- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087203608
作品紹介・あらすじ
巷にはデータが溢れている。「視聴率」「内閣支持率」「経済波及効果」「都道府県ランキング」等々…。新聞、テレビ、雑誌に何らかのデータが掲載されていないことはまず無い。そして私たちは、これらのデータからさまざまな影響を受けている。しかし、肝心のそのデータにどれほどの客観性があるのだろうか。実は、かなり危ういデータが跋扈しているのである。本書は、さまざまなデータを検証することで、データの罠を見抜き、それらに振り回されない"正しい"情報の読みとり方-データリテラシーを提案する。
感想・レビュー・書評
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昨今のデータ分析ブームを先取りしたかの様な2006年発行書籍ではあるが、データに対する考え方や分析手法の参考としては充分通用する内容となっている。
人は統計データに踊らされる。物心ついた時にはIQやら偏差値やら何かにつけて順位で評価されてきた様な時代に生まれたから、公表される数字ばかりを気にして生きてきた。最近はこれまた順位ブームとも言える様な、街の住みやすさランキングやレストランの格付け、ネット掲示板には楽器メーカーにまでランク付けされるような時代だ。人はそれを見て、自分の街はダメだとかランク上位で食事した、高い金で買ったギターが何で低いランクなんだ、と一喜一憂している。確かにそうした数字が出る事にはそれなりの根拠があって、街ランキングなら公園の数、行政の対応の質、交通の便や高齢者の住みやすさなどが一定量データとして捉えられ、集計や平均算出などの計算式から出たことは確かであろう。以前大問題となったマンションの構造計算不正などを見ていると、問題は数字を作る側に大いにあると思われる。
本書はそうした「数字」を作る側の問題点と、それを受け取る側へ警鐘を鳴らす内容となっている。わかりやすいところで言えば、質問の仕方次第で解答数字が大きく変わる新聞社のやり方などを挙げる。単純に賛成か反対かの2択で質問文に背景を書かない場合と、質問内に背景事情を詳細に書いた上で、賛成か、賛成がやむを得ないか、条件付きで賛成か、反対か、と言った解答選択肢を準備すれば、当然の如く賛成に偏る。こうしたやり方は新聞社が時の政権与党や国民に対しての忖度、経営者の顔色伺いなど様々な数字制御装置が含まれていると考えられる。
誰に解答をさせるかのサンプリング手法、実施時期、解答選択肢の準備の仕方、質問の傾向などあらゆる要素で数字がいくらでもコントロール出来るうえ、先の構造計算問題の様に、最終的に意図的に不正に修正されて「数字」が作られてしまうなら、最早信ぴょう性は地の底である。
とは言え私をはじめとして、自身に都合の良い数字は信じやすく、その逆は受け入れ難いという人間のやむを得ない心理が働いてしまうのも、また問題を更に根深いものにしていく。ビジネスパーソンで特に新規事業企画などをするケースでは時に致命的になる。コンサルタントが出してくるサイト訪問数、売り上げ予測には超が複数つくほど楽観的なものが多いし、保険の支払い条件のような解りづらい形でしっかり条件までつけることも怠らず、逃げ道まで準備されている。
人は数字で騙される。だからこそ自分自身が数値に対する嘘やカラクリを見抜く力を持たなければならず、何より鵜呑みにしない、先ずは疑ってかかるというのが正しい姿なのだろう。本書はそうした数字を見せられる側の有用な参考書にもなりつつ、ある意味見せる側のテクニックにも使えてしまう。どちらの立場で本書を読むかは読者次第である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
データ・リテラシーの重要さを解いた本。
――かと思っているのだが、終わりの方は趣が変わっていく。
最初は、様々な調査を取り上げ、そのどこがダメなのかの解説をする。
ライブドアがネット上で行った阪神上場の賛否を問う世論調査や、さいたま市のケーキ購入額日本一(家計調査)など、取り上げている例が面白い。
まあ、さいたま市のケーキの街への企ては、笑って捨て置いていいような話なわけだが。
TOEFLの平均点を取り上げての日本人の英語力が低いという「世論」を検証しているあたりから、ちょっと雰囲気が変わる。
で、結局何が言えるの? あなたは何が言いたいの?という感じになってくる。
何か、解釈にあらを探すのが目的なのかという感さえ漂う。
今流通する様々な数字を検証する、ということだと、どうしてもネタの鮮度が問題になり、本は古びてしまう。
データ・リテラシーの本とみるならば、もう少し「技術」としてまとめられていてほしい。
こういう本を作るのは――、コンセプトを立てるのは難しいんだな、と感じた。 -
メモ
終章:データの罠を見抜くポイント
・世論調査は誘導質問などもあることに注意
・アンケートは回収率が高くないと信ぴょう性は低くなる。
・国の統計も、データの定義や収集方法をよく理解して活用する。
・ランキングも、手法や採用されたデータを理解し判断する必要あり。
発売当時に買ったと思うが、ぱらぱら見て終章をメモ。2018.4.18 -
タイトル通りデータの罠について解説していますが、谷岡一郎の著書の方が有益で特に新鮮味がありませんでした。
僕の評価はA-にします。 -
巷にはデータが溢れている。「視聴率」「内閣支持率」「経済波及効果」「都道府県ランキング」等々…。新聞、テレビ、雑誌に何らかのデータが掲載されていないことはまず無い。そして私たちは、これらのデータからさまざまな影響を受けている。しかし、肝心のそのデータにどれほどの客観性があるのだろうか。実は、かなり危ういデータが跋扈しているのである。本書は、さまざまなデータを検証することで、データの罠を見抜き、それらに振り回されない“正しい”情報の読みとり方 —— データリテラシーを提案する。
序章 巷に氾濫する危ういデータ
第1章 世論調査はセロンの鏡か?
第2章 調査をチョーサする
第3章 偽装されたデータ?
第4章 「官から民へ」を検証する
終章 データの罠を見抜くためには -
内容としては面白いが、ちょっとありきたりという観もあり、まあこんなものかなというところだった。
貯蓄平均や世論調査等は古典的だし、もう少し新しい切り口を期待したかった。
とは言え、統計を考えるときに忘れてはならない重要な観点であることは確かである。 -
知っている内容がほとんどだった。
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私たちの身の回り(とくに新聞やニュース)では、「数字」は寸分違わず正確で、客観的なもののように示されています。しかし、そうとは限らないというお話です。
質問文を考えるところから調査結果を集計して分析するまでの工程を経て導き出されるのが「数字」ですが、その各工程には調査する人の作為が紛れ込んでいる場合があります。あるいは、調査する人が間違いを犯してしまう危険もあります。
そして、そうした間違い(また作為)によって引き起こされる、「数字」と現実の誤差は多かれ少なかれ常にあるということを、さまざまな事例を挙げながら繰り返し書いています。
視聴率競争、この本が出たころ(2006年)は凄かったのでしょうね(苦笑) -
以前、調査会社で働いていた時にデータ改竄を実際にやったことがあるので(汗)、世論調査の作為への批判は全く同感。「日本は公務員が多すぎる」というデマを全面的に論破している点も評価できる。
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世論調査などがいかに信用ならないものかを暴く一冊。
と、言いつつも以前読んだ大阪商業大学の学長さんの本のほうが丹念に調べられているし説得力があったなぁ。
この本はファクトを淡々と並べていかに調査が信用出来ないかを論じるだけ。これなら雑誌でいいわけですよ。