欲望する脳 (集英社新書 418G)

著者 :
  • 集英社
3.28
  • (19)
  • (38)
  • (114)
  • (13)
  • (5)
本棚登録 : 456
感想 : 53
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087204186

作品紹介・あらすじ

人は誰もが欲望に突き動かされて生きている。社会も、ますます人の欲望を反映したものとなりつつある。では、欲望と欲望がぶつかり合うとき何が起こるのか。人は自らの欲望と、どう付き合いながら生きればよいのか。孔子が論語で述べた、「自分の心の欲する所に従っても倫理的規範から逸脱しない(七十而従心所欲、不踰矩)」境地とは?欲望をめぐるさまざまな思考から、私たち人間の本質に迫る。人気脳科学者が具体例を挙げながらしなやかに論じる決定的論考。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 人は自らの欲望と、どう付き合いながら生きればよいのか。
    孔子が論語で述べた「七十而従心所欲、不越矩」の境地とは?

    「ある人の価値は、何よりも、その人がどれくらい自分自身から解放されているかということによって決まる」(アインシュタイン)
    「私」が世界の中で特別な意味を持ち続けることは認めた上で、世界の中の様々な他者と行き交うために、思想的な工夫を凝らす。
    他社への真摯な関心があってこそ、初めて心をしっとりと柔らかなものに保つことができる。そのことを深く心に留めておこうと思う。

  • なかなか面白かった。
    PR誌に連載されたものだというのに納得。読み物として、娯楽的で端的で良い。
    知識を得るための学習としての読書ではなくて、不完全であっても他人の意見を聞いて、立ち返って己の思うところを見つめる、みたいなことを促す本。
    タイトルはこんなだけど、別に脳の話ではない。
    孔子の「七十従心」を全体的なテーマとして、茂木さんが生きている中で感じたこと、観たもの、思ったこと、全体を基にして、ひとつ考えてみたことをざっくりと書いてある。
    ブログっぽい。

    まあでも、たまに手にとって読んでみると、自分の今向かっているテーマや、遭遇している状況なんかに引き寄せて考えられることも多くて、手軽な刺激としてとても良い。
    もともと賢い茂木さんだから、読んでいるとどこかには「ちょっと面白いと感じる視点」が見つかるんじゃないだろうか。
    暇つぶしくらいのつもりで読んでみると、いいかも。

  • 正直読みづらかったのは、事前知識不足だからなのでしょう。
    精しくなる、という表現と
    一回性、学習依存症に関する章が好きです。

  • 自らの欲望だけに忠実な人は、社会的な評判を落とす。罰こそ受けなくとも、結局不利益を被ることになる。だから、人間の脳は先回りして、短期的な欲望の実現をある程度犠牲にしても、長期的な利益を図ろうとする。
    <脳とは>
    脳とは、結局は生物が生き延びるために進化させてきた臓器である。生存のための臓器としての脳は、徹頭徹尾利己的に作られている。生存競争において勝ち残るためには利己的であるしかない。自分以外の人間のことを思いやり、行動する「利他的行動」や、社会全体のことを考える公共的精神もまた、拡大し、変形した利己的な動機に基くと説明される。
    ――
    がんばろう、日本 このような時であるからこそ、本来、人間の脳も、自分自身、自分の子孫が生存競争において勝ち残るために利己的であるはずなのに、自分以外の人のことを思いやり、行動する理由について考えてみよう。答えなんて見つからなくてもいい、答えのない問題を考え、議論することが大事なのである。そうすることによって、利他的行動、公共的精神についても、各々自分の考えかまとまるのではないだろうか?
    <この本のポイントではないけれど・・・>
    新しい英語の単語を記憶することは、英語が得意な人ほど容易である。機械的にただ音や文字として記憶するのではなく、それまで蓄積された英語に関する記憶と関連付けて覚えることができるからである。
    ――
    私は、英語に限らず、勉強が苦手である。苦手であるから、それまで蓄積された記憶も薄いはずである。だから、新しい情報が入って来ても、関連付けによる知識化が上手くいかないのかもしれない。より高度な知識を蓄積し活かすためには、簡単なことからでも良いから少しずつでも良いから知識を蓄積し、新しい情報が入って来た時に、関連付けて記憶するという行為を繰り返すしかないのかもしれない。

  • 脳は欲望する。

    「デジタル資本主義」の現代では、自らの欲望をストレートに追求する「野獣化」の傾向を日々強めて歯止めが効かない。

    しかし人類史の中でおそらく欲望を抑制し慎ましく生きることが美徳であった時代はおそらく長かった。

    子曰くにはじまる論語では、「四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳したがう」とあり、最後は「七十にして心の欲するところに従って、矩(のり)をこえず」とある。

    欲望に従っても倫理的規範から逸脱しない境地とは?

    欲望とクオリアをテーマに、人としての本質を深く洞察していく本書は自らへの反省と社会生活を営む人間への関心をいや増す。

    哲学的で硬い内容も多いので、じっくりと読まないと本質を読み落とすことあり。

    要再読。

  • 人間とは何なのか。
    かなり硬質な文章ですが、読みにくい、ほどではないです。
    ただ、クオリア、哲学的ゾンビ、など、当然知っているであろうと想定される言葉の知識がない、または薄い場合、読み進むのには時間がかかるかもしれません。でも、それは、自分が調べながら読めばある程度はクリアできることで、本文中にもあるように、「学ぶこと」を体験したい方には、考える、学ぶためのヒントがいっぱいで、ぜひお勧めします。

  • これに対してどうこう言えるほど、この分野に対する知識が不足している。
    ということが、よくわかりました。とりあえずクオリアについてもっと勉強しとかないと。
    でも、クオリアに興味が出たという点で、おもしろい本でした。
    マリーの部屋とか、コウモリとして生きるとはどのようなことか、あたりから始めたいと思います。わからないなりに。
    個人的にはマリーの部屋についてすごく興味がある。自分の視覚を自在に操れたら一度試してみたいものです。

  • ■概要
    孔子の「自分の心の欲する所に従っても倫理的規範から逸脱しない(七十而従心所欲、不踰矩)」をキーワードに、
    欲望に突き動かされて生きる人間、そして社会について考えるという内容。

    ■仕事に活かせる点
    そうそう!と共感すること、
    こういう考え方もあるのだな、と感心することが混在していて、
    読んでいてとても楽しい本でした。
    (『化粧する脳』はその点つまらなかった・・・)

    茂木さんのように、知識が豊かで、自分の頭で考えて世の中を見ている人というのは、きっと話していて面白い方なんでしょうね。

    仕事上、プライベートでは知り合えないような
    いろいろな人に出会うことができますが、
    相手の年齢や性別や出身を問わず、
    「話をしていて面白い」と思われるような人に私はなりたいと思います。

    内容自体、ビジネスに直結するものではないですが、
    考えの幅や深みを広げてくれる、良い本だと思いました。
    (さわ)

  • 最近有名な茂木さんの本。初めて読みました。著作の多さから、産業的なにおいを感じかなり敬遠していましたが、本屋で目に付いたことと、殊興味のあった欲望に関するタイトルから立ち読み始めました。脳科学者なので科学的な見地から書かれているのかと思えば、冒頭から孔子の「論語」を出発点に哲学的な考察で終始しました。意外性からとても新鮮な嬉しさを感じました。「自分の欲望にしたがって生きながら、倫理観に抵触しない」という論語の一文を軸として、欲望とは何なのかを徹底的に哲学しています。知識量の豊富さと、ニュートラルな視点、宗教に対する深い洞察に驚きました。面白かったです。

    09/7/31

  • この本を読んで、茂木氏のテレビで見せる顔とは違う学者としての一面を強く感じた。また芸術についてとても熱く語る箇所がいくつかあり新鮮な思いを抱いた。

    孔子の論語を脳科学的に読み解くことがメインテーマなのだが、そこから派生して語られる「生と死」「芸術と脳」などの話も大変興味深く読むことができた。

    脳の快楽を感じると反応する部分が学習をすることで刺激されるというのは、人間の脳の優秀さを物語っているなと思った。自分の脳に常に快楽を与え続けて脳の潜在能力を少しでも多く引き出すことにチャレンジしようと思う。


    ★心に響いた言葉

    節度を身につけているかどうかは、ある人間の価値を決定づける分水嶺である

    ある人の価値は、何よりも、その人がどれくらい自分自身から開放されているかということによって決まる(アルベルト・アインシュタイン)

    音楽を聞いた至高の感動も、基本的には食べ物や水、セックスのように生きるために必要な報酬に対する脳活動と同じ

    人間の脳は自らが置かれた文脈に合わせてその働きを調整する、驚くべき能力を持っている

    下流に属する若者の間で、「自分らしく」という価値観に共鳴する割合が多く、ニートの若者にむしろ起業意欲が高い傾向がある

    夢には、昼間意識的に生きている時に蓄積されていった歪みを解消するという意味がある

    人間の知性はいつまで経っても終わることのない終末開放性をその特徴としています。だから、たとえ遺伝子によってかなりの部分が決まっていたとしても、実際的な意味では決まっていないのと同じ

    人間ほど不確実性への適応メカニズムを進化させた動物は存在しない

    私のような人間にとっては、人生で実際に何が起きたかというよりも、何を考えてきたかということの方が重要なのです(アルベルト・アインシュタイン)

    人は不可能なことに真摯に向き合った分、大きくなれる

    人生において自分の欲望が実現するということは、多くの場合他人の欲望の実現の可能性が消滅することを意味する

    ドーパミンはサプライズを好むように設計されている

全53件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特別招聘教授。「クオリア」をキーワードに、脳と心の関係を探究しつづけている。1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。理学博士。
著書『脳と仮想』(新潮社、第4回小林秀雄賞受賞)『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房、第12回桑原武夫学芸賞受賞)『脳とクオリア』(日経サイエンス社)『脳内現象』(NHK出版)『感動する脳』(PHP研究所)『ひらめき脳』(新潮社)ほか多数。

「2013年 『おぎ・もぎ対談 「個」育て論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

茂木健一郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×