安全と安心の科学 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 205
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087202786

作品紹介・あらすじ

交通事故や医療事故、あるいは自然災害が頻発しているが、元凶は車や劇薬なのか、人なのか、あるいはシステムなのだろうか。われわれの安全を脅かすものは、「安全」の名のもとに人間が作り上げた科学的人工物、社会的構築物である場合が多くなっている。また現代のような文明の高度に発達した社会では、心の病気、自分が生きている社会との不適合に悩む人の割合も増えてきている。これまで定量的に扱えないということで無視されることの多かった「不安」や「安心」といった問題に目を向けなければいけない時代になってきたのだ。

感想・レビュー・書評

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  • 2005年の本。ノスタルジーは感じるが、隔世の感がある。安全そのものでなく、私たちの社会に対する認識がこの数十年で大きく変わったことが分かる。同テーマを学ぶのであれば、より新しい本を探したほうが良い。

  • 失敗から学ぶことが大切。失敗の本質的な原因まで究明するためには、事実を正確に把握することが重要であり、そのためには責任を追及しないことがポイントとなる。
    また、人間は必ず失敗するということを前提に、システムを設計しなければならず、必ず失敗するということを真摯に認める必要がある。
    安全にとっての重要ポイントを再度振り返ることができた。

  • 飛行機の事故で死ぬ人より、自動車の事故で死ぬ人の方が圧倒的に多いのは少し考えれば分かりますね。それでも車に乗るのより飛行機に乗る方が不安です。飛行機でもし事故にあえばまず助からないから。飛行機事故のときはその原因究明のためにものすごい時間をかけていますよね。次に同じことが起きないようにでしょう。でもどうも自動車事故の場合は責任がだれにあるかばかりに目がいって(保険とか損害賠償とかいうのがあるから)決して事故の本当の原因を突き止めようとはしないのだそうです。そこで著者は交通事故においても原因究明のための第三者機関が必要と唱えられています。当事者、警察、保険会社など以外にということです。たとえば、前に行くつもりがバックをして人をひき殺したなんていう事故も起こっていますね。それはもちろん運転していた人の個人的なミスかも知れません。でもそれを未然に防ぐこともできたのではないでしょうか。つまり車の操作の仕方を、前進とバックでは明らかに相当意識しないと変更できない(普通でいうと面倒な仕組みではあっても)ようにしておけばよいのではないですか。具体的にはギアチェンジをするときに何か引っかかりをつくっておき、スムーズに動かないようにする。そのことによって同じような事故は減っているようです。医療事故というのも非常に多いですね。患者の取り違えというのも結構あるのだそうです。どうも病院はそういうミスを表に出したがらない。信用がなくなると人が集まらなくなりますからね。でも、どんな小さなミスでも必ずそれを公表し、それで何か罰則を与えるというのではなく、皆が情報を共有することで、同じ過ちを繰り返さない、そういうことが今求められているのです。どこの職場でもきっと同じことが言えると思います。後半は理論的で少し難しくなりますが、前半は具体的でとっても考えさせられます。(本書読後、JR尼崎の事故が起きてしまいました。残念です。)

  • 「安全」であっても必ずしも「安心」はできない。一回性のものには起きる確率は意味がない(天気予報の降水確率、手術の成功確率などは当事者にとっては起こるか起こらないかであり、その場面では心理的なものにしかならない)。人間が作ったものが人間を脅かす。リスクとは?リスクを回避するには?事故が起こる場面。予想、確率、心理的要素。『新しい科学論―事実は理論をたおせるか』(ブルーバックス1979)も必読。とても30年も前の著作とは思えないほど新しいものを含んでいます。

  • 震災が起きてから読むと苦笑いが出る

  • 請求記号 : 519.9||M
    資料ID : 91051511
    配架場所 : 工大新書A

  • フェイルセーフ(故障したときは安全に停止する仕組み)やフールプルーフ(誰でも簡単に使えるくらいに設計する)などの安全についての考え方を示す本。
    原因追求と責任追及がどれくらい分けられるかが日本の課題か。

  • たぶん、出版された頃に買って読んだ筈なんですが、再読しました(僕は村上陽一郎先生の愛読者です)。
    そうしたら、はからずも原子力発電所の話が「安全だけれども、安心できない」例としてあげられていました。今となっては、「安心できないと思っていたのが正しくて、安全ではなかった」訳で、安全安心というのは、村上先生のような専門の方をもってしても正確に評価するのは難しいことだと知りました。今のご意見をうかがってみたいと思います。

  • 「科学」の営みの背後にある様々な「安全」面の問題を事例を引きつつ示し、「そんな姿勢じゃダメ」ということを言っている本。

    医療であれ、原子力であれ、絶対安全というものはない。それを認めた上でどのように対策を講じるべきかということが書いてある。「フール・プルーフ」、「フェイル・セーフ」などの概念は、それを作ったこと自体に意味があるということだろう。

    この手の研究に触れたことがある人にとって、特に目新しいことは書いてないのではなかろうか。でも、「安全」と「科学」との関係がどのようなものになってきているのかという現状を把握する分には有用だと感じた。「まぁ、そうなのね」、という印象に留まってしまうので星3つ。

  • 学校から読めって言われて(これでレポート書かなきゃいけなかったから)読んだ。
    やっぱり私にはまだ日本語が形成されていないから(笑)難しかったけれど、医療についてのところはディベートに使うのが楽しかったなー。
    ヒューマンエラーは、防ぎようのないことだったり、国民総背番号制度が必要だの必要じゃないだの。

    おもしろかったよ。

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著者プロフィール

1936年東京生まれ。科学史家、科学哲学者。東京大学教養学部卒業、同大学大学院人文科学研究科博士課程修了。東京大学教養学部教授、同先端科学技術研究センター長、国際基督教大学教養学部教授、東洋英和女学院大学学長などを歴任。東京大学名誉教授、国際基督教大学名誉教授。『ペスト大流行』『コロナ後の世界を生きる』(ともに岩波新書)、『科学の現代を問う』(講談社現代新書)、『あらためて教養とは』(新潮文庫)、『人間にとって科学とは何か』(新潮選書)、『死ねない時代の哲学』(文春新書)など著書多数。

「2022年 『「専門家」とは誰か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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