帝国の娘〈前編〉―流血女神伝 (コバルト文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 84
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086146074

感想・レビュー・書評

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  • <後編までのネタバレを含みます>

    あれよあれよという間に劇的なイベントの数々が過ぎ去っていったという印象。時々淡白なほどにも感じられる軽快な文体のおかげで、途中変につまずくこともなく最期まで一気に読み進めることができた。実際にはかなりヘヴィーな内容を扱っているような気もするのだが、作者の計らいか作風か、必要以上に深刻にならないところが本当に凄い。一体どこを書いてどこを切り捨てるべきか、読者の視点からきちんと話を組み立てられる人なのだろう。
    の割に、舞台となるルトヴィア帝国の政治状況や皇族の力関係、そこに絡む他国や民族問題のしがらみ等についてはかなり詳しく描写されているので、世界観がしっかりした厚みのあるファンタジーを読みたいという人にはお薦め。が、あくまでもコバルト文庫なので、どうしても少女漫画的お約束の嵐というか…ベタな設定のオンパレードと言わざるを得ないところはある。登場人物はやたらと美形が多いし、ツンデレ気質のクールな騎士とか、ひと癖ありそうな美貌の僧侶とか、男勝りで男装の麗人たる隣国王女とか…そんな感じのキャラクターばかりが登場し、しかも何やかやと恋愛面で絡む。最初は、読んでいて「おいおい、ときめいている場合じゃないだろう」とフラグ立ちまくる主人公の優柔さに面喰ってしまうのだが、これもコバルトならではの真骨頂といったところなのだろう。ただ、あくまで恋愛要素はテーマの一つに過ぎず、ラブコメ要素とシリアスな政治要素が複雑に絡み合うのは見事だ。ムチ、ムチ、ムチ、アメぐらいの勢いで読者を上げては落とし、落としては上げてくれる作者の手腕には素直に翻弄されざるを得ない。

    あとは、主人公のカリエが14歳ということもあり、思春期の心の移り変わりには全編を通じてかなり精神が振り回されたような気がする。とっくに10代を終えた身であらためて読むと、始終泣いたり笑ったり憤ったり、目まぐるしく変動する少女の心がとにかく忙しいのだ。凄まじい逆境に絶えず立ち向かっていくかと思いきや、同じ時間軸で恋愛にも現を抜かす、この元気で頑丈なヒロイン(?)の気概が、けれども物語の今後のシリーズを引っ張っていってくれるのだろう。

    また、個人的には今後シリーズを引っ張っていくのだろうカリエとエディアルドの関係に胸を打たれた。普通の少女小説であれば、終盤辺りで思いを寄せ合う関係になるような二人だが、この『帝国の娘』においては、その関係はもっと神聖で高潔なものであるような気がする。無論、そこには本物のアルゼウスという越えられない至高の存在があるのだが、それ故あえてエディアルド自身の「意志」を自らに求めたカリエは本当に立派だと思った。憎しみに始まり、同情や軽蔑を経て、このでこぼこな二人が今後どのような運命を共に渡っていくのか、今から続編を読むのが本当に楽しみだ。

  • 物語の始まり。
    世界があり
    登場人物たちが生きている。
    ただそこにあるのではなく、
    この世界で
    悩み、考えて行動している。
    まだまだ謎だらけな世界の中で少しずつ明かになる世界。
    この先にも少しずつ繋がりそうな人たち。
    世界があるから
    ここに何を注いでも物語になる。
    ここで止まらないくらい、広さを感じながら
    第一巻が始まります。

  • 皇子の影武者となるべくして攫われたカリエ

    ラストでは出生の秘密もわかってきて、
    ますます話はおもしろく!

    次巻へいざ!

  • 5/10.

  • 「神の棘」や「革命前夜」の歴史小説を読んで、その描き出す雰囲気に興味を持って読み始めました。

    ロシアを感じさせる自然。
    しかし、まだ世界観ははっきりしない。
    期待して、続きを読もう。

    感想は後編を読んでからに。

  • 36:コバルトで育っただけあって、基本的もえに反応してしまう自分がちょっと嫌かも……。

  • 病身の皇子アルゼウスの身代わりとして攫われたカリエ.女の子でありながら男としての振る舞いを身につけ,従者エディアルドに守られながら宮廷に乗り込む.最初からワクワク,ハラハラ,ドキドキ.

  • 掴みはok。

  • 少女の怒涛の半生の物語。第一巻

  • 意外とあっさり恋におちるところがコバルトかな~

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著者プロフィール

『惑星童話』にて94年コバルト読者大賞を受賞しデビュー。『流血女神伝』など数々のヒットシリーズを持ち、魅力的な人物造詣とリアルで血の通った歴史観で、近年一般小説ジャンルでも熱い支持を集めている。2016年『革命前夜』で大藪春彦賞、17年『また、桜の国で』で直木賞候補。その他の著書に『芙蓉千里』『神の棘』『夏空白花』など。

「2022年 『荒城に白百合ありて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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