ナチスと隕石仏像 SSチベット探検隊とアーリア神話 (集英社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087208924

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦前夜、ナチス親衛隊の探検家が、チベットから持ち帰った一体の仏像。胸に卍が刻まれたこの仏像の真偽と秘められた現代史に、探検隊の踏査行と仏像、ナチス思想を検証することで迫る。

感想・レビュー・書評

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  • チベットにヒムラーが派遣し、持ち帰ったとされる仏像は、成分は隕石だが、仏像様式からヨーロッパでの製造が疑われる。

  • 「隕石仏像」の詳細な解析・探求に期待したが、「隕石仏像」を入口にしたナチスドイツの人種政策論に拡散した感じを受けた。
    新書のボリュームでは、どれも中途半端になってしまった印象。

  • 「アーリア人のルーツはチベットにあるのだぁ」

    アーリア人種主義を信奉したナチス親衛隊長官ヒムラーの妄想が暴走し、
    1938年にチベットへ探検隊を送り込んだ。その時、探検隊が持ち帰った
    とされる仏像についての論文が発表されたのが2012年。

    その素材はなんとっ!1913年にロシア連邦のトゥバ共和国チンガー川
    流域で発見された隕石であった。

    胸に「卍」を抱いた仏像は、逆回りのカギ十字を掲げるナチスにとっては
    チベット・ルーツ説を裏付ける貴重な発見でもあったのだろう。探検隊が
    持ち帰ったのが本当であれば。

    プロパガンダに長けたナチスが、これを利用しない手はないではないか。
    しかし、隕石仏像の発見を大々的に宣伝した形跡がない。

    しかも、仏像を子細に眺めるとその造形に不自然な点がいくつもある。
    素材が隕石であることは成分分析の結果から明らかなのだが、仏像と
    なったのはかなり後の時代ではないのか。

    仏像が実際に作られたのはいつなのかを考察した前半は興味深かった。
    いくつもの説を上げて、それぞれの瑕疵を指摘している。だが、誰が
    何を目的として隕石に仏像を彫ったのかは謎のまま。

    後半はナチスがいかにしてオカルトに傾倒して行ったかの考察になって
    いる。これはこれで面白くもあったのだが、前半の隕石仏像の謎解き
    とばっさり分断されてしまっているのが残念。

    確かにこの隕石仏像は私が見慣れている仏像とは随分とお姿が違うの
    だよな。なんかヨーロッパ風味の仏像なのである。

    「こんなん、出ました。やっぱりアーリア人のルーツはチベットに
    ありました」って思いたい人が、仏像にしちゃったのかなぁ。

  • ナチスの親衛隊長官ヒムラーは、アーリア人種主義を信奉し、その民族のルーツが秘境チベットにあったはずであると思い込んでいた。すなわり北欧のアーリア人種の一部がチベットにたどり着き、先史時代か古代において、ここを純血種のアーリア人が支配していた時代があったという妄想を抱いていた。合わせて彼は、チベットに在住したとされる架空の地下社会「シャンバラ国」のオカルト的伝説にも夢中であっ

    た。

  • アーリア人のルーツを調査するためチベットに派遣されたSSの探検隊が持ち帰ったとされる隕石製仏像の謎と、ドイツ第三帝国における先史遺産研究について検証した書籍(2017/07/19発行、821E)。

    よくオカルト本で紹介されることの多いドイツ第三帝国の親衛隊全国指導者ハインリヒ・ルイトポルト・ヒムラーが派遣したチベット探検隊について、日本では余り知られていない事実が書かれており、なかなか面白かったと思います。
    只、後半はナチスが掲げるアーリア神話(主義?)について偏りがちで、面白さがダウンしてしまったのは少々残念でした。

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著者プロフィール

1944年香川県生まれ。現在、関西大学名誉教授、ワイマル古典文学研究所、ジーゲン大学留学。ドイツ文化論、比較文化論専攻。
主要著作
『魔女とカルトのドイツ史』(講談社現代新書)、『ナチスと隕石仏像』(集英社新書)、『「笛吹き男」の正体』(筑摩選書)、『図説 ヨーロッパの装飾文様』(河出書房新社)、『現代ドイツを知るための67章』(明石書店、編著)、『ポスト・コロナの文明論』(明石書店)など多数。

「2023年 『ベルリンを知るための52章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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