芸術立国論 (集英社新書)

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著者 : 平田オリザ
  • 集英社 (2001年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087201123

芸術立国論 (集英社新書)の感想・レビュー・書評

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  • 人はもはや、そこに住んでいるからというだけで共同体の成員になるわけではない。その共同体が提示する価値観に共感できるものがなければ、しなやかな帰属意識は生まれない。さらに、その価値観も一様ではなく、多種多様でなければならない。ここに芸術文化行政の難しさがあり、また可能性がある。

    2001年初版の本ですが現代を鑑みても同意。帰属意識を生むことは難しく、まだ文化も芸術も行政もそれをなし得るとっかかりも作れていないように思えます。

  • 夢のような世界、この夢のような世界の提言からもう15年経ってしまっている。芸術文化行政という言葉に耳がぴりぴりとする行政職員。
    この夢物語を現実にしていくかどうかは、ほんと、わたしたち市民にかかっている。
    芸術は、演劇だけではない、その演劇だけではないものも巻き込んでゆけるか、どこまで巻き込めるのだろうかに、この世界の将来がかかっているような気がしています。

  • 日本のこれからの芸術のあり方の本。
    演劇を中心に語られているけれど、ほかの芸術分野にも言えること。

  • どんなに銭湯が経営難でも、廃業すれば公共性をたてに非難される。銭湯の主人も大変な時代なのだ。
     言葉を換えれば、私たち現代人は公共性という鎖に縛られて生きている。
     だからあらゆる公共性の問題は「ある」「ない」の文脈ではなく、「強い/弱い」「高い/低い」の文脈で語られるべき事柄だということになる。
     そこで逆に、まず第一に問題なのは、いまだに「芸術の公共性」の問題が、芸術の世界の中で、「ある」「ない」の文脈で語り続けられているという点だ。(p.27)

     芸術の公共性を考えるときに一番重要なことは、公共性の区分の問題を細かく議論することではなく、「いま、日本において、芸術の公共性はどの程度のものなのか」「そして、それは、高まりつつあるものなのか」という点だろう。
    ここでも結論から先に述べてしまえば、私は、現代の日本社会において芸術の公共性は非常に高いと思うし、また、それは今後更に高まっていくものだと思っている。(p.30)

    かつての商店街には、ただの経済行為ではなく、一見無駄に見える交流の時間があったはずなのだ。その経済行為から離れた無駄な空間や時間が、地域の豊かな文化を育んできた。しかし、車で乗り付け、買い物だけを済ます機能的なショッピングセンターには、その無駄を許容する場所はない。インターネットによる通信販売などがさらにその勢いを加速するだろう。
    かつては、地方にこそ、「無駄」なもの、「無駄」な時間、「無駄」な空間が溢れていたはずだ。伝説、伝承、お化け、鎮守の森、祭り……。しかし村落共同体が崩れ、全国一律の近代化を達成した現代日本においては、そんな無駄なものは、どこを探しても見つからない。神話や伝承は、すべて人類学者の調査するところとなり、貴重な風習だけが「文化財」として手厚く保護されていく。祭りは形骸化し、観光客集めのためのイベントと化す。だが無駄な場所や時間を失った地域は、価値観も画一化し、重奏性を失って安定性を欠く。(p.39)

    芸術家は、基本的には、いつも「ブラブラしている」ように見え、経済生活の表層にとっては無駄な存在だろう。しかし、それは同時に、共同体にとって、どうしても必要不可欠な存在なのだ。無駄のない社会は病んだ社会である。すなわち、芸術家のいない社会は病んだ社会だ。かつては村落共同体に芸術家が遍在していたが、共同体の崩壊とともに芸術家の存在も消え失せた。だから、現在の日本は病んだ社会だらけということになる。
    多様性、重奏性のある社会は民主主義の根幹である。それを保証するためには、どうしても芸術家の存在が地域社会のなかに必要なのだ。(p.43)

    人はもはや、そこに住んでいるからというだけで共同体の成員になるわけではない。その共同体が掲示する価値観に共感できるものがなければ、しなやかな帰属意識は生まれない。さらに、その価値観も一様ではなく、多種多様でなければならない。ここに芸術文化行政の難しさがあり、また可能性がある。(p.58)

    「より多くの人に確実な満足を与える」という目標は、もはや公共性ではなく市場原理によって達成されるべきものだということだ。消費社会における公共性は、市場原理では達成できない、あるいはそこからこぼれ落ちてしまう、しかしながら市民一人ひとりにとっての切実な欲求をくみ取るところにのみ存在する。(p.72)

    もはや芸術文化は、限られた余暇に楽しむべきものではなく、人間の生活になくてはならないものなのだ。いま人々は、余暇を労働のためのものではなく、リフレッシュの時間とはとらえていない。人間は、芸術やスポーツを楽しむために生きているのであり、そのために働いているのだ。そしてその労働さえもが、文化化されていかなくてはならない。このような社会においては、休暇も、芸術文化やスポーツの楽しみを享受するための最低限の時間の確保という視点でとらえられるようになるべきだろう。(p.156)

    この莫大な借金と、小さな小さな劇場は、私に多くのことを教えてくれた。
    アゴラ劇場の経営にあたって私が考えたのは、サービス業としての劇場経営を突き詰めていこうということだった。当時、小劇場ブームの中で、劇場の数は不足気味だった。劇場の支配人、小屋番(劇場の管理者)はたいていが威張っていて、「貸してやる」という態度がありありと見えた。私は、この点を改めて、使う側の立場に立った劇王をつくろうと考えたのだ。
    ちなみに、このような態度は、まだ現在でも、公営、民営を問わず多くの劇場で見かけることができる。劇場が各種の危険を含んでいるために、その公共性を念頭に置かなければ、すぐにでも人々を管理する場に陥りやすい性格の建物だからだろう。(p.197)

  • 推薦者 共通講座 照井日出喜 先生

    *図書館の所蔵状況はこちらから確認できます*
    http://opac.lib.kitami-it.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB50101466&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • 平田オリザの政策提言。
    かなり大風呂敷を広げているのだが、荒唐無稽に思えないところがこの人のすごいところ。
    論理展開がわかりやすく、かつ劇場を取り巻く現状や政策にかんして熟知している著者ならではなのだろう。
    芸術の効用として、社会の他妖精の書くほや対話能力の育成が重要なのである。

  • 2001年に発行された書籍。
    本書で指摘している点で、現在改善されているものも多いかもしれない。

    芸術が市場原理に任されると、経済生活に有用で機能的な芸術しか、
    地方都市には残らなくなる。

    芸術を享受する際の地域格差や所得格差による不公正の是正に対して、
    医療や経済生活と同様に、芸術保険制度をもうけることを提案している。
    観る側からすると、とても魅力的な制度だ。実現してほしい。

    直接的に若手劇団に助成できるシステムとして、
    劇場に助成を行い、劇場の芸術監督がその助成金の使い道に
    責任を持つことが適切な方法ではないかと述べられている。
    2001年の時点でこのようなやり方がどれほどあったかは知らないが、
    現在では劇場主体で活気ある若手劇団の公演を行う劇場も多い。
    ラインナップから想像すると、東京芸術劇場は
    こういった形での運営を行なっているのではないだろうか?
    その他にも、若い世代の魅力的な公演に力を入れている劇場も、
    いくつか思い当たる。

    「芸術文化はなくても死なない」という言葉に対して、
    三万を超える自殺者に対して、「心の教育」を叫びながら、
    具体的な施策がなかったことを挙げている。
    昔から、人間の精神の問題は、芸術と宗教が担ってきたと述べる。
    芸術の創造と鑑賞に、時間とお金をかけて取り組むことは、
    人の精神的な支えになると私も思う。
    ただ、そのことは、かなり時間を要することであると思うし、
    効果を測定するのも難しそうだと思う。

    自分の言葉に落としこんで、多くの人に伝えたいと思った。

  • 文化行政について学びたいと思い、読んだ。著書の平田オリザは演出家だが、大学でも教鞭をとっている。
    一言で言うと、大変勉強になったし、衝撃を受けた。
    これからの文化の位置づけ、文化の公共性、文化行政のありかたなどについて書かれているが、本質的な目線で多くの問題提起と、斬新なアイデアが盛り込まれている。
    日本は経済大国を目指して、奇跡のような高度経済成長を成し遂げた。しかし、その過程で忘れ去られていったのは、「文化」という目線ではなかったか。ヨーロッパに行くと、自国の文化をとても大切にしているのがわかる。特に世界遺産の8割を所有するイタリアは、文化行政が進んでいるし、自国の文化に対して強気だ。例えば、ピサの斜塔の修復費を近隣国に出させたりしている。
    ネットワークの時代、日本は今後どのように舵を切っていけば良いのか。言語の壁を越え、アジアとネットワークを築くには、文化がカギを握っている。
    グローバル経済の時代、日本はどのように世界と戦っていけば良いのか。自国の文化を大切にし、自国文化の誇りを持って戦っていくしかない。自国の文化をないがしろにするような国は、世界が相手にしないだろう。
    http://www.youtube.com/watch?v=36NCa31nUlM

  • オリザの妄想は演劇経験のある自分にもピンとこない。芸術の必要性については言及しないほうがいい。必要ならいらないから

  • 文科省と文化省 イベント 伏線の確率とバランス 桜美林の学生寮、及びその周辺 大学での有料公演 芸術創造推進事業 演劇図書館 サービスの需給 演出家それぞれの政策 芸術保険制度

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芸術立国論 (集英社新書)の作品紹介

日本再生のカギは芸術文化立国をめざすところにある!著者は人気劇作家・演出家として日本各地をまわり、また芸術文化行政について活発に発言する論客として知られる。精神の健康、経済再生、教育等の面から、日本人に今、いかに芸術が必要か、文化予算はどう使われるべきかを、体験とデータをもとに緻密に論証する。真に実効性ある芸術文化政策を提言する画期的なヴィジョンの書。これは芸術の観点から考えた構造改革だ。

芸術立国論 (集英社新書)のKindle版

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