- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784086800297
作品紹介・あらすじ
高校三年、最後の夏。甲子園予選を前に、スラッガーの益岡が故障した。プロ入りも狙えた益岡に誰もが気を遣う中、益岡は大会出場を強行。補欠の俺が益岡専用の代走に起用されて!? 高校野球小説集!
感想・レビュー・書評
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須賀しのぶさん、初めましてです。
高校野球が好きでした。
女子校だったので、共学校の女子が地区大会の応援に行くのを見ると、
それはもう羨ましくて。
あの頃の高校野球って、今よりもっと泥くさかった気がします。
出場校も今より公立高校が多く、地元出身の選手中心だったせいか
故郷を応援する色あいがもっと強かったような…。
ユニフォームの着替えがなくて、勝ち進むとだんだん汚れてしまうのも、妙にカッコよく見えたりして。
春のセンバツも、もちろん球児憧れの晴舞台。
でも夏の甲子園は、また違う気がします。
三年生にとっての最後の夏といったイメージが強いからかな。
#ピンチランナー
かたや大物天才バッター、かたや走ることにかけては誰にも負けないピンチランナー。
二人のライバル心と熱い友情、
試合の手に汗にぎる臨場感がすごい。
#甲子園への道
圧倒的な強さを誇る東明学園エース・木暮くん。
対するは、初戦敗退がおきまりの弱小校エース・メガネの月谷くん。
二人の幼なじみ対決が面白い。
晴の大舞台で投げぬく姿は堂々としていても、
マウンドから降りた時に見せる少年の顔に胸がきゅんとする。
#雲は湧き、光あふれて
これはもう、泣いてしまいました。
戦争のせいで大好きな野球をあきらめなくてはならなかった選手たち。
あんな時代でなければ、夢を追い続けることができたのに…。
戦争はいけない。絶対に…。
「栄冠は君に輝く」
今年はいつになく感慨深く胸に響いてきそうです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
高校野球を題材にした短編3篇。代打でしか試合に出られない益岡、その後を補う須藤を描いた「ピンチランナー」は刹那的だが、心情をストレートに表現していて好感が持てる。記者目線で描く「甲子園への道」もいい。表題作は反戦を絡めた著者のメッセージのある内容である。好みが分かれるところだとは思うが、「甲子園の道」に登場する月谷にフォーカスしちゃうかな。明らかに扱い違うし...。続編を即、手に取ることになるだろう。
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高校野球にまつわるお話、3作からなる短編集。
今年初めて甲子園に高校野球を観に行って、そこで配っていた新聞広告に載っていたこの小説。なんとなく気になって読んでみた。
ちょっと文体は子どもっぽかったけど、おもしろかった!特に1作目の『ピンチランナー』と2作目の『甲子園への道』。
『ピンチランナー』はその先が気になるなぁ。続きが読みたい。
『甲子園への道』は月谷君がいい味出しすぎてて笑った!これまた同じく続きが読みたい。
3作目の『雲は湧き、光あふれて』は戦争中の球児たちのお話。甲子園へ開会式を観に行った際、第98回なのに101年の歴史、と宣誓で言っていて、「どうして?」と思ったら、一緒に行ってくれた職場のおじさんが戦時中は開催出来なかった旨教えてくれた。その時代のことがここでは描かれていて、なんとも言えない気持ちになった。なのでこれはおもしろい、とは表現出来ない。
3作とも、色んな視点からのお話で、どれも興味深く一気に読めた。
やっぱり青春って、いい。 -
高校野球小説3編。
高校球児視点の「ピンチランナー」、新人記者視点の「甲子園への道」はいいところで終わっていて、この先どうなったのかが気になる。いいなあ青春、眩しい。
表題作は戦時中の球児視点。時代が違えば考え方も選択肢も今とは違って比べられないけど、野球をすることに対してより切実な感じを受けた。
戦争がもたらした結果を静かに述べられるのは、あの日々には戻れないことを突き付けられている気がして寂しくなった。
大会歌の歌詞にはきっと、野球ができることの素晴らしさが込められているんだろうと思う。 -
甲子園をテーマに、現在、過去、高校生の立場、取材する側、立場をかえたお話3編でした。正直、野球には興味がないのですが、プロ野球は見ないけど甲子園はと、多くの人が一生懸命になるのがなんとなくわかります。試合なのでもちろん勝ち負けは重要なんですが、やっぱりそれ以上に「このチーム」でという思いがどこの高校にもあるから、勝ったチームも負けたチームも輝いているんだと思いました。高校生活3年間あっても、「このチーム」は1年間だけですもんね。甲子園、ニュースぐらいしか見ませんが、どちらのチームも勝たせたい、といつも思います。最後の戦中の話は、こんなことは二度とあってはならないと思いました。
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野球に興味のない私が、ついつい手に取ってしまう甲子園もの。
三作とも引き込まれました。
ピンチランナーと甲子園への道は続きが気になりすぎるし、『雲は湧き、光あふれて』は戦時中との掛け合わせで涙なしには読めません。。
続編?も読みます。 -
時代を超えても、立場を越えても、あの夏の白球を追ってしまう。
ずっとずっと紡がれてきたもの、そのひとコマを切り取った短編集でした。
記者目線、というのは新しくてとても面白かった。月谷くん、いいですね。かわいい。
最後にあの表題作をもってくるとは。
挫折したり葛藤したり支えあったり勇気をくれたり、そして平和を願いつつ、今年も青空に飛ぶ白球に思いを馳せるのです。 -
甲子園という、特別な場所に魅せられて。
甲子園を目指す話がいくつか入っている。必ずしも主役は高校球児ではない。スポーツ新聞の記者が語りの話もある。一番惹かれたのは、表題作である『雲は湧き、光あふれて』だ。戦前、中等学校で甲子園を目指していた鈴木雄太の前に現れたのは、沢村栄治を思わせる剛速球を投げる滝山亨。不遜な滝山の態度にいら立つ雄太をよそに、彼らの普川商は甲子園出場を決めたが――。中学生の国語で「一塁手の生還」を読んで以来、戦前・戦後をまたぐ甲子園の話には、何か気になるものがある。
3作品を通じて感じたのは、甲子園という場所の特別さ。今も昔も、なぜ甲子園だけ特別なのか。なぜ高校野球にあんなにもひきつけられるのか。憎々しい思いさえ、抱くほどに。誰かが作った流れに先導されているのか、それとも。 -
高校野球の季節に丁度良いと思い、読んだ次第。ピンチランナーの話は、1人の部員のために、基、部員一同のために、走塁の技術を磨きあげる姿が良かった。月谷君の野球にかける思い、幼馴染みを気遣う姿、ライバルであり、友情であると思う気持ちが良い。新聞記者も高校野球を取材して行く中で、仕事の面での成長、高校生を見守る姿、夢舞台に向けて、直向きにプレーする部員たちを追う立場も、高校野球の感動を伝える大事な役割だなと感じる。最後の雲は湧き、光あふれては、野球と戦争の中での温まる出来事、校歌に感動。
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なんやかんやいっても高校野球、好き。高校野球の歌「栄冠は君に輝く」も好き。空で歌える。なので、このタイトルは節つきで読んでしまう。
「革命前夜」で気になっていた須賀しのぶさん、コバルト文庫やオレンジ文庫にも著作がたくさんあると知り、タイトルにつられて手にとった。
最後の夏に故障したスラッガーと代走の「ピンチランナー」、女性記者と甲子園予選「甲子園への道」、戦時下の球児を描いた「雲は湧き、光あふれて」の高校野球3編。
野球好きなら楽しめる青春小説。子供棚にいれておく。