「憲法改正」の真実 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087208269

作品紹介・あらすじ

自民党の憲法改正草案を貫く「隠された意図」とは何か? その危うさに自民党ブレインの憲法学者ですら驚愕した。改憲派の彼が護憲派の泰斗と草案を分析。日本一わかりやすい、「憲法論」の決定版!

感想・レビュー・書評

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  • 憲法改正に向けた動きが静かに進行し始めた中、改憲派、護憲派の重鎮がそれぞれの立ち位置を超え、自民党の憲法改正草案に潜む危うさを、平易に解説している。現行憲法に対する正しい歴史観を示し、改憲推進派が主張する押し付け憲法論を否定するとともに、草案が目指す危険な国家観を喝破している。'個人'から'国家'への重心の移動、'権力'に守らせるべき憲法から'権力'にて行使可能な憲法への意図を、草案から読み解いていく。本書で示唆されているように、主権者たる国民は、将来に対する責務として、'知る義務'を怠らない意識改革が問われている。

  • とてもわかりやすく、憲法改正にどのような危険が孕んでいるのか理解できた。そもそも憲法の成り立ちは?みたいな初歩も外国の事例も交えて説明があり置いてけぼりになることはない。
    とにかく強烈な内容だった。自分が無知で無関心だったか恥ずかしくなった。これから政治を、政治家の発言をみる目が変わる。

  • 改憲派と護憲派の憲法学者二人の対談形式による本書は、立件主義とは何かや、現政権の改憲草案の愚かさ、歴史認識の誤り、そして、私たち一人ひとりが憲法と国の行く末を本気で考えなければならないことを教えてくれる。
    自民党の改憲草案はとにかく怖い。これが憲法になったら、私は私でなくなるだろう。そう感じずにはいられない。個人を尊重し、権力者を縛る憲法はなくなり、代わりに、個人を殺し、権力者の暴走を可能にする怪物が産まれる。恐ろしい。
    あまり歴史には詳しくないので、フランス革命やナチスドイツの話、明治期の日本の話もとても興味深かった。先人が、長い歴史の中で、人が個人として生きる権利を闘いながら獲得してきたのだなと、改めてその恩恵を有り難く思う。だからこそ、今、闘わなければならない。私は、私にできることを通して、自分たちを守るために、この国の未来を守るために尽力していきたい。そんな勇気をくれる良書だった。

  • 2015年6月の衆院憲法審査会。参考人として呼ばれた憲法学者3人
    が3人とも、戦争法案は違憲であると明言した。

    自民党推薦の憲法学者の先生までが「違憲だ」としたものだから、激
    高した自民党・高村センセイのお笑い発言まで飛び出す始末だった。

    「たいていの憲法学者より私の方が考えてきたという自信はある。」

    この「考えてきた」というのは、「そもそも憲法とはなんたるものか」では
    なくて「どう変えたら自民党に都合がいいかな」の「考えてきた」なのじゃ
    ないのですかね。

    福島第一原発事故の際に時の首相・菅直人が「僕は原発に詳しいん
    だ」と言ったくらい恥ずかしい発言だわ。

    その問題の(?)憲法審査会に出席していた小林節先生と、今まで政治
    的活動とは一線を画していた樋口陽一先生が、自民党の憲法改正草案
    がいかに危険かを論じあっているのが本書だ。

    憲法というのは権力者を縛るものなのだから、権力者側から「憲法、変え
    ちゃえっ!」なんて話が出て来ること自体が異常なのである。その異常な
    状態を進めようとしているのが、現在の安倍政権だ。

    本書でもおふたりが指摘しているのだが、私は改正草案が公になった時、
    今の日本国憲法にある「個人」が「人」に書き換えられている点だけでも
    「こいつら、何考えんだ?」と感じた。

    そうして、言論・出版・表現・結社の自由にも制限をかけている。憲法が
    国民を縛ってどうすんだよ。憲法の役割が違って来るじゃないか。

    そんな点ばかりに目が向いていたので、本書で語られている緊急事態
    条項や、経済活動を国是とすること、道徳的価値観までが盛り込まれて
    いる点に関してまでは気が回らなかった。

    憲法なんて難しいんじゃないかと感じるかもしれないが、おふたりとも
    とても分かりやすく語っている。特に小林先生は自民党のブレーンで
    もあったので、ブレーンとして接した自民党議員たちがいかに頭が
    悪いかにうんざりしている様子が伝わって来る。

    だって、私が読んでも「ああ、憲法って本来こういうものなんだよな」と
    理解出来るのに、国会議員が理解できないって何よ?特に世襲議員
    なんてそれなりの大学を出たり、留学したりしてるんでしょう。どれだ
    け頭の中、空っぽなんだよ。

    安倍晋三は日本国憲法を「みっともない憲法」と言う。その「みっともない
    憲法」があったからこそ、日本は世界で信用されたんじゃないのかね?
    戦後70年、他国に銃を突きつけることをしなかったのだから。

    「国民の生活が大事なんて政治はですね、私は間違ってると思います」

    これは自民党・稲田朋美の発言。この人は「民族の魂の浄化のための
    最良の方法は戦争」とかも言っていた。これが改憲勢力の本音ってとこ
    だろうな。

    改憲支持者たちは本当にこの改正草案でいいんだろうかね。今までの
    生活が根底から覆るんだけれど。「新しい解釈」なんて訳の分からない
    ことで着々と憲法は壊されているんだよ~。

    ただ、頭のおかしい政治家だけの責任かと言えばそうではない。私たち
    には「知る権利」と同様「知る義務」があるという話にはっとした。

    政府の言っていることはどこかおかしいんじゃないか。そう思ったら知る
    為の努力をしなきゃいけないんだな。もっと勉強しよう。

    今こそみんなで憲法を考えるべきなんだよね。考えて判断しなきゃいけ
    ない。平和国家である為に、私たち有権者には「投票権」という武器が
    あるのだから。

    おまけ。安倍晋三の戦後70年談話を西ドイツ元首相のワイツゼッカー
    の演説と通じていると言った産経新聞の記者がいるらしい。この記者、
    ワイツゼッカー演説の全文を読んだことがあるのか?ワイツゼッカー
    に謝れ、額をすりむくほど額をこすりつけて謝れ。ドアホウ。

  • 本屋で衝動買い。現政権が推し進めようとしている”憲法改正”のおかしさや危険性について述べている一冊。対談本なのでとても読みやすい。現政権がやろうとしているのは「帝国憲法の復興」ではなく「北朝鮮そっくりの独裁体制」という指摘は全く正しいと思う。

  • 恥ずかしい話、憲法改正についてよく分かっておらず、他人事の気がしていた。この本を読んで、今憲法について何が起ころうとしているのかやっと分かった。書いてあることは非常に基礎的なことから書かれており、とても分かりやすい。

  •  2016年7月の参議院選挙を経て、改憲支持派の参議院議員がが2/3以上の議席を確保した。これから憲法改正の発議に向けて具体的な議論が進んでいくだろう。
     本書は小林氏は自民党の改憲派を支持していいた小林氏と護憲派の樋口氏という二人の憲法学の専門家の対談形式で執筆されているが、両者とも自民党の憲法草案と安倍政権での改憲には反対を表明している。護憲派の書籍は数多く出版されているだろうが、以前に自民党の改憲を支持していた小林氏が改憲派の実態について論じているので、本質をついた議論になっている。「憲法」というと小難しそうなイメージが付きまとい、耳障りのよい「旧きよき時代の価値観」に共感してしまうかもしれない。しかし、憲法は長い歴史を通じて人類が獲得した仕組みであることを十分に理解することが重要と著者らは主張している。憲法(Constitution)は、文字通り、国の構造(Constitution)に関わる問題であり、我々一人一人が責任をもって考える必要がある。将来に禍根を残さないためにも。
     なお、本書では憲法の歴史について簡単に増えているが、より詳細を知りたければ、小室直樹著「日本人のための憲法原論」をお勧めしたい。また、現在の安倍政権を支える団体、日本会議についても一部言及されているが、詳細については菅野完著「日本会議の研究」が詳しい。両書を併せて参照すれば、著者らの主張と危機感に対する理解が深まるだろう。

    日本人のための憲法原論
    http://booklog.jp/item/1/4797671459

    日本会議の研究
    http://booklog.jp/item/1/4594074766

  • 自民党の改憲派は''自分たちを正当化するために''憲法を変えたいのだ、ということがよく分かる。分かりすぎてげんなりする。
    有権者(つまり私)はこの状況を知る義務がある。
    ひとりひとりが「引き返せるときに」自分たちが何に利用されようとしているのか、本気で考えたほうが良い。私たちは今、大きな転換点にいる。

  • 〈自民党の改憲草案を貫く「隠された意図」とは何か? 護憲派の泰斗と改憲派の重鎮が、自民党草案を徹底分析。史上最高に分かりやすい「改憲」論議の決定版が誕生〉と紹介された新書です。一気に読み終えました。

    改憲をめざす勢力のロジックがどこにあるのか、明治憲法がその当時の最新の考え方を踏まえて検討され制定された事実と立憲主義に基づいた運営を貫こうとしていたこと等、 初めて知った事実や考え方が多くあり示されていました。新自由主義にもとづく経済政策を押し進められて貧困と格差が拡大していますが、自民党改憲草案には、国民の権利に関する制限はかけながら、経済だけ(それも大企業だけ)は規制しない方向(自民党案22条)が盛り込まれている条文があることにても驚きました。彼らなりの一貫性を把握しておくことは、反論と運動にとって必要なことだと思います。

    主権者としての判断が問われている今、多くの人に読んでほしい一冊ですね。

  • 自民党てなんで憲法改正てなんでするの?
    憲法て難しい。
    そんな疑問があるかと思いますが、その疑問を解決するのがこの本だと思います。
    内容は憲法についてと自民党の憲法改正の裏側をなどを語っています。
    正直言うとかなり恐怖です…
    特に自民党の世襲議員の憲法に対しての知識のなさや大物議員の高市や片山さつきのとんでも発言…
    読めば読むほど恐怖と唖然する。
    小林節さんが呆れる理由がわかります。
    (妖怪の孫でも小林節さん出てます)
    また、自民党改正案と日本国憲法を比較しながら、わかりやすく語っております。
    さらによく話題になる緊急事態条項もなぜ危険なのかもよくかかれています。
    憲法改正の議論はどうしても法や憲法知識が必要です。
    ある程度知識はこの本だと身につくと思います。
    憲法について考える上で、ぜひ、読んでみてください。
    また、映画妖怪の孫もみてみてください。
    憲法と国家のあるかたを考えると思います。

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著者プロフィール

東京大学名誉教授

「2019年 『憲法を学問する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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