資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207323

感想・レビュー・書評

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  • 『#資本主義の終焉と歴史の危機』

    ほぼ日書評 Day578

    初めにお断りしておく。旧民主党の御用学者が書いた、目次だけ見れば大概の内容の予想が付く類の本である。2014年刊の新書なので書店には並んでいないかと思うが、間違ってもused購入などなさらぬよう。

    本書の主張を一言でいえば、フロンティアなき今、資本主義は遠からず終焉を迎える。その中でも課題先進国たる日本は拡大なき均衡による新たな経済学体制を目指すべきというもの。
    こんな学者が「内閣官房内閣審議官(国家戦略担当)」に就いていたのであるからして、日経平均7千円時代は必然であったと言わざるを得ない(Amazon書評で高評価を取っている非正規雇用者の増加は、程よく"人材派遣会社"の会長に収まっている、自民政権時代の大臣による悪政に起因するものだろうが)。

    とまれ、本書を簡単に振り返る。

    出だしは多少興味深い主張で始まる。
    "アメリカは、近代システムに代わる新たなシステムを構築するのではなく、別の「空間」を生み出すことで資本主義の延命を図りました。すなわち、「電子・金融空間」に利潤のチャンスを見つけ…"
    どうだろう、2014年刊にしては、なかなかのものではないか?
    ただ、時代は、まだアメリカが「リーマンショック」の影響から十分に立ち直れず、日本が先行して経験した超低金利&デフレのスパイラルに落ち込もうか、というタイミング。
    ここでいう「電子・金融空間」は、過度なレバレッジを掛けた金融商品("リーマン" を引き起こした原因と位置づけられる)と、ほぼ同意である。今日のような、メタバース、ブロックチェーンといった代物ではない。
    そうした新たなフロンティアへの挑戦といったポジティブな文脈ではなく、むしろ実体経済からの逃避という批判的視点で、たまたまこうした表現を用いているにすぎない。

    2010年代の超低金利を、もはや資本の産み出す期待利潤が失われつつあるから、と資本主義の終焉近しを予言するのだが、その根拠として16世紀の新たな大規模金脈(物理的な鉱山)発見が、大インフレをもたらした歴史を持ってくる。供給側の限界が強固であった時代との半ば意図的な混用は学問の徒の名に恥じるものではなかろうか(この辺り詳しくは、本書を手に取るきっかけとなったDay572『自由と成長の経済学』を参照されたし)。

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著者プロフィール

1953年愛媛県生まれ。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。博士(経済学)。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)を歴任。現在、法政大学法学部教授。専門は、現代日本経済論。著書に『正義の政治経済学』古川元久との共著(朝日新書 2021)、『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書 2017)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書 2014)他

「2021年 『談 no.121』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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