と、そこから引き出された“理不尽”のいきつく先は、さて。

    ん、善悪の判断がクルクルと入れ替わりながら、
    その判断基準すら溶けたところに“人の営みの業”を感じます。

    生きていくということは“理不尽”に立ち向かっていこと、
    その理不尽さとどう立ち向かっていくのかを、二人を通して。

    それぞれの生き方のいきつく先が、これまた対象的です。

    そして、輪廻と再生の象徴でもある火の鳥の、
    二人に対する意外なシニカルさも、印象に残っています。

  • 鳳凰編

    我王
    茜丸
    大仏建立
    橘諸兄 吉備真備
    政治と宗教

    我王の世に対する怒
    茜丸の名誉欲

    輪廻転生

    飢饉の厳しさ

  • 罪を犯したことよりもそれをいかに悔い改めることができるか、そこから何を学ぶかが大切だと考えれば瀬戸内寂聴が死刑に反対なのも理解できる。

  • 再読。シリーズ中一番好きな鳳凰編。

    我王と茜丸の物語。

    死とは何か、生きるとは何か。
    輪廻転生によって人の、生き物の運命は未来永劫ずっと決まっている。

    記憶がないなら次も人間になりたいとか思う必要ないのに。人間以外の何になったって、ただ自分の生を全うするだけ。人間だけが悩み、苦悩する。

    そんなに生きるのに煩わしいのなら、私は人間以外のモノになりたいけどなぁ。
    (161004)

  • 鳳凰編を収録。
    政治と宗教とが結びつき、政治のための宗教が発展した時代を描く。
    東大寺の大仏は、現代に生きる私たちにとっては観光名所にすぎないが、創建当時は庶民の苦しみの苦役の根源だった。大仏を作るにあたって、多くの資材が全国から調達された。
    例えば東北の金も、大仏に塗るために奈良まで運ばれたものだ。その金を命がけで採掘し、時には命を落としながらも採掘したのは誰だろう。他ならぬ庶民だったのだ。
    仏教は本来、庶民を救うためにあるものであるのにも関わらず、仏教の象徴である仏像を作るために庶民が犠牲になるという構図。当時生きていた人々は、大仏を作るという国家的大事業に怒りをおぼえていたに違いない。
    完成したものだけを見ている私たちは、この大仏のために犠牲になった多くの名もなき人々の存在感など想像も及ばない。そうした点に着目した作者はすごい。

  • 「鳳凰編」
    因果応報の考え方が薄れてきて、現代のモラルの低下を招いているのではないか。何か分からぬものへの怖れがあってこそ、人は善く生きることができるのではないか。ふと改めて、そう思い起こすことができた。
    試練に耐えて得た力は、誰にも奪われない。自身を磨く努力を心掛けたい。

  • 僕が初めて読んだ手塚治虫作品は、『火の鳥 異形編』でした。当時小学校低学年だった僕にとっては、『火の鳥』は怖い作品、そして大人の漫画として印象づけられ、その後、そのスケールの大きさに圧倒されながらも読み漁ったものです。

    日本人はなぜこんなに漫画が好きなのか、外国人の目には異様にうつるらしい。なぜ外国の人はこれまで漫画を読まずにいたのだろうか。答えの一つは、彼らの国に手塚治虫がいなかったからだ。

    1989年2月10日、手塚治虫が亡くなった翌日の朝日新聞・天声人語のこの一節を、彼のライフワークであった『火の鳥』を読み返すたびに思い出します。

  • 時は奈良時代。2人の仏師「我王」と「茜丸」が鬼瓦造りの腕を競う。我王の鬼瓦には、世の中の無情、権力闘争、生きることの苦しみといった「怒」が込められ、見る者を驚嘆とさせるが……。平城京の都を舞台にした『火の鳥』「鳳凰編」を収録。

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著者プロフィール

1928年、大阪府豊中市生まれ。「治虫」というペンネームはオサムシという昆虫の名前からとったもの。本名・治。大阪大学附属医学専門部を卒業後、医学博士号を取得。46年、『マアチャンの日記帳』でデビュー。幅広い分野にわたる人気漫画を量産し、『ブラックジャック』『鉄腕アトム』『リボンの騎士』『火の鳥』『ジャングル大帝』など、国民的人気漫画を生み出してきた。

「2020年 『手塚治虫のマンガの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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