中国経済 あやうい本質 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087206357

作品紹介・あらすじ

21世紀的グローバル・ジャングルの過当競争のなかで、大量のマネーを招き寄せ、バブルを起こしながら、19世紀的労働条件・生活環境を庶民に強いて、経済成長を追い求める中国。新旧ふたつの世紀を同時に生きる中国経済の矛盾、ふくらむバブルが破裂した後に世界に及ぼす影響を当代一流のエコノミストが鋭利に分析!世界経済全体がメルトダウンを起こしつつある今、矛盾の集積地・中国と日本が共存する道を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 知りたい事があまり書かれていなくて残念。外からしか中国を見られていない。お客様的視点。

  • 2012年刊行。同志社大学大学院ビジネス研究科長・同教授。韻文的な文体で現代中国を解説する。まぁ、本書は実のところ、余り濃い中身はなく、あっという間に読める。その中で、本書の指摘する、ある製造物の輸出入については、多数の国(どの国か判別も難しい)を網の目状に張り巡らせて、関連部品・物品の輸出入することで成立させている点は、判らなくはない事実。まさに関係性が錯綜した現代国際社会の鏡であろうか。

  • 上海にはカラスがいない。ある知人から頂戴したお便りに、そう書かれていた。何故なら、夜明け前に貧しき人々が全ての残飯を持ち去ってしまうからそうだ。この情報は、筆者にとって大いに刺激的だった。
    筆者は中国が「20世紀的な国民国家の確立を進める一方で、21世紀的なグローバル・ジャングルのルールにも順応していかなければならない。ここに、まさしく、今日の中国の危うい本質がある」と説明している。
    ここでいう「20世紀的な国民国家の確立」とは「公共事業が繁栄と直結する経済」。リーマンショック後の中国の経済政策に見られるように、すでにインフラ整備が一通り完了している日本と異なり、国が公共投資にお金を出せば、十分に景気が浮揚する経済だ。しかし、一方で、古い20世紀的な国家の舵取りとは別に、21世紀のヒト・モノ・カネが自由に動き回るグローバル・ジャングルを生き抜く政策が求められる。この二つの経済の舵取りを同時に行わなければならないところに危うさがあると指摘されている。
    グローバル・ジャングルの経済力学は、個々の個別事情や特異を踏み越えて、世界に及んでいく。ヒト・モノ・カネは容易に国境を越えて、一箇所に滞留しない時代においては、特定の国が抜きん出て優位に立つということはありえない。その中で、中国経済もまたバブル化警戒し、デフレの影に怯え、金融調整に四苦八苦し、財政状況の制御に苦慮している。
    現在の中国に見る危うさは、中国という国が特殊な国だからではなく、その普遍性からくるものだ。巨大な人口を有する中国現在のグローバル経済の下では、一人勝ちは難しいと著者が指摘している。
    また、以下のように重要な点が指摘されている。
    中国は「世界工場」と呼ばれるが、その大半は非中国資本の持ち物であり、資本と立地が分離している。この点をしっかり認識しておくことは非常に重要だ。
    中国は「モグラたたきゲーム」のような経済運営を迫られている。
    果たして、中国は危うい経済をどうすればよいのか。
    ズバリを言うと、人民元の引き上げしかない。人民元高が進めば、輸入物が下がり、インフレ鎮静効果が期待でき、物価が落ち着けば、金利を上げなくて済む。しかし、あまり、急ピッチで人民元高が進行すると、中国から外資の大量脱出始まるなどの問題が発生する。中国経済の運営は簡単ではない。

  • [ 内容 ]
    21世紀的グローバル・ジャングルの過当競争のなかで、大量のマネーを招き寄せ、バブルを起こしながら、19世紀的労働条件・生活環境を庶民に強いて、経済成長を追い求める中国。
    新旧ふたつの世紀を同時に生きる中国経済の矛盾、ふくらむバブルが破裂した後に世界に及ぼす影響を当代一流のエコノミストが鋭利に分析!世界経済全体がメルトダウンを起こしつつある今、矛盾の集積地・中国と日本が共存する道を考える。

    [ 目次 ]
    第1章 中国バブルの構造―新旧ふたつの世紀の狭間で曲芸を続ける中国経済(欲望大国・中国の求めるフロンティア;中国は世界経済の王様になれるのか ほか)
    第2章 為替切り下げ競争と人民元―存在の軽くなったお札に溺れる、にわか仕立ての中国金融(ヒト・モノ・カネの三つ巴芝居のゆくえ;「お札なんぞ、日銀がよこす絵葉書だ」 ほか)
    第3章 「メイド・イン・チャイナ」の正体―グローバル市場に向かうアジアの新雁行形態(黒子の「通貨」に主役を奪われた「通商」;国籍不明の製品が世界を闊歩する時代 ほか)
    第4章 動けない「ヒト」と動ける「カネ」―チャイナ・リスクはモグラたたきゲーム(華やかな上海でカラスと競う貧困者たち;モグラたたきゲームのような経済運営 ほか)
    第5章 チャイナ・シンドロームと世界経済―底が抜けた世界経済の矛盾は中国で濃縮する(グローバル経済のチャイナ・シンドローム;英語で「チャイナ」は想定外の代名詞 ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • (2014.05.28読了)(2013.10.07購入)
    中国経済の各論的なところを知りたいと思って手に取ったのですが、期待とは違う内容でした。グローバル経済の総論的なところが得意な著者のようです。通貨とか金融というところから世界を見るというところなのでしょう。
    中国の話の前に、グローバルな世界の中では、一つの国のことが、他の国にも連動してしまうので、中国だけでどうかしようとしてもそうはいかない、ということです。
    現在、中国とベトナムで南シナ海の権益をめぐって紛争が起こっており、これに伴って中国とベトナムに生産拠点を持っている企業が影響を受けるという事態が発生しています。
    平和を前提に生産拠点を配置している企業にとって、このような事態は、業績に悪い影響を受けてしまいます。企業としては、中国から撤退せざるを得ないことでしょう。
    それを、中国が望んでいるならいいのですが、そうでなければ、平和的な解決方法を選択する方が得策に思えるのですが。
    ひとつずつやってみて、学んでいくということになるのでしょう。

    【目次】
    第一章 中国バブルの構造
    第二章 為替切り下げ競争と人民元
    第三章 「メイド・イン・チャイナ」の正体
    第四章 動けない「ヒト」と動ける「カネ」
    第五章 チャイナ・シンドロームと世界経済
    おわりに

    ●中国とアフリカ(11頁)
    2006年11月4日、北京で「中国・アフリカ協力フォーラム」の首脳会議が開催された。
    アフリカ側からは48カ国の首脳たちが参加した。
    ●アフリカ外交の狙い(12頁)
    その一が資源確保、その二が市場開拓、そしてその三が外交・安全保障上の仲間づくりといったところだ。
    ●スト権(30頁)
    中国の労働者にはスト権が認められていない。
    ●世界の工場、中国(37頁)
    現状は「中国が世界の工場になった」と表現すべきものではない。そうではなくて、「世界が中国を工場にしている」のである。
    ●上海のカラス(108頁)
    上海にはカラスがいない。なぜなら、夜明け前に貧しき人々が全ての残飯を持ち去ってしまうからだそうである。

    ☆関連図書(既読)
    「中国ひとり勝ちと日本ひとり負けはなぜ起きたか」宮崎正弘著、徳間書店、2010.01.31
    「2013年の「中国」を予測する」宮崎正弘・石平著、ワック、2012.09.27
    「経済は地球をまわる」浜矩子著、ちくまプリマーブックス、2001.07.10
    「「通貨」を知れば世界が読める」浜矩子著、PHPビジネス新書、2011.06.08
    (2014年5月29日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    21世紀的グローバル・ジャングルの過当競争のなかで、大量のマネーを招き寄せ、バブルを起こしながら、19世紀的労働条件・生活環境を庶民に強いて、経済成長を追い求める中国。新旧ふたつの世紀を同時に生きる中国経済の矛盾、ふくらむバブルが破裂した後に世界に及ぼす影響を当代一流のエコノミストが鋭利に分析!世界経済全体がメルトダウンを起こしつつある今、矛盾の集積地・中国と日本が共存する道を考える。

  • 中国が世界の工場になったのではない。世界が中国を工場にしているのである。この人の本はとても理解しやすいので好き。201402

  • 中国の舵取りの難しさの根底には、新興国だった頃の日米欧には今ほど問題とはならなかった、グローバル経済化した現代特有の条件をこなしていかないといけないところにある。逆に言えば、中国を知ることは、同時に、中国を通して見えるグローバル経済の実体を知ることに繋がる。例えば、著者があげるように、バラマキ政策が世界金融危機対策の有効手段となり得たくらい、不足しているインフラという自国の古典的問題に対処しつつ、環境という現代の問題にも並行して取り組むことを求められる。その一方で、大きな成長を求めようにも、「世界の」工場である中国は、自力だけでは及ばず、外国資本に頼らないといけない側面がある。
    それでも、その困難をなんとか一輪車経済でここまで振り切ってきた中国。上手くやってきたとも言えなくはないが、勢い重視の政策に弊害は勿論のこと山積で、特に貿易立国の大事な資本であると同時に消費の潜在需要となり得る国民の行動の変化は国家としても一大事だと思う。著者が言うように「自分達が作る製品はまさに豊かさの象徴のようなものなのに、それを目の当たりにしながら、そこで働く自分達は前世紀のような労働環境に甘んじることを強いられる」それを感じる人々の葛藤は相当なものだろう。スト権を持たない民衆が蜂起したり、ネット規制の効力が減衰していく実態は、国家の瓦解の一角が垣間見える気がする。
    ただ、「ヒト」の問題は自分にも遠い話ではないことも示唆されている。
    グローバル経済下で企業が最適解を求めて生産配置をリシャッフルすれば、ある国では雇用の空洞化問題が起こるということ。著者が「まるで万華鏡のよう」とセンス良く例えていたこの事象は、一人一人が保持しておくべき危機感だと感じさせられた。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、3階開架 請求記号:332.22//H22

  • 必ずしも中国経済の専門家でない著者による中国経済論は、多様な見方と素人っぽい分かりやすさがあり参考になった。
    古い中国と若い中国が同居している、『世界の工場』ではなく『世界が工場にしている』、などの説明は、なるほどと思える。
    ただ書かれている内容は非常に少ない。

  • 中国とかけて白鳥と解く。
    →水の上では美しいが水面下では自転車操業
    中国とかけてそばやの出前と解く
    →自転車が転倒してそばが散乱

    とにかく中国は謎だらけ。

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著者プロフィール

1952年生まれ。同志社大学大学院ビジネス研究科教授。
主著=『新・国富論――グローバル経済の教科書』(文春新書、2012年)、
『老楽国家論――反アベノミクス的生き方のススメ』(新潮社、2013年)。

「2014年 『徹底解剖国家戦略特区』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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