人が死なない防災 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087206333

作品紹介・あらすじ

小中学生の生存率、九九.八%(学校管理下では一〇〇%)。東日本大震災で大津波に襲われた岩手県釜石市で、子どもたちはなぜ命を守ることができたのか。そこには、震災前から地道に積み重ねられてきた、画期的な「防災教育」の効果があった。本書では、二〇〇四年から釜石市の危機管理アドバイザーを務めてきた著者が、主体的な避難行動を可能にした「防災教育」のノウハウを余すところなく公開するとともに、いつ災害に襲われるかわからない私たちすべてが知っておかなくてはならない「生き残るための指針」を提起する。

感想・レビュー・書評

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  • ☆10個くらい付けたい本。

    片田さんは、津波防災の研究者だが、それにとどまらず、釜石市など全国での講演により、住民の防災意識の向上を図ってきた。

    東日本大震災、甚大な被害をもたらしたが、それでも、彼の取り組みによって救われた命はいくつあったことか・・・。

    この本はたしかに素晴らしい本だが、実際に災害が起きたとき、ここに書かれている行動を自分が取れなければ何の意味もない。

    この本は是非、一読をお勧めしたい。

    願わくば、自分自身も含め、自然災害に見舞われたとしても、災害以前と変わらず、健全な心身、命を保てるような、的確な避難行動が取れますように!

  • できることならば、日本列島に住む全国民に配って回りたい

    読んでいて、自分の防災への意識の低さに
    とてもとてもどきどきさせられた。

    もちろん、災害の後のケアとして、ボランティア等の活動は不可欠だが、それ以前にまず「人が死なない」防災をしないことには意味がない。という当然の前提に今更気が付かされた。

  • 無謀な交通事故に巻き込まれて亡くなる罪もない方々の悲劇のニュースが続き、つらく暗澹たる気分になる昨今、あの、東日本大震災で自分の命を守ることができた釜石の小中学生に防災を指導してきた片田教授の本を思わず手にとった。科学的根拠に基づき「津波は必ず来る」と事実を直視させ、なぜ、どうすればいいのかを、理由とともにシンプルにまとめて身につけさせた氏の防災教育の正しさは、子どもたちの生存率99.8%で実証され(氏はそれでも多くの釜石市民を助けられなかったと敗北感を抱いているが)、さまざまな報道で反響があった。これは震災前と後の講演を収録したものだが、震災前のものあるゆえにより説得力がある。

  • シンプルに、「何のために防災に取り組むのか」「そのために何をすべきか」ということがテーマ。

    人が死なないためにやるのが防災であり、いつか必ず来る「その時」に、主体的に最善の振る舞いができることが大切なのだということを、本書から学びました。

    また、防災を考える時に、災害の恐ろしさを強調するのではなく、この地域で生きていくための作法として伝えていく、というやり方がとてもいいなと思いました。

  • 2011年の東北大震災
    その時、釜石の小学生中学生はなぜ助かったのか?
    そこには防災の基本とされていた多くの秘訣がある。
    想定外だったということは後でいえる事。
    死なない為には当たり前だと思われていることを当たり前と思わないこと。
    助かるためにはどうすればよいかということが本書を読むことで多いにそのヒントを得られる。

  • ■避難の三原則
    ①想定にとらわれるな
    ・端的に言えば「ハザードマップを信じるな」
    ②最善を尽くせ
    ③率先避難者たれ
    ■一家滅亡,地域滅亡という悲劇ばかりを繰り返してきた中でできた言い伝えが「津波てんでんこ」
    ■明治三陸津波では震源地では大きい地震があったがゆっくり動く地震であったため,釜石のあたりは震度1か2くらいであった。
    ■津波は並ではなく海の壁
    ・海底の深いところでは時速800キロぐらいのスピードで伝播する
    ・浅くなると急ブレーキがかかり水深500メートルで新幹線並み,100メートルで車並み,10メートルで人間が走るぐらいのスピードとなるため,波が積み重なって高くなる
    ■行政がやるべきだとかどうだとかという問題ではなく,自分自身が家族と逃げられるか逃げられないか,それだけが結果として犠牲者を出すか出さないかの分かれ目となる。避難の支援などを「誰がやるべきか」という議論は不毛。「誰がやるべきか」ではなく「誰ならできるのか」という観点で考えることが重要。
    ■「避難勧告が発令されたら逃げる」「発令されなければ逃げない」という単純な話ではない。その状況でどうするべきかという判断ができる主体性とか知恵が重要。
    ■日本の防災は個々の住民が自分の命を自分で守る意識と災いを避けて通る知恵を持てるような方向へ進めていかなければならない。
    ■日本の防災は災害対策基本法に基づいているが読んでみると防災は全部行政がやれと書いてある。住民の努力義務のことが書いてあるが行政側は「責務」である。つまり行政が全部やれと書いてあるわけだが無理があるに決まっている。
    ■犠牲者を減らそうと思ったら行政ではなく国民自身がやるべきことが出てくる。
    ■日本の防災は災害対策基本法に基づく行政主導の枠組みの中で進めようとしているところに限界がある。限界だけではなく弊害すらあるといえる。
    ■人為的に高める安全は人間の脆弱性を高める。
    ■「浸水が進んでも避難勧告がなく非難できなかった市の責任は重い」
    ・逃げろと言われなければ逃げないのか
    ・災害対策基本法のもと50年にわたって「行政が行う防災」が進められてきた結果,このような日本の防災文化が定着してしまっている。防災に対して過剰な行政依存,情報依存の状態にある。自分の命の安全を全部行政に委ねる。いわば住民は「災害過保護」の状態にある。これが我が国の防災における最大の問題
    ・なんでも行政に情報をもらって逃げるという仕組みそのもの,姿勢そのものが間違っている

  •  そもそも、人間というのは素でいると素早い避難ができないものなのだ、というところを強調している。
     適切な避難のためには、理性的に、主体的に考えなければいけない。
     行政主体の防災は、年に数千人の人が自然災害で死ぬという異常事態を改善するには役立ったが、その先は、行政に頼らない住民の主体的な防災にかかっている。

     また、災害の原因となる自然現象の大きさに対する想定というのは、結局のところ、人類が、その短い歴史と経験から勝手に決めたもので、その想定を超える自然現象は必ず起こると考えるべき、とのこと。
     想定に囚われ過ぎた結果が、「明治三陸津波より大きな津波は来ない→防潮堤が防いでくれるから大丈夫→避難しなくても大丈夫」で大勢の人が津波に飲まれた東日本大震災の被害である。
     そして、想定に囚われずに素早い避難をして、かつ他の市民にも避難しようと思わせることができたのが釜石の小中学生であり、その結果として大勢の人命を救うことができた。

     とにかく大切なのは、住民一人一人が内発的な自助・共助意識を持つこと。

  • 久々に心が震える本を読んだ。電車ん中で読めないよこれ。自分の命は自分で守る。こんな当たり前のことが当たり前ではなくなっている。よく言えば、それほど日本は平和になっているってことだけど、いざっていうときに生死を分けるのは、そういう危険意識だと思う。考えすぎなわけがない。

  • 本書は教授が東日本大震災前から取り組んだ防災講演会を元に上梓されたものだ。なので、敢えて震災前の第2章から読み始め、第1章「釜石の奇跡」と称される「人が死なない防災」へと読み進めた。教授の論は震災前後でブレることがなく、その論旨は明快で爽快だ。災対基本法成立後、国・地方自治体は総力を挙げて防災対策を行ってきたが、それが国民・住民を災害過保護にしてしまった。指示待ち世代なんて揶揄する人も、こと命を守ることに指示を要するなんて滑稽であり悲しいことだ。正常化の偏見と併せて、私達の意識改革が必要だと感じた。

  • 釜石市では死者・行方不明者が1000人を超えた。8年間にわたる片田の防災教育がなければ被害はもっと大きくなったことだろう。「人が死なない防災」とは単なるスローガンではない。片田に「釜石の奇蹟」を誇る姿勢は微塵も見当たらない。むしろ「敗北である」として我が身を責めている。
    https://sessendo.blogspot.jp/2016/07/998.html

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