太陽のパスタ、豆のスープ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.51
  • (312)
  • (744)
  • (810)
  • (200)
  • (45)
本棚登録 : 7701
感想 : 792
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087450262

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 思いがけず、婚約者から婚約解消されてしまう主人公明日羽(あすわ)。
    失意の底を漂い、途方にくれる彼女に、叔母がドリフターズリストを書いてみたらと提案する。

    明日羽が、本当になりたいもの、やりたいことは何か、リストを作りながら、それを動機に自分と向き合い、成長していく物語。

    誰しもショックが大きくて、立ち止まってしまうことがあるはず。結局何をすれば自分を幸せにできるか、物語は明かさないのだけれど、明日羽は、もう前を向いて自分の大切にしたいものに気づいたよう。

    大げさな希望や、目標でなくてもいい。日々の暮らしの中で、食べるものが自分の体をつくり、何を掬い選びとるかで、日々が彩られていく。

    穏やかに彼女に寄り添う登場人物たち、一風個性的な叔母ロッカさんの、お節介なようでいて立ち入りすぎない存在も明るく魅力的で、居心地の良さを自然と感じるような行間、宮下さんの作品に温かく和みの時間を頂きました。

  • 久しぶりに本読みました。
    近所のこぢんまりした図書館で借りてきました。
    宮下奈都さん、面白いですね。原田マハと似てる感じがするんですが、私だけでしょうか?

    冒頭、式も決まっている未来の旦那様からいきなり別れを告げられる。はっ、これは衝撃のストーリーか!と思ったのは束の間。ショッキングな始まりでしたが、この後はじっくりじっくり主人公の明日羽が今までの自分の生き方を振り返って、気付かなかったことに気付いて、自分の人生を生きて行くスタートにつくまでのお話になります。

    どっぷりと明日羽の気持ちにつかりながら読んでいけるのは、やっぱり作家さんの文章力なんでしょうねぇ。細やかなところまで、気持ちが表現されています。

    あとは、強烈な個性の叔母ロッカさんの人柄。ぶっきらぼうで図々しいように見えて、実は気遣い屋さんで優しい。さりげなくアドバイスして明日羽の気持ちが回復できるようにサポートしてます。

    毎日の生活に埋没してしまって、あれ、自分のやりたいことって何だったっけ?みたいになりがちなので、少し止まってドリフターズリスト(やりたいことリスト)を作ってみるのもいいかも。

  • すごく良かった。
    なおさら宮下奈都の世界をもっと知りたいと思う。

    すぐレビューを載せないと忘れてしまうのは歯がゆい。

  • ドリフターズ・リスト、読み始めて私も作ってみようかと思ったのだけれどまた先を読み始めるとそれをどう扱えば良いのか中々難しい。
    一周回ってまた同じ場所に戻ってきたけれども、今度は傷ついた事がきっかけになって色々な経験や自分自身を見つめる時間を持てて戻ってきたのだから同じ場所でも以前とは違うという事なのかな。
    人は皆、そういうものなのかも。

  • 宮下奈都さんの本を読んだのは初めてだったが、この本をきっかけとして私の中のとても好きな作家さんの一人となった。
    主人公は、婚約破棄された女性であり、まだ結婚をしていない私にとって主人公の心情など理解できるのだろうかと思っていたが、そのようなことはあまり気にせずに読み進めることができた。この本は、ただの失恋から立ち直った女性の話ではない。失恋をしたことで、自分自身を見つめ直す機会があるということを肯定的に書いている。そのようなところが読んでいて共感できた。
    また、読んでいて、自分の人生で達成したいことは何だろう、ささやかな幸せを見つけてそれに感動しながら生活をしていくことは大切だな、なども考えさせられた。
    読み終わると元気が湧いてくる素敵な小説だと思う。

  • いい本に出会ったなぁと思って、すがすがしい気持ちになった。
    婚約破棄された主人公のような、大きな問題やトラブル、悩みを抱えているわけではないけれど、毎日を、普通に、丁寧に、自分の好きなもので自分を作りあげながら過ごしていくことの穏やかさ、豊かさに、心が澄んでくるような気がする。丁寧に生きていきたいと思うし、おいしい豆を食べたいとも思う。
    読みやすい文章だけれど、ひとつひとつの文の中にたくさんの大事なことが詰まっているような気がして先へ先へと読みすすむのがもったいなく、ゆっくり読んだ。
    心が潤う、素敵な本に出会えたことがうれしい。この作家さんの他の本も読んでみたい。

  • 婚約破棄された主人公、明日羽。
    ドリフターズ・リストを書くようにすすめる叔母の六花さん。
    ドリフターズ(やりたいこと)・リストは、
    こうなりたい、これをやりたい、ここに行きたいではなく、こうなる、これをやる、ここに行くと書くのがいいのだそう。
    確かに、なにかを成し遂げた人間は何歳までになにをするか、人生計画がしっかりしているイメージが強い。その場しのぎの私とは正反対である。
    だからといって、ドリフターズリストに沿うように生きるのは違うようで。

    ベビー用品会社で働いて、婚約して、傍から見ても順風満帆といえる生活を送っていた頃より、婚約破棄されてからも身近にいてくれた大切な存在や「食」に対して深く考えるようになって、感謝するようになった明日羽のほうが充実しているようで好き。きっと明日羽もそう。

    郁ちゃんにとっての豆、明日羽にとっての豆、私にとっての豆ってなんだろう。

    豆ばかりに焦点を当てられているように感じたけれど、毎日のように家に来て一緒にご飯を食べてくれた六花さんの存在は何よりも大きかった。

    リストだけに頼るのではなく、結局は自分の芯を強く持つことが大事なんだと思う。それこそ、いつでも空で言えるくらいに。
    なりたい自分があるのなら、それに向かって自分自身が進まなければ意味がない。周りの支えや寄り添いに感謝しながら受け止めながら、自分の足で進む。どれだけその一歩が小さくても、ゆっくりでも。
    何かに挫折したとき、本から元気をもらいたい!と思ったときにまた読み返したい。
    大切にしたい言葉がたくさんあった。

  • 宮下奈都著 2冊目。

    婚約破棄された主人公:あすわ。理由もわからず、奈落の底に落とされる…。
    チコちゃんに叱られそうな「芯がない」あすわは、なんとなくボーッと生きてきた。叔母:ロッカさんに命じられて作ったドリフターズ(漂流者)リストを頼りに、少しずつ前に進んでいく。

    葛藤や迷い「私には何にもない」という描写が、何度も重複して出てくる…これは『羊と鋼の森』でも気になったのだけど。。。それなのに主人公像はフワッとしていて、ロッカや京のキャラの方が際立っているように感じた。

    我が家のチェリー色ル.クレーゼを今夜は使おう。

  • 著者作品に登場する食べ物・飲み物は、いつもどれも美味しそうだ。
    「毎日のごはんがあなたを助ける。」そうなのだ。レジリエンスに必要な栄養素が詰まったごはんを食べた感覚。
    酷く落ち込んでいるそこのあなた! どうぞお召し上がりください。

  • 婚約破棄された主人公が自分を見つめ直し、周りへの意識や自分自身の気の持ちようが変わることで、前を向き始める。
    ありがちな話と思ってしまうのだけど、人の温かさは主張する感じじゃなく、後からじわじわ来るような感じでよかった。
    主人公が至って普通というか、誰でも持っているような当たり前の自分中心の考えも持っていて、そういうところが人間らしいと思えて読みやすかった。

全792件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1967年、福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年、第3子妊娠中に書いた初めての小説『静かな雨』が、文學界新人賞佳作に入選。07年、長編小説『スコーレNo.4』がロングセラーに。13年4月から1年間、北海道トムラウシに家族で移住し、その体験を『神さまたちの遊ぶ庭』に綴る。16年、『羊と鋼の森』が本屋大賞を受賞。ほかに『太陽のパスタ、豆のスープ』『誰かが足りない』『つぼみ』など。

「2018年 『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。   』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宮下奈都の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
伊坂幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×