素数とバレーボール

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065279342

作品紹介・あらすじ

41歳の誕生日。僕らは青春と再会する。
今年でいちばん癒やされ小説、誕生!
「性善説の小説家が探り当てた、ここが一つの到達点だーー吉田大助」

家庭も仕事もまだ諦めたわけじゃない。
それにしても40代。不惑は過ぎても迷いっぱなし。
ーー四十にして惑わずなんて、嘘じゃん。

高校卒業から20数年。
41歳の誕生日を迎えた朝、高校のバレーボール部の仲間「ガンプ君」からメッセージが届く。
「41」という数字の美しさを讃えたあとに「500万ドルのストックオプションをプレゼントする」と書かれた
謎のメッセージは他の部員たちの誕生日にも届いていたものだった。
真偽もガンプ君の消息も不明のまま「不惑」を迎えた元男子高校生たちは、再会を果たす。
仕事もひと段落。家庭も安泰。興奮するような新鮮な出来事なんて、もう簡単には起こらない。
ちょっと人生がつまらなくなってきた男たち。
「そろそろ隠居かな」と言いつつ……実はまだ「男として」人生を諦めきれていなかった。

不倫、やめる?
離婚、する?
恋、する?
出世、できる?
左遷、された?

様々な「不惑」の人生の岐路に立つとき、届いた旧友からのメッセージ。
彼らは何を選択するのか。
優しさには、力がある。

感想・レビュー・書評

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  • 「不惑」。四十にして惑わず、なんて言うが現実は違うだろうというのは元バレーボール部の仲間たち。
    それぞれが、仕事であったり、家庭であったり、さまざまな問題を抱えている。

    そんな中、助っ人として3ヶ月だけ一緒にバレーボールをした里中灯。ガンプ君と呼ばれていた彼からの不思議なメールが、それぞれのメンバーの41歳の誕生日に届いたところから物語は始まる。

    ほんとうにいろんなことがあるわ、あるわ…の彼らたち。
    ガンプ君が彼らに渡したものの凄さにスケールが違うじゃないか…と驚き言葉が出ない。
    素数を愛するガンプ君は、『素数は美しいばかりでなく、強くもある』と数学者が捉えるように仲間たちにも素数のような存在であってほしいと願っていた。

    〈ほんと、宇宙はわからないことだらけだね〉の一文が凄く印象的。

    仲間たちそれぞれが、ガンプ君の気持ちを汲みとり自分らしさを取り戻したようでよかった。

  • とても良かった。これも青春小説なんだと思う。登場するのは41歳のおじさんたちだけど、そして、高校時代のエピソードは少ししか出てこないけど、それでも。

    後輩もいない弱小バレー部の同期だった6人。それぞれの人生は全く違うものになっている。「繊細さん」やら、出世街道驀進男やら、ギャンブラー崩れやら、なんともとりどり。その一人一人のありように「ああ、そういうことってあるかも」と思わせる説得力がある。一方で、一人はアメリカで大金持ちになっているという突飛な設定なのだけど、これが、このお話をありきたりな懐かしの青春ものではない、オリジナルな物語にしているのだと思った。

    そのガンプ君(映画「フォレスト・ガンプ」からのあだ名)が、他のメンバーにあてたメッセージが終盤で登場する。こう来るだろうと身構えていたのに、目頭が熱くなってしまった。そう、あの年代の輝きは永遠なのだ。人生のままならなさをかみしめる歳になってから一層、そのきらめきを増すものなのだと、しみじみ思いました。




    著者のことはまったく知らなかったが、「本の雑誌」1月号で北上次郎さんが絶賛していたので、読んでみたのだった。そんなふうにして知った作家さんが何人もいる。つくづくありがたかったなあと思う。あの熱のこもった紹介文をもう読めないのが、まだ信じられない。

  • タイトルが面白そうだなと思い、読んでみた。

    高校のバレー部のメンバーたちが41歳になった時、ガンプ君から奇妙なメールが届く。

    41歳になった男たち、みんな仕事や人生に疲れていたり、もやもやを抱えていたり。
    読んでいて共感できる人もいれば、ムカムカしてしまう人もいた。

    でもこんなにバラバラなのに、久しぶりに会うとそういう性格もひっくるめて、違和感なくワイワイ話せる、確かに学生時代の友人ってそういう感じだなぁ。

    慎介には特に感情移入してしまったし、素数を通して世界を見つめるガンプ君も愛らしく思えた。
    楽しく読めました。

  • 「素数とバレーボール」
    変わったタイトルだなと思ったが、人と交わることが苦手だったガンプ君こと里中灯の人生で出会った二つの最良のものが素数とバレーボール。

    そのガンプ君から岸高最後のバレー部5人の41歳の誕生日に送られてきた不思議なメールが発端となってストーリーが進んでいく

    高校卒業から41歳になるまでの6人6様の人生が興味深かった
    そして、ガンプ君から5人にストップオプションという形で支払われた500万ドル、為替手数料や税金を差し引いて日本円にして約2億8000万円の使い道も5人5様

    つい2億8000万円あったら何に使うだろうと考えてしまった浅ましい私(笑)

    5人の中で、私は特に北浜慎介のここに至るまでの人生とお金の使い道が心に残った
    繊細さんですぐお腹をこわす北浜慎介のかかった臨床心理士の後藤先生の毎回のカウンセリングも見事で、素晴らしいなと思った
    「北浜さんのように心が感じやすい人は、物事を深く見つめ、さまざまな角度から考えることができます。相手の気持ちや立場に立って、行動することができます。芸術に感動し、周囲に優しさを植え付け、環境を守ることができます。つまりこの世界の真善美は、繊細さんたちが担ってきたのです。これは『弱いことは強いことだ』
    と言い換えることができます」

    ガンプ君が語る素数の世界、数学が大の苦手な私はちんぷんかんぷんで、さっぱり分からなかったが、作中にも出てきた『グッド・ウィル・ハンティング』や『博士の愛した数式』に通じる天才の独特の世界に触れたようでおもしろかった

    ガンプ君のメールによって、人生半ばでちょっと行き詰まっていた5人が昔のように交流し、これから後半の人生の方向性を見出していく
    どなたかのレビューに「これは青春小説」とあったが、なるほどいい得て妙だなと思った

  • 高校卒業から20数年。
    41歳の誕生日を迎えた朝、高校のバレーボール部の仲間「ガンプ君」からメッセージが届く。
    「41」という数字の美しさを讃えたあとに「500万ドルのストックオプションをプレゼントする」と書かれた
    謎のメッセージは他の部員たちの誕生日にも届いていたものだった。
    真偽もガンプ君の消息も不明のまま「不惑」を迎えた元男子高校生たちは、再会を果たす。
    仕事もひと段落。家庭も安泰。興奮するような新鮮な出来事なんて、もう簡単には起こらない。
    ちょっと人生がつまらなくなってきた男たち。
    「そろそろ隠居かな」と言いつつ……実はまだ「男として」人生を諦めきれていなかった。

    17才と41才で自分は何も変わらない・・凄くよく分かる!
    でも、5万年後に解凍して再会?素数・・・理解を超えていた。

  • ガンプ君、マイケル・J・フォックスがよかった。

  • 数学を小説に取り入れる、一つの解がこの小説にあるのかな、と感じました。

  •  素数は殆どが奇数で、2が唯一の偶数である事などを興味持って調べていた岸高バレー部の部員1人が、筋萎縮側索硬化症(ALS)、脳の悪性癌に悩まされながら必死で生き抜いて34・5歳の若さで他界したが、冷凍保存しておいて医療が発展した未来に解凍して蘇生させる方法に一抹の期待を込めて望みを託し、残った金をバレー部のみんなにわけてくれる物語でした。

  • 平岡氏の作品は「道をたずねる」がとても好きで、読むのは2作目。数字オタク?なガンプ君と過ごした高校バレー部の各々の人生を描く。ガンプ君からの二億円のプレゼントの使途が、各々の人生観あらわれてて好き。

  • 『セーラー服と機関銃』的な感じの個性的なタイトル。
    一見、結びつかない「素数」と「バレーボール」がどう結びつくのか、読んでみてのお楽しみ。

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著者プロフィール

平岡陽明
1977年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2013年『松田さんの181日』(文藝春秋)で第93回オール讀物新人賞を受賞し、デビュー。19年刊行の『ロス男』で第41回吉川英治文学新人賞候補。22年刊行の『素数とバレーボール』は、「本の雑誌」が選んだ「2022年度エンターテインメントベスト10」第3位。他の著書に『ライオンズ。1958。』『イシマル書房編集部』『道をたずねる』『ぼくもだよ。神楽坂の奇跡の木曜日』がある。

「2023年 『眠る邪馬台国 夢見る探偵 高宮アスカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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