キュレーション 知と感性を揺さぶる力 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087206807

作品紹介・あらすじ

鑑賞するという体験を通して、芸術作品はその都度立ち現れる。どのような空間、文脈、関係性で見せるのかというキュレーションのあり様により、その体験は異なってくる。その仕掛けを創造するのがキュレーターの役割である。キュレーターは、巧みなテーマ設定や作品の選択、ディスプレイなどによって鑑賞者を誘惑し、心を揺さぶる"忘れがたい体験"を演出するとともに、展覧会などの実践を通じ、社会に対して批評や思想の提案を行う。現代アートのキュレーターとして、海外のビエンナーレも含めて数多くの展覧会を成功させてきた著者が、豊富な経験を踏まえつつ、キュレーションの本質を論じる。

感想・レビュー・書評

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  • 作者の知的・哲学的好奇心を満足させるために、芸術としての作品が制作される。その作品を体験することで、作品にふれた人を未知の領域に連れて行こうとするものが、「アート」とというものと解した。

    キュレーターの仕事には、多分にリサーチの要素が含まれている。明確な目的、力強い簡潔さ、パッケージされた項目、分類がキュレーションの成果とされる。科学者の行う研究と共通するところだと思った。

    美術館空間の多様性を、筆者は「新しいものを展示し、その意味を問いかける実験室(ラボラトリアム)、記憶の消滅に対抗するための作品の収集保管(記憶の保管庫)であると同時に、美術館は、非物質的なもの、精神的なものとの出会いの場所として、宗教的な礼拝の場所(教会や寺社)に比較されることが多い。」(p.78)と言う。他方、本書の文脈とは異なるが、大学に目を向けてみると、敷地内に実験室、博物館、美術館、礼拝堂を擁していることがある。また教育の場は教室が中心となる。こうした場を含んでいることは、大学という空間のユニークさやそれが持つ様々な機能を持っていることを思い出させてくれた。

    学芸員という言葉は登場するが、単に「学芸」という単語は用いられていない。一読して、学芸の持つ多義性を再び認識した。

  • 日本の現代アートのキュレーターの仕事について知りたく、手に取りました。
    初心者には少し難しく理解しきれない部分が多く流し読みになってしまいました。もう少しアートの知識が増えてから再読したいです。

  • 「キュレーション 知と感性を揺さぶる力」https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0680-f/  読んだ、良書。企画展の舞台裏話でタレルやHダーガーなど好きな作家が出てきて興味深くあっという間。プロデューサーやレーベルや翻訳家と同様に美術展もキュレータで選べるようにならないかな。時々ひどい企画展があるから(おわり

  • 「キュレーション 知と感性を揺さぶる力」https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0680-f/ 読んだ、良書。企画展の舞台裏話でタレルやHダーガーなど好きな作家が出てきて興味深くあっという間。プロデューサーやレーベルや翻訳家と同様に美術展もキュレータで選べるようにならないかな。時々ひどい企画展があるから(おわり

  • 2017.09.20 品川読書会で話題になる。

  • 近代以降のもがきと小さな物語の成就とともに語られる。一昔前に一世を風靡した現代思想の言説を読んでいるようであった。まぁ一言で言えば、衒学的。

    事例としては、中国の馬(人物)によるジェンダーを越えていく作品、ナチスの退廃芸術展が興味深い。

    指摘としては、おわりに、での「それは何かを表象する-representation-から提示-presentation-へのシフトであり、最終的な目的(産物)-product-からプロセス-process-へのシフトであり、「関係性の美学」として語られる参加型ワークショップやパフォーマンスなどによって表されている。キュレーターの役割は、作品の選択やマッピング、文脈の形成だけではなく、体験の「場」をつくることであり、体験の精度を高めていくプログラムを提供することである。」の一文。

  • 2016.07.20 アートの現場におけるキュレーションの実際が様々な視点から書かれており、キュレーションの輪郭を掴むことができる。しかし、キュレーションとは、極めて広い概念であり、これがキュレーションとはなかなか言い辛い行為のように感じる。ただ、理解力が無いだけかもしれないが・・・

  • キュレーターとしてご自身がどんな仕事をしてきたのか、心構えなどがカタカナと英語とをかなりの頻度で織り交ぜつつなに言ってんだかわかんない。
    現代アートの話となるとうまく訳せないカタカナコトバや英語の単語なんか多いのだろうね。
    この人アタマいーんだろーなーと思いながら読みました。
    まあ、手がけられた展示はすごいのばかりでMOTでやったトーマス・デマンドは衝撃受けました。

  • 長谷川さんはすごい。キュレーターがいないと、現代アートの展示は成り立たない、と言っていいと思う。仕事の領域が、想像つかないほど広い。

  • [ 内容 ]
    鑑賞するという体験を通して、芸術作品はその都度立ち現れる。
    どのような空間、文脈、関係性で見せるのかというキュレーションのあり様により、その体験は異なってくる。
    その仕掛けを創造するのがキュレーターの役割である。
    キュレーターは、巧みなテーマ設定や作品の選択、ディスプレイなどによって鑑賞者を誘惑し、心を揺さぶる“忘れがたい体験”を演出するとともに、展覧会などの実践を通じ、社会に対して批評や思想の提案を行う。
    現代アートのキュレーターとして、海外のビエンナーレも含めて数多くの展覧会を成功させてきた著者が、豊富な経験を踏まえつつ、キュレーションの本質を論じる。

    [ 目次 ]
    キュレーターとは何か
    新たな感覚のめざめ―アートを通した知覚の実験
    アーティストとキュレーター―共犯者として、共同生産者として
    異文化への介入
    美術館建築とキュレーター
    アートと社会をつなぐ
    エロス、ジェンダー、セクシュアリティとキュレーション
    物議をかもした展覧会
    変容する観客
    震える境界―アウトサイダー・アートとキュレーション
    グローバル時代のキュレーション
    experience/experiment/expert/testimony

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

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著者プロフィール

京都大学法学部卒業、東京藝術大学大学院修了。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授、金沢21世紀美術館館長。これまでイスタンブール、上海、サンパウロ、シャルジャ、モスクワ、タイなどでの国際展を手がける。主な著書にKazuyo Sejima + Ryue Nishizawa: SANAA (Phaidon Press, 2006)、"Performativity in the Work of Female Japanese Artists In the 1950s-1960s and the 1990s," Modern Women: Women Artists at the Museum of Modern Art. (MoMA, 2010)、『破壊しに、と彼女たちは言う──柔らかに境界を横断する女性アーティストたち』(東京藝術大学出版会、2017)、「新しいエコロジーとアートーClouds⇄Forests展にそってー」、『東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科論集 第1号』(東京藝術大学大学院、2020)、『ジャパノラマ:1970年以降の日本の現代アート』(水声社、2021)など。

「2022年 『新しいエコロジーとアート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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