痛覚のふしぎ 脳で感知する痛みのメカニズム (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 135
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065020074

作品紹介・あらすじ

痛覚には、熱いものに触れたとき、反射的に手を引っ込めるという単純なパターンの「感覚的な側面」と、不安、恐怖、過去の記憶などの影響を受ける「情動・感情的な側面」の二面性があります。痛覚の感覚的な側面は、生物がもつ基本的な警告反応の1つで、種の保存、生命の維持に不可欠な機能です。一方、痛覚の情動・感情的な側面は、さまざまなパターンがあります。

私たちが受ける刺激は、皮膚の下の侵害受容器を活性化させ、感覚神経を通って脊髄に伝わり、大脳で痛みとして認識されます。誰もが日常生活のさまざまな場面で体験する「痛み」のメカニズムを解説していきます。

第1章では、慢性痛を抱えるすべての読者に関係する「痛みを理解するうえでの基礎的知識と現状」をわかりやすく説明されてます。第2章では、「痛みがどのように生じ、脊髄に伝えられるのか」という感覚面について詳しく説明されています。第3章は「痛みの中枢はどこにあるのか」「痛みはなぜ主観的なのか」という痛みの根源的な問題である感情面に踏み込んでいます。最近着目されているデフォルトモードネットワークやマインドワンダリングと痛みの意識の関係についても言及されています。第4章は「痛みはなぜ増強し、持続するのだろうか」という問題について、脳の神経回路の可塑性と痛みの記憶という観点で説明されています。第5章では、痛みの治療の進歩と痛みとの付き合い方について述べられています。

分子から行動にいたる脳科学そのものである痛覚のメカニズムを、わかりやすく解説しています。

感想・レビュー・書評

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  • 2週間以内に読み終わらず、再度借りてなんとか読了。

    難しい用語がたくさん出てきますが、痛みについてと付加的に触覚についても現在わかっていることが詰め込まれている一冊だと思います。

    視覚、味覚、臭覚は物理的に受容体に物質が実際に結合することで知覚されるけれど、
    痛みは受容体自身に刺激が直接与えられることで知覚される。

    痛みがごく主観的なものである理由や暑さと辛さのチャネルの反応の違い、チャネルの構造など、興味深く読めました。

    痛みがないということは一見よさそうなものではあるけれど、本当にないととても危険なものであることがわかった。
    しかもそれはチャネルタンパク質のアミノ酸配列が少々違うだけ。。
    生き物の体って本当によくできていると思う。

    またリン酸化によって痛みが増強化するとの事‼︎
    懐かしい響き。

    備忘録(一部抜粋)
    身体的、精神的状態の変化により、痛みの感じ方が変わる
    患者の年齢、性格、文化的背景などにより、痛みの感受性が異なる
    これまでの痛みの体験や、受けてきた治療によっても痛みの捉え方が人により異なる

    我慢できるのは他人の痛みだけw

    慢性痛は原因不明が多く、同じ侵害刺激を受けてもこれまでの体験、気分、不安などの感情により影響される

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=24002

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB23284779

  • 痛みの主観性と慢性痛の機序について。
    そして「身体」の痛みと「心」の痛みの関係について。ブルーバックスらしくない「スピリチュアル・ペイン」のあたりも読めて良かった。何よりも図解も多くて文章もこなれててておもしろい。

  • 「痛み」というのは不思議なものです。

    肉体的なものにも人は「痛み」を訴えるし、心もまた「痛み」を感じる。

    痛みとデブォルトモードネットワークの関係は面白いですね。
    これからの研究成果が楽しみです。

  • 自分自身が慢性痛を持ち、既に他界した親もさんざん痛みに苦しんだ等の経緯もあり、関心が有って手に取った。
    期待以上に、知らなかったこと、現状での対処法の選択肢、解明されてきた仕組みなど、とても面白く読めた。と、同時に、特に「慢性痛」の怖さ、人体の適応反応の幅の広さ(社会活動上では都合の悪い意味も含めて)に驚いた!
    関節リューマチに、「進行抑制剤」ではなく「根本的治療法」が有るというのも、今更ながら知った。2002年から治療指針が制定されていることも。
    自分の親は、2000年にリューマチ性肺炎で他界した。それ以前の数十年に渡り関節リューマチに苦しんだ。
    娘も20歳前に関節リューマチを発症したが、将来を悲観する必要が無さそうで、それを知っただけでも良かった。
    ただ、本としては「読みにくい」。
    未解説の用語は使われないが、逆に、一度でも説明した用語は普通に頻繁に使われ、まるで大学の講義のよう。
    筆者的には平易に書いたつもりなのだろうが、文体的にも冗長で眠くなること甚だしい。正確性を重視しているのだろうが、こちとら素人なんだから、そこまで論理的厳密性を担保してくれなくても良いのにな...と痛感。
    ...の分を★1つ差し引いて4つ。

  • 途中から難しすぎて、ついていけなくなりました。100ページあたりで断念します。

  • 「痛み」というのが、いかに複雑なメカニズムで成り立っているのかについてはよくわかりました。
    1章は読みやすくて面白かったのですが、2章以後は徐々に生化学の本格的な説明に入り、特に3章からは基礎素養のない僕にとっては、ほとんどチンプンカンプンの難しい話でした。
    とはいえ、人体内で痛みの発生するメカニズムが相当程度明らかになって来ており、痛みの症状に対応する薬についても、日進月歩で進化していることについては、理解できたような気がします。
    僕は幸いそこまで激痛を経験するような病気や怪我はありませんでしたが、これからの老後を考えると、とても人ごととは言えないテーマだと思いました。

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著者プロフィール

伊藤誠二(いとう・せいじ)。1976年京都大学医学部卒業、1981年京都大学大学院医学研究科修了。アメリカ国立衛生研究所(NCI、NIH)Fogartyフェロー、新技術開発事業団研究員・グループリーダー、大阪バイオサイエンス研究所副部長を経て、一九九四年関西医科大学医化学講座教授、2007年から同副学長。がん遺伝子産物、ホルモン受容体と情報伝達機構、末梢神経再生や痛みの研究に従事している。

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