昭和元禄落語心中(6) (KCx)

著者 :
  • 講談社
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  • / ISBN・EAN: 9784063807080

作品紹介・あらすじ

師匠と交わした約束を
胸にしまって芸を磨き
ついに与太郎、真打に。
射止めた名跡は三代目助六。
八雲師匠の為め、助六の血を継ぐ小夏の為め、
焦がれて手にしたはずなのに、
おのれの落語が揺るぎだす――。

八雲と小夏、二人の中の助六を変える為めの
与太郎の落語とは――!?

師匠と交わした約束を胸にしまって芸を磨きついに与太郎、真打に。射止めた名跡は三代目助六。八雲師匠の為め、助六の血を継ぐ小夏の為め、焦がれて手にしたはずなのに、おのれの落語が揺るぎだす――。八雲と小夏、二人の中の助六を変える為めの与太郎の落語とは――!?

感想・レビュー・書評

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  • 1巻~6巻まで読了。

    刑務所の落語慰問会で聞いた「死神」という噺に心打たれた強次は
    出所後その足で寄席に押しかけ、
    弟子をとらないことをポリシーにする有楽亭八雲(やくも)に
    持ち前の人懐っこさでなんとか弟子入りを果たす。

    強次は落語言葉で
    バカで間抜けな男を指す「与太郎」と呼ばれ、
    右も左も分からぬ寄席の世界で奮闘していく…。


    ヤクザから落語家への転身と言えば
    嫌でも宮藤官九郎脚本、長瀬智也主演の傑作ドラマ
    『タイガー&ドラゴン』を思い出してしまうけど、
    いやはや、それに負けず劣らず
    コレ、ホンマいい漫画なんです!
    (『ちりとてちん』『しゃべれども しゃべれども』にしても落語を題材にした映像化作品はなぜか良質なものが多い)


    まず、主人公となる与太郎が
    バカでお調子者なんやけど、
    子犬のような人懐っこさで何言われてもめげないし、
    ヤクザをやってたハンパ者やけど
    落語がホンマに好きやということがヒシヒシと伝わってくるんですよね。

    そして最後の大名人と呼ばれ
    落語と心中するが口癖の
    有楽亭八雲。

    このオッサンがまた、

    あっ、失礼!
    師匠がまた、どうしようもない頑固ジジイなんやけど(笑)、
    その反面、与太郎を孫のように
    可愛がっていて
    文句言いつつも
    いつも気にかけてるところが
    なんとも微笑ましいし可愛いんですよね(笑)

    そしてこの八雲、
    女を演じると途端に艶っぽくなり、
    その生き様からくる言葉や立ち振る舞いが
    なんとも粋で味があるのですよ!

    しかしなんと言っても
    八雲の良きライバルであり、
    稀代の天才と呼ばれながら
    若くして事故で亡くなった有楽亭助六の
    だらしなくて破滅型の生き様に、
    同じように阿呆な生き方をしてきた僕は
    どうしても共感してしまうんよなぁ~( >_<)

    あと助六の娘で
    彼の死後、八雲が養子として引き取り
    以来一緒に暮らしている
    料亭勤めの気の強い女性、小夏。

    小夏は自分の親父が死んだのは
    八雲のせいだと思い込んでいて、
    親である助六の芸をなんとか残したいと思ってるんやけど、
    女であることから
    落語家になることすら許してもらえず悶々とした日々を過ごしているんです。

    このへんのどうしようもない苦悩や葛藤が切なくて
    たまらんくなります。


    とにかく全編胸を打つ印象的なシーンの多い漫画やけど
    あえて好きなエピソードを挙げるなら、
    与太郎がヤクザ時代の兄貴分の前で
    初めて手応えのある落語を披露できたシーン。

    破門を取り消す代わりに
    与太郎に三つの約束を言い渡すシーン。

    小夏の母である芸者のみよ吉の報われない恋の話を聞いて
    助六が思わずみよ吉を抱き締めてしまう
    祭りの夜の切ないシーン、

    あとは
    縁側でまだ小さな小夏のリクエストに応えて
    「野ざらし」を披露する菊比古。(若かりし頃の八雲の名前)
    そこに助六が割って入る
    今は叶わぬ二人の豪華コラボのシーン、
    かな。


    それにしても
    臨場感溢れる落語シーンの素晴らしいこと。
    聞こえないハズの音が聞こえる
    落語漫画なんて
    初めて読んだなぁ~(笑)

    真打ち昇進披露で助六が『居残り』を話すシーンの
    心躍ること。

    同じ人間の幾通りもの顔を演じる
    助六の、その表情の豊かさに
    ネタを知らずともグイグイ引き込まれた。

    誰かが落語は消えゆく運命、
    落語なんてもう終わったなんて言ってたけど、
    (八雲も言ってたけどね笑)

    愛すべき眼差しで描かれる
    様々なバカな人間を主人公に据え、
    時代は違えど今も変わることのない
    「人間同士の交流の仕方」を物語に落とし込む落語という伝統ある芸能が
    そう簡単に死に絶えるわけがない。
    少なくとも僕はそう信じていたい。


    それにしてもシリアスオンリーではなく
    毎回おもしろおかしく描かれているにも関わらず、
    物語全編に漂う艶やかさと色気と
    読み終わったあとに香る叙情よ。

    はぁ~、たまらんなぁ~( >_<)

    こういうのを読むと
    小説もっと頑張れーって言いたくなる(笑)

    この巻では
    家族を背負い生きていくことを固く誓った
    与太郎改め「助六」の覚悟と
    決意表明とも言える
    ヤクザの親分への一世一代の啖呵、
    そして物語の最後、小夏が息子につぶやく
    「父ちゃんの落語が聞こえるよ」には
    激しく心動かされました!


    あっ、そうそう、
    余談ですが
    「ダ・ヴィンチ」誌上で言ってたけど、
    俳優の大泉洋が周囲から助六を演じるなら
    あなたしかいないと言われたらしく(笑)
    以来本人も作品にハマってるみたいです。
    (やっぱそこは天パ繋がりか!笑)

    僕の中でバカで愛嬌ある与太郎は
    やっぱ長瀬智也で自動的に変換されてしまうんやけど、
    実写化されるなら誰がいいんかなぁ~。

    個人的には
    小夏は若手実力派の蓮佛美沙子!
    これは鉄板!(笑)

    若かりし頃の八雲(菊比古)には
    ひょろっとした体格で色気のある若い役者と言うことで松田龍平か高良健吾か
    成宮寛貴かな~
    次点で玉木宏とか(笑)
    演技力と色気なら森山未來。

    爺様になった八雲は野村萬斎か松本幸四郎か。

    助六の若い頃なら
    「るろうに剣心」で相楽左之助役を演じた青木崇高が風貌からしてベスト。
    (演技力では前述の大泉洋やけど…)

    みよ吉役は色気という点で
    真木よう子、長澤まさみ、
    あと歳に目をつむれば麻生久美子かな(笑)

    • nico314さん
      円軌道の外さん、こんにちは。

      『ちりとてちん』大好きでした。
      円軌道の外さんのレビュー自体が、それを思い出させてくれる素敵な内容!
      ...
      円軌道の外さん、こんにちは。

      『ちりとてちん』大好きでした。
      円軌道の外さんのレビュー自体が、それを思い出させてくれる素敵な内容!

      落語って、当事者は振り回されて、困ったことにあーでもないこーでもないと言いながらも、人をまるごと受け止めてくれる温かさにじんわりします。

      この本も読んでみたいなあ。
      2014/11/12
    • 円軌道の外さん

      アセロラさん、ホンマご無沙汰してすみません!( >_<)
      そしていつも沢山のお気に入りポチ&あったかいコメントありがとうございます!
      ...

      アセロラさん、ホンマご無沙汰してすみません!( >_<)
      そしていつも沢山のお気に入りポチ&あったかいコメントありがとうございます!

      あっ、アセロラさんもダ・ヴィンチのインタビュー読まれたんですね(^^)
      作者はBL出身の漫画家さんらしいけど、
      とにかく吸収力のあるストーリーテラーで
      続きがホンマ読みたくなる漫画なんです!
      そして落語家がみな、粋で色っぽいのです(笑)
      アニメ化も決定したみたいなので
      機会があればまた読んでみてくださいね(笑)

      大泉洋での実写化も期待してるんやけどなぁ~(^^;)

      2015/04/06
    • 円軌道の外さん

      nico314さん 、遅くなってホンマすいません!( >_<)
      そしていつも沢山のお気に入りポチ&あったかいコメントありがとうございま...

      nico314さん 、遅くなってホンマすいません!( >_<)
      そしていつも沢山のお気に入りポチ&あったかいコメントありがとうございます!

      おおーっ! nico314さんも
      『ちりとてちん』観てらしたんですね(^^)
      主役の貫地谷しほりちゃんは落語も上手かったし、心のこもったホンマいい演技してましたよね。

      そしてnico314さんが書いてくれ
      た「人をまるごと受け止めてくれる温かさ」ってすげー分かります!
      落語に出てくる登場人物はみんなどーしょーもないバカばかりなんやけど愛されるバカやし、
      周りのみんなもなんやかんや言いながらも 
      バカな奴が可愛くて仕方ない感じが伝わってくるんですよね(笑)
      やっぱそこには人情味がある。
      どうしようもない人間を赦し、決してほったらかしにはしない社会も好きやし、
      笑ってしんみりした後に必ず元気を貰えるところも落語のいいところだと思ってます。

      コレ、ホンマいい漫画やし、登場人物がみな色っぽくていい男やし、
      落語好きなnico314さんならハマると思いますよ(笑)(^^)


      2015/04/06
  • 竹を割ったような性格の与太郎が、雑誌の記事に落ち込みながらも「自分の落語」で思い悩んでいる姿など、落語を演じる者としての視点から話が進行しているのがよかった。
    今更ながら、表紙の裏が和文様であったことに気づき、さりげないところが粋だなぁと思いました。
    噺家以外が落語をやること自体なかなか難しいのではないかと思いつつも、次巻のアニメ化気になります。

  • 2018/01/20購入・01/21読了。

    与太郎の落語がどんなものなのか気になる。落語を演じる噺家は役者でもあるのだなあ。

  • 時が流れるのが早い。
    ハチャメチャなイメージだけど、実は器の広い与太郎の、自分ならではという落語がどんなものになるのか楽しみ。

  • 小夏のエピソードは唐突です。母の血を注いでいるというなら、伏線となる挿話が必要でしょう。今後の展開に不安がよぎりますが、是非とも八雲助六編にあった高揚感をもう一度味わいたいですね。

  • 与太郎編に戻ってきたものの、既に八雲に心掴まれて与太郎にはそれほど興味なし(笑)しかも小夏が面倒くさくてどうにも好きになれない。そんな私を変えてくれるような展開をこれからに期待。

  • 初めの数ページでさっそく泣いてしまいました。八雲師匠の添い寝落語でお父さんを思い出すなんて、泣かずにはおれん。

    そしてこの巻では助六が過去と向き合い、どう抱えて生きるかがテーマ。親分に落語で啖呵切ったところは名シーンに数えられるかも。

    そして八雲師匠が先代助六そっくりの落語を。助六はその後何かをつかむのかな。

    助六の「隠し事のねぇ人間なんて色気がねぇ」は名言。

    ところでセンセイ、なぜみよ吉さんのことを?これはあとのお楽しみになるのかな。

  • 2019.8.3市立図書館
    助六再び篇其の三〜五
    小夏といっしょになりついに真打ちになったけれど、スキャンダルの洗礼もあり落語はスランプ、八雲でも助六でもない自分の落語を探る与太郎改助六。そして小夏の産んだ子の父親は?

    巻末番外篇は「新宿へ来ないか」末廣亭の紹介。

  • 読了:2018/12/30

    表紙の助六の表情がいいなぁ。なんだか浮世絵とかそういうのみたい。

    冒頭の小夏と八雲のからみは、最終話まで読んだ後だと「ええぇ〜…」って思うなぁ。「アンタのした事は殺人よ。あれが事故だったからってアンタへの恨みは変わんないよ。全部アンタのせいよ」とまで言った相手は、自ら意図して産んだ子供の父親…?ちょっと小夏の思考回路は理解に苦しむ。

    与太郎はほんとにいい奴…与太郎が新之助の父ちゃんになってくれてよかった本当に。

  • 与太郎が昇進しますな。

    助六の名を継ぐんですよ!?

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著者プロフィール

漫画家。2008年、短編『窓辺の君』でデビュー。2010年より初の長期連載『昭和元禄落語心中』を「ITAN」(講談社)にて執筆開始。2014年第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第38回講談社漫画賞・一般部門を受賞。2017年手塚治虫文化賞の新生賞を受賞。同作完結後は三浦しをん原作の『舟を編む』をコミカライズ連載中。そのほかBL作品を多数発表。

「2017年 『落語の入り口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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