荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087207804

感想・レビュー・書評

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  • 『ジョジョの奇妙な冒険』で有名な荒木飛呂彦が、漫画の描き方について指南した一冊。

    漫画を描くのに詳細なキャラクターと世界観を探り、その上でストーリーとテーマを決めて描くという彼のスタイル(くしくも彼が“基本四大構造”と呼んでいる)がよくわかった。

  • 読む前から、凄い本だとは予感していたけれど、予想以上のものだった。


    漫画家による漫画の描き方についての本といえば、すぐに思い浮かぶのは『サルでも描ける漫画教室』だ。サルまんは「漫画の描き方」を一つのエンターテイメントにまで昇華していて、含蓄はとても多いのだけれど、内容的には散漫かなと感じる部分もあった。また、今時、本屋に行けば漫画の描き方についての本は棚に溢れるほど並んでいるし、専門学校で漫画の描き方を学べる時代にもなった。


    というわけで、「漫画の描き方についての本」というのはレッドオーシャンなジャンルと言える。でも、ここにきてついに、というか満を持して、荒木飛呂彦が自分の漫画術を語るという本を出してきた。 これは例えるなら「人間界にゴジラが現れた」級の衝撃だ。なぜなら、荒木飛呂彦は歴史上最も売れた漫画雑誌の、黄金期と呼ばれた時代に漫画を連載し続け、またその作品は日本のカルチャーに深い影響を与えている漫画家だからだ。


    その荒木飛呂彦がこの本で語ることは、「少年ジャンプの黄金期に漫画を連載しつづけるために、考え抜き編み出した僕の漫画術」という、これまた凡百の「漫画の描き方本」の作者が到達しえない高みからの内容になっている。それだけで説得力が段違いにあるし、すべての漫画家が憧れる(はずですよね)少年ジャンプに連載するために、どういう心構えで漫画を描くべきかという、なかなかありそうでなかった視点からの漫画論が展開されている。


    内容は漫画を構成している要素を、大きく「ストーリー」「キャラクター」「世界観」「絵」「テーマ」に分けて、それぞれについての考察をしている。どういう意図を込めてデビュー作を描いたか、少年漫画で求められるストーリーとはなにか、キャラクターや世界観をどのように構築していくか、絵を際立たせるためにどのように工夫したか、テーマをどう設定するか……など、漫画にかぎらずクリエイティブな仕事全般に通じる金言がちりばめられている。


    荒木飛呂彦は新書で映画論を2冊出していて、そのどちらもが分析的で着眼点も漫画家ならではのものがあり、充実した内容だったが、それはこの『荒木飛呂彦の漫画術』においても踏襲されている。ちゃんと、荒木飛呂彦の漫画術を語るだけのロジックが用意されていて、そのどれもが独り善がりなものになっていない。


    【「これは!」と思ったところ】
    ・漫画家は全員「ヒッチコックの映画術」を読め!
    ・ムードで押しきるのは天才だからこそできる(普通はできない)
    ・雑な仕事は読者に見破られる
    ・仕事で消耗してしまわないように、締め切りはちゃんと守る
    ・ストーリーは常にプラスに向かうべき。マイナスとプラスが混じるストーリーはダメ


    個人的には、最後の「ストーリーは常にプラスに向かうべき」という話が一番ためになった。創作をしていると、とにかくマイナスを描きたくなるのを、「それは読み手にとって不要」と断じているのは、荒木飛呂彦の漫画論の核心かもしれない。ジョジョの1部で少年期のジョナサンとディオを描いたのは、ちょっと失敗だったかもという自戒があるように読めたし、また、とにかく過去話に行きたがる昨今の漫画への警鐘なのかも?


    読んでて思ったのは、荒木飛呂彦は漫画家としては「努力型」の人なんだなぁということだった。色々と試行錯誤して、自分のスタイルを作り上げて成功した漫画家。でも、この本で語っているように、漫画について突き詰めて考えるという点においては「天才的」と言えると思う。傑出した才能と努力の持ち主であるからこそ、少年ジャンプに長期間連載できたのだろう。


    あと、荒木飛呂彦が自作の漫画をネタに、漫画の技法的なものを語っているので、今後の研究にも役立つ部分が多々あった。特に、漫画の作成途中の資料や、漫画のどこにポイントを置いたのかの解説、コマ割りから漫画観まで、無視できない要素が本当に多い。


    荒木飛呂彦はマニエリズムの漫画家と評され、本人もルネサンス期の彫刻に影響を受けたことを告白しているが、それと同じく「見えないものを描く」ことに注力していることが語られている。端的に表れているのが、「波紋」や「スタンド」であるが、火や水、空気や光のようなものをどう描くかについても、試行錯誤の上に体得した方法が開陳されていた。荒木飛呂彦が見えないものを描くことに意識的であるということは、コマ割りについてのところで、丸コマの使い方に言及している部分でも読み取ることができる。


    というように、荒木飛呂彦個人の漫画論としても面白いし、少年ジャンプに連載するための王道とはなにか、を知るための本としても面白い。「メインストリーム」について、それがあまりに自明なものであるがために、語られる言葉が陳腐なものになりがちななかで、こういう本質に切り込んだ論説が読めるのは、誰にとってもありがたいことだと思う。

  • 荒木飛呂彦の漫画術

    最初の1ページ
    どんな絵を描くか
    きれい、不気味、線のきれい、明るい、エロい、光が感じられる、かっこいい、逆に下手(究極にシンプル)、みた事ない、写真のような(究極にリアル)、笑える、動線が多くない、女性しか登場しない、子供しか登場しない、石しか登場しない

    読みたくなるタイトル
    タイトルにイメージが集約、強い印象を与える、イメージを決定している、主人公の名前

    いいセリフ
    ドキッとする、しっとり落ち着く、癒される、悲しい、怒り、ダジャレ、方言、5.7.5、ラップのように韻を踏んでいる

    5w1hの基本、他人とは違う自分ならではの個性、同時に複数の狙いを描く、漫画全体の予告
    ヒット作を分析する習慣

    ヒーローは孤独に戦う

  • JOJOの奇妙な冒険シリーズで有名な荒木先生による漫画術の本
    絵を描く人間ではないが、シナリオを書く人間なので読んでみました
    内容は、荒木先生が思う漫画の王道について書かれている

    個人的に印象に残った点
    ・最初の一ページを読ませる
    ・漫画の基本四大構造「キャラ」「ストーリー」「世界観」「テーマ」
    ・身上調査書
    ・主人公は常にプラス
    ・困難な状況に主人公を放り込む
    ・読者は世界観に浸りたい
    ・「テーマ」はぐらつかせない
    ・自分と違う意見に興味を持つ

  • 荒木先生が、漫画界の後進のために、持てる漫画創作の技術を解説してくれます。

    特筆すべきは、解説の仕方が非常に具体的なところです。キャラクターを作るための身上調査書を開示したり、世界観を作るためのサンプルを列挙するなど、天才の思考の一端を垣間見ることができます。

    素晴らしい内容なのですが、記載内容に一点だけ明らかな誤りを発見しました。
    『ジョジョリオン』で「初めて女性のおっぱいも描いています」とありますが、実際は『ゴージャス☆アイリン』で既に描いています。

  • 漫画を描きたい人に向けた本でした。
    迷ったときに戻ってこられる地図。
    いろいろな大事な要素が詰まって漫画ができるんだなぁと知ることができた。
    好きな漫画を違った視点からもう一度読み直してみたいと思った。
    荒木先生のまだ先へ先へ進もうという思いもみられて、これからもますます荒木先生の漫画が楽しみになりました。

  • 2019年10月8日読了。荒木飛呂彦が「漫画の王道」を説く本。当方長年のジョジョファンだが自分で漫画を書きはしないが、この本は非常に興味深く読んだ。以前小説家の友人が「本物は出し惜しみをしない」と言っていたがその定義でいうと荒木氏はまさに本物、漫画の4要素やデッサンのポイントや自分が心がけている「編集者にウンと言わせる」工夫など惜しげもなく披露していると感じる。多分彼の仕事場に「漫画を教えてくださいッ!」と飛び込んだら(仕事がなければ)一日中漫画の書き方を教えてくれるんじゃないかな…?彼が自分の漫画を「異作ではなく王道」というのは面白いが、他の漫画にない要素・特徴を持つことが王道、と考えればまさに王道ど真ん中の作品、と言えるのか。

  • 常にストーリーはプラスプラスでいかなくちゃいけないとか、戦いにおいて安易に力が覚醒したり誰かが助けに来たりしてはいけないとか、かなり心に刺さることが書いてあった。何より実例が豊富なので分かりやすい。文章自体が読みやすいのはそもそも作者さんが文章がうまいからなのかな。

  • バイブル。

  • 王道漫画を目指すことの重要性、そして王道漫画の作り方。
    自分が面白いと感じているけど、言葉にできなかった漫画の魅力が、言語化される体験は本当に気持ちがいい。それって批評の面白さだと思うけど、創作者によって語られる批評ではトップクラスに好き。自分の感覚と合う。
    頭が良くないとジョジョは書けないよなぁとしみじみした。。
    素晴らしい黄金読書体験だった。。

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