覇権か、生存か ―アメリカの世界戦略と人類の未来 (集英社新書)

  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087202601

作品紹介・あらすじ

アメリカの覇権戦略は、多くの国々の市民の命を奪ってきた歴史を持っている。しかし、無辜の人びとの血がどんなに流されても、それがアメリカやアメリカの支援する国家の行為である限り、テロと呼ばれることは少ない。なぜなのだろうか?いまアメリカは、史上最強の軍事力を持つ国家として、覇権をいっそう押し進めようとしている。しかしそれは同時に、多くの人びとの生存を危うくする道程にもなっているのだ。アメリカの覇権戦略の現在と未来を、その歴史的経緯をたどりながら詳細に分析し、揺るぎない視点から国際社会のあり方と人類存続への方途を探る、チョムスキーの集大成ともいえる書。

感想・レビュー・書評

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  • いろいろと影響を受けた

    違いは見せるか見せないか、またはみんなが見てるか見てないか

    また本日も記念日指定外みたいです

  • 「覇権か、生存か」    -2007.02.18記

    些か旧聞に属するが、N.チョムスキーの「覇権か、生存か-アメリカの世界戦略と人類の未来」は、
    昨年の9月21日に、反米強硬派として知られるベネズエラのチャベス大統領が行った国連総会一般演説で激賞推奨され、
    その所為で米国アマゾン.ドットコムでは販売ランキング2万6000位から一気にトップにまで躍進する、という時ならぬセンセーションを惹き起こした。

    チャベス大統領の当該演説の件りは以下の如くである。 
    -引用-るいねっと「チャベス大統領の国連演説」より―
    「第一に、敬意を表して、N.チョムスキーによるこの本を強くお勧めします。チョムスキーは、米国と世界で高名な知識人のひとりです。彼の最近の本の一つは「覇権か、生存か-アメリカの世界戦略と人類の未来」です。20世紀の世界で起きたことや、現在起きていること、そしてこの惑星に対する最大の脅威-すなわち北米帝国主義の覇権的な野心が、人類の生存を危機にさらしていること-を理解するのに最適な本です。我々はこの脅威について警告を発し続け、この脅威を止めるよう米国人彼ら自身や世界に呼びかけて行きます。」
    「この本をまず読むべき人々は米国の兄弟姉妹たちである、と私は思います。なぜなら彼らにとっての脅威は彼ら自身の内にあるからです。悪魔〔eldiablo〕は本国にいます。悪魔、悪魔彼自身はこの家にいます。そして悪魔は昨日ここにやって来ました。皆さん、昨日この演壇から、私が悪魔と呼んだ紳士である米国大統領は、ここに上り、まるで彼が世界を所有しているかのように語りました。全くもって。世界の所有者として。」
    ここでチョムスキーが詳しく述べているように、
    「米帝国は自らの覇権の体制を強固にするために、出来得ることは全て行っています。我々は彼らがそうすることを許すことは出来ません。我々は世界独裁が強固になることを許すことは出来ません。世界の保護者の声明-それは冷笑的であり、偽善的であり、全てを支配するという彼らの欲求からくる帝国の偽善で溢れています。彼らは彼らが民主主義のモデルを課したいと言います。だがそれは彼らの民主主義モデルです。それはエリートの偽りの民主主義であり、私の意見では、兵器や爆弾や武器を発射することによって強いられるという、とても独創的な民主主義です。何とも奇妙な民主主義でしょうか。アリストテレスや民主主義の根本にいる者たちは、それを認知できないかもしれません。どのような民主主義を、海兵隊や爆弾で強いるというのでしょうか?」というように続けられる。

    日本語版の本書は集英社の新書版ながら350頁に及ぼうという長大さで、アメリカの覇権戦略の現在と未来を、その歴史的経緯をたどりながら詳細に分析し尽くしている。
    覇権主義のアメリカは従来より「平壌からバグダッドまでつづき不穏な核拡散地帯-イラン、イラク、北朝鮮、インド亜大陸」を非常に危惧し、国際的な緊張や脅威を拡大してきたが、現実にはそれより遙かに恐ろしい核大国がその近辺に存在していることに、世界は眼を閉ざしたまま論じられることは殆どない。
    それは数百発にのぼる大量の核兵器で武装しているアメリカの権力傘下の国イスラエルの存在であり、この国はすでに世界第二位の核保有国であるという憂慮すべき事態にある。
    グローバル化は持てる者と持たざる者との格差を拡大する。
    アメリカによる宇宙軍事化の全面的な支配の必要性は、世界経済のグローバル化による結果としてより増大していく。経済の停滞と政治の不安定化と文化的疎外が深刻化していく持たざる者の間には不安と暴力が生まれ、その牙の多くがアメリカの覇権主義に向けられることになる。そのために彼の国では攻撃的軍事能力の宇宙への拡大がさらに正当化され増幅していく、という負の循環の呪縛から世界はいかにして逃れうるのか。

  • 1

  • 【由来】
    ・「知の逆転」

    【期待したもの】
    ・アメリカの帝国主義に対する、批判的な視点を自分のものとして涵養できれば。

    【要約】


    【ノート】
    ・国益とは、政策を決定する立場にある国内の一部の人々の特別な利益を指す専門用語である。イギリス系アメリカ人の世界では、それはアダム・スミスの時代から自明の理だった。スミスが激しく非難したのは、政策の「主立案者」で、自分たちの利益が「何よりも重視される」ように画策するイギリスの「貿易商人と製造業者」であり、それが他の人々ー「残酷な不正」を被る海外の犠牲者だけでなく、イギリスの人々も含めてーにどれほど「苦しい」思いをさせようとお構いなしの連中だった。自明の理とは真実であり続けるものだ。(P44)」

    ・改革が続いていたら、1960年代以降のソ連の社会経済的停滞が回避され、是非とも必要とされていた国内の改革ーゴルバチョフが実行しようとしたが遅きに失した変革ーが促進されていたかもしれない。また、1990年代の人々の不幸や、アフガニスタンの破壊その他の残虐行為も避けられたかもしれず、ましてや軍拡競争が更に危険な次元に達して、核による惨事が深刻に危惧されることはなかったかも知れない。(P322)」

    ・「現代史を通じて、人権状況は著しく改善され、生活の一部の面では民主的な管理が行き届くようになった。こうした展開が、啓発された指導者の贈り物であることは滅多にない。ほとんどの場合、一般の人々が戦い、国家やそれ以外の権力中枢に課してきた展開なのである。(中略)企業のグローバル化プロジェクトによる有害な影響が、南の集団抗議行動を導き、やがて裕福な工業社会の主要部門が加わり、なかなか無視できない存在になった。草の根レベルの強固な同盟が初めて生まれたのだ。これは感動的な展開であり、さまざまな機会に恵まれる。そして成果を上げ、言葉上でなく政策を変えさせることもある。少なくとも国家権力に対してはそれを抑制するだけの影響力がある。西洋の知識人が宣言している「人権改革」のようなものが国家として行われることはなくても。(P336)」

    ・中途半端だが読了にする。

  • めくっただけ

  • 突き詰めて言えば、そういうことです。アメリカ=最大のテロ国家。

    テロ国家ということは、国としてテロをしている、ということです。
    9.11 の犠牲者は4,000人弱です。その報復と称して爆撃をした結果の犠牲者はその数をはるかに上回っています。それが、アメリカ=テロ国家、の根拠のひとつです。
    このことは、前の著書でも書かれていたことですが、今回、これまでの対アメリカの思想を集大成したものといえるでしょう。
    読んで楽しくなる本では、もちろんありません。が、日本も巻き込まれつつある「現代」についての基本的な理解を助ける重要な著書だと思います。最後に、チョムスキーの「希望」が語られているのが、わずかながらの「救い」かもしれません。その根拠は弱いと言わざるを得ませんが。

    ところで、縦書きの本なのに、目次と巻末の注釈が横書きなのはとても醜いと思いました。そうするなら本文も横書きにすればいいでしょうに。それと、なぜか一部の漢字にルビが振ってありました。なぜなんでしょう? これらの漢字が読めない人が多いと思ったのでしょうか? 内容以外のところで、本としての出来がイマイチだと感じました。

  • いわずとしれた有名な言語学者なんだけど、じつは政治にも
    言及する人。この本でそういう一面を知った。

    アメリカは本当に政治というのが重要視されていると思う。

    アメリカをこういう風に捉えているアメリカ人もいる。
    なんでもそうだけど、見方はひとつじゃないし、結局
    何が正解かなんて誰にもわからない(それを正解と思っている人は別だけど)。
    これに比べると日本のいわゆる知識人というのは、薄っぺらい気がしてならない。やっぱりもっと努力する必要があるなあ。海外の大学院で学んでみたくなる。世界と勝負するには、何よりも教育。そして、もっと文化の担い手を育てること。

  • [ 内容 ]
    アメリカの覇権戦略は、多くの国々の市民の命を奪ってきた歴史を持っている。
    しかし、無辜の人びとの血がどんなに流されても、それがアメリカやアメリカの支援する国家の行為である限り、テロと呼ばれることは少ない。
    なぜなのだろうか?
    いまアメリカは、史上最強の軍事力を持つ国家として、覇権をいっそう押し進めようとしている。
    しかしそれは同時に、多くの人びとの生存を危うくする道程にもなっているのだ。
    アメリカの覇権戦略の現在と未来を、その歴史的経緯をたどりながら詳細に分析し、揺るぎない視点から国際社会のあり方と人類存続への方途を探る、チョムスキーの集大成ともいえる書。

    [ 目次 ]
    第1章 優先事項と展望
    第2章 帝国の壮大な戦略
    第3章 啓蒙の新時代
    第4章 危険な時代
    第5章 イラク・コネクション
    第6章 優位ゆえに陥る窮地
    第7章 憎悪の大釜
    第8章 テロリズムと正義―自明の理とされていること
    第9章 つかのまの夢悪なのか?

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  アメリカの過去の世界戦略とそれらに対する論評について書かれた本。
    過去のアメリカの贖罪とも言うべきことについて、非常に詳しく書かれている。

     テロリズムを広げている国、というよりテロリズムを行う最大の国はアメリカである。国際、ひいては自国の世論を無視してまで自らの自由に動く国でもある。

     今の一極的な国際社会でもなく、帝国主義がはびこった19世紀でもなく、新しいスキームが必要となってくるのかもしれない。その前提として、アメリカが仕組んだことを知るには非常に良い書である。

  • 言語学者なのにアメリカを大批判することで有名な教授チョムスキーの著作です。

    現在、読書中です。期待度は2。

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著者プロフィール

ノーム・チョムスキー(著) 1928年生。言語学者、批評家、活動家。アリゾナ大学言語学栄誉教授。『統辞構造論』(1957年)において言語学に「チョムスキー革命」をもたらし、その後も生成文法研究の発展を牽引し続けた。エドワード・ハーマンとの共著『マニュファクチャリング・コンセント』(1988年)では自由民主主義社会における思想統制のメカニズムを分析した。またベトナム反戦運動では中心的な役割を担い、それ以降も各地の独立メディアと協力して様々な草の根運動に協力し続けてきた。主に自国アメリカの国内外での強権主義に対して、アナーキズム思想と大量の歴史的資料に基づいて重厚な批判を展開している。存命中の学者としては世界で最も多く引用されている。ウェブサイト:https://chomsky.info/

「2021年 『気候危機とグローバル・グリーンニューディール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ノーム・チョムスキーの作品

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