おじさん、語学する (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087200942

感想・レビュー・書評

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  • 語学を独学でやり直すことを考えている人は、まず本書を読むことをお勧めします。闇雲に、始めるのではなく、本書にあるように戦略的に取り組むことで、挫折する可能性を小さくできるでしょう。
    本書は、定年間近で妻に先立たれた独り身のおじさんが、国際結婚でパリに住んでいる娘の子供(孫)に会いたくてフランス語を学ぶという物語になっています。フランス語しか話せない孫と会話がしたいという動機がしっかりしているところが羨ましい設定です。語学を始めるにあたっては、この動機と目的を明確に定めておかないと学習の方法ややり方が違ってくるのです。明確な目的が決まっているのであれば、段階ごとに学び方を変え、実践を想定して鍛錬を積んでいくのです。もちろん、この物語の主人公とは、読者は事情が違うでしょうが、読者それぞれのケースにそったヒントがいろいろ散りばめられています。
    本書の著者が学びのあり方として参考になると紹介しているのが、本居宣長さんです。岩波文庫の『うひ山ぶみ』をぜひ参照するべき書として書いてあります。
    本書41ページに引用した部分があるので、紹介しておきます。

    「いずれの書を読むとても、初心のほどは、かたはしより文義を解せんとはすべからず、まず大抵にさらさらと見て、他の書にうつり、これやかれやと読みては、またさきに読みたる書へ立ちかえりつつ、いくへんも読むうちには、初めに聞こえざりし事も、そろそろと聞るようになりゆくものなり」(『うひ山ぶみ』表記を一部、現代仮名遣いに改めた)

    部分より、全体を。最初から几帳面に覚えようとはせず、全体を通読してから各所を覚えたほうがいいということです。
    この部分で、この本を思い出しました。『「超」勉強力』(中野信子、山口真由)
    ニューヨーク州弁護士の山口真由さんもこの書籍で勉強方法を紹介しております。
    300ページくらいの本は30分位で読むそうです。それを7回繰り返すのだそうです。記憶は、継続と反復で強化されるから。とにかく読み始めた本は、1回で必ず読み切ることを自分に課しているとのこと。全体像をまずざっくりとでも捉えることが、未知のものを学ぶときにはいいみたいですね。

    来年(2023年)はラグビーワールドカップがフランスで開催されます。観戦したいという緩い動機ですが、フランス語を学び始めようかと思いました!間に合うのか?という心の声が聞こえてきますが、やってみてもいいかと・・・

  • 孫に会いに行くためにフランス語を勉強するおじさんの話。
    物語は第一章~第五章まで。
    第六章は「ハウツウ本が教えなかった」であろう内容が記載されている。
    物語は四章まで読んでギブアップ。
    物語の内容に惹かれず、読み進めるのが苦痛になってしまった。
    テンポよく、ゆったりとしたコミカルなストーリーを期待していたが、そうでもなかったから。

    章ごとに勉強のポイントがまとめてある。
    その中の、「文化や歴史といった背景を知ることが大事」という点は素直に頷いた。

    大事なことはきっと書いてある本なのだけど、期待はずれなのと、自分に合わなかった為、評価は低い。

  • 普通のおじさんが、フランスに住んでいる孫とフランス語で話がしたいためにフランス語を習得するという作り話。
    語学の勉強をどうやって始めて、いくつかの壁を突破して、ある程度会話ができるようになるにはどうすれば良いのかを、おじさんを通して解説している。
    主人公の林家さんは、しかし、語学の達人とはいわないまでも、普通のおじさんでは無いと思う。
    かなりモチベーションが高く、ストイックにフランス語を学び身につけていく。
    話しはおもしろいのだが、各章ごとに解説が入り、腰を折られる。
    ベルリッツに興味を持ったのと、外国語のスイッチが入ると、思考回路が変わる、というところはうなづけた。

  • 自身が「おじさん」だし、「語学する」から購入。

    抽象化された方法論に収斂させず、現実の場面として言語の学習をとらえようという試み。描かれた学習姿勢には共感できる。ただ、その理想を「このわたし」にあわせた形で実行できる人は、結局、抽象化された方法論からでも「このわたし」にあわせた計画を立てられる人なのではないかと思う。

    学習の合間に描かれる主人公の価値判断が、無自覚に著者の価値判断を押し付けようとしているように感じられて、鬱陶しい。

  • [ 内容 ]
    外国語習得の成功には、他人に頼らず自前の流儀を編み出してゆく試行錯誤や自己点検が何よりも大切。
    なぜなら、外国語を学ぶということは、日本語の思考回路のスイッチを切り替えて生きることを意味するからだ。
    自分に合った方法ならば無理がないから続けられる。
    ―どこにでもいそうな語学苦手人間を主人公に仕立て、ゼロから出発して失敗しながら工夫を重ね成功の道筋を発見してゆく物語の中で、どうしたら挫折せずに外国語を習得できるのか、そのきっかけと学習法、成功を左右するポイントを懇切丁寧に指南する。
    これから外国語を初めて学ぼうとする人、久しぶりにやり直そうとする人に最適。

    [ 目次 ]
    第1章 発端
    第2章 学ぶ動機と助走
    第3章 会話の生がやりたい!
    第4章 一歩踏み込む外国語会話
    第5章 いざや本番、真剣勝負
    第6章 本書の方法論

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 語学に関する勉強法の本だが、主人公が「おじさん」で、フランスに住む孫娘に会うために、ゼロからフランス語を勉強するという物語。でもこの主人公のおじさんの話を読まなくても、各章にまとめてある勉強法だけ見たほうが、理解しやすいかもしれない。だから、買うのではなく図書館で借りて読む程度の本だと個人的には思っている。

    この著者は言語習得の「リハビリ」を担当しているらしく、こういう先生について学べば、語学がもう少しできるようになったのかな、と思う。日本の語学の中心が「訳読主義」であり、この訳読主義が語学アレルギーを増幅させているという主張には賛成できる。

    以下、備忘録的に僕が感心したこの本の主張をまとめておく。

    ・単語を孤立せず前後と結び付けて覚える(要は文章で単語を覚えろということ)
    ・外国語の語順のまま理解するのが鉄則。そのためには、CDや映像を繰り返し視聴しながら、意味を確かめ、意味が解ったら、訳した日本語が払拭されるまで、「原語で繰り返し」聞く
    ・日本語の語順に直さなくても、まがりなりに理解できるようになるまで、ネイティブスピーカーが「自然に」話す速度で耳から理解できるように努める
    ・「簡単な文」から聴きはじめ何度も聴くうちに、外国語の音のリズムが心のうちで鳴る。これが外国語の回路ができた兆候である。この外国語の回路ができると、外国語を聞いた時のストレスが減少する。
    ・初心者は辞書を引くのが面倒で挫折することが多い。最初のうちは、翻訳や対訳、詳しい単語リストがついたテキストを選ぶ。初中級者レベルでは、「翻訳や単語リストを使って」大量に読むのが正解である(初級レベルは数100ページ、中級は1000ページがめど)。中級レベルになったら、辞書を使う。
    ・いずれの外国であれ、最初の1000~1500語を覚えるとかなり楽になる。それまでは音声と文字と意味の3つを、自分にあった記憶法で「繰り返す」


    以上、著者はなるべく耳(音)を使って外国語を学ぶことを提唱しているように感じる。筆者もそう思うが、「訳読中心主義」で育ってきた日本人には、この音声面からの勉強というのが苦手だと思う。「読めれば良い」というスタンスの人が、僕を含めて多いからだ。村上春樹氏は英・独・仏・伊・西・ギリシャ語(『やがて哀しき外国語』より)が使えるそうだが、も「フランス語は読めるだけ」と言っているし、ドイツ語も大学で学んだ(彼の大学当時は訳読中心主義だったはず)だけだと言っているので、これが標準的な日本人の姿だと感じる。

    ただ、この著者がいうように「簡単な短い外国語の文章」を「繰り返し聞く」のは大変効果的だと、筆者も感じている。10数年前、音声面からの勉強をほとんどしなかった仏語が、音声面からの勉強を「意識的に」重視して勉強したら、かなり聞き取れるようになったからだ。またそれに比して、読解力も上昇した(ような)気がする。

    追伸:この本で加藤周一氏の『読書術』が一部引用されているが、個人的にはこの引用部分が(まあ僕には無理だな。頭が良い人は違うなという意味で)一番印象的だった。以下引用部分を示す。

    「外国語の本を読むのにも、一日一冊を片づけられる程度の速さがなければ、そもそも外国語の知識というものは使い物にならない。どうすればそういう速さで外国語の本を読むことができるか。教室で読むように、ていねいな読み方をしていたのでは、らちがあかないでしょう。翻訳のある小説を買ってきて、原書を右手におき、翻訳書を左手において、左の翻訳書を1ページ読んでから、右の原書を1ぺーじ読む。辞書は使わない。わからないところは飛ばす。-そういうやり方で一日一冊を読んで一年に及べば、おのずから翻訳なしに外国語の本を一日一冊片づける習慣がつく。おのずからその要領をつかむこともできるようにjなるだろうというのです。私はその方法を実行してみました。」

    すごい人でしょ?この人。

  • 主人公が孫に会うために、フランス語を学んでフランスに行くという物語を通じて、語学の学習ポイントがわかりやすくまとめられている。
    学ぶ動機付けの必要性、目標に合わせた学習、訳読主義でなく思考回路を変えることなど語学を学ぶためのエッセンスがまとめられ、参考になった。

  • どうにか、やる気のない語学学習者に対して、興味を持ってもらおう、というその為の努力をした実験的な本である。
    どちらかというと、語学学習のツボを教えてくれる本、というよりも、その点を実現するための文学、書き方、本の構成をがんばった本、という感じである。実際に、ここから得られた「語学学習のツボ」はかなり少ない。私は、文学作品として中途半端は文字を追いたくてこの本を手にとったのではない。文学作品なら、それとして、もっといい質のものを読みたいし、私は今回実用書としての価値がほしくてこの本を手にとったのだから、見当はずれ、という事になる。冒頭で書かれていたように、ほしい内容だけを飛ばし読みする方法で読むべきでした。
    ー日本の語学教育の「訳読」が、多いに日本人の語学学習を妨げている、と。まさにその通りであろう。

  • こういった本を読み、自分を奮い立たせるべし!
    たった一瞬でも

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