太陽のパスタ、豆のスープ (集英社文庫)

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著者 : 宮下奈都
  • 集英社 (2013年1月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087450262

太陽のパスタ、豆のスープ (集英社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 自分は一度挫折した人間が
    そこから這い上がる過程を描いた話に滅法弱い(笑)

    つまり再生の話だ。


    長年生きていれば
    挫折や失望、裏切りなどで立ち止まってしまう瞬間があるのは
    当たり前の話で。

    そこから
    いかにダメージを受けずに生きるか、
    受けたダメージを次にどう生かすかを
    暗闇の中、学習していけるかが、
    生きていく上での最大の課題になってくる。
    (それを人は成長と呼ぶんだろう)


    そういう人生の教科書となりうる小説が
    瀬尾まいこの「天国はまだ遠く」「幸福な食卓」であり、
    吉本ばななの「ムーンライト・シャドウ」や西加奈子の「さくら」であり、
    木皿泉の「昨夜のカレー、明日のパン」であるんだろう。

    傷ついたことのある誰もが共感しやすく、
    明日を生きる後押しとなる
    そんな「再生の物語」は
    つまり人の心を激しく打つのだ。


    初めて読む宮下奈都さんのこの作品も
    まさにそう。

    結婚式直前に突如婚約を解消されてしまった
    20代後半で
    しがないOLの明日羽(あすわ)。

    予想だにしない突然の展開に
    取り乱し茫然自失な彼女を救ったのは、
    自由奔放に生きる変な叔母(笑)こと、ロッカさんが教えてくれた
    やりたいことを書き記したリスト、
    つまり「ドリフターズ・リスト」なるものだった…。


    結果的に彼女の運命を変えることになる
    母の妹で六花と書く、
    このロッカ叔母さんがとにかくいいキャラで、
    助演女優賞をあげたいくらい
    印象的で存在感抜群。
    (ジュリーと少年ジャンプが好きで、自分を奮い立たすために変な小躍りをしたり、気負いなく飄々として掴みどころのない様は女優の小林聡美をイメージして当て書きした感じ笑)

    そして明日羽を助けるもう一人が
    京介という名前を封印した
    美容師で幼なじみの京(きょう)。

    ランチ仲間で明日羽とは
    職場の同僚の郁ちゃん。

    この身近な二人の凛とした生き方が
    意気消沈する明日羽を支え、
    本当は知らないところで
    誰もが何かと戦っていることに気づかされていく。


    自分自身、やりたいことや楽しそうなこと、欲しいものなどを書き出した
    魂の漂流者たちの指針となるリストの存在は以前から知ってたけど、
    その活用方法はこの作品で初めて知ったので
    いろいろ参考になったけど、
    コレがいざ自分が書こうと考えてみると
    実際難しい( >_<)

    しかし、宮下さんは
    難しいことやリストがすべてじやないことを承知の上で、
    人が本気になるまでの経緯や
    きっかけを
    歌うように滑らかでユーモア溢れる筆致で
    サラリと読ませてくれる。

    物語の中、傷心の明日羽は
    ロッカさんにそそのかされるまま(笑)
    実家を出て一人暮らしを始め、
    髪をバッサリ切り、
    幸せを呼ぶ黄色い鍋を買い、
    極上のエステを経験し、
    青空マーケットに出没し、
    料理に名画に名作小説に
    身近過ぎて気付かなかった家族の思いに触れ、
    空っぽだった自分に憤慨し、打ちのめされながらも
    少しずつ、一歩ずつ、
    揺らがない自分の核を手に入れていくのだ。


    人は生きる上で無意識のうちに
    様々な選択を迫られ、
    その都度自らの意思や
    経験から基づく直感で選びとって生きている。

    その選択の方向性を左右したり、判断基準に大きな影響を及ぼすのが
    日々の考え方であったり、
    自分という人間の欲求を
    どれだけ自分が理解しているかだったりする。

    つまり、リストを書くことは
    自分を見つめ直し、
    常に意識的に行動することで
    無意識に最善の道を選ぶための訓練でもあるんだと思う。

    備えや準備なきところに
    決してチャンスは訪れないし、
    例えチャンスが舞い込んだとしても
    備えがなきゃ
    それにさえ気づきはしないのだ。


    それにしても、宮下さん
    食べ物を描くのが
    本当に上手い!

    ゆかり堂のかりんとうや
    なかむらのスポンジケーキの耳(笑)、
    ひじきの煮付けや白ご飯が美味しいと評判の
    クリント・イーストウッド似の店主がいる定食屋、
    邪道なピーナッツなんて最初から入っていない(笑)村田屋の柿の種、
    兄の作る「気合いを入れない」ホットケーキと冷えた缶ビールなど、
    明日羽やロッカさんがセレクトした様々なおやつや食べ物の描写が出てくるたびに
    食いしん坊体質の自分は涎タラタラで悶絶しておりましたよ…(*_*;


    勢いの結婚も有りではあるけど、
    どんな時も誰かに依存するのではなく、
    自分の人生を自分で引き受ける気概は持ってたいと思う今日この頃(笑)、  
    いやぁ~、本当にいい小説を読ませてもらった。


    失恋の痛手から立ち直れない人や
    履歴書の趣味・特技欄に何も書けない人、
    自分の中の欲求と質を理解したい人、
    自分改革をしたい人に断然オススメの小説!

  • 自分がどうしようもなくちっぽけな人間に思えて、嫌になって、落ち込んで、周りの人が輝いて見えて、置いていかれると思って、焦って、落ち込んで‥。
    じゃあ、焦って追いかけようとするかといえば、どこにも進めずにただ泣いているだけ。嘆いているだけ。
    そんな自分にまた失望して…。

    どうしたらこの負の連鎖から逃れられるのか。
    この物語の主人公、あすわは婚約していた相手から突然別れを切り出される。
    大切な相手からの拒否。
    信じていた未来の消滅。
    「ひどい!」と相手を憎むことも出来たのに、自分がダメなんだと思ってしまう彼女の気持ちがよく分かる。

    自信なんてないよ。
    いつだって不安で、必死で、ただ笑っていたいだけ。
    自分のことなんて好きじゃない。
    大好きな人と笑っている時間が好きなだけ。
    大好きな人が好きだと言ってくれる自分の一部が好きなだけ。

    あすわは「ドリフターズ・リスト」を書くことで、無理矢理にでも自分を動かした。
    ロッカさんや、京ちゃんや、郁ちゃんや、お父さんや、お母さんや、お兄ちゃんや、いろんな人に会うことが出来た。
    そこで笑えたことが大きかったんだと思う。
    毎日のようにご飯を一緒に食べてくれたロッカさんの存在は特に。
    一人でいたって立ち直れない。
    大好きな誰かと笑いあうことでしか力は生まれない。

    もうダメだ。
    私なんてどうしようもないって思ってしまう時には、「そんなことない」と言ってくれる人、何にも気にせずに話してくれる人の側に行こう。
    逃げてるとか、ずるいとか、知ったこっちゃない。
    笑えなきゃ何も出来ないし、変われない。
    本当にそう思うから。

  • この本の主人公、明日羽は婚約破棄をされて失意のどん底にいたが、失恋でなくとも物凄く落ち込む時や悩んでその事しか考えられなくなる時があると思う。そんな時、この本を読んでいたら明日羽と共に前向きになれる気がする。
    宮下さんの本は初めて読んだが、とても読みやすく心を爽やかな風が吹き抜けたようだった。他の本も是非読んでみたい。

  • 大きな失恋をしてどん底、という始まりと、なんだか食べ物が絡んだ話らしい(と、タイトルから思った)ところが、『食堂かたつむり』とかぶってるな、と思いながら。
    みんなが読んでるらしいから読んでみたら、意外に良かった。
    自分もヒロインの年齢になったような気持ちになる。
    彼女が自分の中でいろいろ考えている過程が、ネガティブ過ぎず、ポジティブ過ぎず、押し付けがましくなくて良いと思う。
    ロッカおばさんのキャラクターが立ちすぎていて笑える。

  • いい本に出会ったなぁと思って、すがすがしい気持ちになった。
    婚約破棄された主人公のような、大きな問題やトラブル、悩みを抱えているわけではないけれど、毎日を、普通に、丁寧に、自分の好きなもので自分を作りあげながら過ごしていくことの穏やかさ、豊かさに、心が澄んでくるような気がする。丁寧に生きていきたいと思うし、おいしい豆を食べたいとも思う。
    読みやすい文章だけれど、ひとつひとつの文の中にたくさんの大事なことが詰まっているような気がして先へ先へと読みすすむのがもったいなく、ゆっくり読んだ。
    心が潤う、素敵な本に出会えたことがうれしい。この作家さんの他の本も読んでみたい。

  • 宮下奈都さんの本はじんわり心にしみてくるところが好き。
    2年も交際して結婚を決めた婚約者から結婚直前にとりやめにしようと言われた主人公。
    そのりゆがまた「僕たち合わないと思うんだ」だなんてそんな理不尽なことって・・・
    でも人は強くなれるものです。
    ほんの小さなきっかけで、毎日を大切にすることで。

  • パスタはアルデンテが一番。豆といえば煮豆。

    本当は色々あっていいはずなのに、そこから外れることに違和感や、焦燥感、疎外感を感じたりする。特にソーシャルメディアが発達した現代では、そう感じて卑屈になってしまう人が多いと聞くことすらあります。


    イヤなことがあったり、非日常にふれて落ち込んでしまうとなかなか元の生活に戻れなかったりします。早く立ち直らなきゃと思えば思うほど空回りしたり・・。

    そんなときに必要なことは毎日のルーティーンじゃないかと思います。
    朝起きて、顔を洗って、ご飯を食べて、歯を磨いて、着替えて外に出る。ペットのえさヤリ、花の水やり。人によってやる事や順番はバラバラでしょうが、毎日繰り返している同じ事というのは意外に多いと思います。

    普段なら単調に感じてしまうそんな日常も、落ち込んだりしているときはとても頼りがいのある日常になります。ルーティーンに身を任せることで、余計なことを考えず毎日のリズムを刻むことが出来るから。


    「毎日がいちばん偉い」

    いろんな豆があっていい。それが今は見つからなくても、気づかなくてもいい。焦らなくてもちゃんと「毎日」を過ごしていれば、いつか手元にあるものが自分なりの豆であることに気づくことが出来るのだと思います。

    婚約破棄の憂き目にあった女性が一回り逞しくなって立ち直っていく姿にとても勇気を貰えます。

  • 傷ついた心の辛さが日常生活を通してひたひたと伝わってくる。
    苦しくて苦しくての毎日から立ち直るためにリストを作ってみる。
    そんな事でもしなければさらに落ちていってしまうような気持ちに陥る。
    そんなあがきがよく分かる。
    そんな気持ちに寄り添える作家さんなんだな~と思う。
    気が付けば辛さは和らいでいた、そんな結末にホッとする。

  • 頑張りすぎなくてもいい、すぐに結果が出なくていい、誰かに評価されなくてもいい。小さなことでも真剣に見つめて、色々考えて、時間がかかっても長く続けてみれば何か「良いもの」が見えてくるんじゃないかなと思わされた。
    社会人2年目の今、何が辛いんじゃないけど、何かとにかくしんどい。毎日辞めたいなと思って転職サイトにも登録した。でもこの本を読んで、「死ぬほどしんどいわけでもないし、転職も大変そうだから、もうちょっと今の会社で頑張ってみるか」と思った。
    だから、今朝も仕事、行ってきます。

  • *結婚式直前に突然婚約を解消されてしまった明日羽。失意のどん底にいる彼女に、叔母のロッカさんが提案したのは“ドリフターズ(やりたいこと)・リスト”の作成だった。自らの気持ちに正直に生きたいと願う全ての人々におくる感動の物語*

    まずは、登場人物がみんな優しくて温かい。物語に劇的な変化はないものの、主人公の心の機微が丁寧に紡がれ、明日羽に寄り添って物語を歩んでゆける人にはお勧めです。一切れのパン。「豆」とだけ書かれたリストの項目。ふわりと心に染み入る一冊です。

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太陽のパスタ、豆のスープ (集英社文庫)の作品紹介

人生は自分の気持ち一つで変わるんだ!
結婚式直前に婚約を解消された明日羽(あすわ)。傷心の彼女に叔母のロッカさんが提案したのは“やりたいことリスト"の作成だった。自分の気持ちに正直に生きたいと願う全ての女性に贈る感動の物語。

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