太平洋――開かれた海の歴史 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087202731

作品紹介・あらすじ

地表の三分の一を占める太平洋は、古代から開かれた海だった。マゼランをはじめとするヨーロッパの航海者たちよりはるか以前に、東南アジアから小さな舟で渡ってきた人々がつぎつぎと島々に居住し、おそらくは南アメリカにまで達していた。こうして彼らがつくりあげた南海の楽園に、白人たちが乱入して、掠奪と搾取をくりかえし、また、疫病や酒や銃火器をもたらしたため、太平洋は荒廃した。本書は、「大航海時代」研究の創始者が、太平洋本来の住民の歴史から説きおこし、西欧列強による探検、植民地化、帝国主義分割、そしてアメリカの核基地化した現在にいたるまでのダイナミックな歴史を、日本人の観点から力強く描きだした、太平洋が主役の画期的な通史である。

感想・レビュー・書評

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  • よくまあこれほど、現代的な太平洋研究の視点に気を配りながら、あらゆる事件、問題にくまなく言及したなと驚いた。著者は博覧強記であると同時に、この年代の研究者には珍しいオープン・マインドな人なのだろう。自分の中のコロニアルな偏見に無自覚だったり、逆に先住民の文化を極端に神聖化したりする太平洋オリエンタリズムが専門研究者でもありがちなのに、そういった境地とは無縁に見える。すごい。

  • コンパクトにまとまりながらも筆者の怒りが行間から滲み出ている。

  • 太平洋通史として概ね読みたい内容を網羅していた。

    更新世末期、ニューギニアとオーストラリアは一体となって「サフル大陸」を形成し、東南アジアはスマトラ、ジャワと結ばれて「スンダ陸棚(スンダランド)」を形成していた。人類は、5~6万年前、スンダランドから海を渡ってサフル大陸に移住した。

    18世紀頃まで、ヨーロッパは伝説の南方大陸の探索に執念を燃やしており、その過程で太平洋の島々を発見していった。

    ヨーロッパの政府よりいち早く太平洋に目を付けたのは捕鯨船員と商人と伝道者。
    ブラックバーダー:19世紀、農園や鉱山の労働者を拉致して集める商売をする白人。
    ビーチコウマ:海岸や波止場でルンペン生活をする人間

  • [ 内容 ]
    地表の三分の一を占める太平洋は、古代から開かれた海だった。
    マゼランをはじめとするヨーロッパの航海者たちよりはるか以前に、東南アジアから小さな舟で渡ってきた人々がつぎつぎと島々に居住し、おそらくは南アメリカにまで達していた。
    こうして彼らがつくりあげた南海の楽園に、白人たちが乱入して、掠奪と搾取をくりかえし、また、疫病や酒や銃火器をもたらしたため、太平洋は荒廃した。
    本書は、「大航海時代」研究の創始者が、太平洋本来の住民の歴史から説きおこし、西欧列強による探検、植民地化、帝国主義分割、そしてアメリカの核基地化した現在にいたるまでのダイナミックな歴史を、日本人の観点から力強く描きだした、太平洋が主役の画期的な通史である。

    [ 目次 ]
    プロローグ 開かれた海・太平洋
    第1章 太平洋に栄えた文明―オセアニアの先史時代
    第2章 太平洋の発明―マゼランとその後継者たち
    第3章 マニラのガレオン船―太平洋に向く日本の眼
    第4章 姿をあらわした太平洋―キャプテン・クックまで
    第5章 捕鯨船員、貿易商人、伝道者
    第6章 コプラ、サトウ、鉱石―資本主義時代の太平洋
    第7章 太平洋分割
    第8章 南洋―ふたたび太平洋へ
    第9章 日米対決
    エピローグ 太平洋時代のオセアニア

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 日本にとって古くから関わりの深い地域に関わらず、中国や西欧の方を見続けてきた昔と変わらず、現在もあまり関心がもたれていないように思う。「太平洋の歴史」というテーマ自体が新鮮で、文句なしに面白い。知らなかったこと、考えもしなかったことが多く、そこへこれまでの断片的な知識やエピソードがはめこまれて、大きな流れとしてつながった感じ。

  • なにしろブローデルの『地中海』に対抗して『太平洋』ですよ。太平洋について,先史時代の考古学的知見から今日の米軍にとっての戦略的意義までを新書1冊にまとめちゃう,という発想がすごい。はじめ,トンデモ本だとわたしが思ったのもムリありません。しかし,読んでみると,知らないことばっかりだったので,二度すごいと思いました。

    これはわたしの不勉強なんでしょうが,メラネシアやポリネシアやミクロネシアには昔から人間が住んでいる,という観点で書かれた本を,いままで読んだことがありませんでした。いや,読んだことあるんですが,それは文化人類学の本だったので,そこに描かれている人々が歴史を持った人々であるという印象を受けませんでした。ほかに,南の島は楽園か,そうでないか,という本や,そこを訪れた白人や日本人の感想を書いた本なら,世にたくさんありますが,本書のような歴史の本は珍しいと思います。わたしは,宮本正興『新書アフリカ史』(講談社現代新書,1997)や白石隆『海の帝国──アジアをどう考えるか』(中公新書,2000)を読んだときのような感動を覚えました。

    とはいえ,どうしても白人側の史料に多くを頼らなければならないのはしかたありません。そして,わたしは白人側の歴史ならイロハくらい分かるので,白人側の歴史について,へーと思うことがいくつかありました(本書を読んでイロハを知った事柄については,へーとも思いようがありません)。わたしの「へー」を雑多に並べてみます。

    * スペインとポルトガルとが仲良く(?)世界を二等分することを決めたトルデシリャス条約(1492,1494改定)は,地球の裏側の境界線を決めていなかった。ローマ教皇から地球の西半分を貰ったスペイン人は,アメリカ大陸を経由してフィリピンに到着したので,彼らはフィリピンがスペインの領域(西半分)に入ると考えた。一方,地球の東半分を貰ったポルトガル人は,喜望峰を経由してマカオを領有した。結局のところ,太平洋のどの部分がどちらの「半分」に入るかは,船がどっちから来たかによって決まった。
    * 現在のアメリカ合衆国の西部や南部を探検したスペイン人は,幌馬車で大陸を横断してきたのではない。コロンブスの航海がそうであったように,船でスペインを出て海流に乗るとメキシコ湾に着く確率が高い。中米の陸地は東西の幅が狭いから,スペイン人たちは中米の地峡を横断して太平洋に着き,そこから船でカリフォルニアなどを探検した。
    * スペインから独立したオランダは,トルデシリャス条約で二分された世界に割って入ろうとした。1598年にオランダ人は初めて,マゼラン海峡経由で東から太平洋を横断しようと試みた。しかし,その航海は失敗した。5隻から成る船隊はばらばらになり,漂流したり行方不明になった。そのうちの1隻が1600年に豊後に漂着したリーフデ号であり,その航海長だったイギリス人ウィリアム・アダムズが三浦按針になった。(一方,本書では触れられていないが,幕末に日本に来たペリー艦隊は,アメリカ合衆国の東海岸を出港して喜望峰経由で日本に到着した。あべこべのような気がする。)
    * イギリスやオランダが東インド会社を作ったのにならって,ロシヤは,1799年にロシヤ-アメリカ会社を作って,アラスカの原住民たちを略奪した。

    あと本書には,ハワイ王国のカラカウア王が1881年に来日して,ハワイの王族と日本の皇族とのあいだで婚姻を成立させようと日本政府に提案したことも記されています。この一件については,矢作俊彦・司城志朗『海から来たサムライ』(角川書店,1984)に詳しく描かれています。

  • 太平洋には、ミクロネシア、メラネシア、東西ポリネシアがある。
    グアム、サイパンはミクロネシア。ニューカレドニア、フィジーはメラネシア。トンガ、サモアは西ポリネシア。ハワイ、イースター、タヒチ、ニュージーランドは東ポリネシア。

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著者プロフィール

増田義郎 ますだ よしお
1928年、東京生まれ。東京大学文学部卒業。東京大学名誉教授。専門は文化人類学、イベリアおよびイベロアメリカ文化史。『大航海時代叢書』(全42巻 岩波書店)の刊行を推進。主な著書に『インカ帝国探検記』『黄金の世界史』『太平洋』など。訳書に講談社学術文庫『西太平洋の遠洋航海者』(B.マリノフスキ著)のほか、『ワルツへの招待』(ロザモンド・レーマン著)、『片隅の人生』(サマセット・モーム著)などがある。2016年没。


「2020年 『アステカとインカ 黄金帝国の滅亡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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