明治横浜れとろ奇譚 堕落者たちと、開かずの間の少女 (集英社オレンジ文庫)

著者 :
  • 集英社
3.22
  • (1)
  • (7)
  • (13)
  • (0)
  • (2)
本棚登録 : 125
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784086800372

作品紹介・あらすじ

明治末期、横浜。堕落者(=フリーター)と呼ばれる役者の寅太郎、画家の谷、浪漫研究家の有坂らは、女学生を助けたことで、女学校に伝わる「開かずの間」の謎を解くことに……。好評第2弾!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 明治横浜れとろ奇譚シリーズ第2弾。
    今回は菓子店ルゥ・ド・アムルの女主人の愛の過去に関わる話。

    今回は水谷巡査はあまり出てこなかった。残念。
    まぁ舞台が女学校じゃ仕方ないか。

    人身売買でかどわかされる少女達が、SNSで犯罪に巻き込まれる子供達に重なる。
    ほんの好奇心と、息苦しい環境から自由になるという思いで行動したのに、こんなことになるなんて…。
    花田先生は、最初はこういう被害や不幸な結婚から守ってあげたいという気持ちから、私の言うとおりにしなさいという意識に変わっていったのだろうか。

    しきたりや昔の慣習、子女たるもの、を押し付けて、成り上がりの美都を嘲る女学校の人間たちに息苦しさと不快さを感じる寅太郎達。
    なのに、彼らと対等に渡り合うためには、嫌っていたお家の力を使わなくては話も聞いてもらえない。
    自分の力で役者として身を立てたい寅には結構悔しい出来事だろうな。
    前回は自分は大好きな芝居がやりたいだけ!皆邪魔ばかりして!と他責ばかりだったけど、少しずつ変わってきたような。
    自分の芝居で心を動かされたという久の言葉が、初めて彼は役者になって何を成せるのか、何をしたいか、ということを考えるようになった気がする。

    そして、今も昔も、自分の幸せを子供に叶えてもらおうと、コントロールしようとする大人のエゴはあるんだなぁ。
    海外との貿易も盛んになり、成功した成り上がりと、昔の栄光にすがって困窮していく華族達。
    いまだに華族の影響が強いとはいえ、良いところ(実家を援助できるお金があって、旧家で立派な男性)へ嫁ぐのが最大の幸せ、という(昔の)価値観を娘に押し付けているようにしか見えない。
    現代では、いい学校へ入学して大企業へ就職または公務員になればあなたは(食いっぱぐれないし、周りに自慢できるし、脛を齧られる心配もないし)幸せになれるのよ。という価値観を植え付けている人もいるような。
    どれだけの大人が、夢を諦めずに頑張りなさいと、本気で応援して道を指し示して上げられるのだろう。

    作中最後はエゴ丸出しだった花田先生みたいに、子供を自分の満足や成功の為の作品扱いするんじゃなくて、ちゃんと人の話を聞ける人間でありたいな。と思う。

  • シリーズ2作目。今回は女学校で起きる事件のお話。一見、華やかな女学生たちも、家柄や身分など、自分ではどうすることもできない色々なものに縛られて生きていたのですね。自分が持っていないものを他人が持っていることに嫉妬し、時にいじめを行うのは、現代でもそう変わらないなと思いました。 謎だらけ愛の過去も明かされ、読後に表紙を見ると、なるほど!と思います。(図書館)

  • 「堕落者、女学生と相対する」
    日々闘う相手は学内に。
    偶然産まれた家柄が良かっただけで、自身に何か才能がある訳でもないのに何故この様な態度をとることができるのか。
    本当に気品ある者になりたいのなら、まずは日頃の態度や露骨な行為をやめるべきではないか。

    「観菊会の日」
    全て大人げない仕返し。
    三人三様の才を活かす場としては最高だったかもしれないが、各々が加減というものを学んだうえですべきだったな。
    欠点を補える力が互いにあれば、もっと多くの人の前で誰にも真似できない事ができるのでは。

    「少女たちの『人形の家』」
    一人が居なくなっても。
    身分にしか興味がないのか分からないが、生徒の一人が殺された状況で幸運など絶対に使ってはならない言葉だろうに。
    自らの命が奪われる覚悟で着いて行ったとしても、どうやって抜け出したのかなど謎は多いな。

    「人さらいと少女たち」
    演じて助ける手はずが。
    上手く手を取り合えば強いが、歯車が一つでも欠けた状態になると皆がポンコツになってしまうのが三人の欠点だよな。
    あれだけ狂気の沙汰を目の前で見せられたら、何も確認せず行動してしまうのも無理はないな。

    「開かずの間の真実」
    語り継がれた物語の主。
    自分の望む姿を造り上げたとしても、心まで操る事が出来ない限り全て上手くいくことなんて到底有り得ないだろうな。
    滅茶苦茶な事をしていたとしても、結果人助けになったのであれば善行として褒めるべきでは。

  • 窮屈な女学校とかつて女学生が消え去った開かずの間の人形怪談。こわくはないから読み易い。殺人の被害者が意外だった。おひいさまと呼ばれる少女や農家出身で周囲に馴染まない跳ね返り少女、悪びれずささやかな毒を振り撒くふつうの女学生達。女学校という浪漫。人さらいに騙されてしまう様も愚かさより胸がきゅうとなる。

  • 今回はシリアスなお話でした。

    裕福な子女が通う女学校が舞台。
    明治らしく華族や旧家だけでなく一代で財を成した子も通っていました。
    でも旧家じゃないからと差別されていて今でもこういうことはありそうだな、と思いました。

    しかも家のためと好きでも望んでもいない相手に嫁がなきゃいけない。
    自分にやりたいことや夢があっても「女には学問も夢もいらない。家に尽くし子を産み守ればいい」と押し付けられる。
    そこから始まる悲劇。

    悲しいと同時に「人形」を辞める決意をした人間は強いなぁ。
    その1人の愛さんの過去が判明。
    まさかでした。
    おそらくフランス語も話せなかっただろうに。

  • 面白かった。女学校、という舞台が好き。少し重めの話。

  • 今も続くお嬢様学校も当時はこんな校風だったのだろう。今も?

全10件中 1 - 10件を表示

相川真の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×