成長から成熟へ さよなら経済大国 (集英社新書)

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著者 : 天野祐吉
  • 集英社 (2013年11月15日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207132

成長から成熟へ さよなら経済大国 (集英社新書)の感想・レビュー・書評

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  • 天野祐吉さんが亡くなられたことを、迂闊にも知らないでいた。
    今朝の朝刊で読んだこの本の書評で知り、慌てて書店に走った。
    本人の意向で葬儀は行わなかったということだが、亡くなられたのが2013年10月20日。出版が2013年11月20日であるからこの一冊は天野さんが私たちに遺した遺言に他ならない。

    天野さんは書かれたもの、語った言葉、TVに映った姿のすべてがすっきり筋が通っていて、しかも静かで品のある方だった。
    生前何度か話された「贅沢は素敵だ」のエピソードのことを、私はおりに触れ思い出す。
    「贅沢は敵だ」というのはあまりに有名な戦時下の国民を戒める標語だが、街に張り出されたそのポスターの「贅沢は」と「敵だ」の間にたった一文字落書きしただけで、国民が一人残らず狂気に取り憑かれてしまっていたあの時代の状況を笑い倒してしまっているかのようだ。
    当時、笑いごとではなく命がけだったかもしれないユーモアの主とそれに注目した若き日の天野さんの眼は、まさしく時代の
    真の底流を見抜いていたのだと感服する。

    受け取る側にとっては、今という時代の底を見抜くための貴重な遺言のように大袈裟に受け取ってしまうのだが、書き手の天野さんは「思いつくままの雑感です」と、いつもどおり飄然としておられる。
    その雑感は、初売りの福袋に何千人もが行列を作る昨今の珍現象を「答えは簡単で『買うものがないから』です。『ほしいいものが見つからないから』です。でも『何かが買いたいから』なんですね」と喝破する。
    ここ何年間かお正月のニュースをみるたびに自分の感覚では全く理解不能なこの福袋の大行列に「いったいなにが嬉しくてならんでるんだろう」と疑問に思うばかりだった私などは、目から鱗が何枚も剥がれ落ちるような痛快な「雑感」である。

    天野さんが創始したと言っていい広告批評がまさしく対象とする広告のことを、「広告なんてすべてまがい物」とも書かれている。だが、同時に「平和憲法も世界に向けての広告」だと言い切ってしまう。実に明快かつ痛快だ。

    世の多くの人同様に凡人の私は、どんなに難しい本を一生懸命読んでも、グローバリズムって何なのか、その本当の意味は何なのかちっともわからないでいる。たぶん10年以上気になっているのだが解らないままでいる。
    それが、本書のなかでは、80年代までの高度成長を維持するための大量生産と大量消費の行き詰まりを指摘した上で、
    「グローバリズムというのは、その行き止まりをこわすために、地球上をぜんぶ一つの市場にしてしまうことのようです。大量生産のはけ口を、途上国に求めているということですが、これもいずれは行きづまるのが目に見えています」
    と、腑にオチすぎる明快さで語ってくれています。

    この天野さんご自身がいう雑感を、私は今を生きこれから生きて行く自分に遺して下さった貴重な遺言であると勝手に受け止めさせていただきます。生涯それを忘れたくないです。
    本当にありがとうございました。
    ご冥福をお祈りいたします。

  • 先日、亡くなった天野祐吉氏が、戦後から311後に至るまでの世の中の変化をCMと言う窓を通じて語っています。

    CMと言うのは本当に歴史なんだなと、思いました。戦後の高度成長期やバブルには、物欲を煽るCMが 多く、経済低成長時代には、生活やエコをアピールしたり。そういえば、以前あれだけ世の中を賑わせていた原発推進の広告やCMは3.11を境に何事もないかのようになくなりましたが、推進反対のCMは出てきませんよね。

    「ほしいものがほしい」と言う言葉、かって、スティーブジョブズが、消費者は自分たちが欲しいものが何か分からないから、それを示す必要があると言った。それに通じるものを感じました。

  • 大量消費に疑問を投げかける、このスタンスは最近流行してるのか、本でもよく見かける。

    若干内容自体がバブル気味で、似たような事を立場を変えてるだけの本が多い。

    この本も著者が広告に携わっていたというバックグラウンドだけがユニークで、内容自体は正直陳腐。はじめて触れるならともかく、タイトルにあるようなテーマに経験があれば改めて読むようなものではないかと。

  • 広告批評の人。下品な広告と芸術として見れる広告とを区別していた人から見えた成長社会。それを成熟へシフトしないかという話。わかりよく面白い内容だった。

  • レビュー省略

  • 天野祐吉さんという人は広告業界の中心にいた人、という程度の認識しかなかったので、大量生産&大量消費の先導者かと勝手に想像していたのだが、その実は正反対で自らの未明を恥じた。
    味のある文体で大量消費社会に対する違和感を独特の視点で見つめ、昭和の時代の消費者意識や空気なども妙に実感を伴って伝わってくる。メーカー勤務の立場から言えば著者の主張に全面的に賛成するものではないが、エッセイとしては良質だ。

  • 2015.03.08 僕が広告会社にあこがれた学生時代、そして入社したてのころ、天野さんの広告批評は全盛だった。真っ黒になるほど読んだ号もたびたびあった。バイブルだった。2013年、天野さんは逝った。あのころと比べると広告はすっかり陰を潜めてしまったが、僕は何とかこの世界で生きている。こころより感謝したい。

  • やや老害感のある言説だが、過去どのように日本が動いてきたかを知るには非常によいと思った。ぎらぎらを極めた大人が語る、てめーがいうな、感満載の脱成長論。

  • もの売りのために作成される広告を扱う人が至る結論が脱消費社会。
    我々は貧乏ヒマあり国を目指せるのだろうか?

    脱成長を謳うフランスの経済学者の弁 「今の消費社会は、成長経済によって支えられているが、その成長は人間のニーズを満たすための成長ではなく、成長を止めないための成長だ」

  • [ 内容 ]
    六〇年にわたり広告の最前線に立ち会った著者が語るその内幕と功罪。
    そして成長至上主義が限界を迎えたいま、経済力や軍事力のモノサシで測れない成熟した社会のために広告ができることを提言する。

    [ 目次 ]
    プロローグ 世界は歪んでいる
    第1章 計画的廃品化のうらおもて(電球の寿命は一〇〇〇時間?;それはヘンリー・フォードから始まった ほか)
    第2章 差異化のいきつく果てに(アメリカ・アメリカ・アメリカ!;人生は広告を模倣する? ほか)
    第3章 生活大国ってどこですか(「広告批評」の創刊;広告を広告する ほか)
    エピローグ 新しい時代への旅(くたばれ中央集権;広告はどうなる ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


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成長から成熟へ さよなら経済大国 (集英社新書)の作品紹介

戦後、人々の暮らしに貢献した広告はいまやグローバリズムのしもべとなり、人間を衝動的な消費者に変える片棒を担いでいる。60年間広告に関わった著者が語る成長至上主義の限界と新時代の希望!!

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