貧困の克服 ―アジア発展の鍵は何か (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087201277

作品紹介・あらすじ

アジアで初めてノーベル経済学賞を受賞したセン博士は、日本やアジア再生の鍵は、かつての経済至上主義路線ではなく、人間中心の経済政策への転換であると力強く提唱する。国連も注目する「人間の安全保障」という概念の可能性とは何か?また、「剥奪状態」「潜在能力」「人間的発展」といったキーワードが示唆する、理想の経済政策とは?四つの講演論文を日本の一般読者向けにオリジナル編集した本書は、セン理論の入門書であるとともに、いまだに貧困、暴力、深刻な人権侵害にあえぐ人類社会を見つめなおすための必読書でもある。

感想・レビュー・書評

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  • アジアの状況と人間の安全保障を絡めてかいてある。
    具体例も提示されていて非常にわかりやすい。
    個人的に、リベラリストなので非常によかったが、
    リアリストが読んだら物足りないかも?

  • ノーベル経済学賞受賞者のアマルティア・センの講演記録を翻訳した一冊。

    正直、期待外れです。
    「お前ごときが、ノーベル賞様に何を申すねん!」
    って言われそうやけど、講演記録なだけあって、今一つ話にまとまりがないように感じられたし、同じことの繰り返しが多いし。

    あと、この人の考え方自体があまり好きになれません。
    「民主主義最高!!」
    って考えてらっしゃるようで、別にそれ自体は否定せえへんけど、民主主義の有用性ばっかり主張して、弊害・マイナス点は実証しないし、言及しない。

    そして、貧困あんま関係なかったしww
    貧困の克服はどこへいったwwww

    講演記録ではなく、この人の著書を読んで、もう少しこの人の考え方に対する理解を深めたいと思う。

  • アジア初のノーベル経済学賞受賞者のアマルティア・センの講演を書籍化したもの

    彼の思想は経済学だけでなく、哲学や幅広い歴史の知識、また文学にも及んでいるため、非常に高く的な側面からアジアの開発のカギについて論じられている

    この本でとにかく強調されているのは、

    ①既存の「アジア的価値観」(儒教中心の上下関係を大事にする価値観、自由より規律を重要視する価値観)の否定



    ②普遍的な価値観としての民主主義の重要性

    である

    この2つを中心に今後のアジアについて語る本書は、
    一読に値すると思いますヨ

  • 論文内でセンも述べているが、これを読んだだけではセンがどうして民主主義を普遍的価値と認めるのか分からない。権威主義が経済開発に利益をもたらすというのも、民主主義を標榜したにも関わらず全く進まない事もあるわけで、もう少しそれについてセンの他著書で詳しく読んでみたいと思った。全体的に入門書的な本で内容は深くない。ちょっと物足りない。

  • 透明な政治体制
    メディアの自由な報道

    民主主義が正しく行き届くことで相互扶助や福祉へ

    危機的な状況が発生した時にこそ民主主義の本領が発揮される

  • そういう出会い方をしなければ、恥ずかしながらノーベル経済学賞受賞者だとは知りませんでした。



    1999年シンガポールでの講演『危機を超えて』

    1997年ニューヨークでの講演『人権とアジア的価値』

    1999年ニューデリーでの講演『普遍的価値としての民主主義』

    2000年東京での講演『なぜ人間の安全保障なのか』

    の4つの講演の和訳が収められています。



    講演録なので、そこまで深く研究内容が書かれているわけではなく、

    同じ主張が書籍のあちこちに出て来たりします。

    著者の考え方を簡単にまとめると、下記のような感じでしょうか。



    国の発展のためには、人間的発展と学校教育の普及の実現が必要。



    →そのためには、透明性を保証する民主主義が必要



    ⇔シンガポールや中国は、経済的に成功したために、(民主主義ではなく)権威主義的体制を擁護している(リー・クアン・ユー元首相の言葉で「アジア的価値観」)



    ⇔しかし、権威主義的体制と経済的発展には関係性はない

    ex.アフリカのボツワナ

    ex.(比較的自由なメディアが存在する)民主国家では、本格的な飢饉が発生した国は一つもない



    →さらに、儒教、仏教、インド文学を見ても、アジアの価値体系には多様性が認められる



    セン氏は今回のカンボジアの選挙をどのように見るのでしょうか・・・。

  • 『貧困の克服』(アマルティア・セン)
     アジア人としてノーベル経済学賞を受賞された氏の講演記録集。アジア人からの視点で世界の経済、政治を哲学的見地も含めて鳥瞰・分析されている著作は示唆に富んでいた。


    1) 民主主義や人権といった概念が文化的な差異を超えて普遍的なものであること。

    2) 民主主義や人権といった概念は、アプリオリに静的に存在するものではなく、それを獲得しようとするパースペクティブ、動的方向性の中に見出されること。

    3) 西欧の民主主義、アジアの権威主義、イスラムの非寛容といったような、それぞれの差異を文化的なものに帰属させる説明は、歴史的な検証に耐えることは出来ない(たとえば、アジア権威主義は一部の政治家の権威主義的な政治思想を正当化するための主観的な論法に過ぎないことを、孔子の文献に見られる国家に奉仕するとは必ずしも捉えられない引用から喝破している)。

    4) 3)のようないわゆる文化帰属主義的考え方は、個々の文化(西欧、アジア、イスラム等)の内部の多様性を無視・軽視しがちであり、そのような考え方こそが「政治的」であること。(「文化」という名の「政治」)

    5) 民主主義は経済が発展している時期には必要とされないが、経済が後退している段階(e.g. アジア経済危機)においてはそれのあるなしでは、国の安定・復活に決定的な影響が出ること。

    6) 飢饉は民主主義的なメディアのある国では決して起こらないこと。批判を受け入れるシステムが備わっていない独裁国家では飢饉が起こること(e.g.大躍進時代の中国、現在の北朝鮮、アイルランドつまり飢饉は自然災害というより明らかな人災であること。

    7) 上記のような民主主義とはいえない世界の現状はあれど、20世紀は民主主義の拡大が進んだ画期的な世紀であったこと。様々な制約はあれど、インターネット、NGOなどにより、あらゆる人々の世界的諸問題へのコミットメントが可能になりつつあること。

    8) セン氏が経済と哲学を結びつけ、政治的社会的問題に経済学的な見地から切り込むために画期的となった概念は、新古典主義経済学が前提する「利己的個人」を離れ、「他者との相互関係を自己に反映させて行動できる個人、社会的なコミットメントのできる個人」であること。

    9) 資本主義、市場主義を否定はせず、むしろそれなしに人類社会が維持・発展することはないとしながら、政治的なインセンティブ、社会的な人間存在の権利そのものの価値を認め、両者を追い求めていくべきであること。後者は前者のためにある、あるいは後者は前者の推進に邪魔になるというような考え方を批判している。


     私のような素人には彼の洗練された考えをすべて体系的に理解することはかなわないが、それでも上記のように印象的な部分が多々あった。経済・政治といった世界規模におよぶ外的な事象を語っている文章の合間から、人間に対する深く温かなまなざしが感じられる良書であった。

  • 19歳で出会ったアマルティア・センの本。そして、それを拒絶して、開発経済学への学問をあきらめたあのころ。

    苦手意識の発端だったアマルティア・センの本をはじめてまともに読んだ。といっても、本書は講演録であり、数学的理解が必要なセンの難しすぎる著作に比べれば、イージーなものだ。

    経済学者と言われているセンは哲学にも、有識で、哲学と経済学の橋渡しをノーベル経済学賞で評価されたほどである。

    尊敬すべきアジア人の一人である。

  • アマルティアセンの各所における講演録をまとめた本。
    政治学の本っぽいイメージが個人的にはある。発展途上国の経済状況と政治体制について述べた上で、民主主義の優位性について語られている。センの考え方はごもっともなのだけれども、その考え方の実現可能性という視点でみた時にいまいちしっくりこない部分もあったりもする。ただ、センが出した理論が今後更に飛躍していくものであると思う。

  • いわずもながノーベル賞受賞者の御本。

    貧困に対して主に民主主義という政治システムの大切さを説いてる。
    内容は貧困を理解する上で割と基本的なことが書かれているので、初心者にもオススメ。

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著者プロフィール

1933年、インドのベンガル州シャンティニケタンに生まれる。カルカッタのプレジデンシー・カレッジからケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジに進み、1959年に経済学博士号を取得。デリー・スクール・オブ・エコノミクス、オックスフォード大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、ハーバード大学などで教鞭をとり、1998年から2004年にかけて、トリニティ・カレッジの学寮長を務める。1998年には、厚生経済学と社会的選択の理論への多大な貢献によってノーベル経済学賞を受賞。2004年以降、ハーバード大学教授。主な邦訳書に、『福祉の経済学』(岩波書店、1988年)、『貧困と飢饉』(岩波書店、2000年)、『不平等の経済学』(東洋経済新報社、2000年)、『議論好きなインド人』(明石書店、2008年)、『正義のアイデア』(明石書店、2011年)、『アイデンティティと暴力』(勁草書房、2011年)などがある。

「2015年 『開発なき成長の限界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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