理化学研究所 100年目の巨大研究機関 (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065020098

作品紹介・あらすじ

113番元素ニホニウムだけじゃない、スパコンからバイオ、脳科学、再生医療まで、幅広い研究で基礎科学を支える日本最大の研究所「理研」。1917年(大正6年)に設立され、高峰譲吉、鈴木梅太郎、長岡半太郎、寺田寅彦、湯川秀樹、朝永振一郎など、日本の科学史を彩る研究者たちが参集した。100年目を迎える2017年には450の研究室、3000人の研究者を擁し、世界有数の研究所として全国に研究施設を持つ。ノンフィクション作家・山根一眞がその研究現場をつぶさに訪ね歩き、今いったいどんな研究が行われ、研究者たちは何を目指しているのか、その全貌を明らかにします。

〈目次〉
第1章 113番元素が誕生した日
アジアから初の命名となった113番元素ニホニウム。新元素合成までの苦難の道のりは、科学研究のひとつのあり方を象徴していた。

第2章 ガラス板の史跡
日本の科学史を彩る研究者たちが参集した理研100年の歩み。

第3章 加速器バザール
世界一の能力を誇るRIビームファクトリー。世界中から研究者が集まり、原子核物理から植物の品種改良まで幅広い研究が行われている。

第4章 超光の標的 
ナノサイズの世界を見る顕微鏡、放射光施設。スプリングエイト、そして原子構造まで見えるSACLAとは。

第5章 100京回の瞬き
物質を透過し、見えないものを見る光、テラヘルツ光。世界最高精度の時計を生み出し、時空の歪みまで検知した「光」の可能性をさぐる。

第6章 スパコンありきの明日
「第3の科学」と呼ばれる計算科学。世界最速として登場し、1秒間に1京回の計算をこなすスパコン「京」は何を可能にしたのか。

第7章 生き物たちの宝物殿
iPS細胞をはじめ何百万種類もの生物資源を保存するバイオリソースセンター。今や日本のみならず世界の生命科学研究を支えている。

その他、
第8章 入れ歯とハゲのイノベーション
第9章 遺伝子バトルの戦士
第10章 透明マントの作り方
第11 章 空想を超える「物」

以上の全11章

感想・レビュー・書評

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  • 理研グッズに新アイテム「トートバッグ」が登場! | 理化学研究所
    https://www.riken.jp/pr/news/2021/20210303_2/

    「理化学研究所 100年目の巨大研究機関」山根一眞著|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/203375

    『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』(山根 一眞):ブルーバックス|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000226658

  • 最高に面白かった。2017年時点でこんな研究や成果が出ていることを知って驚いた。2024年現在ではもっとたくさんの成果が出て、社会に役立っているのだろう。研究者の方々を尊敬します。

  • 517

    創設100年になる日本最大の研究機関の理化学研究所の今の研究所の取材本。企業研究だから直接的に社会に応用される研究内容が多くて面白かった。450の研究室、3000人の研究者がいるから一部しか紹介されてなかったけど、テラヘルツ光の章が気になった。

    山根 一眞
    ノンフィクション作家。1947年東京都生まれ。獨協大学経済学部特任教授、宇宙航空研究開発機構(JAXA)嘱託、理化学研究所相談役、福井県文化顧問、月探査に関する懇談会委員(内閣府)、生物多様性戦略検討会委員(農林水産省)、日本生態系協会理事、NPO子ども・宇宙・未来の会(KU-MA)理事などを務める。日本の科学者・技術者を取材した20冊を超える『メタルカラーの時代』シリーズ(小学館)、『環業革命』(講談社)など著書多数。山根一眞オフィシャルホームページ http://www.yamane-office.co.jp/


     その幻の「ニッポニウム」からじつに108年、化学や物理学の基本中の基本である元素の一覧に、日本が「ニホニウム」という新しい元素を加えたことは、 26 文字のアルファベットに新しい一文字を加えるのに匹敵する文化的な偉業であり、日本の科学界の1世紀以上にわたる悲願の達成だったのである。

    周期表の元素の1番目は最も軽い水素(=原子番号1)で、番号が増えるにしたがい重い元素となり、 92 番目(=原子番号 92)のウランまで続く。この 92 番目までが自然界に存在する元素だが、実験核物理学者たちは自然界には存在しない、さらに上の番号の重い元素の合成に挑戦し続けてきた。

     西川正治は東京帝国大学で物理学を専攻したが、その師の一人が寺田寅彦(1878~1935)だった。寺田は夏目漱石に師事した文学者として広く知られているが、日本の科学史を語る上で欠かせない優れた物理学者でもあった。


    山根  その実験のために麻薬や覚醒剤、ここだけの話、こっそりヤクザから購入? 大谷  違います! 麻薬取扱者免許という怖い名の免許をとっています。覚醒剤を小分けにする「パケ」と呼ぶ小さな袋を警察で見せてもらったことだ。

    テラヘルツ光を使えば、通過するだけで危ないものを検出できる可能性もあるという。

    宇宙背景放射を発見した」という発表があった年に生まれた大谷さんが、同じテラヘルツ光とはいえ、麻薬の探知から宇宙創生の解明まで取り組めるのは、間口が広い理研ならではの自由な研究環境ゆえだろう。

    「フォトニクス」は「光工学」を意味する。光通信が広く普及しているように、光工学は電子工学と並んで社会を支えている。光は電磁波という波の一種だが、粒子としての性質ももつ。その光の粒子は光子(または光量子)と呼ばれる。「光量子」と聞くと難解な基礎科学の世界の話と思ってしまうが、農業や園芸に欠かせない光のエネルギー量を測る測定器の製品名を「光量子計」と呼ぶように、身近なものになっている。

    この領域で私が考えた標語は「Making the invisible visible」。「見えないものを見よう」というものです。「見える」ようにすることで、その世界を理解し、制御し、実用可能な装置を開発し、社会になる。

    蓮舫参議院議員(現・民進党代表)の「(日本のスーパーコンピュータが)世界一になる理由は何があるんでしょうか。2位ではダメなんでしょうか」という絶望的な発言を受け、「京」はすでに建屋が俊工間近にもかかわらず、一時、廃止の憂き目にあった。幸い予算は復活し完成にこぎつけることができたが(2012年、民主党は記録的な大敗で政権を失い、今日まで「2位ではダメ」をみせてくれていた。

    理研は大学よりもはるかに自由度があるので、こういうプロジェクトが可能なんだ。

    そういう競争のスパイラルがあってこそ文明は進歩するが、そのイニシアチブを日本がとってきたのは頼もしい。「2位じゃダメなんですか」という寝ぼけた発言は論外だ。

     今や世界のバイオリソースの中心となったBRCだが、2009年(平成 21 年) 11 月、設立以来、最大の危機にさらされた。BRCも、あの民主党による「事業仕分け」(行政刷新会議)でやり玉にあげられたのだ。「産業ニーズを意識しない基礎研究が行われている」として、民主党は3分の1の予算削減を下す。この決定に対してバイオ関連の学会などがいっせいに反対声明を出し予算は復活したが、その後、細胞と微生物の分野から3人もの日本人ノーベル賞受賞者が出たことは、BRCが日本の根幹を支える存在であることを、あらためて物語っていた。

    お年寄りは、唾液腺が機能を失って口の中に唾液が出なくなるケースが多いんです。そのため、食べものが飲み込めず、また喉に詰まらせる危険が大きい。しかし唾液腺も再生できるので、老人介護での大きな問題が解決できます。ひどいドライアイでは点眼薬を使い続けねばならないですが、涙腺も再生できます。こういう、世界の多くの人たちが待っている再生医療を日本発のイノベーションで大きく産業化したいというのが私たちの夢なんだ。

    脳科学という言葉を知らない人はいないであろう。だが、この言葉がわずか二五年前には存在しなかったと言われると、びっくりする方も多いのではないか。この言葉は、一九九〇年代の脳科学運動によって作られた言葉なのである。

    科学には、自然科学、人文・社会科学、そして脳科学という三つの大きな領域があると言うこともできるであろう。そして、自然科学の手法を用いて解明を目指す二つのフロンティアが、「宇宙」と「脳」ということになる。「脳を知る」は、まさに人類のフロンティアを探求する科学といえる。  かなり過激な言葉で、フロンティアに「深海」への言及がないのは残念だが、この意気込みが理研の脳科学総合研究センターの活動の原点なのだ。

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  • 理研の歴史を知るには物足りないですが、今の理研の概要を知るには手頃だと思います。スパコン京に関するところでは、「2番じゃだめなんですか?」のエピソード(民主党(当時)の事業仕分け)に触れているのですが、「今は(民進党=旧民主党が)2番」的な突っ込みが(ちゃんと?)あります。

  • スパコンの京(けい)であるとか、STAP細胞であるとか。その程度しか認識がなかったのが本当に申し訳なく思います。
    450の研究室、3500人の第一線の研究者を有し、100年の歴史を持つわが国最大で最高峰と呼んでも過言ではない理化学研究所のキーマンにノンフィクション作家の山根一眞さんがインタビューする形で書かれている一冊です。
    ひと時の過ちであったとは言えど、よくもまぁ、政治力でこういう研究機関の規模縮小なんて愚策を行おうとしたもんだよなぁと当時のアレな人々に改めてあきれてしまいます。
    付箋は16枚付きました。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。1947年東京都生まれ。獨協大学経済学部特任教授、宇宙航空研究開発機構(JAXA)嘱託、理化学研究所相談役、福井県文化顧問、月探査に関する懇談会委員(内閣府)、生物多様性戦略検討会委員(農林水産省)、日本生態系協会理事、NPO子ども・宇宙・未来の会(KU-MA)理事などを務める。日本の科学者・技術者を取材した20冊を超える『メタルカラーの時代』シリーズ(小学館)、『環業革命』(講談社)など著書多数。山根一眞オフィシャルホームページ http://www.yamane-office.co.jp/

「2017年 『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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