クワタを聴け! (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087203806

感想・レビュー・書評

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  • 個人的には名著だと思っている。著者が故人なのが至極残念。ここまで丁寧で律儀な曲解説は見たことがないし、たとえそれが偏っていてもツッコミながら楽しく読むことができる。サザンの楽曲における「波」のようなものの違和感を言語化してくれた。

  • 知名度の低い名作の評価に快哉を叫んだり、好きな曲への批判に心が騒ぐいだり。前者の方が回数は多かったかな。

    批判は、たまに口を極めた罵倒のようではあるのだけど、他の「サザン本」にあるように、批判者が高みに立っておちょくりながら悪口を言うようないやらしさが無い。
    あくまで一人の評論家として、音楽家と対等に対峙している真摯さがある。だからまあ、許す。

    にしても、著者の評の何割かはさっぱり理解できない。
    といっても、難解な言い回しを使用しているわけではない。きわめて平易に語られていて、むしろ超絶的に上手な文章。
    レトリックの語彙がすばらしく豊富で、文筆のプロとはこうあるべし、とすら思う。だけど、理解できない。

    ここから思うことは2つ。

    まずは、音楽を文章で表現することのむずかしさ。
    美術だったら縮小コピー載せちゃえば、まあ「感じ」はわかるけれど、音楽はそうもいかない。
    著者の圧倒的な筆力をもってしても、やっぱり知らない楽曲については入っていけないんだよね。

    もう一つは、予備知識の必要さ。
    ディラン的な〇〇とか、ビーチ・ボーイズの曲調があーだこーだとか、縦横無尽に曲が解体・分析されていく。
    でも元ネタを知らない僕には、まーたくピンとこないんだよね。
    洋楽、聴いときゃよかったなあ。そしたら、サザンの曲の理解の幅も違ってたんだろうなあ、とちょっと悔しい思い。
    映画もそうなんだけど、音楽も「予備知識なしで、真っさらの状態でその作品だけを堪能するのがもっとも深く味わえる」なんて素朴な感覚は、完全に嘘っぱちなのだ。

  • 音楽なんてものは料理と一緒で、まあ人それぞれに受け取り方の違いがあって当たり前。僕はサザン、桑田佳祐のファンになって26年ぐらいになるけど、この本で高評価を与えられている曲について「うん、そのとおり」と思うものもあれば、「あ、そう。この曲に音楽的にそんなに高評価なんだ」と思うものもあった。逆に低い評価をつけられている曲でも自分の中では星の数などではとても評価しきれない思い出の曲もあったりする。ある曲に対して、ファンの間では当たり前のように解釈されていることを著者はまったく違う解釈の仕方をしているという作品も何曲か散見されるが、それもそれで良いのではないか。音楽は絵画と同じようにアーティストが発信したメッセージを受け手がそのまま解釈するとは限らないものだし、音楽の力の素晴らしさとはそういったイマジネーションの広がりを持たせることができるという点にあるのではないだろうか。アーティストが産みの苦しみを味わってこの世の中に送り出した音楽たちに対して星の数で評価を下すことに賛否両論はあるだろうが、結局最終的に判断するのはリスナーである。本書はあくまで著者の個人的感想にしか過ぎないし、このことで自分を含めたサザンや桑田佳祐ファンが右往左往させられることはあり得ない。批評本としての評価は個人的に★3つ、並みの出来といったところか。ま、これもあくまで個人的感想に過ぎないので悪しからず。

  • 本の販売当時までに発表された全曲のレビュー集。

    すごく正確な書評で、参考になりました。

    この曲が何で☆印多いんやろう?と不思議に思うこともあったが、読めば納得な一冊!

  • 磯臭いサザンをもう一度。好きな曲は『冷たい夏』

  •  自分はサザン(桑田)ファン歴10年です。だから、この本も何も考えずに衝動買いしました。
     しかし「桑田が好きで本を書いた」というよりも「とりあえず桑田の本を書けば売れるだろう」という商業的な目的でかかれたのでは?と疑ってしまいました。ジャズやビートルズ等の往年のロック音楽を弾き出して「これってあの歌手のあの曲に似てる」と、まるで自分の音楽の知識をひけらかしているようにしか見えませんでした。だから、歌詞や桑田のオリジナリティさにはあまり触れていないような気がします。

     当然、桑田のことを色々調べてはいるのでしょうが、所々ムラがでています。サザンの『Ding Dong(僕だけのアイドル)』はロリコンをテーマにした曲なのに、全く違う解釈をしていて腹が立ちました。

     そんな著者が星の数で曲の善し悪しを決めてしまう身勝手さもあまり好ましくありません。

     クワタファンじゃない人があれこれいうのは、ファンとして憤りを感じます。

  • 桑田を聴け!!サザンも聴け!!

    桑田佳祐の絡んだ曲を全曲批評。

  • 帯に「怒濤の全曲批評!」って書いてあって、「ホントかよ?」と思いながら買ってみたら、本当に全曲レビューを書いていたので驚いた。まさか、嘉門雄三まで取り上げているとは・・・。

    タイトルと帯の通り、桑田佳祐の発表した楽曲を全て紹介している一冊。彼の音楽のルーツとなっている洋楽がたくさん紹介されているけど、自分は洋楽にはあまり詳しくないので、8割以上がわからん。でも、「My Foreplay Musicはビリー・ジョエルごっこ」と言う著者の意見には、自分も同じことを感じていたので思わずニヤリ。

    まあ、所詮は他人のレビューなので、「そういう感じ方もあるのね」と思ってさらっと読むのが吉かと。

  • 「ミス・ブランニュー・デイ」などシングルだけではく、アルバムの曲にもちゃんと最高評価を与えているところが、当然といえば当然だけどなかなかできないマニアのお仕事。

  • 2007年3月23日読了。中山康樹の本はビートルズ・ビーチボーイズ・ジョンレノンと一通り読んだが相変わらず気合の入った、偏った(誉め言葉)文章が叩きつけられ、アッという間に読める。桑田佳祐が洋楽の優れた聴き手である、という著者の妄想を下敷きに、彼がいかに自分の歌謡曲体質やパロディ精神と巧みに距離をとりながら楽曲を作っているのかが語られる。なるほどこんなユニークなアーティストは他にいないだろう。桑田・サザンに関しては私の知らないアルバム・曲が沢山あるということもわかりました。もっと聴いてみよう。

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著者プロフィール

1952年大阪生まれ。『スイングジャーナル』編集長を経て音楽評論家。ロックにも造詣が深くビートルズ系の本の中でも『ビートルズを笑え!』は辛口でありながら面白く書かれている。オノ・ヨーコに批判的で日本語が読めるオノに対して批判する評論家としては希有な存在。主な著書に『マイルスを聴け』(双葉社)『エヴァンスを聴け』(ロコモーションパブリッシング)『超ブルーノート入門』(集英社)『Jazz名曲入門』『Jazz名盤入門』(宝島社)『ジャズを聴くバカ、聴かぬバカ』(KKベストセラ-ズ)『スイングジャ-ナル青春録』(径書房)『ビートルズ アメリカ盤のすべて』(集英社)『ビートルズ全曲制覇』(エイ出版)『ビートルズを笑え!』(廣済堂)『ディランを聴け』(講談社)『音楽中心生活』(径書房)『超ビートルズ入門』(音楽之友社)『クワタを聴け!』(集英社新書)『ジャズ・ヒップホップ・マイルス』(NTT出版)等がある。

「2012年 『かんちがい音楽評論[JAZZ編]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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