科学と宗教と死 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087206241

感想・レビュー・書評

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  • 著者の加賀乙彦は、精神科医であり作家でもあります。
    そのことと「宣告」という代表作があることとは知っていましたが、著書を読んだことはありませんでした。

    阪神大震災のときに65歳だった加賀乙彦は、「東京で小説を書いているよりも医師として被災された方々のために働こうと決心し」、精神科医として避難所の人々の治療に専念したそうです。

     そして、今回の大震災、加賀乙彦は81歳であり、自身が心臓病手術後にペースメーカーを装着した障害者となっており、直接的な支援はできない状況の中、今までの様々な経験の中で考えてきた幸福のこと、死のことなどから、「とくに東北の被災者の方々に襲いかかった不幸から希望のある未来を望み見るにはどうしたらいいか」を、精神科医、小説家としての体験から「懸命に書いてみた」そうです。

    自身の戦争体験や精神科医としての死刑囚との交流、また若き日のフランス留学時代に断崖から車で転落して奇跡的に助かったこと、さらに奥様の予想もしない突然の死など、死にまつわる自分のさまざまな経験から、加賀乙彦が考えたことがとても読み易い平易な文章で綴られています。

    そんな人生を経て、加賀乙彦はクリスチャンになりますが、キリスト教を媒介しながら今の世相や人の生きる道、そして死に至る道を独自の視点で述べている本です。

  • 科学を突き詰めていくとやはり宗教的な領域になる

  • 科学と宗教や迷信などを絶対に交わらない相反するもの、として譲らない人にこれ読んでほしいなぁといつも思ってます

  •  軍国主義時代に育った著者は、戦争による多くの死を見て、受けた教育との板ばさみに苦しむ。
     精神科医となり、犯罪者の心理学の研究を行う中でも、死についてたびたび考えた。
     学問という科学では、限界がある人間の心の深さを感じる一方、長く人間を支えてきた宗教に思いをはせる。
     死刑囚との交流やフランス滞在、妻の突然の死、日本を襲った震災。著者の体験も交えた実感のこもる思索に、深く納得させられる。

  • 加賀乙彦先生は最も尊敬する作家の1人です。

    「永遠の都」は2度読みました。

    沼野先生とのドストエフスキーについての対談もお聞きしました。

    本書を読んで初めて知ったこと。

     陸軍幼年学校の御卒業であること。

     最愛の奥様を亡くされたこと。

     心臓ペースメーカーをつけられたこと。

     昔、フランスで自動車ごと断崖に転落されたこと。

    加賀先生は「死」と真摯に向き合った最高の作家だと思います。

    『悪魔のささやき』も感動しました。

    まだ81歳。頭脳明晰。本郷に住むなんて羨ましいです。

著者プロフィール

1929年生れ。東大医学部卒。日本ペンクラブ名誉会員、文藝家協会・日本近代文学館理事。カトリック作家。犯罪心理学・精神医学の権威でもある。著書に『フランドルの冬』、『帰らざる夏』(谷崎潤一郎賞)、『宣告』(日本文学大賞)、『湿原』(大佛次郎賞)、『錨のない船』など多数。『永遠の都』で芸術選奨文部大臣賞を受賞、続編である『雲の都』で毎日出版文化賞特別賞を受賞した。

「2020年 『遠藤周作 神に問いかけつづける旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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