おとぎのかけら 新釈西洋童話集 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451047

作品紹介・あらすじ

「白雪姫」「シンデレラ」「みにくいアヒルの子」……誰もが知っている西洋童話をモチーフに泉鏡花文学賞受賞作家が紡ぎだした、耽美で鮮烈な現代のおとぎ話7編を収録した短編集。(解説/榎本正樹)

感想・レビュー・書評

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  • 大人になってからグリム童話(原作)を読んでみたことがあります。
    あまりのギャップに途中で断念したと思います。

    本作はあとがきにその経緯がありますが、グリム童話と対比させながら読むことができ、そのときに、改めて気づきがある(かもしれません)と。

    世の中はきれいごとだけではなくて、裏がある。
    それをはっきり描いていたのが、グリム童話(原作)であるし、
    さらにそれを現代の日本に置き換えたのが本作である。

  • 千早茜さんの織りなす、現代版の西洋童話。
    ご本人のあとがきでは「話の筋は大体そのままで、既存のモチーフを鏤めて、その中で血や肉を持った西洋童話の登場人物がどう感じたかを描きたかった」と語られていた。

    いやぁ、とても斬新でダークな世界観だった笑
    やはり香りに纏わる描写が秀悦な作家さんだ。
    以下、全7章の簡単なレビュー

    私は特に「白梅虫」ハーメルンの笛吹き男と、「アマリリス」いばら姫、この2作品の西洋童話からの転換が独創的で印象に残った。


    「迷子のきまり」ヘンゼルとグレーテル
    背筋がゾクっとした。お兄ちゃんが用心深くて知恵があって良かったが、母を殺めた罪は消えない。兄妹だけで生きる道を探すのは余りに危険だ。その姿が痛々しくて悲しかった。

    「鵺の森」みにくいアヒルの子
    苛める側は苛められた側のことを覚えていない。だが逆は違う。蓋をしたい過去の記憶。本当に罪深いのはその記憶を正当化することだと思った。

    「カドミウム・レッド」白雪姫
    女同士の目に見えない嫉妬や情念は、時に理性を掻き乱す。2人の女性の心の在り方は、どちらも白雪姫とは言えないと思った。7人の小人に代わる7人の男がもう少し活躍して欲しかった。

    「金の指輪」シンデレラ
    ガラスの靴の代わりが指輪という設定に無理がある。指だって成長と共に大きくなる。この違和感のせいで全体的にぼやけてしまい残念だった。しかも最後のオチが平凡過ぎるのでは・・・

    「凍りついた眼」マッチ売りの少女
    小児性愛者のお話。生理的に受け付けなかった。行為をする側から観察する側になることで性的興奮を覚える主人公。それが招いた悲劇。この作品が1番ダークだった。

    「白梅虫」ハーメルンの笛吹き男
    梅についた虫が逃げていく鈴。確かに鈴のおかげで虫は居なくなった。でも鈴には力が宿っていた。身勝手な男には天罰が降る。女って恐ろしい。衝撃のラストは、もはやホラーの域だった。

    「アマリリス」いばら姫
    既婚男性との不倫。そこに何を望み何を信じているのか。自分でも答えが出せないことは、待ち続けても永遠に叶うことはない。
    主人公が自分で決めて導き出した答えが、明るい光を感じるもので良かった。

  • 時に耽美に、時に残酷に。
    誰もが知っているであろう西洋童話を
    こういう形で表現する事もできるんだなあと。
    千早さんの世界観は結構好きです。

  • 西洋の物語を現代版にアレンジ。現代に置き換えると中々の直球だった。

  • 千早茜さん。よく名前を聞くものの、はじめて読む作家さんでした。
    編集者に選んでもらったテーマ(西洋童話)を、著者の解釈で書いた短編集。

    ヘンゼルとグレーテル
    みにくいアヒルの子
    白雪姫
    シンデレラ
    マッチ売りの少女
    ハーメルンの笛吹き男
    いばら姫

    読みながら、江戸川乱歩の物語みたいだなって思った。
    乱歩みたいな不気味さ、グロテスクさ。そして少し耽美な。
    マッチ売りの少女なんてさ、もともとかわいそうな話なんだけど、それを現代的にされると、目を背けたくなるような話。
    シンデレラのお話だけは、王子の立場からの解釈で、希望がもてるラストだった。

    子どもの時、童話が好きではなかったという著者。本当に幸せになれたのは誰か?という疑問をひとつひとつ解消していけた…とあとがきにあったが、え!この本では特に誰も幸せになっていないのでは?!と私はびっくりしてしまいました。そもそも、幸せとは何かっていう話なのかな。
    うーん、奥が深いというか、なんというか。難解だわ。

  • グリム童話やアンデルセン童話をモチーフにした作品には、原作とはまた違った良さがある。
    子供向けじゃない現代版おとぎ話が七篇。
    妖しい物語や苦味を伴う物語が楽しめる。
    個人的にシンデレラをモチーフにした『金の指輪』が好き。
    童話以上にドラマティックな仕上がりになっていて、とても良かった。

  • ・答えは単純だったのだ。望まないことは叶わない。何をしたいのかわかっていないわたしが待ち続けても、何も起こるはずはなかった。

  • この作家さんを初めて読みましたが、かなり好きです。
    誰もが知っている、西洋童話が現代風な物語になっています。短編集なのも読みやすく、何よりもこの作家さんの世界が、圧倒的に迫ってきます。
    どの物語も、毒があり、泉 鏡花が好き方は、読んでみて欲しいです。

  • 西洋の童話を身近に感じることが出来た。千早茜さんの生々しい解釈好きです。読み終わった後も心に残る感じ。面白かったです。

  • 千早茜先生が好きすぎる。

  • 御伽噺を元にした短編集。「白雪姫」が好き。原作に近い感じの子供向けではないお話が多いです。大人向けですね。

  • さすが千早作品。短編集ながら、どれもゾワゾワです。あっという間に読ませられてしまいます。「金の指輪」が好みなんて言ったらまだまだね、なんて言われそう。

  • 有名なお伽話を題材にした短編作品。生々しい話が多くて読むのに苦労した。
    この方は本当に繊細な文章を書くなと思った。

  • シンデレラがすき!

  • モチーフとなった童話のエッセンスを匂わせ、うまく描き出している。全体的に、最後は読者をうまく着地させてくれる。毒々しいが、あとに引きずることがない印象。

    ただ、ぐっと引き込まれた作品が、ひとつ。読後に何かが、残るなぁ。良い感触だ。

  • 土台にモチーフとなった童話の要素が敷き詰められている。教訓めいた内容や、残酷性が、現代版にブラッシュアップされているため、とても読みやすかったです。シンデレラの物語がとくにお気に入りです。

  • おとぎばなし要素が本当にかけらだった。現代日本が舞台になっていながら、なおかつ幻想的、そして残酷な物語だった。それぞれの元となる童話のタイトルは記載されているけれど、なくてもそれはすぐにわかる。キーとなるモチーフはしっかり描いてあるし、展開も大筋元になる童話に沿っている。辿り着く先が同じとは言わないけれども。

    この作品が千早茜さん初だったのだけれど、他作品を読む参考になるのだろうか‥?

  • お伽噺をモチーフに、現代解釈した短編集。
    最初の「迷子のきまり」に心掴まれて一気に読んだ。毒多め。

  • 本来残酷だと言われている西洋童話を現代に置き換えることで、より残酷かつ風刺的に感じた。文章が美しかった。
    7編のうち「シンデレラ」だけがわかりやすいハッピーエンドで、1番好きだった。
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    「白雪姫」「シンデレラ」「みにくいアヒルの子」……誰もが知っている西洋童話をモチーフに泉鏡花文学賞受賞作家が紡ぎだした、耽美で鮮烈な現代のおとぎ話7編を収録した短編集。

  • 西洋童話をモチーフにした短編集。
    現代の日本が舞台になっているのに不思議と幻想的で禍々しく、まさにダークファンタジーの世界観。毒々しくて耽美で、ゾクゾクした。

    ヘンゼルとグレーテルがモチーフの『迷子のきまり』とシンデレラがモチーフの『金の指輪』がお気に入り。
    『金の指輪』の、なんだよちくしょう!お幸せに!!と言いたくなるような素敵な終わり方、とっても好きだ。

    マッチ売りの少女がモチーフの『凍りついた眼』も男達の歪んだ一方的な欲と、後味の悪い結末のせいで印象に強く残っている。
    思い出しただけでなんだか鼻奥に血の臭いが漂う。気持ち悪いし不愉快なのだけど、怖いもの見たさで惹きつけられるような、そんな気分。

    大好きな千早茜さんの世界観をたっぷり堪能した読書時間だった。

  • お姫様になれなかったあなたへ。本当に幸せになれたのは誰か-?西洋童話をモチーフに紡がれた、美しくも恐ろしい七編。

    初めての千早茜san。

    あとがきの千早sanの言葉のとおり、西洋童話は、あまりにも遠い世界で、どこか他人事で、安心して読めてしまい、”ぬるい”と感じられた。これに、現代に生きる人の感覚や価値観を入れ、既存のモチーフを鏤(ちりば)めて、その中で血や肉を持った登場人物が、しっかりと描かれていました。

    花火大会の日、幼い兄弟はわざと母親とはぐれ・・・の「迷子のきまり」から、不倫に悩んで実家に戻った私は、認知症の祖母の過去を知って・・・の「アマリリス」まで。この”わざとはぐれ”で心惹かれました。

    お気に入りの登場人物は、「鵺の森」の翔也、「カドミウム・レッド」のわたし、「金の指輪」の笠原さん、「白梅虫」の夕さんなど。みんなどこか残酷で、悲しくて、でも美しい。

    文体が村田沙耶香sanの様な、登場人物が『白夜行』(東野圭吾san)の亮司や雪穂の様な印象を受けました。とっても好きな世界観です。

    素敵な作家sanに出会うことができました。
    他の作品も順に読ませていただきます☆

  • 乙子話をモチーフにした短編集。
    要素はあるけれど、ちょっとおどろおどろしく、読後感が良いものではないけど、物語から童話の要素を感じて面白く読んだ。

  • 千早茜さんは割と好みの作風で、文庫本化されてる作品は7割方読んだところで。集英社から発刊されている作風だけは好みではないことがわかった。西洋童話を元ネタに千早さんの目線で物語られる「おとぎのかけら」ヘンゼルとグレーテル、白雪姫、シンデレラ...元ネタも大概なお話なんだけど、そこに千早さんのセンスが合わさると結構性格の悪い物語になっていて、悪意を持って描かれる悪意というヤツは消化不良を起こす。と。

  • うーん、、つらい…

  • 昔・・・中学生か高校生のとき・・・作者も名前もおぼえてないけど、同じようにグリムだかアンデルセンとかをモチーフにした短編小説を読んだことがあります。
    そのころが子どもだったせいもあるんだろうけど、その作品のすごく怖くて。
    いま、大人になったせいもあるんだろうけど、この作品はあまり・・・怖くない。
    インパクト弱い不気味系。

    少し切なさ系、だったら、大人になった今だからこそのいい小説になったかもしれないんだけどなー・・・。(意味不明でゴメン)

  • 2014.5

  • 鬱々としていて良かった。

  • んー。
    良くある。
    想像できる感じ。

  • う~ん、微妙。グロいというか表現が気持ち悪くて、好きじゃない。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/764626

    童話になぞらえた現代の物語。書名はファンタジックですがはたして…?
    闇あり光ありの人間模様。

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。09年に同作で泉鏡花文学賞を、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』(絵・宇野亞喜良)、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

「2021年 『ひきなみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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