天然知能 (講談社選書メチエ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065145135

作品紹介・あらすじ

一見やさしく書かれていますが、バカにしてはいけません。世界の見方を変えてくれます。――養老孟司(脳科学者)
 *
AIブームへの正しいカウンター。自然/人工の檻の外へ、知性を解き放つ! AIみたいな人間と人間みたいなAIにあふれる社会への挑戦状。――吉川浩満(文筆家)

 *

「考えるな、感じろ」とブルース・リーは言った。
山の向こうにも同じように風景が広がることや、
太平洋でイワシが泳いでいることを信じられる。
今までのこだわりが、突然どうでもよくなる。
計算を間違い、マニュアルを守れず、ふと何かが降りてくる。
それらはすべて知性の賜物である。
生きものの知性である。
今こそ天然知能を解放しよう。
人工知能と対立するのではなく、
意識の向こう側で、想像もつかない「外部」と邂逅するために。

わたしがわたしとして存在するための哲学。

感想・レビュー・書評

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  • 著者は「天然知能は、人工知能とも、自然に存在する自然知能とも違う」と主張しています。人工知能はともかく、自然知能も「私の感覚」を超えるものではないという意味で、天然知能というものの在りようを解説しています。
    天然知能をわかりやすく解説することは難しいのですが、僕は「天然知性」という言葉を比較対象として措定してみると、「知能は人間の能力(知性)のなかだけに存在するものではなく、偶然の出会いや直観などに大きく影響される」ものだと理解しました。

  • なかなか難しく理解できなかった…

  • 今年は「境界」とか「因果性」について何冊か読んできましたが、かなり風変わりというか、よくわからないところは何度読んでもよくわからないような本でした。

    太平洋のイワシの「実在」から「向こう側」と「奥行き」の知覚についてのあたりとか、「痛み」について人称を使って紐解いていくあたりとか、そのあとの「向こう側」と「外部」のあたりとかおもしろかった。「知覚はできないが存在すること」と直観、自由意志に繋がっていくあたりもおもしろい。とはいえもう少し読み返さないと全体はわからない気がするし、読み返してもわからない気もする。

  • 人工知能は、何ができるのかを考えていたら、この本に出会った。郡司ぺギオ幸夫は、人工知能、自然知能、天然知能があるという。人工知能の対義語は、自然知能であるが、著者は天然知能を人間が本来持つものであるとする。人工知能は、「自分にとって有益か有害かでわけ、自分に意味のあるもものだけを認識する。邪魔のものは、目にも入らない。知覚しない。知覚できたデータだけを問題として、まずデータを見せてくれという。経験によって鍛えられた一元的価値観。つまり、一人称的知性。」自然知能は、「自然科学が規定する知能。世界を理解する思考様式は、自然科学的思考。世界にとっての知識世界を構築する対処。問題や謎として知覚されたものだけに興奮する。つまり、三人称知性。」天然知能は、「ただ、世界を受け入れるだけ」「見えないものに興奮するのは、天然知能だけの特権」という。「想定できないこと」に天然知能は興味を持ち立ち向かう。知覚できないが存在するという存在様式を認める知性である。人工知能や自然知能には、創造性がなく、天然知能だけが創造性を持つという。自分が自分らしくあることを肯定できる、唯一の知性なのである。
    創造とは、今までなかったものを作ることです。天然知能だけが、創造を楽しむことができる。ただ、毎日生きるだけでも創造であり、一瞬一瞬に、とき刻々とつくられる。なかったものをつくるとは、自然の知らない向こう側からやってくるのを待つしかない。
    天然知能は、「他になるかあるんじゃないかなぁ」「何か記憶にあるかもしれないけど、はっきりしないなぁ」と思っていることで、一歩前に進んで行く。
    ダサカッコワルイ宣言から始まり、マメコガネ(知覚できないが存在するもの)、サワロサボテン(無意識という外部)、イワシ(UFOはなぜ宇宙人の乗り物なのか)、カブトムシ(努力する神経細胞)、オオウツボカズラ(いい加減な進化)、ヤマトシジミ(新しい実在論の向こう側)、ライオン(決定論・局所性・自由意志)、ふったち猫(ダサカッコワルイ天然知能)と進んで行く。
    外部という概念と外部が自分の中にもあるということが、面白いが、ほとんど理解ができないほど面白い。現象論などをぶった切る様は、なんともいえなう恍惚感。
    この郡司ぺギオ幸夫という人は、一体何を日頃考えているのかわからないほど、面白い。とにかく、ぶっ飛んでいるのだ。そして、天然知能を持っていることに自信を持って、創造的に生きることができる。天然(てんねん)は、ピントのズレた感覚や性格が天然知能として「外部に生きる・受け入れる事」ができ突き抜ける。人工知能のできることより、できないことを開拓することが何よりも必要だ。一休さんのように「屏風の中の虎を、屏風から追い出す」ことのできる知性がいいのだ。

  • すべての人間を、つまり凡庸な人間や、病的な人間までを、本質的に肯定している本。
    われわれ人間は、人間であるがゆえに、一人称的か三人称的か、いずれかに傾きがち。また、それと同等の意味で、一.五人称という視点も獲得しうる。
    本書を読んで思ったのは、要するに、人間は業として(けっきょく天然知能を1.5と表現するしかない)デジタルに生まれついてしまったのだ。それを素朴に善とするのが、昨今のAI産業。
    それに反旗をひるがえすのが本書。しかも著者は一風変わっていて、本来、その有効な手段は芸術であるにもかかわらず、科学のフィールドからそれを内破しようとしている点。
    本書は、存在することを第一に肯定するにはどうすればよいかということを考えつづけた本だ。他者を排除することなく。

  • 帯には養老孟司が「一見やさしく書かれていますが、バカにしてはいけません。世界の見方を変えてくれます」との推薦の辞を寄せている。
    が、養老孟司だからそう思うのであって、全然「やさしく書かれて」などいない。むしろ、かなり難解。

    『天然知能』という造語は、いかにも「人工知能」の対義語という感じだ。
    「ああ、なるほど。『これからの時代はAIに人間の仕事がどんどん奪われていくから、AIにはできないことをする人間が尊ばれる。そのための知性のあり方が天然知能だ』と主張する本なわけね」と、タイトルから見当をつけた。

    ところが、開巻劈頭、著者はいきなりその印象を否定する。「人工知能の対義語は自然知能」であり、天然知能はそれとはまた別の概念なのだ、と……。

    つまり、著者は人間の世界認識のありようを、人工知能・自然知能・天然知能の三種類に区分しているわけだ。
    そして、本書全体を通して、三種類の世界認識が対比的に描き出されていく。著者は当然、〝これからは天然知能こそが大切だ〟と考える立場である。

    3つの違いを、川で魚を捕ることになぞらえて説明するなら、人工知能は「食べるために魚を捕る」というふうに、有益性を重視する姿勢。自然知能は、「これは何という魚か」などと、自然科学的認識を重視する姿勢。
    それに対して天然知能は、子どものように、魚を捕ることそれ自体をただ楽しむ姿勢……ということになる。

    AI全盛のいまは人間もいつの間にかAI化しており、何をするにも有益性や能力主義に囚われがちだ。だからいまこそ、我々人間は、子どもが虚心坦懐に物事を楽しむように、有益性や意味性の呪縛から解き離れて世界と向き合うべきだ。……というのが、著者の大まかな主張である。

    思考実験の書としては、なかなかおもしろい。

  • 2024.1.18 朝日新聞 朝刊 13面 『AIと私たち 「天然知能」のススメ 』をみて

  • 各章タイトルのこじつけ感。

    最初は易しかったのですが、途中でギブアップしました。
    自分にはまだ早かった…

  • 【オンライン読書会開催!】
    読書会コミュニティ「猫町倶楽部」の課題作品です

    ■2022年4月30日(土)20:30 〜 22:15
    https://nekomachi-club.com/events/0039dc8d6a13
    ■2022年5月18日(水)20:30 〜 22:15
    https://nekomachi-club.com/events/bd493eeb89c9

  • うーむ
    理解できず

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著者プロフィール

郡司ペギオ幸夫(ぐんじぺぎおゆきお):1959年生まれ。東北大学理学部卒業。同大学大学院理学研究科博士後期課程修了。理学博士。神戸大学理学部地球惑星科学科教授を経て、現在、早稲田大学基幹理工学部・表現工学専攻教授。著書『生きていることの科学』(講談社現代新書)、『いきものとなまものの哲学』『生命壱号』『生命、微動だにせず』『かつてそのゲームの世界に住んでいたという記憶はどこから来るのか』(以上、青土社)、『群れは意識をもつ』(PHP サイエンス・ワールド新書)、『天然知能』(講談社選書メチエ)、『やってくる』(医学書院)、『TANKURI』(中村恭子との共著、水声社)など多数。

「2023年 『創造性はどこからやってくるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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