幽霊(ゴースト)のいる英国史 (集英社新書)

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著者 : 石原孝哉
  • 集英社 (2003年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087201963

幽霊(ゴースト)のいる英国史 (集英社新書)の感想・レビュー・書評

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  •  英国古代~中世における国王・異民族支配の容赦のなさの影に幽霊伝説が必ず生まれる。それを説いた本だ。
     「良い人」が絶対に得をしない、血を血で洗う政治と戦争のありさまが、幽霊(ゴースト)を通して民衆から語られる。日本の幽霊は「うらめしや~」と相手を無差別に呪い殺しに来る「穢れ」のような存在だしいつまでもその場所に常にいるのだが、英国の幽霊はゆかりの場所をある一定の期間だけうろうろしてすーっと消えていく、「お前はなんやねん、どこいくねん」みたいなものなのだ。
     そして、地元のコミュニティというか地域観光局の住民がものすごくその幽霊を大事にしているのだ。このイギリスの幽霊観をもし日本に当てはめていえば、例えば無念に敗れ去った聖徳太子が、天王寺をウロウロしているのを見かけるというものだ。「このまえ、聖徳太子みたぜ?」というのが普通の会話となる。だが、実際の聖徳太子は、神としてあがめられ、恐れられる存在であり、塔でもっていかに彼の怨霊を鎮めるか、また天王寺は夕暮れ時には絶対行くなと昔は言われたぐらい呪われたもので、谷町九丁目からあのあたりは小さな寺が無数にある半端ない穢れだ。もしこの谷町九丁目から天王寺がイギリスであるのならば、「一大観光地」になっていたかもしれない。
     そうした「幽霊観」が作られたのは、容赦なく残忍な王や異民族によってひどい目にあった庶民達が、敗れ去った貴族らを取り扱うことで、間接的に支配者に対して抵抗の意見を物申したいからであるというロジックが繰り返される。ゴーストとは、支配者に対して庶民が、その支配者によって敗れ去った者を幽霊にすることにより「それでいいのかよ」という抵抗の意見とするものなのだ。
     これが幽霊の正体……である。
     だが、この本の魅力は、とにかくイギリス人の歴史好きの謎の人物たちが多いことである。地元の観光センターに必ず、なんでも知っている地元歴史案内人がいたり、霧の中から歴史をなんでも知っている老人が自転車に乗って現れては去って行ったり、どこにでも歴史を語れる人がいる。その出会いのエピソードが退屈させない。日本からゴーストを探しに来たと言えば、イギリス人は大歓迎する。その歓迎されっぷりが、自分が実際に観光している気分になってしまうくらい楽しい。文章も軽妙で滅茶苦茶読みやすい。索引もあって、良い本だと思う。

  • すごく、面白い。
    そもそも「なんとかのどこどこ史」とかそういう内容の本はもともと大好きなのだ。

    この本はイギリスの幽霊伝説と史実との差を含めて紹介するというもの。イギリスの幽霊観は日本とはかなり違いがある。恨みなどではなく、憤死した人物の幸せな時間を幽霊が再現して出てくるなんて!すごい。
    そしてその「幽霊伝説」は、権力者への伝説に名前を借りた反抗だったと作者は語る。それ以上に歴史に登場する人物への愛情を感じたりして。
    系図や、年表もあるので、わたしのようなイギリス史に暗い人でも大丈夫ですー。編年体ではなく紀伝体なので歴史を一からというよりは興味のあるところから楽しめますよ。まー、だからこそ年表は必須ですけど。

  • 日本と英国の幽霊に関する想いの違いを知る本。
    物言えぬ庶民の為政者に対する叫びの代わりが、
    幽霊伝説であり、為政者による正史に書かれていない
    史実もまた、幽霊伝説で語られる。
    目まぐるしく国自体や為政者が替わる国ならではの、
    市井の人々の想いにふれることができる。
    そのほんの一部ではありますが、
    興味深く読めました。

  • 幽霊が歴史に影響を与えたわけじゃないのか!歴史上の人物が幽霊になっていくということが言いたいのか!
    歴史に詳しくなれる気がした…。

  • イギリスの人達のゴースト(幽霊)に対する考え方が日本と違って面白い。恐怖というよりもっと身近な存在?
    英国史とゴーストは切り離せないでしょ!と、妙にタイトルに納得して購入したけど大正解。
    過去に何が起きて現代までゴーストとして語り継がれているのか、一味違う英国史が楽しめます。

  • 英国人のゴースト好きのその様子も含め、なぜそのゴーストの伝説があるか、という切り口は面白い。
    史実と伝承をもとに、ゴーストを訪ねる旅である為、
    若干時代に偏りがあったりするのはやむを得ないが、もう少し幅広くとりあげられていると面白かった。

  • 文字通りの内容なので、有名な幽霊話でも歴史に関係がないものは省かれている。内容に疑問を感じることも多いがまあ面白い。トマス・ブリンの首など、誤解を招きそうな表現や、不正確な記述が気になる。
    ヨハネ祭は夏至の前後で、冬ではないし。

  • 英国史と幽霊と幽霊大好き英国人と

  • ゴーストの話を取り上げて、イギリスの歴史を書いた本。
    面白いんだが、似たような名前が出てきて混乱した。

  • 英国といえば「幽霊好き」。
    ロンドンのゴーストマップや、ゴーストツアーはつとに有名ですが、本書はロンドンだけではなく、英国全体を網羅しています。特に、民衆に語り継がれている王侯の幽霊に絞られています。
    元々幽霊が好きな国民性ではあるのですが、王侯に関する幽霊譚のほとんどが、「民衆の不満」を代弁する手段として使われたようです。
    が、幽霊の目撃例がかなり信憑性が高いのも事実であり、ただの噂話としては切り捨てられないのがまた魅力的。
    初めて英国に旅行した後で読んだのですが、先に読んでおけば良かったです……。

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幽霊(ゴースト)のいる英国史 (集英社新書)の作品紹介

「幽霊付き」「出る」となれば、その不動産の価値まで上がるという、怖いもの好き、古いもの好きの英国人。英雄、裏切り者入り乱れ、権謀、スキャンダル渦巻く長い英国史には、ところどころに目印のように幽霊が立っている。一見おどろおどろしいそれらは、しかしよく見れば、声をあげない民衆の目に映った、別の姿の歴史を指し示している。そうした伝承の歴史に目を凝らし、今も残るゴースト伝説の地を訪ね歩いた、ユニークな読物・英国史。

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