コレクション 戦争×文学 4 9.11 変容する戦争 (コレクション 戦争×文学)

  • 集英社
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本棚登録 : 60
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (720ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784081570041

作品紹介・あらすじ

画面のすぐ向こうの戦火、文学はどう対峙したか?新しい視点で精選、「言の葉」の集大成。

感想・レビュー・書評

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  • 主に2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの前後に、中東で、アメリカで、日本で、形を変えた戦争を描く戦争文学アンソロジー。

    「コレクション戦争と文学」シリーズは何しろ重量級の短編・中編が揃っているので読めば必ず食傷しますが、逆にだからこそ目を離すことができない迫力を感じます。メンタルのエネルギーが充実しているときに少しずつ読み進めています。
    この巻では主に2000年前後が舞台なのですが、描かれるのは戦場と兵士ではなく市井と市民であるということが大きな特徴かと思います(まあ戦争の被害者は大抵市民なのですが)。どういうことかというと、戦争は戦場ではなく、普通の市民が生きる市井で起きるようになった、ということなのですが、たとえばリービ英雄さん「千々にくだけて」なんかは911のテロでニューヨークの日常が突然戦場に変わる様子を描いていますし、辺見庸さんの「ゆで卵」ではごく普通の日本人の日常が突然阿鼻叫喚のるつぼに突き落とされます。重松清さん「ナイフ」は日常がもうそのまま戦場、というコンセプトだったり。
    そういう意味では非常に面白いアプローチではあるのです。ただ、テーマが少し散逸している感じがして読みにくい感じがしました(著者のセレクトもクセがあったように思います)。その中では池澤夏樹さんや小田実さんなどはエッセイ的な文章を寄せていますが、「実際に自分はどう感じたのか」という視点は得難いのでこれはこれで大切な問いかけだったと思いました。

  • 米原万理作、「バクダッドの靴磨き」に涙しました。イラク戦争でアメリカによって家族えお皆殺しにされた少年がついに涙枯れ果て、靴磨きをしながら復讐を誓う、小説です。2006年になくなった米原さんが今ご存命であったらこの、戦争できる国に変容する日本の現状に、なんと言っていたであろうと思う昨今、亡くなってなお、その作品で私たちに、戦争の現実をまるで目の前にその少年が立ち現れるがごとくに描写して見せ、戦争の現実を伝えているのです。特に、ミサイルを放つ方ではなく、ミサイルを受けた方に想像力を向けよ、と痛切に訴えています。米原さんがまるで生きて帰ってきてくれた様。文学の力、有無を言わせない筆の力です。ジャーナリズムに携わる人々にこの志が欲しいのに。

  • アンソロジーは苦手…。
    知らない一面を知ることはいいんだけれど、9・11関連の小説って少ないってことかな。
    自分の経験を語りつくすものなんかもあって、どうでもよかった。

  • 戦争文学を集成した「戦争×文学コレクション」のなかでも、「現代の戦争」をテーマに編まれた一冊。太平洋戦争やベトナム戦争あるいは冷戦のように「大きな物語」を持たず、そして歴史になるにはまだ時を経ていない、それだけに扱いの難しい現代の戦争に対して作家たちは如何にして対峙するのか。
    個人的には、長く絶版状態だった楠見朋彦「零歳の詩人」が収録されてるというそれだけで嬉しい。一人称、三人称、詩、手記、ルポルタージュ、説明文、広告、メモ…あらゆる文体を駆使してユーゴスラビア内戦を描いたこの作品は、リアリティだとか戦争の悲惨さだとかそうした安易な思考を拒絶する。確かに悲惨な戦争は描写するが本作での商店はそこにはない。戦争を描写することで生まれるのは言葉と想像力への挑戦。ユーゴ内戦を扱いながら、そこで描かれるのはより普遍的な、語ること語られることの可能性。わずか130ページの作品ではあるが、決して読みやすくはない。普通の作品の何倍もの時間と体力とを使わなければ読み切れないしんどさがある。しかし、そのしんどさを超えるだけの言葉の力・可能性がここにはある。そのことを10年ぶりに読んで改めて実感した。
    「零歳の詩人」のほかにもとがった作品が収録されてて、笙野頼子はいつものとおり全方位のファイティングポーズで爆笑なしには読めないし、島田雅彦はやっぱりインテリくさいしで、そのあたりも楽しめる。

  • とりわけ9・11については、非人道的な野蛮なテロの犠牲・無差別殺戮という思考の範疇にとどまっては、何も本質的なことは見えてこないということを思い知らなければなりません。

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