- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087207347
作品紹介・あらすじ
70年近く続いた「護憲」VS「改憲」の対立。そんななかに、著者は、第三の選択肢を提示する。すなわち「選憲」──現行の憲法を功罪共に検討したうえで、もう一度選び直しましょう、という提案である!!
感想・レビュー・書評
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父ちゃんから「読むか」とまわってきた本。上野千鶴子が、2013年9月26日に横浜で講演したときの講演録をもとに大幅に書き換えた、というつくり。講演は、横浜弁護士会・日本弁護士連合会主催の「憲法問題シンポジウム第3弾」として開かれたもの。
タイトルの「選憲」とは、現行憲法のええとこも悪いとこも検討したうえで、「選び直しましょう」ということらしい。改憲でもなく、護憲でもなく、「意識して、今の憲法を選ぶ」のだと。
改憲だ!という自民党の憲法草案と、日本国憲法の条文を照らして、かなりツッコミを入れている。一方で、護憲を主張する人たちにひそむエリート主義にもツッコミを入れている。
▼もしたったいま、九条改正を焦点にして国民投票をやったとしたら?(中略)東アジアの国際情勢が緊張するなかで、領海警備を海上保安庁に任せておけない、国防軍をつくれという声に流される愚民大衆がいるかもしれないと思う人たちも、いるかもしれません。九条を守りたい一心で、これを国民的審判にかけることそのものに反対する人々…こういう愚民民主主義観を持つのが、エリート主義者です。
わたしは主権者の一人です。主権者の一人として、主権者の権利を拡大してほしいと思います。ですから、代議制民主主義だけでなく、住民投票や国民投票のような市民の政治参加の機会は、ないよりあるほうがよいと思います。そのなかでもし愚かな選択をしたとしても、それでも主権者の権利は、大きいほどよいと思います。
民主主義とは、わたしたちの身の丈に合わせてよいほうにも悪いほうにも働く場合があります。(pp.148-149)
この「愚民民主主義」のところには、脱原発都民投票に不安を覚えて、これに反対する慎重派の人たちがいた、という話が引き合いに出されている。なんとなく、べてるの家の本なんかで書かれている「失敗する権利」のことを思った。
上野は冒頭で、「専門家ではありませんが、わたしも主権者のひとりですから、憲法はわたしの運命に深くかかわっています」「主権者であれば、誰でも憲法について何かを言う資格があると思います」(p.7)と語っている。この「主権者だから」「主権者であれば」のところに、私はちょっと引っかかってしまった。
日本国憲法での「主権者」は、「国民」ということになっている。上野もあとのところで触れているが、憲法にある「国民」「日本国民」は、英語の表現ではpeopleだった。これがあたかもnationであるかのように「国民」と訳されたのは意図的なことであったと、『日本国憲法の誕生』でも、そのあたりの話が書いてあった。peopleが「国民」と訳されたことで、この憲法において「国民」とは「日本国籍を持った人々」に限定されてしまった。
上野は「選憲」のひとつの提案として、「日本国憲法の「国民」を、もとにもどしてすべて「日本の人々」「日本に住む人々」に変えること」(p.142)を述べている。そこのところを考えているのは分かっても、やたら「主権者としてわたしは…」というのが出てくると、それって、上野さん、どっちの意味で使ってる?と思ってしまうのだった。
ひとつ、かなり気になったのは、「いまどきの若者が書いた、憲法前文」(p.162~)のところ。2002年に高校生だった福岡亜也子さんが書いた作品を紹介して、その福岡さんは2014年に29歳になっているはずですときて、そのあとに「今年29歳になるはずの福岡さんは、新進気鋭の社会学者として売り出した古市憲寿くんと同い年です」(p.166)とくる。
同い年の人を指して、女性は「さん」で、男性は「くん」なのかーと、そのかなりジェンダーからフリーでない呼称に、なんだか残念な気がした。
(8/21了)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まだ読んではおりませんが、YouTubeで、姜尚中さんと対談している音声を聞いて、興味を持ちました。
https://youtu.be/YdZ-7hF550g
上野千鶴子さんの本を読むのは多分、これが初めて。
以下、本の内容とは無関係ですが…。
地元の宮脇書店で探しましたが、在庫が切れていたので注文しました。数年前までは、リアル書店で注文すると、2週間から3週間と言われたものです。しかし今回は3日で届くとのこと。
なんだかんだ言っても、地元の本屋さんがなくなってしまうと、不便であることは確か。これまでは店に行ったときに在庫があればラッキーぐらいの感じでしか利用していませんでした。注文して3日で届くなら利用しやすい。歩いていける距離で唯一の書店なので、極力利用しようと思いました。とさ。 -
昨夏、中3長男の夏休みの課題に、自民党の改憲草案と日本国憲法の違いを調べました。特に専門書をひもとくわけでもなく、自分たちで読んで、興味のあるところだけピックアップして記述したので、読み足りないところがたくさんありました。ということに本書を読んで気づきました。このところの話題はもっぱら集団的自衛権ですが、憲法を改めることなく、解釈を変えることで対応するわけですから、この改憲草案には何の意味があるのかと思えてしまいます。わたしも小泉劇場にだまされた愚民の一人ですが、議論が活発になるのは決して悪いことではないのでしょう。わたしが憲法前文を書くとすれば「我々は、現在の日本国民の利益を追求するのみでなく、未来と世界への責任を果たさなければならない。」という一文を入れておきたい。
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万人に読んでほしいといえる良書。
以下はメモ。
・選択議定書…これを批准していると、人権侵害行為について、国家を飛び越えて個人が国連人権規約委員会に通報することができる。日本はアメリカはしていない。
・占領軍の押し付けの憲法ではなく、当時の国民が選び取っている。日本の中からもたくさん憲法草案が作られたし、提出されたものが現行憲法に大きな影響を与えている。
・代議制民主主義は、愚民説にたつエリート政治。(市民参加の機会を抑制するシステム)
・ケアは非暴力を学ぶ実践
・琉球共和社会憲法 -
[ 内容 ]
「護憲」でも「改憲」でもない第三の道とは?
憲法の精神を守るために。
1000人の聴衆に感銘を与えた幻の横浜講演。
その感動がここに甦る!
[ 目次 ]
第1章 憲法の精神(権力を縛る;脱走兵ベイリーは言う―「わが憲法の精神に勝利あれ」;沖縄の裏切られた悲願 ほか)
第2章 自民党の憲法草案を検討する(憲法前文;人民か国民か?;天皇 ほか)
第3章 護憲・改憲・選憲(護憲、改憲、加憲、廃憲…;吉田茂の外交戦略;二枚舌 ほか)
日本国憲法と自民党改憲草案の対照(抄)
琉球共和社会憲法C私(試)案
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ] -
あらためて、今の憲法を選びましょう!という考え方。
守ろうでもなく換えようでもなく、
えらびなおして、尊重しましょう、
という考え方は
ちょっとあたらしくて、
今の時代にあっているとおもいました。 -
改憲・護憲、いずれの立場であろうとも、憲法に関して論じるような機会があるならば、一度目を通してみると良いと思われる。
筆者自体への好き嫌いもあろう(実際専門分野に関しては饒舌になっている箇所も多々ある)が、あとがきにもあるように、選憲をも含めて憲法の在り方を考えるきっかけにはなるはず。