- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087206241
感想・レビュー・書評
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恥ずかしなから、本書で初めて加賀乙彦という作家を知った。戦争体験、医師、死刑囚相手の医務技官、自らの交通事故、伴侶の死... 様々な「死」から得られた人間観や社会観が、飾りのない口調で語られる。押し付けがましい人生訓ではないが、静かに深く熱い思いに満ちている。
著者本人はキリスト教信者との事だか仏教への造詣もあり、両宗教の類似性などの示唆も興味深い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者の戦争体験と、自身の犯罪者の精神医学的研究より考察された生と死への考察。そして自身の宗教的体験についての、ほぼ自伝的な本とも言える。東日本大震災と原発問題についても触れ、科学と宗教の絡みについても述べられている。いかに生きるか、宗教は理解することではなく、体験することである、ということを述べることは浅い理解、いや読書体験かもしれない。
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80歳を超えたキリスト教の信者である著者による自伝的なエッセイで、死は不条理で生と死は紙一重であること、科学と宗教が一体であることなどを述べた本。
もともと精神科の医者であるらしいが、作家でもあるらしい。というか有名な人だそうだが、おれは知らなかった。上から目線のお説教くさい要素とか手前味噌があるのかと警戒しながら読んでいたが、全くないわけではないがほとんど気にならず、すぐに読めた。しかもそれなりに興味深く読めた。やっぱり聖書は読んでみたいなあ。でも一日8時間3週間もかかるなんて無理だな。せめて新約だけでも、と思うけど。著者が感じた、パウロのような信仰の喜び、という話が印象的だった。そんなもんなのかな、と思った。(13/07/06) -
前半は著者の体験談から来る話。第4章以降がこの本のメインのような気がします。「祈り」という行為を尊重していて、著者の人柄が出ていました。
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戦争体験と拘置所医務技官の体験から作者独特の死生観、宗教観を述べている。個人的には共感する部分が多い。終盤、科学者の態度として謙虚であるべきとの考えを展開する延長で原子力に言及している。謙虚であることに異論はないが、未知の領域を探究するのが科学者ならば、障壁を作るのではなくて克服して行くべきで、この点は生殖医療等の倫理的に議論のある問題と明確に区別するべきと思う。
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精神科医で作家でキリスト教徒である著者が、死を見つめて宗教のことや科学のことについて思うところを述べた軽い読み物。死刑囚との接触やキリスト教改宗、第二次世界大戦の記憶なんかから、東日本大震災後の日本に宗教は大事なんじゃないかと。祈りの気持ちや宗教的感動を思い出させてくれた。
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「死」を考えることは「生」を考えること
精神科医でありまたキリスト教の信徒でもある作家が82年の人生で続けてきた死をめぐる思索の軌跡を綴る。自身の病、妻の死と厳しい試練に見舞われながら希望を失わない生き方の秘密が明らかに。