荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)

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著者 : 荒木飛呂彦
  • 集英社 (2015年4月17日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207804

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)の感想・レビュー・書評

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  • 読む前から、凄い本だとは予感していたけれど、予想以上のものだった。


    漫画家による漫画の描き方についての本といえば、すぐに思い浮かぶのは『サルでも描ける漫画教室』だ。サルまんは「漫画の描き方」を一つのエンターテイメントにまで昇華していて、含蓄はとても多いのだけれど、内容的には散漫かなと感じる部分もあった。また、今時、本屋に行けば漫画の描き方についての本は棚に溢れるほど並んでいるし、専門学校で漫画の描き方を学べる時代にもなった。


    というわけで、「漫画の描き方についての本」というのはレッドオーシャンなジャンルと言える。でも、ここにきてついに、というか満を持して、荒木飛呂彦が自分の漫画術を語るという本を出してきた。 これは例えるなら「人間界にゴジラが現れた」級の衝撃だ。なぜなら、荒木飛呂彦は歴史上最も売れた漫画雑誌の、黄金期と呼ばれた時代に漫画を連載し続け、またその作品は日本のカルチャーに深い影響を与えている漫画家だからだ。


    その荒木飛呂彦がこの本で語ることは、「少年ジャンプの黄金期に漫画を連載しつづけるために、考え抜き編み出した僕の漫画術」という、これまた凡百の「漫画の描き方本」の作者が到達しえない高みからの内容になっている。それだけで説得力が段違いにあるし、すべての漫画家が憧れる(はずですよね)少年ジャンプに連載するために、どういう心構えで漫画を描くべきかという、なかなかありそうでなかった視点からの漫画論が展開されている。


    内容は漫画を構成している要素を、大きく「ストーリー」「キャラクター」「世界観」「絵」「テーマ」に分けて、それぞれについての考察をしている。どういう意図を込めてデビュー作を描いたか、少年漫画で求められるストーリーとはなにか、キャラクターや世界観をどのように構築していくか、絵を際立たせるためにどのように工夫したか、テーマをどう設定するか……など、漫画にかぎらずクリエイティブな仕事全般に通じる金言がちりばめられている。


    荒木飛呂彦は新書で映画論を2冊出していて、そのどちらもが分析的で着眼点も漫画家ならではのものがあり、充実した内容だったが、それはこの『荒木飛呂彦の漫画術』においても踏襲されている。ちゃんと、荒木飛呂彦の漫画術を語るだけのロジックが用意されていて、そのどれもが独り善がりなものになっていない。


    【「これは!」と思ったところ】
    ・漫画家は全員「ヒッチコックの映画術」を読め!
    ・ムードで押しきるのは天才だからこそできる(普通はできない)
    ・雑な仕事は読者に見破られる
    ・仕事で消耗してしまわないように、締め切りはちゃんと守る
    ・ストーリーは常にプラスに向かうべき。マイナスとプラスが混じるストーリーはダメ


    個人的には、最後の「ストーリーは常にプラスに向かうべき」という話が一番ためになった。創作をしていると、とにかくマイナスを描きたくなるのを、「それは読み手にとって不要」と断じているのは、荒木飛呂彦の漫画論の核心かもしれない。ジョジョの1部で少年期のジョナサンとディオを描いたのは、ちょっと失敗だったかもという自戒があるように読めたし、また、とにかく過去話に行きたがる昨今の漫画への警鐘なのかも?


    読んでて思ったのは、荒木飛呂彦は漫画家としては「努力型」の人なんだなぁということだった。色々と試行錯誤して、自分のスタイルを作り上げて成功した漫画家。でも、この本で語っているように、漫画について突き詰めて考えるという点においては「天才的」と言えると思う。傑出した才能と努力の持ち主であるからこそ、少年ジャンプに長期間連載できたのだろう。


    あと、荒木飛呂彦が自作の漫画をネタに、漫画の技法的なものを語っているので、今後の研究にも役立つ部分が多々あった。特に、漫画の作成途中の資料や、漫画のどこにポイントを置いたのかの解説、コマ割りから漫画観まで、無視できない要素が本当に多い。


    荒木飛呂彦はマニエリズムの漫画家と評され、本人もルネサンス期の彫刻に影響を受けたことを告白しているが、それと同じく「見えないものを描く」ことに注力していることが語られている。端的に表れているのが、「波紋」や「スタンド」であるが、火や水、空気や光のようなものをどう描くかについても、試行錯誤の上に体得した方法が開陳されていた。荒木飛呂彦が見えないものを描くことに意識的であるということは、コマ割りについてのところで、丸コマの使い方に言及している部分でも読み取ることができる。


    というように、荒木飛呂彦個人の漫画論としても面白いし、少年ジャンプに連載するための王道とはなにか、を知るための本としても面白い。「メインストリーム」について、それがあまりに自明なものであるがために、語られる言葉が陳腐なものになりがちななかで、こういう本質に切り込んだ論説が読めるのは、誰にとってもありがたいことだと思う。

  • デザイナーの水野学さんの著書にも共通する部分があった。
    「王道」を知るということ。
    単に奇抜なだけでは人目は引けても、好奇心を惹き付けるまではいかない。
    「理由」がある。ヒットしているものには相応の理由があるということを漫画で解説している。
    漫画術は芸術であった。

  • 『ジョジョの奇妙な冒険』で有名な
    荒木飛呂彦さんの『漫画の描き方』暴露本です。
     
    以前の『山岸洋一先生の脳診断』を受けた際に
    小説を書く際に参考にしてみては?
    ということでおすすめいただいたものです。
     
     
    小説を書いていて自分自身
    『キャラクタづくりが下手』
    と思っています。
     
    しかし、この本に載っている
    荒木飛呂彦さんの方法を使えば
    おもしろいキャラクタを作れるかも
    という気になってきています。
     
    『キャラクタ作り』のコツ以外にも
     
    ・導入部分の描き方
    ・ストーリーの作り方
    ・『世界観』や『テーマ』の重要性について
    ・効果的な『アイディアノート・メモ』のまとめ方
     
    等々、漫画ではなく小説を書く際にも
    参考になることが満載です。
     
    『執筆』をされる方は
    ぜひ一度読んでみてください。

  • ジョジョの奇妙な冒険シリーズをいまさらになって読み、熱くのめりこんでしまった勢いでぽちりと押しました。

    しかし、荒木せんせの暴露してくださった企業秘密は、とてもとても当たり前の事ばかり! いや、漫画を描く上でのひとつの方法というか、荒木せんせの選んだ道筋であって、蜘蛛を描くために蜘蛛をバラして体液を味わう、とか画期的な漫画の描き方が載っているというわけではないのです!!

    荒木せんせは「地図」と本書を表しました。なるほど、山で遭難しないための地図。言い得て妙です。
    ただ、きっとこの地図よりもいいルートを開拓する人もいれば、あえて山道を進んだほうがきっと早いに違いない! と考える人もいる。実際に「地図」通りに進んでいこうとする人が、登山よりも漫画ではあまりいないのかもしれない。

    でも、普通に考えてど素人が適当に「あっちの道の方がいい気がするの~」と山道突き進んだって、遭難する可能性が高いのは一目瞭然。
    なるべく遭難しないために、「どう考え、実践し、軌道修正を繰り返したか」をこの本で学ぶべきなのではないかと感じるのです。

    なんだか高尚なビジネス書みたいになってきましたが……漫画もある意味ビジネスにちがいない、だって「企業秘密」だし!!

    そう、ビジネスの本質(?)「ひとを楽しませて対価を得て、自分もなにかで楽しみ対価を払い、循環させる」ということに気付かせてくれたのです!!

    ……本題がずれていきそうですが、まあ、それだけ漫画を描く上で役立ちそうなことも載っているし、ほかにも効きそうな考え方や面白い観点が学べる良書ってことなんです!

    ぜひ、荒木せんせを知らない方も読んで見てください!

  • 王道漫画の描き方解説。
    考え方から実践法までわかりやすく読みやすい。
    なぜこれがおもしろいのか、世間では人気なのかなど、成程と思うところがたくさんあった。

    個人的には先生のネームが衝撃的でした…笑。

  • 漫画家を目指す(かもしれない)読者に向けての心構えを説いた本。予想以上にしっかりした内容で、漫画家に限らず普通の仕事についても十分に通用する「術」(テクニック)が紹介してある。

    いくら作り手が苦労した作品であっても、読まれなければ話にならず、そのためには編集者の目に止まる工夫が必要。ではヒット作に共通する要素は何か...という分析や、漫画家として生計を立てるための収支計算、長期連載のためのペース配分といったシビアな計算と、手書きのライブ感や、キャラクタへの愛着、満足のいく作品ができたときの高揚感といった情熱がほどよいバランスで語られており、「天職」に就けた人の喜びが感じられる。

    著者自身の作品についての自信を感じるが、傲慢な印象を受けないのは、編集をはじめとするいろいろな人や「漫画の神様」に対する感謝の姿勢が根底にあるからだと思う。

    「どこかにいるかもしれないこの本を必要とする誰か」に向けての指南書。
    同じものを作るための「マニュアル」ではなく、自分の立ち位置や目的地を知るための「地図」。

    面白かった。

  • 荒木先生が、漫画界の後進のために、持てる漫画創作の技術を解説してくれます。

    特筆すべきは、解説の仕方が非常に具体的なところです。キャラクターを作るための身上調査書を開示したり、世界観を作るためのサンプルを列挙するなど、天才の思考の一端を垣間見ることができます。

    素晴らしい内容なのですが、記載内容に一点だけ明らかな誤りを発見しました。
    『ジョジョリオン』で「初めて女性のおっぱいも描いています」とありますが、実際は『ゴージャス☆アイリン』で既に描いています。

  • 「ジョジョの奇妙な冒険」の作者が明かす漫画の描き方ハウツー本。
    大変、面白く読みました。
    漫画だけでなく、あらゆる創作に役立つノウハウが盛りだくさん。
    漫画の基本四大構造は「キャラクター」「ストーリー」「世界観」「テーマ」なのだそうです。
    これは漫画に限った話ではなく、映画や演劇、エンターテインメント小説などでも同じではないでしょうか。
    プレス絵と言葉が入って漫画が成り立ちます。
    荒木先生が「漫画は最強の『総合芸術』」と呼ぶ所以です。
    第3章「キャラクターの作り方」で実物が紹介されている「身上調査書」は、創作に携わる人には大いに役立つものと思われます。
    姓名、年齢、性別といった基本事項はもとより、性格、趣味、特技、将来の夢、さらには視力・色力、手術経験なんて項目もあり、いかに荒木先生が徹底してキャラクターを作り込んでいるかが分かります。
    少年漫画の物語は基本的に起承転結で話が展開します。
    それともうひとつ大事な「鉄則」があるそうです。
    それは「主人公は常にプラス」ということ。
    つまり、主人公は困難に直面しても、それを打破して常に成長していく存在でなければいけないのです。
    これが「ヒットするための絶対条件」なのだとか。
    私はレビューの冒頭で「あらゆる創作に役立つ」と書きましたが、たとえば純文学なんかは救いのない話が多く、「主人公は常にプラス」は当てはまりません。
    これは漫画(特に少年漫画)に特有の原則といえるかもしれません。
    それにしても、こんなに惜しげもなく「企業秘密」を明かしちゃっていいのでしょうか。
    読者にとっては実に贅沢な本です。

  • 本当に漫画家のために描かれた漫画家の本。
    一般人が読んでも十分おもしろい。
    ポイントは、荒木飛呂彦のストイックさであり、その姿勢こそが人間賛歌だというところ。研究しつくし、発展を重ねる天才。この生き方が人間としての到達点でもあると思える。
    この人の生き方こそが人生の「王道」なんだろう。

  • 奇抜なストーリーや世界観と思われがちだけど本当に漫画の王道を歩んでるんだなと思った。普通にためになると思う

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荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)の作品紹介

『ジョジョの奇妙な冒険』の作者・荒木飛呂彦が、これまで明かすことの無かったマンガの描き方、その秘密を披瀝! 自身初の自画像を帯に使用するのを始め、描き下ろしたイラストも多数。

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)のKindle版

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